世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居についての記事です。
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【相談内容】
相談者(62歳男性)から、「田舎で一人暮らしをしている母(86歳)が認知症のようなので、心配している。弟(次男59歳)もいるが、私は長男だし、私の2人の子も就職して家を出たので、母を引き取って、妻(60歳)と3人で暮らそうと思うが、どうだろう」と相談された。
【検討すべき点】
子が認知症の親を引き取って面倒を見るというのは美談とも言えるいい話です。しかし、実際の世話をするのが息子ではなくその配偶者であれば、その配偶者の理解は不可欠ですし、先々のことも考えておかなければなりません。また、兄弟姉妹への配慮や田舎の実家の処分も検討材料です。善意だったとしても、それが仇にならないように、将来を予測したアドバイスが必要になります。
【1】親と同居のパターン
① 別々に暮らしていた子が高齢の親と同居して面倒を見るパターンとしては、概ね以下の4つに分類されます。
(1)子が親を田舎から呼び寄せる「引取り」
(2)子が実家に戻って親と同居する「実家での親との同居」
(3)複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション」
(4)子が自宅と実家を行き来する「半同居」
相談例はこのうちの(1)のパターンです。
【2】当事者の心理
① 一般的に高齢の親は住み慣れた自宅から離れたいとは思わないので、母の気持ちを考える必要があります。それでも、母が長男の申出に応じたのなら、自宅で自立して暮らす自信がなくなり、地元の施設にも入りたくない(大勢の前で恥をかくのが怖い)といった気持があるからかもしれません。
② 長男としては、長男の責任を果たしたい(在宅介護してあげたい)という気持ちが強いのだろうと思います。男性で単身の子が親を引き取るというパターンはあまり見られないので、配偶者(妻)が母の面倒を見てくれるだろうという、甘い考えがありそうです。
③ しかし、相談者の妻としては、義母との同居は歓迎できることではないケースが圧倒的です。そうであれば、同居すれば義母の資産を流用させてもらえるとの期待を抱くことは当然あり得ますし、いざとなれば施設に入居してもらうという考えもあり得ます。
④ 一方、次男は母の介護問題から逃げられるので、あまり文句を言わないでしょう。長男一家が母の財産を多少流用することも想定範囲かもしれません。しかし、母の財産が一気に減少したり、母から長男一家への恨みつらみを聞かされたり、長男が母を引き取って間もなく施設に入所させたりといった事情が生じれば、「親孝行は口先だけ」と長男夫婦を非難し始めるでしょう。
【3】同居と介護
① 親との同居は、もちろん在宅介護を意味しますが、在宅介護のたいへんさは経験してみないとわかりません。介護サービスを利用するとしても、徘徊、癇癪、愚痴、下の世話などを経験し、それまでの生活が制約され、認知症が進んだ親から感謝されなくなれば、やがて我慢の限界を迎えます(認知症の見当識障害から、排泄物を弄んだり壁に塗りたくる等の症状も見られますので、そうなると一層我慢することが辛くなります)。そうなると施設への入所を選択せざるを得なくなります。
② 母の他界後、遺産分割の段階になれば、長男夫婦には「介護の苦労はどう評価してくれるのか」という気持ちが生じます。
③ 寄与分(民法904条の2)には、「特別の寄与」との厳しい要件があり、よほどのことがなければ認められません(上記のような症状の親の面倒を見る程度では、認められません)。
④ 平成30年民法改正では、配偶者の苦労に配慮して、相続人ではない親族(相続人の妻など)が被相続人に対して無償で療養看護などの労務を提供した場合には、特別寄与料が認められることになりました(民法1050条)が、寄与分と比べて要件が大幅に緩和されたわけではありません。実際どのような場合に請求が認められるかも、まだ判例がなく不透明です。
⑤ したがって、相談者は、同居後に在宅介護が不可能な状態になったらどうするのか、また、在宅介護は特別の寄与に認められにくいということを考えなければなりません。
【4】親の財産管理
① 親と同居するには、他の兄弟姉妹から親の資産の流用を疑われないように、親の財布と子の財布を完全に分ける必要があります。具体的には、親子双方が別の家計簿をつけ、親の出費は出来る限り口座引き落としや振り込みを利用し、ATMからの現金出金を避け、1年に1度は他の兄弟姉妹に預金通帳の写しや収支の明細を送ることを勧めます。日常生活を写真や動画に写しそれを送るなどの工夫が大切です。
② このことは、長男が母の成年後見人になったとした場合に必要となる行為でもあり、成年後見を申し立てない場合でも、任意財産管理契約を締結したのと同じ運用と報告をすべきだということです。
③ よく問題となるのは、孫の入学や卒業の祝い金、結婚祝、出産祝、新築祝等の現金出金ですが、兄弟姉妹の各ケースを同額としておくなど、事前に話し合いで決めておけば、紛争を回避できます。
④ また、母を迎え入れるのに、バリアフリーなどのリホームや階段風呂場トイレなどに手すりを設置する等の工事を行う場合も、事前に兄弟姉妹の同意を得て、領収書を保存することが大切です。
⑤ 母の住んでいた田舎の実家は、帰る予定がないならば、空家問題を避けるためにも早めに処分すべきです。これは相談例では弟がいますので、よく話し合って決める必要があります。
⑥ 相談例でいう弟の立場の人から相談を受けた場合のアドバイスとしては、長男に母の生活費を教えてもらい、その一部でも分担して母名義の口座に仕送りすることをお勧めします。これは長男の浪費の抑止にもつながります。
【5】他の同居のパターン
① 相談例とは違うケースですが、【1】同居のパターンの(2)「実家に子が同居」のケースについて、子が身軽な単身者である場合が多いようです。この場合、非同居の兄弟姉妹からは、同居の子が自分の都合で親に寄生しているとみられるリスクが高くなります。このケースは親の預金の流用や自宅相続などの問題でもめやすいため、親の財産管理は【1】(1)の「呼び寄せて同居」パターンより気を使い厳格にすべきでしょう。
② これに対して【1】(3)の複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション型」のパターンは、たとえば2か月ごとに、長男や次男・長女や次女の家を行ったり来たりするもので、あまり多くは見られませんが、高齢の親にとっては移動が負担になり、頻繁な環境の変化は認知症の進行にも悪影響を与えるので、あまりお勧めはできません。
③ また、【1】(4)の「子が実家と自宅を行き来する半同居」は、子が金曜の夜から日曜日まで実家に戻り親の介護をするといった方法です。その子にとっても大きな負担になることは自明なので、兄弟姉妹の仲がこじれることは少ないのですが、二重生活の為、費用面でも、体力面でもこの負担が重くなり、長続きしないケースが多くなります。
【6】親の言動についての注意
① 同居の場合に限定されませんが、認知症が進んだ高齢の親は、子どもの気を引きたいがゆえに、目の前の子に迎合する言動が多くみられ、目の前にいない子の悪口を言う傾向があります。
② 例えば、次男に「長男夫婦にご飯を食べさせてもらえない」「長男に預金通帳を取り上げられた」といい、長男には「頼りになるのはおまえだけだ」「次男は私の財産を狙っている」などと媚びるのです。高齢者として自然ともいえる行動ですが、子どもらがその言動を真に受けると、確実に争族の種になります。これを避けるためには親に「子供の悪口は言わない」ことを約束してもらうことと、兄弟姉妹間で話合い、親の言動を真に受けないとしておくことですが、実際は難しいところです。
【7】相続開始前の紛争(前哨戦)
① 親と同居していること非同居の子の対立が深まれば、相続開始前でもトラブルが生じます。
② 長男が親が「次男の顔も見たくない」と言っているとして、次男との面会を遮断することがあります。実際、親が同居の子の顔色をうかがってそのような発言をすることもありますが、非同居の子からすれば、それは許せるものではありません。そこで、自宅に押し掛け、警察を呼ばれ、弁護士に依頼して面会交流を求める親子関係調整調停事件に発展することもあります。
③ しかし、子に「親との面会を求める権利」はありません。「親が会いたくないといっている」として調停期日の出頭を拒否されると打つ手がありませんし、人身保護法2条の申立ても要件が厳しく、うまくいく見込みはあまりありません。
④ そこで、腹に据えかねた非同居の子が、ディサービスの帰りに親を連れ去るといった自力救済も起こり得ます。これに対して、同居の子が親の取返しを図ろうとすると、今度は非同居の子が「親は家に帰りたくないといっている」と主張します。
⑤ さらに、親を確保した子が、遺言書を書かせ合うといったこともあります。離婚事件の子供の取り合いに似ていますが、こうなると手の施しようが有りません。
⑥ その他、非同居の子が、同居の子が親の財産を費消することを予防するために後見開始を申し立てることも頻繁に見受けられます。そして、同居の子は家庭裁判所からの意見照会で後見開始の申し立てを知ることになりますが、例外なく激怒し紛糾します。
⑦ 相続前でもこれだけもめていれば、相続発生後に紛争になるのは必至です。親との同居はその遠因となるかもしれませんので、相談者には以上のリスクをお伝えし、十分に検討していただくようお勧めします。