【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q5 火葬(埋葬)許可証の申請方法

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【Q5】隣町の病院に入院していた父が死亡しました。この場合、死亡届、火葬許可証申請はどの自治体に提出すればいいのでしょうか。

【POINT】
① 死亡届は、どこに提出するのか
② 火葬(埋葬)許可の申請は、どこに提出するのか

1⃣ 死亡届の提出先
① 届出は、本人の本籍地または届出人の所在地(住所地)の市区町村役場に提出することになりますが、死亡届は死亡地でも提出することができます。
② 死亡地が明らかでないときは死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡したときは死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡したときはその船舶が最初に入港した地ですることができます。なお、航海日誌を備えた船舶の中で死亡した場合は、船長が手続きをします。
③ したがって、居住地内にない病院で死亡した場合、亡くなった方の本籍地、死亡地、届出する者の住所地のいずれでも提出することができます。

2⃣ 火葬(埋葬)許可証の申請先
① 遺体を搬送して火葬(埋葬)するには、市区町村長の許可を受けなければなりません。
② この許可は、死亡届を受理した市区町村長が行なうこととされていますから、死亡届を提出した市区町村役場の窓口に火葬許可の申請書を提出することになります。
③ 埋葬とは土葬のことを指しますから、火葬せずに土葬する場合も、同様に死亡届を提出した市区町村役場の窓口に埋葬許可の申請書を提出することになります。
④ なお、死亡が認定された場合には、死亡の報告を受けて死亡を認定した市区町村役場の窓口に申請書を提出することになります。
⑤ なお、死亡届や火葬許可申請は、葬儀社への委任による代行で行うことができます。死亡直後は、精神的にも混乱していますし、事務的にも余裕がないのが通常ですので、葬儀社に依頼して手続きを行ってもらうことが多いでしょう。
⑥ 火葬許可申請書には、⑴死亡者の本籍、住所、氏名、⑵死亡者の性別、⑶死亡者の出生年月日、⑷死因、⑸死亡年月日、⑹死亡場所、⑺火葬場所、⑻申請者の住所、氏名および死亡者との続柄、を記載しなければなりません。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q4 災害で遺体が発見されない場合の死亡判定

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【Q4】豪雨で川が氾濫し、自宅が流された人が行方不明で遺体が発見されません。この行方不明者はいつ死亡と判定されるのですか。家族は生命保険の申請ができますか。

【POINT】
① 失踪宣告による場合にはどうなるか
② 認定死亡による場合にはどうなるか

1⃣ 失踪宣告とその法的効果
① 遺体が発見されていない場合には、本人が死亡したのかどうか明確ではありません。このような不在者については、7年間生死が不明であれば、利害関係人の請求によって、家庭裁判所が失踪宣告をすることができます。
② また、死亡の原因となるべき危難に遭遇した場合には危難が去った後1年間生死が不明であれば、同様に失踪宣告をすることができます。
③ 失踪宣告がなされた場合には、7年の期間満了時あるいは危難が去った時に死亡したものとみなされます。したがって、法的に本人が死亡したことが擬制されることになりますから、家族は生命保険の申請ができることになります。
④ 後日失踪者が生存していることが判明した場合には、本人または利害関係人の請求によって、家庭裁判所は失踪宣告を取り消さなければなりません。
⑤ ただし、取消し前に善意(生存の事実を知らなかった)でした行為は有効として扱われます。また、失踪宣告によって利益を得た者は、取消しによって権利を失うものの、現に利益を受けている限度で返還義務を負うものとされています。
⑥ したがって、生命保険金が支払われ、後日生存が判明して失踪宣告が取り消された場合には、保険金受取人は現に利益を受けている限度で保険金を返還すれば足りることになります。もっとも、そのような保護を受けるのは、保険金受取人が善意であった場合に限るとするのが通説です。

2⃣ 認定死亡とその法的効果
① 水難や火災などで行方不明となっている人が、死亡していることは確実だけれども遺体を確認できないという場合には、その取り調べをした役所は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならず、死亡を認定して戸籍に死亡の記載をすることになるため、「認定死亡」と呼ばれています。
② この認定によって戸籍上は死亡した取扱いになるため、戸籍から除籍になったときに本人が死亡したという取扱いが可能になります。
③ しかし、失踪宣告とは異なり、本人が死亡したものと法的にみなされるわけではなく、戸籍法上の便宜的な制度であって、後日行方不明者の生存が判明した場合には、ただちに効力を失うものにすぎません。
④ 認定死亡は戸籍法上の死亡の効果を導くものですから、本人が死亡したものとして婚姻関係が解消されたり相続が開始したりすることになります。
⑤ 生命保険は、戸籍法上の問題ではなく、保険契約に基づくものですから、認定死亡によって直ちに死亡したものとして取り扱わなくてもかまわないことになります。
⑥ もっとも、そう簡単に認定死亡が行なわれるわけではないですから、認定死亡の場合には死亡が推定されていると理解した方がよいでしょう。
⑦ そうだとすると、生命保険金の申請も可能ということになるのでしょうから、加入している保険会社に問合せたほうがよいと思います。多くの保険商品では、保険会社自身の死亡認定というシステムを準備しているだろうと思います。
⑧ 生命保険金が支払われ、後日生存が判明した場合には、失踪宣告と違って保護規定がありませんから、保険金受取人は受け取った保険金を返還しなければならないことになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q3 死亡届とその提出方法

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【Q3】一人暮らしの高齢者がアパートの自室で死亡しました。死亡後1週間経って発見されたのですが、この場合、誰が死亡届を提出するのですか。

【POINT】
① 死亡届は、いつどこでしなければならないのか
② 誰が死亡届をしなければならないのか
③ 誰が死亡届をすることができるのか

1⃣ 死亡届
① 死亡届は、人が死亡したことを公的に証明するために必要な手続きです。死亡届が受理されれば、その人は戸籍から除籍され、住民登録も消除されて住民票の除票が保存されることになります。
② また、死亡届が受理されなければ、埋火葬許可証も発行されません。さらに、生命保険金等を請求するにあたっても死亡届が必要とされています。
③ 死亡届は、原則として、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内にしなければなりません。
④ 届出は、本人の本籍地または届出人の所在地(住所地)ですることになりますが、死亡届は死亡地でもすることができ、死亡地が明らかでないときは死体が最初に発見された地ですることになります。
⑤ 汽車その他の交通機関の中で死亡したときは死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡したときはその船舶が最初に入港した地ですることができます。なお、航海日誌を備えた船舶の中で死亡した場合は、船長が航海日誌に記載等し、市町村へのその謄本の送付等の手続きをします。

2⃣ 死亡届の届出義務者と届出権者
① 人が死亡した場合、市町村に死亡の届出をしなければなりませんが、届出をする段階ではその対象となる人が死亡しているのですから、誰か他の人が届出をしなければならないことになります。
② 死亡届をしなければならない人(届出義務者)については、次の順序に従って届出をしなければならないとされています。ただし、順序にかかわらず届出をすることもできる(届出権者)と定められています。
⑴ 同居の親族
⑵ その他の同居者
⑶ 家主、地主または家屋もしくは土地の管理人
③ なお、死亡届は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人および任意後見人、任意後見受任者もすることができる(届出権者)とされています。
④ したがって、一人暮らしの高齢者が自室で死亡した場合、家主や家屋の管理人が死亡届をしなければならないこととなり、親族や後見人等がいる場合、それらの者も死亡届をすることができることになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q2 死体検案書が交付される場合

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【Q2】認知症の父が自宅の階段から落ちて亡くなりましたが、この場合の死亡は誰が判定するのですか。

【POINT】
① どのような場合に死体検案書が交付されるのか
② 死体検案書を交付するのは誰か

1⃣ 死亡届と死体検案書
①人が死亡した場合、市町村に死亡の届出をしなければなりません。そして、死亡届には、死亡診断書または死体検案書を添付しなければならないとされています。死体検案書は、医師が交付しなければなりません。
② 医師が診療した後24時間以内に診療中の疾患で死亡したときには、異状がない限り、その医師があらためて死後診察しなくても、死亡診断書を交付することができます。
③ 医師が診療した後24時間を超える場合であっても、診療にかかる傷病で死亡したことが予期できるときには、診療を行って生前に診療していた傷病が原因であると判定できるならば、その医師が死亡診断書を交付することができます。
④ しかし、診療を受けていた傷病ではなく、階段から落ちたという事故によって死亡した場合には、医師が死亡診断書を交付することはできません。そのような場合には、医師が死体を検案しなければならず、死体を検案して異状があると認めたときは、医師は、24時間以内に所轄警察署に届け出なければなりません。
⑤ その結果、検察官または警察官が検視や死体見分を行い、必要があると判断されれば、司法解剖・行政解剖に付されることになります。

2⃣ 非犯罪死の場合と犯罪死の場合
① 認知症の父親が自分で階段から落ちて事故死した場合には、犯罪に基づくものではないようですから、警察官が死体見分を行い、その手続きに立ち会った医師が死体検案書を交付する事となると思われます。
② また、お父さんが自分で階段から落ちたのではなく、誰かに突き落とされたというように犯罪に基づくことが疑われるような場合には、検察官による検視が行なわれ、検視に立ち会った医師や解剖を担当した医師が死体検案書を交付することとなります。
③ なお、死亡診断書と死体検案書の記載事項は同一であって、共通の書式が用いられています。なお、令和2年12月25日に施行された押印に関する整理省令により、死亡診断書(死体検案書)は、記名押印ではなく、署名によるものとされました。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q1 死亡の判定と死亡診断書

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【Q1】かなり衰弱して自宅で病気療養中だった祖父が未明に心臓が停止して亡くなってしまいました。この場合の死亡は誰が判定するのですか。

【POINT】
① どのような場合に死亡診断書が交付されるのか
② 死亡診断書を交付するのは誰なのか
③ 死亡の判定は何によって行うのか

1⃣ 死亡届と死亡診断書
① 人が死亡した場合、市町村に死亡の届出をしなければなりません。そして、死亡届には、死亡診断書または死体検案書を添付しなければならないとされています。死亡診断書は、医師または歯科医師が交付しなければなりません。
② 医師が診療した24時間以内に診療中の疾患で死亡したときには、異状がない限り、その医師が改めて死後診察しなくても、医師は死亡診断書を交付することができます。
③ 医師が診療した後24時間を超える場合であっても、診療にかかる傷病で死亡したことが予期できるときには、診察を行って生前に診療していた傷病が死因であると判定できるならば、その医師が死亡診断書を交付することができます。
④ したがって、ご質問のように衰弱して自宅で療養中の祖父が心停止して亡くなった場合、診療にあたっていた医師が、診療した後24時間以内であって特に異状がないとき、または、24時間を超えているときであっても、祖父の死因が従来からの病気に基づくものと判定できるときには、その医師が死亡診断書を交付することができます。

2⃣ 死亡の判定基準
① 医師は何を基準として死亡の診断をするのかも問題になりますが、従来からの医学的な考え方では、「心臓死」の三兆候(呼吸停止、心拍停止、瞳孔拡大と対光反射の消失)を基準としてきました。
② つまり、死とは不可逆的な生命活動の停止であって、肺、心臓、脳の機能が不可逆的に停止したことをもって死と判定してきたわけです。
③ しかし、科学の発展によって、新たに脳死という概念も生じてきました。脳死という状態は、脳が不可逆的にその機能を停止した状態であって、心臓や肺は生命維持装置によって機能を喪失していない状態を指しています。
④ つまり、脳は機能を失っていても肺と心臓が機能を有しているため、血流による臓器への酸素供給は継続しているのですから、各種の臓器も機能を喪失していないことになります。
⑤ そのため、高度な機能を有する臓器の移植が可能となり、臓器移植のために脳死という概念が生じたわけです。
⑥ したがって、脳死は、臓器移植のための概念であって、人の死亡を判定するための基準ではなく、脳死判定だけでは死亡診断書の交付はできないことになります。

【孤独死をめぐるQ&A】Q55 地方自治体への相談

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【Q55】高齢の一人暮らしです。孤独死は避けたいですが、頼れる親戚、友人もおらず、また高齢で外出もままならず、これから新たな縁を築くというのも難しいです。
死んだら誰にも発見されないのではないか、死後の葬儀や遺品整理はどのようになるだろうと心配でなりません。かといって安心してお願いできる業者も知らず困っています。誰に相談したらよいのでしょうか。

【A】地方自治体やお住いの地域の地域包括支援センターに相談してみてください。
各自治体が孤独死対策を設けており、何か利用できる取り組みがあるかもしれません。
また、孤独死対策にとどまらず、亡くなった後の葬儀や遺品整理、納骨などを支援する取り組みをしている自治体も増えてきています。

【解説】

1 国や地方自治体の孤独死防止に対する取組
① 平成19年版高齢社会白書において「孤立死防止対策の創設」という記載がなされ、以後、高齢社会白書では厚生労働省の孤立死対策が掲げられています。
② 平成18年8月には「高齢者等が一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議」が設けられました。平成20年3月に同会議の報告書が発表されました。
③ 平成24年には、厚生労働省から都道府県、指定都市、中核市宛に「地域において支援を必要とする者の把握及び適切な支援のための方策等について」(平成24年5月11日社援地発0511第1号)が発せられ、孤立死防止のための支援を必要とする人の把握、適切な支援をするように通知しています。
④ 平成30年4月1日施行の改正社会福祉法において、孤立防止のための自治体を始めとした地域の関係機関のネットワークの強化や見守り体制の構築を市町村に努力義務として課すなど、地域における孤立死対策を推進しています。
⑤ そのような流れの中、例えば、大阪府池田市は「池田市高齢者安否確認に関する条例」を制定し、民生児童委員と福祉委員が協力して高齢者宅を訪問する、安否確認が出来ない場合がそのことが市長に報告されると市の職員により立入調査ができるなどのことを定めています。
⑥ また、東京都中野区では「中野区地域支えあい活動の推進に関する条例」を制定し、70歳以上の単身者や75歳以上の世帯の名簿を自治会や民生委員・警察署・消防署に提供できる、町会・自治会委員と連携した区職員による支援を必要とする方への訪問などを定めています。
⑦ 全国の自治体でも孤立死の予防策を設けており、自治体の84.2%が孤立死防止対策として巡回・訪問活動をしており、53.9%が緊急連絡システムの構築をしているとのことです。東京都では23区、26市のうち35市区で見守りと銘打ったサービスを提供しているとのことです。
⑧ このように孤立死の防止は、国の重点政策になっており、地方自治体は、孤独死防止のための様々な施策を用意しています。

2 地方自治体の終活支援に対する取組
① 孤独死の防止からさらに進んで、高齢者の終活そのものを支援する動きも広まっています。
② なかでも有名なのは、神奈川県横須賀市が行なっている「わたしの終活登録」や「エンディングプラン・サポート事業」です。
③ 「わたしの終活登録」は、本人のエンディングノートや遺言の保管場所や葬儀・遺品整理の生前予約先など終活に関わる事項を登録しておき、認知症や死亡など万が一の際に事前に指定していた人に開示するという制度です。
④ 「エンディングサポート事業」は、葬儀社と高齢者の葬儀生前予約や死後事務委任契約について横須賀市が葬儀社の情報提供や葬祭執行者の確保協力、安否確認などを支援し、もし葬儀社が破綻した場合には、墓地埋葬法9条により市が葬儀費用を負担するという仕組みです。葬儀社が破綻しても、契約書の写しを市が保管しており、葬儀社を変えるだけでその方の意向どおりの葬儀、埋葬が行なえるのです。
⑤ 神奈川県大和市も「おひとり様などの終活支援事業」として、葬儀生前予約支援事業や緊急時、死亡時の情報提供などを行っています。
⑥ 福岡県福岡市では、福岡市社会福祉協議会が終活サポートセンターを設けており、「やすらかパック事業」として、生前の予約により死後事務(チキ荘、納骨、家財処分、役所の手続き等)を福岡市社協が委託した業者が行うというサービスを提供しています。
⑦ やすらかパックの特徴は、死後事務に要する費用を前払いするのではなく、少額短期保険会社と提携して月々の利用料金を支払えばよいとしていることです。
⑧ このように各自治体が、独居の高齢者の孤立死だけでなく、葬儀や遺品整理、納骨などの不安も解消できるような制度に力を入れ始めています。

3 自治体へ相談を
① もし独居で孤独死が不安、亡くなった後のことの事務が不安だが、安心して委託できる友人や会社が見つからないという方は、お住いの市区町村又は地域包括支援センター(世田谷区ではあんしんすこやかセンターと呼称されています)に相談してみてください。
② もちろん、弊所行政書士長谷川憲司事務所でも、ご相談に応じております。

【孤独死をめぐるQ&A】Q54 保険の活用② 親族がいない場合

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【Q54】相続人がいないので、親族以外の第三者を生命保険の受取人にしたいと思います。知り合いの保険会社の外務員に伝えたところ、親族以外は保険金の受取人に出来ないと言われました。
親族以外の第三者を生命保険の受取人にすることは出来ないのでしょうか。

【A】保険加入時には、親族以外の第三者は保険金の受取人とできない保険が多いのが実情です。ただ、最近は、同性パートナーや同居している友人などの一定の条件で第三者を保険金受取人とできる保険もあります。
また、葬儀費用のための少額な保険では第三者受取りを認めている保険もあります。
さらには、保険金直接支払いサービスという葬儀社等の事業者に直接保険金を支払う特約が付いている保険もあります。
1社で諦めず、各保険会社に聞いてみるとよいでしょう。また、保険加入後であれば、第三者に受取人を変更することができる可能性もあります。

【解説】

1 保険金受取人の範囲
① 保険金の受取人は親族に限るということは特に法律で制限されているわけではありません。
② しかしながら、各保険会社では、配偶者や二親等以内の血族などである法定相続人などと保険金の受取人を親族に制限していることが多いのが実情です。
③ このように受取人を親族に制限しているのは、第三者が受け取れるとすると、保険金に係る犯罪が発生する可能性があり、そのような事件発生を防ぐためにも、親族に限っていると聞きます。
④ ただ、家族の在り方は多様化しており、事実婚や同性パートナーについても、同居していることが分かる資料や保険会社のヒアリングなどを基に、保険金受取人と出来る保険会社もあります。
⑤ また、おひとり様が死後事務委任契約を締結している場合の死後事務の受任者を受取人と出来る例もあります。
⑥ 1社から親族が受取人でないと加入できないと断られたとしても、諦めずに自分のニーズに合った保険がないか各社に問合せしてみて下さい。

2 保険金直接支払サービス
① おひとり様が葬儀費用や死後の片付けなどの費用のために保険に入りたいということも考えられます。そのような場合、保険金直接支払サービスという特約が付けられる保険もあります。
② 保険金直接支払サービスとは、保険会社が特定サービスを提供する事業者を顧客に紹介し、顧客が提携事業者からサービスの利用を希望した場合に、保険金を受取人ではなく、当該事業者に対してその代金として支払うことをいいます。
③ これにより、事実上、保険金受取人を当該事業者に変更できます。この保険金直支払サービスは、葬儀費用などでも用いられています。

3 生命保険信託
① 保険金を第三者に支払ってもらう方法としては、生命保険信託という方法もあります。
② これは、生命保険金請求権を信託銀行に信託をし、信託銀行が生命保険金を請求し、受領した保険金を信託契約に基づいてあらかじめ指定した人、指定した金額、方法で支払をするというものです。
③ 生命保険金を支払う相手は、信託契約で定めることができるため、親族以外でも第三者や特定非営利活動法人に支払うことができます。
③ また、一括で支払うことなく毎月定額を支払うなど柔軟な支払方法が実現可能です。信託銀行(信託会社)がそれぞれ提携している生命保険会社と商品を設計していますので、各信託銀行に問合せ下さい。

4 保険金受取人の変更
① 保険法43条(生命保険契約)は、1項において「保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。」と定め、2項において「保険金受取人の変更は保険者に対する意思表示によってする。」と定めています。
② 保険金受取人の変更行為は、相手方のある単独行為としての性質を持つと言われており、保険会社の承諾なくして変更が可能です。
③ そのため、保険加入後であれば、受取人を第三者に変更することは可能と考えます。なお、障害疾病定額保険に関しても、保険法72条において同様の規定が設けられています。
④ また、保険金受取人は遺言によっても変更をすることが可能です(保険法44・73条)。ただし、遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができないとされています(保険法44条2項)。
⑤ 保険金請求が死亡後数営業日で可能であることを考えると、せっかく遺言で保険金受取人を変更しても、それを保険会社に通知する前に従前の保険金受取人が保険請求をして保険金が支払われてしまう可能性もあります。確実に変更をしておきたいのであれば、生前に変更をしておいた方がよいでしょう。

5 生命保険金の受取方法
① 生命保険金を受け取るには、保険会社所定の請求書の他、被保険者の住民票、受取人の戸籍抄本、受取人の印鑑証明書、保険証券などの他、医師の死亡診断書又は死体検案書が必要とされることが通常です。
② 医師の死亡診断書又は死体検案書は、死亡届の右側にありますので、死亡届を提出する際にコピーを取っておくことが必要です。
③ 第三者が保険金を請求する場合、ネックになるのが死亡診断書です。死亡届の提出義務者ではないため、写しを持っていないこともあります。
④ また、役所からの死亡届の記載事項証明書を発行してもらえれば死亡診断書を取得できるのですが、残念ながら民間への保険会社に対する保険金請求を理由としては発行してもらえません。
⑤ そのような場合、死亡の診断をした医療機関に死亡診断書を再発行してもらうか、コピーを渡してもらうように交渉をすることになりますが、遺族でない第三者に対する再発行は拒否されることが多いのが実情です。

【孤独死をめぐるQ&A】Q53 保険の活用① 親族の受取人がいる場合

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【孤独死をめぐるQ&A】Q53 保険の活用① 親族の受取人がいる場合についての記事です。

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【Q53】一人暮らしで子もいません。親族とは折り合いが悪く、ほぼ付き合いがないのですが、仲の良い甥が一人だけいます。私が死んだら甥が葬儀を挙げてくれると思うので、葬儀費用に充ててもらうために生命保険に加入しておこうと思います。生命保険加入にあたって気を付けることを教えてください。

【A】生命保険は受取人固有の財産になるので、遺産分割協議前でも受給することができ、葬儀費用の準備に適していると考えます。
ただ、保険の場合、支払い条件を満たさなければ受け取ることはできませんので、加入する生命保険で自身のニーズを満たすことができるかをしっかりと検討してから加入して下さい。

【解説】

1 一番親しい人に迷惑をかけるのが相続の本質
① 「一番親しい人に迷惑をかけるのが相続の本質」とい表現されることがあります。
② 葬儀費用については相続開始後に生じた費用ですので、遺産分割の対象になりません。同じく、遺品整理費用についても相続開始後に生じた費用であり遺産分割の対象になりません。
③ 遺品整理費用については、相続財産の処分のために費やしたものなので、遺産分割調停・審判とは別に訴訟提起すれば、他の相続人に求償できる可能性はありますが、遺品整理費用の精算のためだけに訴訟提起をすること自体手間がかかってしまいます。
④ また、相続の負担は出費だけではありません。例えば、預貯金の相続手続のために仕事を休んで金融機関に行ったとしても、その労力や金融機関に行くための有給休暇を取得したという事実上の負担も、裁判所が遺産分割審判の中で調整するということもありません。
⑤ もちろん相続人が全員で同意してくれれば、遺産分割の際に調整するのでしょうが、相続人が同意しない場合、裁判所の遺産分割に関する判断の中で、そのような事情は考慮されないのです。
⑥ 亡くなった後、諸々の手続きをしてくれるのは、一番関係が近かった人だと思います。一番関係が近かった人が費用と労力をかけて手続きをしてくれるにもかかわらず、遺産分割では遺産を相続分に応じて平等に分けることになるので、相対的に見て損をしてしまうことになります。

2 生命保険のメリット
生命保険には以下のようなメリットがあります。
⑴遺産分割の対象にならない
① 生命保険は、受取人固有の財産となるので、民法上の遺産分割の対象となる遺産には含まれません。
② この点、相続税を計算する際には、一定額の控除はあるものの生命保険も遺産に含めて考えます。そのため、生命保険金が、遺産分割の場合も遺産に含まれると勘違いされる方もいますが、相続税法と遺産分割を規定している民法は異なる法律であり、遺産の範囲は異なります。
③ 生命保険金は、受取人固有の財産となるため、葬儀や死後の手続きをする予定の人を受取人にしておけば、遺産分割で相続人に応じて平等に分けたとしても、生命保険金分は多く受け取っていることになるので、1人だけ損をするということがなくなります。

⑵相続放棄をしても受け取れる
① 生命保険金は、受取人固有の財産になるため、相続人が相続放棄をしたとしても受け取ることができます。
② 個人の相続財産に負債が多く、マイナスである場合はもちろんのこと、地方の誰も住まないような不動産しかなく、相続したくないという場合もあります。そのような場合、相続放棄をして負債や不要な資産は引き継がないとしつつ、生命保険金は受領して葬儀などの費用に充てるということができるようになります。

⑶他の相続人の承諾、同意なく受給できる
① 生命保険金は、受取人固有の財産ですので、他の相続人の承諾や同意がなくても受給することが可能です。
② 相続が発生すると、預貯金も遺産分割の対象となります。そのため、金融機関は相続発生を知ると預貯金を凍結し、遺産分割が終わらない限り、原則として引き出せなくなります。
③ 例外的に、各預貯金の口座残高の3分の1に権利行使者の法定相続分をかけた金額(ただし1金融機関あたり、上限額150万円)については遺産分割前でも引き出しが可能です。
④ とはいっても、権利行使者の法定相続分を明らかにするにためには、法定相続人の範囲が明らかになるよう戸籍を集めて金融機関に提出する必要があります。
⑤ 戸籍を集めるのは、時間がかかることもあります。その場合、葬儀や納骨までに預貯金を引き出すことができず、遺族がそれらの費用の立替払いを余儀なくされるということも想定できます。
⑥ これに対し、生命保険金であれば、支払事由に該当したことに疑義がなければ数営業日で受け取ることができますので、葬儀費用の支払や納骨までに資金の準備ができる可能性が高くなります。
⑦ このように生命保険は、亡くなった後のことの諸々をやってくれるであろう親族に対し、直接お金を残すことができる方法ですので、本事例のように、特定の親族だけと仲が良いという場合、遺言と併用して、生命保険の活用も検討するとよいかと思います。

3 生命保険加入の注意点
⑴特別受益に準じた持戻しの可能性
① 生命保険金が受取人固有の財産であり遺産分割の対象にならないとしても、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、民法903条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となります(最二小判平成16年10月29日)。
② 特段の事情の有無については、「保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべき」と判示されています。
③ その後名古屋高裁で、相続財産の総額と生命保険金の総額の比率が61%であった事案で特別受益に準じた持戻しを認めています。単に比率だけで決まるわけではないですが、一つの参考にはなると思います。

⑵保険金不払事由への該当
① 保険は、葬儀費用の準備等に使えます。しかし、あくまで生命保険なので、生命保険の受取要件を満たさない場合には、当然保険金は給付されません。
② よく聞くのが、始期前発病や告知義務違反が疑われるケースのトラブルです。告知義務違反は、加入者の問題もあるので致し方ないとしても始期前発病については、加入者が知らなかったとしても保険金が支払われない可能性があります。
葬儀費用に充てようと生命保険に加入しても、亡くなった原因が生命保険加入前からの持病が原因であったような場合、契約前発病不担保特約により保険金が支給されないケースがあります。
③ 保険加入時には、自身のニーズに合っているかを確認してから加入するようにしてください。

【孤独死をめぐるQ&A】Q52 墓じまいについて 

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【Q52】私には身寄りがなく一人暮らしです。先祖代々のお墓を管理していますが、私が死んだ後は、誰もお墓を管理する人がいません。
生前にお墓を処分しておこうかと思うのですが、どのような手続きをすればよいのでしょうか。

【A】墓じまいをするという方も増えているようです。
墓じまいをする場合、改葬許可を得て行なうことが一般的です。

【解説】

1 墓じまい
① いつから使われている言葉か分かりませんが、最近、継ぐ人がいないお墓から遺骨を取り出して、管理者に返すことを墓じまいと呼ぶようになり定着してきています。
② 平成26年12月に「墓じまいのススメ」という書籍が出版されていますので、少なくともこの頃には言われていたのでしょう。
③ 本事例のように自分の代でお墓を管理する人がいなくなるから亡くなる前に墓じまいをしておこうという方以外にも、先祖代々の墓が遠方にあり、墓参りが大変だから近くに移そうという方等もいます。

2 墓は祭祀承継者のもの
① お墓は祭祀財産ですので、墓石の所有権や墓地に関する権利は祭祀承継者が有します(民法897条)。
② これにより、祭祀承継者は、墓地利用契約を単独で解約する権利を有していますし、墓石を撤去することも可能です。
③ ただ、先祖を弔う気持ちは祭祀承継者のものだけではなく、親族が皆大切にしています。たとえ祭祀承継者が権利を有しているとしても、祭祀承継者一人の判断で墓じまいをしてしまっては他の親族とのトラブルを起こしかねません。
④ また、自分が死んだらお墓の管理ができなくなってしまうと考えても、それを親族に相談してみたら、それであれば他の親族が管理を引き継ぐと申し出る可能性もあります。
⑤ そのため、墓じまいを考えている場合、親族に対して墓じまいをしたい理由を説明し、納得してもらっておくことが望ましいでしょう。

3 改葬許可証
① 墓じまいのために墓地から遺骨を取り出す場合、改葬許可証が必要になります。
② 改葬とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいい、改葬するには改葬許可証が必要になります。
③ 遺骨を取出し、他の墓地や納骨堂に納める場合には、改葬許可証が必要です。また、送骨、合祀墓への合祀についても、改葬許可証が必要になります。
④ 手元供養や散骨については、改葬の定義に当てはまらないので、改葬許可証は不要です。ただし、自治体によっては、散骨を理由とした改葬許可証を発行したり、改葬場所未定として改葬許可証を発行するケースもあります。
⑤ 遺骨を取出し、手元供養、散骨をする場合は、その自治体に問合せた方がよいでしょう。なお、遺骨を取り出した時点では改葬許可証が不要であっても、遺骨を取出し、手元供養をした後で、やはり送骨や合祀墓にしようと思う可能性もあります。
⑥ その場合、埋葬証明書がないと次の手続きに困ることがありますので、遺骨を取り出す際には、その時点では必要がなくても、将来の改葬に備えて埋葬証明書をもらっておいた方がよいでしょう。

4 埋葬証明書と離壇料
① 改葬許可申請書には、原則として、墓地の管理者である霊園や寺院が発行する埋葬証明書を添付する必要があります。
② 寺院墓地の場合、墓じまいのために埋葬証明書の発行を依頼した際に、離壇料を請求されるケースもあります。
③ これまでお世話になったお寺だからと納得ができるのであれば、支払えばよいのですが、時に数百万円の離壇料が請求され、支払いを断ると埋葬証明書の発行を拒否されたというケースも耳にします。
④ このような場合、埋葬証明書がないから改葬ができないかというとそうではありません。
⑤ 墓地埋葬法施行規則2条2項1号は、これにより難い特別の事情の有る場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面と規定しています。
⑥ 墓地改葬許可に関する疑義について(昭和30年2月28日衛環22号)は、「改葬許可の申請にあたり、墓地若しくは納骨堂の管理者が埋葬若しくは納骨の事実の証明を拒むべきでないのであるが、もし拒んだような場合はお尋ねのようにこれにかわる立証の書面をもって取扱って差し支えない」とし、「極力当該管理者に証明書を出させるよう指導を行」うべきとしています。
⑦ 高額な離壇料の支払いを拒否した結果、埋葬証明書の発行を拒否された場合、自治体に相談し、自治体から寺院に対して埋葬証明書の発行を指導してもらいます。
⑧ それでも埋勝証明書が発行されない場合、墓碑の写真や離壇料の支払いを拒絶したところ埋葬証明書の発行を拒否され自治体からの指導にも応じない旨の報告書などで、埋葬の事実を証明していくことになります。

【孤独死をめぐるQ&A】Q51 家族信託について

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【Q51】高齢者の財産管理に家族信託という方法があると耳にしました。家族信託とはどのようなものでしょうか。

【A家族信託は、信託銀行や会社ではなく、家族や知人・友人に信託の受託者になってもらい、信託の目的に沿って信託した財産を管理、処分してもらう方法です。
遺言や成年後見に比べて自由度が高いため注目を浴びています。

【解説】

1 信託とは
① 「信託」とは、信託契約や遺言等の方法により「特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすること」をいいます(信託法2条1項)。
② 平成19年の信託法改正により、信託契約は自由度が高くなり、とても使いやすくなりました。信託契約であれば、契約の仕方によって内容を自由に決めることができ、遺言や成年後見制度と比べて自由度が高いことから、信託契約を高齢者の財産管理に使う方法が広まってきています。
③ 信託の引き受けを業とするには信託業免許(又は登録)が必要ですが、業としてするのではなく、家族や知人・友人のために1回受託するだけであれば、特に信託免許はいりません。
④ 信託銀行や信託会社に信託すると費用がかかってしまうため、親族や知人、友人と信託契約をする家族信託が活用されています。
⑤ 家族信託契約は公正証書で作成する必要はありません。もっとも、信託契約に基づき信託口の預金口座を設けたり、不動産の売却をしたりすることもあります。その際に、ただの私文書ですと信用力が弱く、金融機関や不動産業者から疑義を持たれる可能性もあります。そのため、家族信託契約は公正証書で作成しておくことをお勧めします。

2 家族信託の活用方法

1 成年後見制度の代用として
① 家族信託は成年後見の代わりに用いられることがあります。成年後見制度は裁判所が関与し報告義務が課せられます。任意後見制度であっても、裁判所から任意後見監督人が選任され、その行動が監督されることになります。親族間のことなので公的な目が入ることを嫌がるという方もいます。
② また、成年後見人は本人のために行動しなければならず、推定相続人の利益のため本人の財産を処分するということは原則として認められません。
③ よく問題視されるのが相続税対策です。相続税対策のために資産を売却したり、相続税評価が低い財産に組み替えたいという高齢者がいるとします。
④ 本人の判断能力がある間に行えば何の問題もないのですが、不動産には売り時、買い時がありますので、もうしばらく待ってから対策をしたいという場合もあります。しかし、その間に本人が認知症になってしまえば、もう本人は不動産売買契約を締結できません。
⑤ それでは成年後見人を選任すれば成年後見人が節税対策のために不動産を処分できるかというと、節税対策は推定相続人の利益にしかならず、本人にとってメリットがないので成年後見人は節税対策ができないと考えられています。
⑥ それにくらべて、民事信託契約(家族信託契約)であれば、信託の目的に相続発生後に推定相続人が承継できる資産を増やすこともうたっておけば、受託者は相続対策のための不動産売買契約が可能になります。

2 遺言の代用として
① 遺言は撤回が可能です。本人の明確な意思で撤回をするのであれば問題はないのですが、中には高齢になり判断能力が乏しくなったことに乗じて、遺言の書き換えをそそのかされ、つい遺言を書き直してしまうという可能性もあります。
② そのようなことを防ぎたい、今、決定したとおりに亡くなった後に財産を処分してほしく、将来的に遺言内容を変更したくないという場合、信託契約を用いて、委託者といえども自由に信託の変更ができないような内容にしておけば、事実上撤回できない遺言のような使い方もできます。

3 受益者連続型信託
① 例えば、財産は面倒を見てくれている兄弟にあげたいが、その兄弟が亡くなった場合、兄弟の子とは疎遠なので、他の人にあげたいという希望の場合、遺言でそれを実現するのは非常に困難です。
② 信託契約であれば、受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する指定ができますので、後継ぎを指定することができるのです。