【相続・遺言について】寄与分の認められる範囲

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、寄与分の認められる範囲について考えてみたいと思います。

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【Q】遺産分割の際に寄与分というものがあると聞きました。

①寄与分とは、どのようなものでしょうか?また、どのような場合に認められるのでしょうか?

②私の父は、長年にわたって寝たきりの状態でしたが、先日、亡くなりました。私は、病気の父の世話をしてきましたが、このような場合に、寄与分は認められるのでしょうか?

③私の亡き父は、自営業者でしたので、私は、父が亡くなる3年程前から父の仕事を手伝っていました。父から給料はもらっていたのですが、その場合でも寄与分は認められるのでしょうか?

 

【A】◆1.寄与分とは

寄与分とは、共同相続人の中に相続財産の維持または増加に特別の寄与(貢献)をした者がいる場合は、その寄与相当額(維持又は増加分)を法定相続分に上乗せすることで、共同相続人間の衡平を図る制度です。

なお、民法改正により、共同相続人以外の被相続人の親族についても、特別の寄与という制度が新たに創設されました。

一般的に寄与分が認められる類型として、家事従事型(例:被相続人の事業を無報酬またはそれに近い状態で従事するような場合)、金銭出資型(例:被相続人の借金を肩代わりして支払うような場合)、療養看護型(例:相続人が被相続人の療養看護をして医療費などの支出を免れるような場合)、その他扶養型、財産管理型などがあります。

ただしいずれの類型についても「特別の寄与」であることが必要です。特別の寄与であるかどうかは、①被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待できるような態様以上の貢献があったかどうか、②当該行為が無償で行われたかどうか、③当該行為が一定期間継続しているかどうか等の事情から判断されます。

 

◆2.療養看護型の場合

被相続人である父親の療養看護を行ったことによって寄与分が認められる可能性はありますが、前述の通り、それが「特別の寄与」と認められなければなりません。

療養看護型において、特別の寄与かどうかは、当該行為が親族が当然なすべき配慮の範囲(例:お見舞い、声掛け等)を超えていることが必要であり、老親の介護の場合、被相続人が要介護2以上の状態であることが一つの目安となります。

また、被相続人の療養看護を無償で行い、その期間も数日、数週間程度では足りず、数か月は必要と考えられます。

その結果、本来であれば被相続人の療養看護によって、被相続人がそれらの費用の支出を免れたのであれば、寄与分が認められる可能性はあります。

 

◆3.家事従事型の場合

被相続人である父親の仕事を手伝っていたとしても寄与分が認められる可能性は低いと思われます。このケースでもやはり当該行為が「特別の寄与」と認められる必要があります。

家事従事型において、特別の寄与かどうかは、当該行為が通常であれば第三者を雇用するであろう行為かどうか(簡単な帳簿付け、店番では特別な行為とまでは言えません。)3~4年以上は従事していること、そして、当該行為の対価が無償、あるいは、著しく低廉の給与であることが必要と考えられます。なお、給与が著しく低廉であっても、被相続人から生活費の負担を受けていたり、被相続人の持ち家に居住している等の場合は、実質的に労務の対価を得ているとして、寄与分が否定される場合もあります。

本件のケースでは、父親から給料をもらっていたということで、相続人が労務に対する相当の対価を得ていたということで「特別の寄与」は該当しないと判断される可能性が高いです。ただし、相続人が得ていた給料が労務に見合ったものかどうか、給料以外に実質的に被相続人から金銭的援助等があったのかどうかなど慎重に見極める必要があります。

【相続・遺言について】不動産の無償使用と特別受益

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、不動産の無償使用と特別受益について考えてみたいと思います。

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【Q】兄が父親の所有する建物に長年無償で居住していた場合、遺産分割に際してこの点は考慮されないのでしょうか?兄が所有する建物の底地が父親所有で、兄がこの土地を無償で使用させてもらった場合はどうでしょうか?この無償使用が、父親が営んでいた農業を兄が手伝うためのものだった場合はどうでしょうか?

【A】◆1.遺産分割における特別受益の調整

遺産分割は、遺産の分け方について共同相続人間の話し合いで全員が合意すれば、民法で定める相続分と異なった内容でも行うことはできます。したがって、亡きお父さんの遺産分割をどのようにするかの話し合いのなかで、お父さんの所有する土地や建物をお兄さんが無償で使っていたことを持ちだし、お兄さんも含めた共同相続人全員がそのことを考慮した遺産の分け方で、合意できれば、お父さんの遺産分割を行うことはできます。

もっとも、共同相続人間で遺産の分け方について話し合って合意ができなければ、最終的には裁判所の審判によって遺産の分け方は決められることになりますが、審判では民法に定める法定相続分や相続人の具体的な相続分を決める際に考慮する「特別受益」の有無などが問題となります。また、共同相続人間で遺産分割の話し合いをする際にも、法定相続分や特別受益の有無などを踏まえて話し合いをすることが多いです。

そこで、亡きお父さんの所有する土地あるいは建物を無償で使っていたお兄さんに特別受益があると言えるかが問題となります。特別受益の制度は、相続人間の公平を図るものですから、形式的には「贈与」とは言えなくても、相続人が被相続人から特別の財産的価値のある利益を得ていると評価できる場合には、特別受益を得ているとして遺産分割で考慮されます。

 

◆2.土地の無償使用の場合

まず、お兄さんが亡きお父さんの所有する土地に建物を建てて利用していた場合をみてみます。お兄さんは、建物が建っている土地(以下底地とします)をタダで使っており、そのことをお父さんが了承しておれば、お父さんとお兄さんとの間では建物所有のために底地を無償で利用すること(使用貸借)の合意があったとみることができます。

そして、建物所有目的の土地使用貸借権は、底地の更地価格の一定割合(1割から3割程度の範囲が多いとされています。割合は建物の作りや築年数その他の事情によって異なります)の財産的価値があります。

そうすると、今回の場合、お兄さんはお父さんから底地の使用貸借権を無償で設定してもらっていると言えますから、お兄さんはお父さんから財産的価値のある利益を得ているということができます。

ただ、具体的相続分を決める際の特別受益といえるかどうかは、特別受益制度が相続人間の公平のために、相続財産の前渡し的性格を持っているものを遺産分割の際に考慮しようとするものですので、形式的画一的に決めることは難しく、被相続人の資産の状況、贈与等された財産や利益の価格、それが被相続人の遺産に占める割合、利益を得ている相続人の負担、被相続人の生活状況、利益を得ている相続人の生活状況、被相続人が財産を贈与等した理由、他の相続人との比較など種々の事情を考慮して判断せざるを得ません。

したがって、お兄さんが亡きお父さんの所有する土地に建物を建てて利用していた場合、お兄さんはお父さんから底地の使用貸借権という財産的価値のある利益を得ているのですが、それが特別受益といえるかは、上記のような種々の事情も考慮して決めるということになります。

底地の無償使用が亡きお父さんが営んでいた農業を手伝うためのものだった場合についても、先に述べました事情や農業でのお兄さんの負担や農業で収入を得ていたかなどの事情も考慮して特別受益となるかを判断することになります。

なお、特別受益にあたるとしても、被相続人である亡きお父さんが持ち戻しの免除の意思表示をしていれば、特別受益として考慮することはできません。

 

◆3.建物の無償使用の場合

次にお兄さんが亡きお父さんが所有していた建物に長年無償で居住していた場合、お兄さんに特別受益があるといえるでしょうか?

この場合、お兄さんは建物居住の利益を得ています。お兄さんが、お父さん所有の建物に居住できないとなると、お兄さんは、例えば、居住用の建物を借りなければなりませんが、それをしないで住んでいるので、家賃相当額の財産的価値のある利益を得ていると考えることはできます。

しかし、特別受益といえるためには、被相続人の経済的負担で相続人が利益を得ている必要がありますが、建物の利用状況等からすると被相続人の経済的負担になっていない場合もあり、一概に、家賃相当額が特別受益になるとはいえません。また、相続人の一人と被相続人との間に建物を無償で利用すること(使用貸借)の合意があったとみることができる場合もありますが、建物の使用貸借権の経済的価値の算定は難しいという問題があります。

さらに、この問題をクリアーできたとしても、前に述べたとおり、特別受益にあたるかどうかは、種々の事情をもとに判断せざるをえません。

そしてご質問のような相続人の一人が被相続人所有の建物に居住していた場合と言っても様々なケースがありますので、前に述べた事情に加え、例えば、相続人が被相続人と同居していたか否か、同居していたとして建物の大きさや構造、同居するに至った経緯理由、相続人の負担の有無や内容、あるいは、同居していない場合でも、その建物が居住用か賃貸用か、相続人が居住するようになった経緯理由、相続人の負担の有無や内容など種々の事情を考慮して判断することになります。

建物の無償使用がお父さんが営んでいた農業を手伝うためのものだったという事情も特別受益があったかどうか判断する際の一つの事情と言えます。

ご質問のケースでは、お父さんの建物を無償で使用しているお兄さんに特別受益があるかどうか、あるとしてその価額はいくらかは、前に述べた事情を総合して考えざるを得ません。

また、お父さんが持ち戻しの免除の意思表示をしていれば、特別受益としては考慮されません。

相続・遺言・成年後見無料相談会のお知らせ

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

本日は無料相談会のお知らせをいたします。

相続、遺言、成年後見について、世田谷区の行政書士5名が無料相談会を開催いたします。私もメンバーの一人になっております。

会場:世田谷区【烏山区民会館 集会室】京王線千歳烏山駅徒歩1分

日時:令和2年1月18日(土)13:00~16:30

(最終受付:16:00)

予約番号 080-7025-8357(受付:行政書士ナカムラオフィス)

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【相続・遺言について】特別受益者

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今回は、【相続・遺言】に関して、特別受益者について考えてみたいと思います。

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【Q】①父親が死亡し、相続財産は2000万円、母親と兄が父親より先に死亡しており、相続人は私と兄の子の2名になっております。この兄の子は、父親の生前、マンション購入のため父親から1000万円の支援を受けていました。このような場合でも、法定相続分(2分の1)どおり、遺産分割しなければならないのでしょうか?

②上記と同じく兄が既に死亡していたのですが、父親が生前に兄に対してマンション購入のため1000万円の支援をしていた場合、私と兄の子とで遺産分割する場合では法定相続分(2分の1)どおり遺産分割しなければならないのでしょうか?

③兄がまだ生きており、相続人が私と兄の2名で、父親が兄の妻の個人事業に対して、500万円の援助をしていた場合はどうなるのでしょうか?

 

【A】◆1.代襲相続人の受益

お兄さんのお子さんが1000万円の支援を受けた時期にお兄さんが存命だったかどうかによって結論が異なります。

①お兄さんが存命のときに贈与された場合

特別受益は「相続人」のあいだの不公平を是正するための制度ですので、お兄さんが存命であればお兄さんのお子さんはお父さんの相続人に当たらないことになります。

したがって、原則として、特別受益には当たらず、法定相続分どおり遺産分割することになります。ただし、特別受益に当たるとする裁判例もあり、個別具体的な事情に鑑みて妥当な結論になるよう配慮されることがあります。

②お兄さんが亡くなった後に贈与された場合

お兄さんが亡くなった後に1000万円の贈与をお兄さんのお子さんが受けたのであれば特別受益を受けたことになりますから持ち戻すことになります。お金については現在の貨幣価値に換算して計算します。

 

◆2.被代襲者の受益

被代襲者に特別受益がある場合、代襲相続人に特別受益の持ち戻し義務ありとするのが通説です。そこで1000万円の贈与について現在の貨幣価値に換算して持ち戻し、そのうえで遺産分割をすることが原則です。

ただし事案に応じて具体的妥当性を図るため、全部又は一部を持ち戻しさせないとした裁判例もあります。

 

◆3.相続人の配偶者の受益

特別受益の持ち戻しは相続人間の不公平是正のためのものなので、援助を受けた者が相続人でない場合は、適用がないのが原則です。ただ、個別的実質的にみて妻の個人事業とはいっても名目だけで実質は兄の事業であったというような特別事情があれば、結論は別になります。

【相続・遺言について】特別受益がある場合の相続分

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、特別受益がある場合の相続分について考えてみたいと思います。

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【Q】①父親が死亡し、相続財産は3000万円、相続人は私を含めて3人なのですが、生前、妹が父親からマンションの購入のため600万円の支援を受けています。このような場合でも、法定相続分(3分の1)どおり、遺産分割しなければならないのでしょうか?

②この度、20年以上連れ添った夫が亡くなりました。夫の財産は、自宅以外の不動産3000万円と預貯金1000万円です。私は、夫の生前、夫名義であった自宅土地建物の贈与を受けています。この場合どのように遺産分割をすることになるのでしょうか?

 

【A】◆1.相続開始後、相続財産の分配は、相続人間の遺産分割という手続きにより行うことになります。そして、遺産分割の手続きは、相続人間の合意によれば、その合意した内容になりますが、法律によって相続分の基準として法定相続分が定められています。

◆2.設問①では、生前妹が父親からマンション購入のため600万円の支援を受けています。

このような場合に、遺産分割において、この600万円の支援を考慮しないとすると、一方の相続人だけが財産を結果的に多くもらうことになって、相続人間の衡平を害する結果となります。

そこで民法は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、そのことも考慮して、相続財産の分配を決めると定めています。

これがいわゆる特別受益と言われるものです。例えば、相続人の内の一人に、事業資金を支出した場合、独立して生活を営む際の不動産を贈与した場合などがあります。

また、設問①のように、特別受益に当たる生前贈与等の財産について、みなし相続財産として相続財産に戻すことを持ち戻しといいます。

被相続人による持ち戻しの免除に意思表示があると、被相続人が生前贈与等した財産について、特別受益の規定が適用されなくなります。状況により黙示の持ち戻しの免除も認められる場合があります。

 

◆3.設問①では、生前妹が父親からマンション購入のため600万円の支援を受けていることから、妹は特別受益を得ておりますので、具体的相続分の計算において、この600万円の支援を考慮することになります。

すなわち、相続財産は3000万円ですので、これに600万円の財産を加えた、3600万円がみなし相続財産となります。

そして、あなたの法定相続分は3分の1ですので、このみなし相続財産3600万円に法定相続分をかけた、1200万円があなたの具体的相続分になります。ちなみに妹は1200万円から生前贈与を受けた600万円を控除した、600万円が具体的相続分になります。

よって、設問①については、あなたの具体的相続分は1200万円、もうひとりの相続人も1200万円、妹の具体的相続分は600万円となります。

 

◆4.婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該相続人は、その遺贈又は贈与について持ち戻しの免除の意思表示をしたものと推定されます。

これは今回の相続法改正によって、新しく設けられた規定で、このような場合の贈与や遺贈は、配偶者の長年にわたる貢献に報いるとともに、老後の生活保障の趣旨で行われることが多いため、持ち戻しの免除の意思表示があると推定することによって、他方配偶者を保護するために設けられた規定です。

◆5.設問②においては、私は、生前夫名義であった自宅土地建物の贈与を受けていますが、私と夫は、20年以上連れ添った夫婦ですので、本規定によって、持ち戻しの免除の意思表示があったと推定されます。

よって私は、生前贈与を受けたこの自宅土地建物については、特別受益として考慮することなく、自宅以外の不動産3000万円と預貯金1000万円を相続財産として、遺産分割することになります。

【相続・遺言について】遺産の評価方法

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺産の評価方法について考えてみたいと思います。

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【Q】亡父の遺産として、次のようなものがあります。遺産分割する際に、それぞれどのように評価すればよいのでしょうか?

①預貯金

②株式

③ゴルフ会員権

④自動車

⑤書画骨董品

 

【A】◆1.預貯金の評価について

実務上は、遺産分割の時点で遺産を評価することが多くみられます。しかし基本、預貯金は相続発生時(被相続人の死亡時)の残高で、評価します。相続発生時の残高は、通帳や残高証明書で明らかにするのが一般的です。

なお、定期預金や定額郵便貯金については、中途解約をした場合の払戻予定額を金融機関に照会し、回答額から利子配当分離課税(20%)相当分を差し引いたものを分割対象額とする方法がとられることが多くあります。

 

◆2.株式の評価について

①上場株式について

実務上は、上場株式の評価について、遺産分割時に最も近い時点(例えば、審判日の直前の日等)での終値によって算定することとが多いです。

相続税法上の財産評価は以下4つのうち最も価額が低いものになっております。

1)課税時期(被相続人の死亡日)の終値

2)課税時期の属する月の毎日の終値の月平均

3)課税時期の属する月の前月の毎日の終値の月平均

4)課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の月平均

上場株は証券会社から残高証明書をもらいましょう。

 

②非上場株式について

非上場株式は、上場株式とは異なり、市場で客観的な価格が付けられていません。そのため、公認会計士等の専門家による鑑定によって評価することもありますが、鑑定費用が高額になるため、鑑定が行われることは、実際には多くはありません。

鑑定によらずに非上場株式を評価する方法には、次のものがあげられます。

ア)相続税の申告がされている場合、相続税申告書に記載された非上場株式の評価額を参考にして評価することができます。その際、過去3年分程度の損益計算書、貸借対照表及び確定申告書を検討し、当事者間で評価についての合意を得る、または、日経平均株価の推移を利用して修正を行うといった修正が行われることが多くあります。

イ)会社法上の株式買取請求の際に用いられる株価算定方式である、次の方式のいずれかによって評価することができます。

①純資産価額方式(会社の総資産から負債等を控除した純資産価額を発行済株式総数で割った額をもって株価とするもの)

②収益還元方式(将来の予想年間税引後利益を資本還元率で割ったものを発行済株式総数で割った額をもって株価とするもの)

③配当還元方式(会社の配当金額を基準として、これを発行済株式総数で割った額をもって株価とするもの)

④類似業種比準方式(業種、規模等が類似する公開会社または類似業種の公開会社の平均と比較して、株価を算定するもの)

⑤併用方式(①から④の方式を組み合わせて株価を算定するもの)

ウ税務上の評価基準である財産評価基本通達によれば、次のように評価することができます。

①上場会社に匹敵する大企業の株式は、上場会社の株式評価との均衡を図ることが合理的であるので、原則として類似業種比準方式による。

②個人企業と変わりのない小規模会社の株式は、個人企業者の財産評価との均衡を図ることが合理的であるので、原則として純資産評価方式による。

③大会社と小会社の中間にある中会社の株式については、大会社と小会社の評価方式の併用方式による。

以上のとおり、非上場株式の評価方法は様々ですが、一般的には、理解及び計算のしやすさから、純資産価額方式によることが多いようです。

 

◆3.ゴルフ会員権について

ゴルフ会員権については、ゴルフ会員権の取扱業者が発表している気配値を基に評価されます。

全てのゴルフ会員権に妥当するわけではありませんが、取引相場があるゴルフ会員権の場合、相場の7割で評価されることが多いようです。

 

◆4.自動車について

自動車については、いわゆるレッドブック(オートガイド自動車価格月報)によって評価することができるほか、遺産分割調停または審判が家庭裁判所に係属している場合には、財団法人日本自動車協会に対して調査嘱託をして評価額を得ることもできます。

 

◆5.書画骨董品

書画骨董品を評価する前提として、当該書画骨董品の真贋が問題となることがありますので、予め美術商に真贋を判断してもらうことが適当な場合があります。

そして書画骨董品が真作である場合、その価格は個人の主観的な嗜好によって大きく左右されますので、購入価格を基にして評価額を試算し、これを基に取得希望者に取得価格を提示してもらい、他の相続人にそれ以上の価格での取得希望がなければ、提示額によって評価額の合意を成立させる、という手法が望ましいということができます。

なお、美術年鑑に掲載されている評価額は、当該書画骨董品の品質を考慮しておらず、高額な表示がされていることが多いので、注意が必要です。

【相続・遺言について】不動産評価と基準時

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲について考えてみたいと思います。

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【Q】父の遺産として不動産を相続しました。相続開始時から遺産分割までに父から相続した不動産価格が大きく下落しました。不動産の評価方法について教えてください。

 

【A】◆1.不動産価格の基準時について

遺産である不動産価格の評価をいつの時点を基準として行うかについて、実際の事例の多くは、現実に遺産を分割する時点の評価に従って遺産を分割します。

但し、特別受益や寄与分など各相続人の相続分が問題となる場合には、各相続人の具体的相続分を算定する必要があるため、相続が開始した時点での不動産の価格を評価して、各相続人の相続分を算定します。その後、具体的相続分に従って、どの遺産を誰が相続するか決める際には、遺産を分割する時点の不動産価格の評価を基に、遺産の分割が行われます。

したがって、ご質問の事例で特別受益や寄与分など各相続人の相続分が問題となるかならないかわかりませんが、最終的には、遺産を分割する時点の評価に従って遺産を分割することになりますので、不動産の価値が大きく下落している価値での評価となります。

なお、当事者間で合意ができれば、遺産分割時以外の時点を基準時とすることができます。

◆2.不動産の価格の評価方法について

①話し合いの段階

ア)当事者間での話し合いの段階では、遺産である不動産の価格の評価には、(A)固定資産評価額(B)相続税評価額(C)公示地価(D)基準地標準価格等の資料が参考になります。しかし、これらについては次のような問題点も指摘されています。

(A)固定資産評価額(土地家屋評価台帳などに登録された基準年度における価格又は比準価格)は、各不動産について価格を求めることができるという利点があり調停でもよく参考とされますが、評価替え時期との関係で実勢価格との格差が出やすいと指摘されています。都市部では、実勢価格より固定資産評価額の方が低いと言われていますが、不動産取引が活発ではない中山間地域では、実勢価格より固定資産評価額の方が高い場合もあるようです。

(B)相続税評価額(相続税賦課の基礎となる財産評価基本通達により対象土地の地目ごとに路線価方式、倍率方式、比準方式のいずれかによるべきことが指定されています。)も調停でよく参考にされますが、路線価をもとに対象となる不動産の個別的要因を考慮して評価を算出する必要があり、路線価のある道路に面していない土地や形状の悪い土地では算出が困難な場合もあります。

(C)公示価格及び(D)基準地標準価格は、時価に近いとされますが、対象となる標準地・基準地が少なくこれらに基づいて対象土地の評価を算出する際の調整が困難です。

 

イ)その他には、遺産である不動産の近隣の不動産業者による不動産査定書を参考にすることも多いです。

また、当事者が自ら不動産鑑定を依頼して、遺産である不動産の鑑定をして不動産の価格を算定することもありますが、依頼者に有利な評価になってしまうという指摘もあります。

調停においては、家庭裁判所の調査官により、遺産である不動産の価格の調査報告がされることもありますが、一般的には、家庭裁判所の調査官は、不動産評価に関する専門家ではありませんので、その調査について過大な期待はできず、当事者間に評価について争いが多い場合には有効な資料になりにくいとされています。

また、調停の段階では、不動産鑑定士の資格を有する方を家事調停委員に指名して遺産の評価についての意見を聴取することもできます。この方法は、専門家の意見ですの信頼性において優れ、かつ、格別の費用も要しないのが利点ですが、不動産鑑定士の資格を有する家事調停委員を確保することが困難であるという難点もあります。

なお、調停手続の段階でも、下記に述べる鑑定が行われることがあります。鑑定は多額の費用を要することから、調停で鑑定する場合には、鑑定を無駄にしないために、鑑定に先立ち、鑑定結果に従うとの当事者全員の合意を調書に記載するのがよいとされています。ただし、遺産である不動産の価格が低い場合や不動産数が多い場合などには、高額な費用を負担しなければならない鑑定によるのは合理的ではないので、上記の他の方法で合意することが多いです。

 

②審判手続の段階

当事者間の話し合い(調停も含む)によっては、遺産である不動産の価格が合意に至らなかった場合には、審判手続によって遺産である不動産の価格が決定されることになります。審判手続においては、遺産である不動産の価格について鑑定が行われることが多いです。

鑑定とは、家庭裁判所から選任された鑑定人がその専門的知識により鑑定を行い、裁判所に鑑定結果を報告するもので、最も客観性に優れ、当事者も信頼することのできるものです。鑑定費用については、鑑定を希望する者に全額予納させたうえで、審判において、各相続人に相続分に応じた負担を命ずることが多いです。なお、当事者に資力がない場合には、当事者全員の合意で相続財産から鑑定費用を拠出することもできます。

鑑定人のする鑑定においては、(A)取引事例比較法(B)収益還元法(C)原価法の3つの各評価方法に基づく価格を算定した上で、現実の不動産の状況や条件に照らした総合的考察により、最終的な評価額を決定する手法が採られていることが多いです。

なお、(A)取引事例比較法とは、同種の不動産が市場において取引されている価格との比較で価格を算定する方法を言い、(B)収益還元法とは、当該不動産を利用することによりどの程度の収益を得られるかに着目して、その収益を期待利回りで除して資本還元することにより価格を算定する方法を言い、(C)原価法とは、当該不動産がどの程度の費用で造成・建築されるかという原価に着目して価格を算定する方法を言います。

したがって、ご質問の事例では、上記①で説明した評価方法による不動産の価格で合意できれば、それが遺産である不動産の価格になります。しかし当事者間の話し合いによって合意できなければ、上記②で述べた審判手続で遺産である不動産の価格が決められることになり、その前提として鑑定人による鑑定が行われることが多いです。

 

◆3.土地賃借権の価格の評価方法について

不動産の所有権ではなく、土地賃借権(借地権)が遺産である場合も多いので、触れさせていただきます。土地賃借権は更地価格に対して借地権割合と言われる一定の割合を乗じて算出されることが多いです。借地権割合には地域差がありますが(およそ更地価格の30%~90%)、これは税務署が相続税を算出するための数値で、路線価図などに記載されています。都市部の方が中山間地域に比べて借地権割合が高い傾向にあります。

相続・遺言・成年後見無料相談会のお知らせ

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本日は無料相談会のお知らせをいたします。

相続、遺言、成年後見について、世田谷区の行政書士5名が無料相談会を開催いたします。私もメンバーの一人になっております。

会場:世田谷区【烏山区民会館 集会室】京王線千歳烏山駅徒歩1分

日時:令和1年11月24日(日)13:00~16:30

(最終受付:16:00)

予約番号 080-7025-8357(受付:行政書士ナカムラオフィス)

ご予約の方優先ですが、飛び込み参加も歓迎です。

皆様のお越しをお待ちしております。

【相続・遺言について】遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】父が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人のみです。父の遺産は、3,000万円の不動産と1,000万円の預金です。兄は父が亡くなった後、自分の不動産の持ち分2分の1を第三者に売却してしまいました。遺産分割に当たり、兄が売却した不動産の持分はどのように扱われるのでしょうか?

 

【A】◆遺産分割とは、遺産分割時に存在している相続財産を対象として、相続開始時を基準にして算定された具体的相続分(率)を参考に個別財産を公平に分割する手続きをいいます。したがって、遺産分割の対象は、遺産分割時の相続財産であって、相続開始時の相続財産ではありません。

他方、相続人は、相続開始の時点から被相続人に属した一切の権利義務を承継し、複数の相続人(共同相続人)は、各自の相続分に応じて相続財産を共有するものとされていますので、共同相続人が、遺産分割前に、自己の有する共有持分を処分すること自体は禁じられていません。

そうすると、相続開始後、遺産分割前に遺産に属する財産が共同相続人によって処分された場合、その財産(処分財産)を遺産分割時に考慮しないとすると、共同相続人間に不公平な事態が生じてしまいます。ところが、これまで、遺産分割において、その処分財産をどのように処理すべきかにつき、明文規定や関連裁判例がありませんでした。

そこで平成30年の法改正により、共同相続人によって相続開始後に処分された財産についても、下記①ないし③の要件を充たせば処分財産が遺産分割時に遺産として存在しているものとみなすという条文を新設し、遺産分割の枠組みのもとで共同相続人間の公平を実現する制度が採用されました。なお、共同相続人ではなく第三者によって処分がされた場合についても、共同相続人全員の合意があれば遺産分割時に遺産として存在しているものとみなされるという条文が新設されています。

まず、①処分財産が相続開始時に被相続人の遺産に属していたことが必要です。例えば、被相続人名義の土地が相続人の1人や他人の所有物であった場合に、本制度の適用はありません。

次に、②処分財産を共同相続人の1人または数人が処分したこと。

さらに、③処分財産を処分した共同相続人以外の共同相続人全員が、当該処分財産を遺産分割の対象に含めることに同意していることが必要です。

本件について検討してみます。仮に、新設規定を考慮せずに計算すると、お兄さんが売却した不動産の持分は遺産分割の対象となりませんから、あなたの具体的相続分は((3,000万円-1,500万円+1,000万円)×1/2=1,250万円となります。ところが新設規定を考慮すると、お兄さんが売却した不動産の持分相当額も遺産分割の時に遺産として存在しているものとみなされますから、あなたの具体的相続分は、(3,000万円+1,000万円)×1/2=2,000万円となることになります。

以上のように、お兄さんが売却した不動産の持分は、平成30年の法改正によって、あなたの同意の意思表示があれば、遺産分割において、遺産として存在するものとみなされるようになりました。

【相続・遺言について】相続財産⑤債務の場合

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産⑤債務の場合について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】◆父が亡くなり、相続人は兄と私の兄弟2人だけです。

①父は、友人Aさんと共同して事業を営んでおり、営業資金のため、銀行からAさんと連帯して1000万円のお金を借りていました。今後は、兄が父の跡を継ぎ、兄とAさんの二人で事業を営んでいくことになったので、兄とAさんは二人で借入金の責任を持つと言ってます。私は銀行から借入金の請求をされることはないのでしょうか?また、仮に父が兄に全財産を相続させるとの遺言を作っていた場合にはどうなるのでしょうか?

②父は、父の弟が会社に就職する際、頼まれて身元保証人になっていました。この身元保証債務についても兄と私が相続するのでしょうか?

 

【A】◆何が相続の対象になるかについて、民法が定める原則は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」というものです。したがって、所有権をはじめとする物権のほか、債権、債務、無体財産権、その他明確な権利義務といえないものでも、財産法上の法的地位といえるものであれば、全て包括的に相続の対象になります。これを包括承継といいます。ここで問題とされているものは、債務がどのように相続されるかという点にありますので、ご質問の連帯債務と保証債務に分けてご説明します。

 

1.連帯債務

まず、連帯債務とは、数人の債務者が同一の給付について、各自が独立して全部の給付をなすべき債務を負担し、そのうちの一人がこれを履行すれば、他のすべての債務者の債務も消滅するというものです。

連帯債務では、このように各債務者が全部の給付義務を負いますが、債務者相互間では負担部分が定まっており、債務者の一人が自己の財産をもって共同の免責を得たときは、他の債務者に対して、その負担部分に応じて求償できます。

連帯債務の相続について、判例は、共同相続人が法定相続分によって被相続人の債務を分割承継し、各自がその承継した範囲内において、本来の債務者とともに連帯債務者になるとしています。これによれば、共同相続人は、各自の法定相続分の割合でしか債務を負担せず、かつ、各自その範囲内で本来の債務者と連帯関係を生じることになります。

次に、遺言で相続分の指定がある場合について、民法第902条の2は「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。」と規定しています。債権者が知らない間に、債務者である被相続人が、勝手に債務のあり方を左右するのは妥当ではないというのが法の趣旨です。ですので、債権者は、遺言で指定された相続分を無視して、法定相続分に応じて、各相続人に対し、お金を支払えという主張をすることが可能となります。

ご質問のケースに即してご説明しますと、あなたとお兄様は、各500万円ずつお父さまの債務を承継し、各自その範囲内で本来の債務者であるAさんとともに連帯債務を負うことになります。

ですので、お兄様とAさんが、お二人で借入金の責任を持つと言われていても、また、遺言で相続分の指定があり、債権者がその内容を承認しない限り、法的には、あなたも500万円の範囲内で連帯債務を負うことになります。銀行から借入金の請求をされることはあり得ますので、銀行ともよく話し合っておくことが必要です。

 

2.身元保証債務

次に、保証債務の相続についてご説明します。保証債務も、原則として相続人が承継することになるのは金銭債務や連帯債務と同様です。しかしながら、身元保証といった継続的保証債務については、個人的信頼関係が基礎となっているため、保証人が死亡した以後の債務について相続性があるかどうか問題となります。

身元保証契約とは、身元保証人が、被用者の行為により使用者が受けた損害を賠償することを約する契約を言います。身元保証に関する法律は、①保証契約の存続期間を5年に制限し、②身元保証人に広範な契約解除権を認め、③裁判所の裁量により身元保証人の責任の範囲を定めることができるとしています。

身元保証の相続性については、身元保証契約は、これによって生じる債務が相続人にとって予測のできない責任を生じる可能性があることから、相続性がないとするのが判例です。

ですので、ご質問のケースに即してご説明しますと、お父様の身元保証債務について、あなたやお兄様が相続することはありません。相続が始まった後に、お父様の弟様が不祥事を起こして勤務先に損害を与えても、あなたやお兄様は責任を負うことはありません。

もっとも、身元保証人の生前(相続時)にその保証債務が既に具体的に発生している場合には、通常の損害賠償債務と同様に、相続人に承継されることになります。