【相続・遺言について】特別受益がある場合の相続分

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、特別受益がある場合の相続分について考えてみたいと思います。

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【Q】①父親が死亡し、相続財産は3000万円、相続人は私を含めて3人なのですが、生前、妹が父親からマンションの購入のため600万円の支援を受けています。このような場合でも、法定相続分(3分の1)どおり、遺産分割しなければならないのでしょうか?

②この度、20年以上連れ添った夫が亡くなりました。夫の財産は、自宅以外の不動産3000万円と預貯金1000万円です。私は、夫の生前、夫名義であった自宅土地建物の贈与を受けています。この場合どのように遺産分割をすることになるのでしょうか?

 

【A】◆1.相続開始後、相続財産の分配は、相続人間の遺産分割という手続きにより行うことになります。そして、遺産分割の手続きは、相続人間の合意によれば、その合意した内容になりますが、法律によって相続分の基準として法定相続分が定められています。

◆2.設問①では、生前妹が父親からマンション購入のため600万円の支援を受けています。

このような場合に、遺産分割において、この600万円の支援を考慮しないとすると、一方の相続人だけが財産を結果的に多くもらうことになって、相続人間の衡平を害する結果となります。

そこで民法は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、そのことも考慮して、相続財産の分配を決めると定めています。

これがいわゆる特別受益と言われるものです。例えば、相続人の内の一人に、事業資金を支出した場合、独立して生活を営む際の不動産を贈与した場合などがあります。

また、設問①のように、特別受益に当たる生前贈与等の財産について、みなし相続財産として相続財産に戻すことを持ち戻しといいます。

被相続人による持ち戻しの免除に意思表示があると、被相続人が生前贈与等した財産について、特別受益の規定が適用されなくなります。状況により黙示の持ち戻しの免除も認められる場合があります。

 

◆3.設問①では、生前妹が父親からマンション購入のため600万円の支援を受けていることから、妹は特別受益を得ておりますので、具体的相続分の計算において、この600万円の支援を考慮することになります。

すなわち、相続財産は3000万円ですので、これに600万円の財産を加えた、3600万円がみなし相続財産となります。

そして、あなたの法定相続分は3分の1ですので、このみなし相続財産3600万円に法定相続分をかけた、1200万円があなたの具体的相続分になります。ちなみに妹は1200万円から生前贈与を受けた600万円を控除した、600万円が具体的相続分になります。

よって、設問①については、あなたの具体的相続分は1200万円、もうひとりの相続人も1200万円、妹の具体的相続分は600万円となります。

 

◆4.婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該相続人は、その遺贈又は贈与について持ち戻しの免除の意思表示をしたものと推定されます。

これは今回の相続法改正によって、新しく設けられた規定で、このような場合の贈与や遺贈は、配偶者の長年にわたる貢献に報いるとともに、老後の生活保障の趣旨で行われることが多いため、持ち戻しの免除の意思表示があると推定することによって、他方配偶者を保護するために設けられた規定です。

◆5.設問②においては、私は、生前夫名義であった自宅土地建物の贈与を受けていますが、私と夫は、20年以上連れ添った夫婦ですので、本規定によって、持ち戻しの免除の意思表示があったと推定されます。

よって私は、生前贈与を受けたこの自宅土地建物については、特別受益として考慮することなく、自宅以外の不動産3000万円と預貯金1000万円を相続財産として、遺産分割することになります。

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