世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【孤独死をめぐるQ&A】Q45 エンディングノートを書く際の注意点についての記事です。
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【Q45】一人暮らしの高齢者はエンディングノートを書くとよいと聞きました。
どのようなエンディングノートを選べばよいのでしょうか。また書く時の注意点はありますでしょうか。
【A】市販のエンディングノートの中から簡単に書けそうなものを選んで書いてみるということで良いかと思います。
書く際は、最初からすべてを埋めようとせず、書ける部分から書いていくとよいでしょう。ただ、解説に紹介した項目については、できるだけ書いておいてもらえると、残された人が迷うことが少なく助かります。
エンディングノートには法的拘束力がないので、財産の分け方など法的拘束力を持たせたい事項については、遺言を作成して下さい。
【解説】
1 エンディングノートとは
① エンディングノートとは、特に決まった定義があるわけではないですが、大辞林によれば、「自分の終末期か死後について、その方針などを書き留めておくノート」とされます。その歴史は平成15年頃から使われ始めたようです。
② 平成23年に「エンディングノート」というタイトルの映画が公開されたことや、平成24年に「終活」という言葉が新語・流行語大賞のトップテンに選出されたことなどから、同年頃から急速に存在が知られ、世間に広まりました。
2 エンディングノートにはどのようなことを書けばよいか
① エンディングノートは、様々な事業主体が発行しており、発行主体により記載内容は少しずつ異なっています。
② 人生を振り返って見つめ直すような内容も多く、頭から書いていくと結構悩んでしまって、エンディングノートを書こうと思って購入したが、なかなか筆が進まないという声も多く聞きます。
③ エンディングノートは、もともとは、家族が困らないようにするために書いておくものです。意思能力がなくなってしまったり、亡くなってしまうと、残された家族や友人は、どのようなことを希望していたかを聞くことができません。
④ そうなると、本当はどのように考えていたのだろうと悩んだり、必要な情報がどこにあるか探したりと苦労をかけることがあります。
⑤ そのため、介護が必要になった場合にどのような施設を希望するのか、延命治療はするのかしないのか、どのような葬儀を希望するのか、葬儀には誰を呼んでほしいか、お墓はどうしたいか、どのような遺産があるかなどをあらかじめ分かるようにしておき、存命中や死後の負担をできるだけ減らすということがエンディングノートのそもそもの趣旨です。
⑥ その趣旨からすれば、エンディングノートに色々な項目があったとしても、介護や終末期治療、葬儀、墓、遺産などについて優先的に記載した方がよいかと思います。
⑦ また、全てのエンディングノートに項目があるか分かりませんが、ペットや遺品、デジタルデバイスやSNSなどについても記載しておくことが望ましいと考えます。
Ⅰ 看護・介護・告知・終末医療について
① 告知、延命治療の方針、臓器提供の希望など終末期における介護、治療の方針について記載します。
② また介護について、誰に又はどのような業者に依頼したいか、介護方針はどのようなものを希望するか、アレルギーの有無などを記載します。
③ これらの項目は、介護が必要になった時点ですでに希望を第三者に伝えることができない状態になっていることがあるため、希望をまとめておいた方が、周りの人が助かります。
Ⅱ 葬儀のこと
① 葬儀について、どのような葬儀を希望しているのかを予算感とともに書いておくと、残された人たちが迷わずに済みます。
② また、一人暮らしの場合、交友関係が分からないことが多いため、亡くなったことを誰に伝えて欲しいかを書いておくとよいでしょう。
③ 誰にも伝えなくてよいという場合も、その旨書いておくと周りの人は迷わずに済みます。
④ 葬儀の生前予約や生前相談をしている場合、その旨も書いておいてください。残された人が生前予約を知らないで他の葬儀社に依頼してしまうこともあり得ます。
Ⅲ お墓のこと
① お墓の有無、お墓に関する事前準備の有無、事前に準備をしていない場合、墓地、納骨堂、合祀墓、散骨などどのような遺骨の供養方法を希望するのか、予算感とともに書いておくとよいでしょう。
Ⅳ 財産
① 相続財産の調査はとても難しいのが現状です。一生懸命調査はしますが、正直に申し上げて全部見つけられているかどうかわかりません。
② 相続財産については、リスト化してもらえると漏れがなくなり、スピーディーに遺産調査ができます。特に、ネット上の預金口座や証券口座については、把握するのが困難なので、存在することを記しておくとよいでしょう。
③ 不動産については、自宅不動産は把握しやすいですが、それ以外の場所にある不動産は存在を知らないと把握しにくくなります。特に、先の相続手続が行なわれず、共有状態の不動産や私道持分などは相続手続が漏れやすいので、記載しておくとよいでしょう。
④ 借金も相続の対象になります。借金があることを知らずに相続してしまうと、相続人は自身の財産からその借金を返済する必要が生じます。
⑤ 金融機関や消費者金融、カード会社の債務については、信用情報を調査すれば存在が分かりますが、連帯保証については、調査が困難です。
⑥ 覚えている限り連帯保証をしている債務についても記載して下さい。漏れやすいのは身元保証や賃貸借契約の保証人ですので、誰かの連帯保証人になっていないか思い出して下さい。
3 エンディングノートには拘束力がない
① 勘違いしてはならないのは、エンディングノートには法的拘束力は一切ないということです。
② 例えば、父親が亡くなり、エンディングノートに自宅は長男が相続すると書いてあったとしましょう。当然、長男は、父親の希望通りに自宅は自分が相続したいと主張してくるでしょう。
③ しかし、遺産がそれしかなかった場合、次男はそれでは納得できないかもしれません。次男がきちんと平等に分けるべきだと主張してくれば、エンディングノートに書いてあっても、何の法的な拘束力はないので、「長男に自宅を相続させる」ということは実現できません。
④ 長男としては、父親の意思を次男のわがままでかなえることができなかったと次男に対する悪感情が生じますし、次男としては、自分は父親から愛されていなかったと悩んでしまうかもしれません。
⑤ エンディングノートに相続についての希望を書いておいたことで、かえって兄弟仲を裂いてしまい、相続紛争を助長するだけになることもあります。
⑥ エンディングノートは、あくまで残された者の負担を軽減するためのものです。自分の希望をかなえて欲しい、相続トラブルを防ぎたいというのであれば、エンディングノートではなく、遺言を書いておく必要があります。