【改正民法債権編】債務者の処分権限

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、債務者の処分権限について考えてみたいと思います。

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債務者の処分権限

従来の判例のルールとは異なる定めを規定

 

◆債務者の処分権限
債権者が債権者代位権を行使した場合、債務者は自己の権利を行使することはできるのでしょうか。

旧法では、このような債務者の処分権限についての明文の定めがなく、解釈に委ねられていました。
債務者の財産管理の自由と、債務者の財産維持に利害関係を有する債権者の利益調整という見地から、債務者の処分権限をどのように考えるべきかが議論されていました。
債務者の自由を重視すれば、代位権行使とはまったく別に債務者が第三債務者に対して弁済を求める等の権利行使を認めるべきということになります。

一方で、債権者の利益という点を重視すれば、代位権行使後に債務者による権利行使を無制限に認めた場合、債権者による代位権行使が無駄になってしまうため、債務者の権利行使には一定の制限を設けるべきということになります。

 

◆旧法における判例の考え方
代位権行使後の債務者による債権処分についての判例は、債権者が債務者に代位の通知をするか、または債務者が債権者の代位を知ったときは、債務者は権利行使をすることができないとしています。

 

◆新法による判例ルールの変更
新法は、債権者が債権者代位訴訟をを提起したときは、債権者は遅滞なく、債務者に訴訟告知をしなければならないものと定めました(新法423条の6)。
この訴訟告知と旧法の判例の考え方からすると、新法の下では、債務者に対して訴訟告知がなされる結果として、少なくとも債権者代位訴訟が提起された場合には、債務者は代位の対象となる債権について処分権限を失うと考えることになりそうです。

しかしながら、新法は、債権者代位権の行使後も債務者は代位の対象となる債権について処分権限を失わず、債権者による代位権行使とは別に取立て等をすることができる旨を明文で定めました(新法423条の5)。
これは、債務者に代位が通知されたか、債務者が代位権行使を知った後は、債権の処分ができないとする従来の判例の扱いとは異なる定めということになります。

債権者代位権は、債務者が自ら権利行使しない場合に限って債務者の財産への干渉が認められる制度であり、本来債務者は自由に自己の財産を管理できるはずです。また、債権者により債権者代位権が行使されたことを契機として、債務者が権利行使するということは、債権者代位権制度の目的が達せられたともいうことができます。このような考え方の下、新法は従来の判例の解釈と異なる定めを規定しました。
さらに、同じ条文において、第三債務者も、債権者代位権が行使されている中で、債務者に対して債務を弁済できることも明記されました。

 

◆これまでと異なる対応の必要性
旧法の判例の下では、債権者代位権を行使した債権者は、債務者に対して行使の事実を通知すれば、債務者による権利行使を制限でき、債権者を差し置いて債務者が第三債務者から債権を取立てるような事態を防ぐことができました。
しかしながら、新法の下では、たとえ債権者が債務者に通知したとしても、債務者が第三債務者から取立てることや第三債務者が債務者に対して弁済することを防げません。

そのため、債権者代位権を行使した債権者としては、このような債務者による取立てや第三債務者による債務者への弁済を防ぐために、債権者代位権の行使と併せて、債務者の第三債務者に対する債権の仮差押えも考える必要が生じます。
これまでになかった対応であるため、実際に債権者代位権の行使を考える際には注意が必要です。

【改正民法債権編】債務者への訴訟告知

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、債務者への訴訟告知について考えてみたいと思います。

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債務者への訴訟告知

訴訟提起を債務者に告知する債権者の義務を追加

 

◆債権者代位訴訟の効果
債権者が、第三債務者に債務者の権利を代位行使して弁済を求めたにもかかわらず、第三債務者が弁済をしないような場合、債権者は第三債務者を被告として訴訟提起することになります。
このような訴訟を「債権者代位訴訟」と言います。

債権者代位訴訟において、債務者の第三債務者に対する債権が存在しないと判断されて債権者が敗訴した場合、この敗訴の効力が債務者に及ぶのかについて、旧法下で議論されました。

判例は、債権者代位訴訟の結果が勝訴であっても敗訴であっても、その判決の効力は債務者に及ぶとしています。
仮に、債務者に判決の効力が及ばないとすると、第三債務者は債権者代位訴訟において債権者に勝訴しても、その後、債務者に訴訟提起されれば改めて応訴しなければならず、第三債務者にとって酷な結論になってしまうためです。また、債務者が自ら権利行使しなかったために、債権者によって債権者代位訴訟が提起されるに至ったのであり、債務者は債権者による訴訟の結果を甘受すべきともいえます。

 

◆判例に対する批判
債権者代位訴訟の効果が債務者にも及ぶとする判例の見解には、従来から多くの批判がありました。
債権者代位訴訟は債権者と第三債務者の間で行われるため、債務者は債権者代位訴訟が係属していることを知る機会がありません。
旧法では、債権者または第三債務者に対して、債権者代位訴訟提起の事実を債務者に通知する義務がかされておらず、債務者の知らないところで債権者代位訴訟において債権者が敗訴するおそれがありました。

この場合にも債務者に判決の効果が及ぶとすれば、債務者の手続保障が不十分と言わざるを得ません。
判例の結論を批判する立場から、債務者が債権者代位訴訟に参加する機会が与えられていた場合に限って、訴訟の効力(債務者に不利な結果であっても)を債務者に及ぼすべきであるという見解もありました。

 

◆債務者への訴訟告知
新法は、債権者代位訴訟の結果が債務者に及ぶかという上記の議論に関連して、債権者が債権者代位訴訟を提起したときは、債権者は遅滞なく、債務者に訴訟告知をしなければならないと定めました(新法423条の6)。

これにより、債務者は、債権者からの訴訟告知により債権者代位訴訟が提起されたことを知ることができ、訴訟に参加する機会が与えられることになります。
訴訟告知とは、訴訟の当事者から、訴訟に参加することができる第三者にたいして訴訟が係属していることを通知する民事訴訟法上の制度です。

前記のとおり、旧法下における判例は、債務者に債権者代位訴訟の提起を知る機会が与えられていたか否かにかかわらず、訴訟の効力が及ぶという見解です。債権者による訴訟告知が義務付けられたことで、債務者に訴訟に関与する機会が与えられていたか否かを問わず債務者に判決の効力が及ぶのは不当であるという批判は、立法的に解決されました。
これにより、債務者には手続保障が与えられることになり、従来の判例の取扱いが係継続することが予想されます。

【改正民法債権編】弁済受領権限と事実上の優先弁済

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今回は、【改正民法債権編】に関して、弁済受領権限と事実上の優先弁済について考えてみたいと思います。

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弁済受領権限と事実上の優先弁済

債権者代位権を行使した債権者に弁済受領権限があることを明文化

 

◆債権者の弁済受領権限
債権者代位権を行使した債権者は、第三債務者から債務者に対してなされる弁済を、債務者に代わって受領する権限があるでしょうか。
それとも、第三債務者に対して、「債務者に対して弁済・交付せよ」と言えるに留まるのでしょうか。

仮に、第三債務者に対して、「債務者に対して弁済・交付せよ」としか言えないとすると、債務者がその受領を拒絶した場合、債権者代位権を行使した目的を達することができません。債権者代位権は、債務者自身が権利行使しない場面で用いられるものであり、債務者が債権者を困らせるために弁済の受領を拒絶する可能性は否定できません。

そこで、、旧法下で判例は、債権者は、債務者に代わって第三債務者から弁済を受領する権限があることを認めています。
これにより、債権者は、債務者の受領拒絶を心配することなく債権者代位権を行使することができるのです。

 

◆債務者の代わりに受領した金銭の取扱い
債権者代位権が行使される典型的な例は、債権者の被保全債権が金銭債権で、代位行使される債務者の債権も金銭債権である場合です。
前述のとおり、債権者は弁済受領権限を有するため、第三債務者から直接債務の弁済を受けることができます。
債権者が第三債務者から受領した金銭は本来債務者のものであって、債権者がこれを保持する権利を有するわけではありません。債権者が有するのは、あくまで債務者の代わりに弁済を受領する権限であって、債務者の所有物を自分のものにする権限はないのです。
そのため、債権者は、受領(回収)した金銭を債務者に返還する義務があります。

 

◆事実上の優先弁済権
前述のとおり、債権者は第三債務者から受領した金銭を債務者に返還しなくてはなりません。
では、債務者が債権者に対して、その受領した金銭の返還を求めた場合に(不当利得に基づく返還請求)、債権者は、その金銭の返還債務と、被保全債権たる債務者に対する債権を相殺することはできるでしょうか。

債権者代位権は、特定の債権者により行使されるものの、そこで維持された債務者の財産は、全債権者の債権の引当てとなります。そのため、債権者代位権の効果は、全債権者に帰属することになります。

債権者代位権が全債権者の利益を図るための制度であることからすれば、代位権を行使した債権者だけが優先弁済を受けることになる相殺は許されないことになります。しかし一方で、率先して火中の栗を拾って第三債務者から回収した債権者に優先弁済を受けさせることは、むしろ公平にかなうという考え方もあります。

旧法下で判例は、債権者に、債務者に対する返還債務と被保全債権を相殺することを認めています。これにより、債権者代位権は、(金銭債権の場合に)債務者の財産を維持して全債権の利益を図る制度というよりも、代位権を行使した債権者が被保全債権について優先的に弁済を受けるための制度という側面(事実上の優先弁済)が生じています。

 

◆新法での取り扱い
旧法における解釈を受けて、新法は、債権者に弁済受領権限があることを明文で認めました(新法423条の3)。また、第三債務者が債権者に弁済したときは、第三債務者の債務者に対する債務が消滅することも規定されました。

新法制定の過程では、相殺による事実上の優先弁済につき、全債権者の利益を図るべきという債権者代位権の趣旨に反するとして、明文で禁止すべきことも議論されました。しかしながら、債権者代位権が実務上果たしている簡便な債権回収手段としての役割は積極的に評価する余地があること等を踏まえ、相殺を禁止する条項は見送られました。

そのため、相殺を認めている現在の判例の運用が継続し、結果として相殺による事実上の優先弁済が今後も許容されることになります。

【改正民法債権編】債権者代位ができる権利の範囲

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債権者が代位できる権利の範囲

代位できる範囲に関する従来の判例ルールを明文化

 

◆債権者代位権の行使により利益を享受する債権者
債権者代位権は、強制執行の引当てとなる債務者の財産を維持することにより、債権者の債権の保全を図る制度です。維持される債務者の財産は、債権者代位権を行使した特定の債権者の債権のみならず、その債務者に債権を有する他の債権者の引当てにもなります。

そのため、複数いる債権者の1人が債権者代位権を行使して債務者の財産が維持されると、債権者代位権を行使した債権者のみならず、他の債権者も利益を享受することになるのが原則です。

 

◆債権者が代位行使できる債務者の権利の範囲
債権者代位権が、それを行使した特定の債権者のみならず、同一の債務者に債権を有する他の債権者を含めた全債権者の債権を保全するための制度であることからすると、債権者代位権を行使する債権者は、全債権者の利益のため、自分の債権(被保全債権)の額を超えて債務者の権利を行使することもできるように思われます。

たとえば、債権者Aは債務者Bに1000万円を貸し付けており、債務者Bは第三債務者Cに1500万円の債権があるとします。Bには、Aのほかに債権者Dがいて、DはBに500万円の債権があります。

BのCに対する1500万円の債権につきBが時効の完成猶予をしない場合、AはDを含めた全債権者の利益のため、自分の被保全債権1000万円を超える1500万円全額について、Bを代位して時効の完成猶予ができそうです。しかしながら、旧法下で判例は、債権者代位権を行使する債権者の被保全債権の額を代位できる金額を上限としています。
上記の例でいえば、Aは、BのCに対する1500万円の債権のうち、自己の被保全債権である1000万円を上限としてしか完成猶予の請求をすることができません。

債権者代位権を行使して第三債務者から弁済を受領した債権者は、それを自己の債務者に対する被保全債権の弁済に充当することができます(事実上の優先弁済)。このような事実上の優先弁済を認める以上、債権者代位権を行使できるのは自己の被保全債権の範囲を限度とするという判断です。

 

◆新法での明文化
被保全債権の範囲でしか代位できないことは、旧法に明文で規定されているものではなく解釈により認められていた制限です。
新法では、この判例による制限を明文化しました。これにより債権者代位権を行使する債権者は、自己の債権額の限度においてのみ債務者の権利を代位行使できることが明文で確認されました(新法423条の2)。

なお、新法では、「被代位権利の目的が可分であるときは」と留保を付しています。債権者代位権により代位行使される債務者の権利は、金銭債権が多いのが実態です。金銭債権は可分債権であり、その一部のみ代位行使を認めるという取扱いも可能です。

一方で、債権者代位権の適用範囲は実務において拡張されており、債務者の移転登記請求権を代位行使する場合のように、代位行使される債務者の権利が不可分な債権である場合もあります(転用事例、新法423条の7)。
新法は、このような債権者代位権の転用事例も踏まえつつ、被保全債権額を代位の上限とすることにつき、代位される権利が(金銭債権のように)可分である場合という留保をしたのです。

【改正民法債権編】債権者代位権

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債権者代位権

債権者代位権の要件、効果、適用範囲を明文化

 

◆債権者代位権とは
債権者は、強制執行により債務者の財産から強制的に弁済等の債権の満足を得ることができます。強制執行により弁済を受けるためには、債務者が強制執行の引当てとなる財産を保持していることが必要です。債務者が、強制執行の引当てとなる財産を適切に管理しなければ、債権者は自己の債権を回収することができなくなってしまいます。

このように、強制執行の引当てとなる財産は、債務者のみならず債権者にとっても重要な意味があるのです。

債権者代位権は、一定の要件の下、債権者が、債務者に代わって債務者に帰属する権利を行使し、強制執行の引当てとなる債務者の財産を維持することにより、債権者自身の債権の保全を図る制度です。

たとえば、債権者Aは債務者Bに1000万円を貸し付けており、債務者Bは第三債務者Cに500万円の債権があるとします。BのCに対する500万円の債権が時効にかかりそうになっているのに、Bが自ら時効の完成猶予(旧法の中断)をしない場合、Aは債権者代位権を行使して、Bの権利を代わりに行使し、その500万円の時効を完成猶予させることができます。

 

◆新法での改正点
債務者の財産は、債務者が自由に管理処分できるのが原則です。債権者代位権は、この債務者の財産管理の自由の例外として位置づけられます。

債権者代位権は、原則である債務者の財産管理の自由と、債務者の財産維持に利害関係を有する債権者の利益の調整という見地から、その要件と効果が解釈されています。

旧法では、債権者代位権について、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。」(旧法423条1項)、「債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。」(同2項)とのみ定められていました。

具体的な要件や効果が詳細に定められていないため、上記の債務者と債権者の利益調整の見地から、判例を通じて、解釈により行使の効果や具体的な適用範囲が補充されていたのです。
新法では、これら旧法下の解釈により補充されていた債権者代位権の要件、効果、適用範囲が明文化されるとともに、議論されていた一部の論点を明文化することによって立法的な解決がなされました。

 

◆債権者代位権の要件
旧法では、債権者代位権を行使するためには、条文上、以下の3点が要件とされていました。
①債権者の債権を保全するために代位行使の必要があること
②債務者が自ら権利行使しないこと
③原則として債権者の有する債権が権利行使できる状態であること(弁済期が到来していること)
そして解釈によって、次の点も要件に加えられていました。
④代位する債務者の権利が、差押禁止債権や強制執行により実現できない権利ではないこと

新法においても、これら基本的な要件は変わっていません。解釈により要件とされていた上記④を明文化し、債務者の権利が差押禁止債権や強制執行により実現できない権利であるときは、これを代位行使できないことが規定されました(新法423条1項ただし書、同3項)。

【改正民法債権編】危険負担

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危険負担

特定物売買等に関する債権者主義は削除、債務消滅から履行拒絶に

 

◆危険負担とは
危険負担とは、債務者に落ち度なく債務の履行が不可能になった場合における、反対債務の取扱いに関するルールです。

たとえば、建物の売買を考えてみましょう。売買契約により、売主は建物を買主に引き渡し、買主は売買代金を支払うという、相対する債務を負うことになります。

それでは、建物の隣地で火災が発生し、延焼により建物が焼け、建物を引き渡すことができなくなってしまった場合はどうなるでしょうか。この場合、建物の引渡債務は、債務者である売主に落ち度なく履行不能となり、債務自体が消滅します。
このとき、反対債務である代金の支払義務は存続するのか否か、というのが危険負担の問題です。一方の債務が履行不能によって消滅した場合の危険=リスクを、債権者・債務者のどちらが負担するかという問題なので、「危険負担」と呼ばれています。

 

◆特定物売買等に関する債権者主義の削除
旧法534条1項は、危険負担について、特定物に関する物権(たとえば所有権)の設定または移転を目的とする債務については、債権者・債務者のいずれにも落ち度なく履行不能になった場合、反対債務は消滅しない、すなわち履行不能が生じるリスクを債権者が負うという債権者主義が採られていました。

特定物とは、取引の当事者が、取引の対象物の個性に着目して取引の対象とした場合における、その対象物のことをいいます。
たとえば、土地や建物の売買は、隣の建物や土地でよいわけではなく、「その」土地や建物でなければならないわけです。このような物が特定物です。
一方、缶ビール1箱とか、ネジ1000本のように、物の種類に着目して指定される取引の対象物を種類物といいます。

先程の建物の売買の例では、建物は特定物なので、建物の明渡債務が両者に帰責事由なく履行不能となった場合、債権者である買主の代金支払い債務は消滅せず、買主は、建物が手に入らないのに代金を支払うことになります。

しかし、まだ売主の手元にあり、買主が何も関与することのできない対象物について、滅失のリスクを買主に負わせることには、かねてから強い批判がありました。実務においても、危険負担の移転時期を引渡時とする特約が締結されているケースがほとんどで、規定の合理性が疑問視されていたのです。
そこで、新法では、債権者主義を定めた旧法534条1項と、これに関連する規定である同2項・535条は、すべて削除することとしました。
なお、新法では、売買契約の対象物が滅失等した場合のリスクの移転時期を、引渡し時とする新規定が創設されています。

 

◆債務の消滅から履行拒絶に
(1)両者に帰責事由がない場合
特定物に関する債権者主義は削除されたので、特定物に関する債務、それ以外の債務とも、債務者主義が適用され、履行不能によるリスクは債務者が負い、債権者は反対債務を履行しなくてよいことになります。

旧法536条1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、「反対給付を受ける権利を有しない」と規定し、反対債務は当然に消滅するとされていました。
ところが、先述した通り、新法では、履行不能を含む債務不履行においては、債務者の帰責事由の有無を問わず契約の解除が認められることになりました。

そうすると、両者に帰責事由がないのに履行不能となった場合、債権者は、契約を解除して反対債務を消滅させることができます。反対債務が自動的に消滅するとする危険負担の規定と、解除により消滅させることができるとの解除の規定との間の整合性が問題となります。
そこで、新法は、制度間の整合性を確保するため、反対債務の消滅に関するルールは解除に一本化することとし、危険負担については、「債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」との規定に変更されました。

(2)債権者に帰責事由がある場合
上記の変更により、債権者に帰責事由がある場合に、反対給付が消滅しない旨を定めていた536条2項の規定も、「債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」との表現から「債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」との表現に変更されました。(内容面での変更はない)

この規定が適用される典型的な例は、不当解雇時における給与債権の取扱いです。
解雇事由がないのに不当に解雇され、使用者が労働者の出勤を拒絶している場合、労働者の労務提供債務は、債権者である使用者の責めに帰すべき事由により履行不能となっています。
このような場合、上記規定により、使用者は賃金を支払わなければなりません。
また、履行不能について債権者に帰責事由がある場合には、債権者による解除はできないと新たに規定されています。

 

【改正民法債権編】解除に関するその他の規定

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解除に関するその他の規定

債権者に帰責事由がある場合の規定を新設

 

◆債権者に帰責事由がある場合の解除権の成否
債務者による債務不履行について、債務者ではなく債権者に帰責事由(落ち度)がある場合があります。
その典型例は、使用者が不当解雇を行ない、解雇が無効であるにもかかわらず、労働者の就労を拒絶している場合です。この事例では、労働者による労務提供義務は不履行となっていますが、その原因は債権者である使用者側にあり、債務者である労働者には落ち度がありません。

旧法では、解除について債務者の帰責事由が要件とされていたので、この事例では使用者による労働契約の解除は認められず、また旧法536条2項により、労働者は賃金を請求することができました。

ところが、新法では、解除にあたって債務者の帰責事由は不要となったため、何らかの手当を行なわないと、使用者による解除が認められ、労働者による賃金請求もできなくなってしまします。
そこで、新法543条は、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」は解除できないと定め、債権者に帰責事由がある場合には解除できないことを明確にしました。
したがって、上記の事例でも、これまでと同様、使用者による労働契約の解除は認められないことになります。

 

◆債権者と債務者の双方に帰責事由がある場合
以上の説明は、債権者のみに帰責事由があることを前提にしています。
債権者と債務者の双方に帰責事由がある場合に、債権者が解除できるかどうかは別の問題として残ります。

この点は、今後の解釈に委ねられることになります。立法過程における資料には、双方有責の場合は、契約の解除との関係では、いずれにも帰責事由はないとして、解除を認めるとの解釈が示されています。

 

◆解除の効果
契約が解除されると、まだ履行されていない債務は消滅し、既に履行済みの債務については、契約前の状態を回復する義務(原状回復義務)を負うことになります。原状回復義務の内容として、すでに受領した金銭を返還しなければならない場合は、金銭の受領時からの利息を付さなければならないことが定められています。

一方、旧法では、金銭以外の物を返還する場合について、その物の果実(たとえば収益不動産を返還する場合に、不動産から得られる家賃)も返還しなければならないかは、何ら触れていませんでした。
そこで、新法545条3項は、「金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以降に生じた果実をも返還しなければならない」と規定し、金銭以外の物を返還する場合も果実を返還すべきことを条文上明記しました。

 

◆解除権の消滅
債務不履行が発生し、債権者が解除できるようになった後、いつまでも解除権が行使できるわけではありません。解除権は次の場合に消滅します。
①相当の期間を定めて、相手方が解除するか否かを確答すべき旨を催告したにもかかわらず、相当の期間内に解除しない場合
②解除権者が故意・過失で目的(受領)物を損傷等した場合
③解除権が消滅時効にかかった場合

新法では、このうち②について改正がなされました。これまでは、解除権の発生後であれば、解除できることを本人が知らない場合でも、目的(受領)物の損傷等により解除権を失うとされていました。
しかし、このような場合に解除権を失う理由は、目的(受領)物を故意・過失で損傷等する行為が、解除権の黙示の放棄とみなされるからです。解除できることを知らない場合には、このような評価はできません。

このため、新法548条は、解除権を有することを知らなかった場合は、目的(受領)物を故意・過失で損傷等したとしても、解除権は消滅しないと規定しました。
また、③の解除権の消滅時効については、消滅時効期間一般の変更に伴い、権利を行使できることを知った時から5年で消滅します。

夏季休暇のご案内

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言の得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

暦の上では秋となりましたが、連日の猛暑、いかがお過ごしでしょうか。

当事務所の夏季休暇についてご案内いたします。

・事務所の手続き業務は、8月26日~8月27日までお休みをさせて頂きます。

・お電話でのお問い合わせやご相談につきましては、上記期間内も受付させていただきます。

車庫証明のご依頼や、相続・遺言・成年後見等のご相談は、携帯電話へどうぞ。

携帯電話番号【090-2793-1947】

8月28日から通常業務となりますので、よろしくお願い申し上げます。

【車庫証明申請】世田谷区・目黒区・渋谷区・新宿区・中野区・杉並区

東京都世田谷区・目黒区・渋谷区・新宿区・中野区・杉並区など

【東京都内の車庫証明】は

行政書士長谷川憲司事務所へお電話を。
(090-2793-1947)

申請費用のご案内

世田谷区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬8,800円+警察手数料2,400円

目黒区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬9,900円+警察手数料2,400円

渋谷区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬9,900円+警察手数料2,400円

新宿区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬9,900円+警察手数料2,400円

中野区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬9,900円+警察手数料2,400円

杉並区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬9,900円+警察手数料2,400円

調布市・狛江市内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬9,900円+警察手数料2,400円

上記以外の23区内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬11,000円+警察手数料2,400円

上記以外の市町内の駐車場を管轄する警察署
申請報酬13,200円+警察手数料2,400円

申請業務以外の手数料
・現地調査、配置図・所在図作成:3,300円
・使用承諾書受取:3,300円
・指定場所直接納品:3,300円
・申請書記入作成:2,200円

お申し込み方法

行政書士長谷川憲司事務所へお電話を!
【090-2793-1947】

必要書類を発送して下さい。
送り先:〒157-0073 東京都世田谷区砧3-13-12

◎郵送の場合は【レターパックライト】(青色のレターパック)
ご利用下さい。

◎クロネコヤマト利用の場合は午前指定で、
【成城営業所】(センターコード032145)止め
にて発送して下さい。

弊所のサービス

書類到着日に申請(午前中に到着分)

②申請時、受領時に報告(メール・FAX)
交付予定日や郵送の追跡番号を報告いたします。
現状を心配する必要がなくなります。

③レターパックプラスにて納品
・クロネコヤマトご希望の場合はお知らせください。
・ご指定場所直接納品も承っております。

④お支払いは納品時に同封する請求書にて後払い

◎個人のお客様も、自動車販売業者様も対応しております。

◎現地調査の上、配置図・所在図の作成も承っております。

◎駐車場の所有者や管理会社へ出向き、使用承諾書の受取も承っております。

◎ご指定場所での直接納品も承っております。

◎他道府県の行政書士の先生方からのご依頼も受け付けております。

◎行政書士直通の携帯電話ですので、いつでもお気軽にお電話ください。
土日祝日、夕方から夜間もOKです。
(会議や面談中などの場合、すぐに折り返しお電話差し上げます)

【090-2793-1947】
行政書士長谷川憲司事務所

【改正民法債権編】無催告解除が可能になる要件

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、無催告解除が可能になる要件について考えてみたいと思います。

持続化給付金・家賃支援給付金、申請サポート業務受付中。
【090-279-1947】までご連絡を。

東京都世田谷区の車庫証明は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・遺言・終活は【090-2793-1947】までご連絡を

 

無催告解除が可能になる要件

無催告解除が可能になる要件、一部解除の規定を整備

 

◆無催告解除
原則として、債務不履行があったとしても、債権者は催告をしてからでないと解除ができませんが、催告を要件とするのは、あくまで債務者が履行をすれば、契約の目的を達することができる場合です。

催告をしても、契約をした目的を達するだけの履行を受ける見込みがない場合にまで、債権者に催告を要求することには意味がありません。
したがって、このような場合には、債権者は債務者に対して履行の催告を行なうことなく、いきなり契約を解除することが認められています。
これを「無催告解除」と言います。

新法542条は、無催告解除が可能な場合、すなわち契約の目的を達するだけの履行を受ける見込みのない場合について、網羅的に要件を定めました。旧法542条が定めていた定期行為の履行遅滞による解除、旧法543条が定めていた履行不能による解除は、無催告解除が可能な場合の1つとして位置づけられました。

 

◆無催告解除の要件(新法542条1項)
①全部の履行不能(同1号)
そもそも債務を履行することができない場合です。
たとえば、不動産売買契約の締結後、同じ不動産が別の人にも売られ、後から現れた買主に登記も移転されてしまった場合です。

②確定的履行拒絶(同2号)
債務者が、債務の履行を拒絶する意思を明確に表示している場合です。
「明確に表示」という表現には注意が必要です。ここでの履行拒絶は、履行不能と同様に扱ってよい程度の状況が必要であり、交渉の過程で単に債務者が履行を拒絶する旨を発言しただけでは不十分とされています。

③一部の履行不能・確定的履行拒絶(同3号)
契約に基づく債務の一部が履行不能になり、あるいは一部について債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示していて、かつ、残る債務の履行だけでは契約をした目的を達することができないときです。

④定期行為(同4号)
定期行為とは、特定の日時または一定の期限内に履行しなければ、契約の目的を達することができないような債務を言います。
典型例がクリスマスケーキの販売です。クリスマスイブにケーキが必要な人に対して、12月24日までに引き渡さなければ、クリスマスケーキは意味をなさなくなってしまいます。このような場合、12月24日の経過とともに無催告解除が認められます。

⑤その他契約目的を達成できないとき(同5号)
無催告解除の趣旨に照らして、債権者が催告をしたとしても契約目的を達成するに足りる履行がされる見込みがないことが明らかな場合に、一般的に無催告解除を認めています。

 

◆一部解除
新法では、無催告解除の要件を整理したほか、前記①・②の事由が債務の一部について生じている場合に、契約の一部を解除することができると定めています(新法542条2項)。ただし、一部解除が可能なのは、契約内容が複数に分割できることが前提となります。

 

◆実務での対応
法定解除の可否については、不履行が軽微か否か、契約目的の達成が可能か否かという事例ごとの判断となるため、後から裁判所に解除は無効であったと判断されるリスクがあります。
このリスクを回避するために、契約書において、解除ができる場合とできない場合を事前に取り決めておくことが有用です。

たとえば、付随的な債務や特約で定めた債務については、前もって契約書において、その不履行が解除理由となることを定めておくことが考えられます。

また、複数のサービスに関する複合的な契約においては、一部解除を防ぐために、契約は一体であって、一部の解除は認められない旨を規定しておくことも有用でしょう。