【相続・遺言について】不動産評価と基準時

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲について考えてみたいと思います。

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【Q】父の遺産として不動産を相続しました。相続開始時から遺産分割までに父から相続した不動産価格が大きく下落しました。不動産の評価方法について教えてください。

 

【A】◆1.不動産価格の基準時について

遺産である不動産価格の評価をいつの時点を基準として行うかについて、実際の事例の多くは、現実に遺産を分割する時点の評価に従って遺産を分割します。

但し、特別受益や寄与分など各相続人の相続分が問題となる場合には、各相続人の具体的相続分を算定する必要があるため、相続が開始した時点での不動産の価格を評価して、各相続人の相続分を算定します。その後、具体的相続分に従って、どの遺産を誰が相続するか決める際には、遺産を分割する時点の不動産価格の評価を基に、遺産の分割が行われます。

したがって、ご質問の事例で特別受益や寄与分など各相続人の相続分が問題となるかならないかわかりませんが、最終的には、遺産を分割する時点の評価に従って遺産を分割することになりますので、不動産の価値が大きく下落している価値での評価となります。

なお、当事者間で合意ができれば、遺産分割時以外の時点を基準時とすることができます。

◆2.不動産の価格の評価方法について

①話し合いの段階

ア)当事者間での話し合いの段階では、遺産である不動産の価格の評価には、(A)固定資産評価額(B)相続税評価額(C)公示地価(D)基準地標準価格等の資料が参考になります。しかし、これらについては次のような問題点も指摘されています。

(A)固定資産評価額(土地家屋評価台帳などに登録された基準年度における価格又は比準価格)は、各不動産について価格を求めることができるという利点があり調停でもよく参考とされますが、評価替え時期との関係で実勢価格との格差が出やすいと指摘されています。都市部では、実勢価格より固定資産評価額の方が低いと言われていますが、不動産取引が活発ではない中山間地域では、実勢価格より固定資産評価額の方が高い場合もあるようです。

(B)相続税評価額(相続税賦課の基礎となる財産評価基本通達により対象土地の地目ごとに路線価方式、倍率方式、比準方式のいずれかによるべきことが指定されています。)も調停でよく参考にされますが、路線価をもとに対象となる不動産の個別的要因を考慮して評価を算出する必要があり、路線価のある道路に面していない土地や形状の悪い土地では算出が困難な場合もあります。

(C)公示価格及び(D)基準地標準価格は、時価に近いとされますが、対象となる標準地・基準地が少なくこれらに基づいて対象土地の評価を算出する際の調整が困難です。

 

イ)その他には、遺産である不動産の近隣の不動産業者による不動産査定書を参考にすることも多いです。

また、当事者が自ら不動産鑑定を依頼して、遺産である不動産の鑑定をして不動産の価格を算定することもありますが、依頼者に有利な評価になってしまうという指摘もあります。

調停においては、家庭裁判所の調査官により、遺産である不動産の価格の調査報告がされることもありますが、一般的には、家庭裁判所の調査官は、不動産評価に関する専門家ではありませんので、その調査について過大な期待はできず、当事者間に評価について争いが多い場合には有効な資料になりにくいとされています。

また、調停の段階では、不動産鑑定士の資格を有する方を家事調停委員に指名して遺産の評価についての意見を聴取することもできます。この方法は、専門家の意見ですの信頼性において優れ、かつ、格別の費用も要しないのが利点ですが、不動産鑑定士の資格を有する家事調停委員を確保することが困難であるという難点もあります。

なお、調停手続の段階でも、下記に述べる鑑定が行われることがあります。鑑定は多額の費用を要することから、調停で鑑定する場合には、鑑定を無駄にしないために、鑑定に先立ち、鑑定結果に従うとの当事者全員の合意を調書に記載するのがよいとされています。ただし、遺産である不動産の価格が低い場合や不動産数が多い場合などには、高額な費用を負担しなければならない鑑定によるのは合理的ではないので、上記の他の方法で合意することが多いです。

 

②審判手続の段階

当事者間の話し合い(調停も含む)によっては、遺産である不動産の価格が合意に至らなかった場合には、審判手続によって遺産である不動産の価格が決定されることになります。審判手続においては、遺産である不動産の価格について鑑定が行われることが多いです。

鑑定とは、家庭裁判所から選任された鑑定人がその専門的知識により鑑定を行い、裁判所に鑑定結果を報告するもので、最も客観性に優れ、当事者も信頼することのできるものです。鑑定費用については、鑑定を希望する者に全額予納させたうえで、審判において、各相続人に相続分に応じた負担を命ずることが多いです。なお、当事者に資力がない場合には、当事者全員の合意で相続財産から鑑定費用を拠出することもできます。

鑑定人のする鑑定においては、(A)取引事例比較法(B)収益還元法(C)原価法の3つの各評価方法に基づく価格を算定した上で、現実の不動産の状況や条件に照らした総合的考察により、最終的な評価額を決定する手法が採られていることが多いです。

なお、(A)取引事例比較法とは、同種の不動産が市場において取引されている価格との比較で価格を算定する方法を言い、(B)収益還元法とは、当該不動産を利用することによりどの程度の収益を得られるかに着目して、その収益を期待利回りで除して資本還元することにより価格を算定する方法を言い、(C)原価法とは、当該不動産がどの程度の費用で造成・建築されるかという原価に着目して価格を算定する方法を言います。

したがって、ご質問の事例では、上記①で説明した評価方法による不動産の価格で合意できれば、それが遺産である不動産の価格になります。しかし当事者間の話し合いによって合意できなければ、上記②で述べた審判手続で遺産である不動産の価格が決められることになり、その前提として鑑定人による鑑定が行われることが多いです。

 

◆3.土地賃借権の価格の評価方法について

不動産の所有権ではなく、土地賃借権(借地権)が遺産である場合も多いので、触れさせていただきます。土地賃借権は更地価格に対して借地権割合と言われる一定の割合を乗じて算出されることが多いです。借地権割合には地域差がありますが(およそ更地価格の30%~90%)、これは税務署が相続税を算出するための数値で、路線価図などに記載されています。都市部の方が中山間地域に比べて借地権割合が高い傾向にあります。

セミナー開催案内

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回はセミナー開催のお知らせをします。

遺言書に関するセミナーを、世田谷区の行政書士で構成する「せたがや暮らしの相談会」が行います。私もメンバーとなっております。

会場:世田谷区立玉川福祉作業所

二子玉川駅駅徒歩3分(世田谷区玉川1-7-2)

日時:令和元年12月5日 13:30~15:00

予約電話番号03-3707-0498(受付:玉川福祉作業所 橋本)

セミナー終了後、無料相談できます。

皆様のお越しをお待ち申し上げております。

成年後見無料相談会

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今回は無料相談会のお知らせをします。

成年後見に関する無料相談会を、東京都行政書士会の行政書士で構成される、公益社団法人成年後見支援センターヒルフェの世田谷地区主催で、開催いたします。私もメンバーとなっております。

会場は世田谷区民会館別館【三茶しゃれなーどホール】5階集会室スワン。

三軒茶屋駅徒歩3分(世田谷区太子堂2-16-7)

日時:令和元年12月4日 13:00~16:30

予約電話番号03-3426-1519(受付:東村)

予約なしでも相談できます。

皆様のお越しをお待ち申し上げております。

相続・遺言・成年後見無料相談会のお知らせ

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本日は無料相談会のお知らせをいたします。

相続、遺言、成年後見について、世田谷区の行政書士5名が無料相談会を開催いたします。私もメンバーの一人になっております。

会場:世田谷区【烏山区民会館 集会室】京王線千歳烏山駅徒歩1分

日時:令和1年11月24日(日)13:00~16:30

(最終受付:16:00)

予約番号 080-7025-8357(受付:行政書士ナカムラオフィス)

ご予約の方優先ですが、飛び込み参加も歓迎です。

皆様のお越しをお待ちしております。

【相続・遺言について】遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲について考えてみたいと思います。

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【Q】父が亡くなり、相続人は兄と弟である私の2人のみです。父の遺産は、3,000万円の不動産と1,000万円の預金です。兄は父が亡くなった後、自分の不動産の持ち分2分の1を第三者に売却してしまいました。遺産分割に当たり、兄が売却した不動産の持分はどのように扱われるのでしょうか?

 

【A】◆遺産分割とは、遺産分割時に存在している相続財産を対象として、相続開始時を基準にして算定された具体的相続分(率)を参考に個別財産を公平に分割する手続きをいいます。したがって、遺産分割の対象は、遺産分割時の相続財産であって、相続開始時の相続財産ではありません。

他方、相続人は、相続開始の時点から被相続人に属した一切の権利義務を承継し、複数の相続人(共同相続人)は、各自の相続分に応じて相続財産を共有するものとされていますので、共同相続人が、遺産分割前に、自己の有する共有持分を処分すること自体は禁じられていません。

そうすると、相続開始後、遺産分割前に遺産に属する財産が共同相続人によって処分された場合、その財産(処分財産)を遺産分割時に考慮しないとすると、共同相続人間に不公平な事態が生じてしまいます。ところが、これまで、遺産分割において、その処分財産をどのように処理すべきかにつき、明文規定や関連裁判例がありませんでした。

そこで平成30年の法改正により、共同相続人によって相続開始後に処分された財産についても、下記①ないし③の要件を充たせば処分財産が遺産分割時に遺産として存在しているものとみなすという条文を新設し、遺産分割の枠組みのもとで共同相続人間の公平を実現する制度が採用されました。なお、共同相続人ではなく第三者によって処分がされた場合についても、共同相続人全員の合意があれば遺産分割時に遺産として存在しているものとみなされるという条文が新設されています。

まず、①処分財産が相続開始時に被相続人の遺産に属していたことが必要です。例えば、被相続人名義の土地が相続人の1人や他人の所有物であった場合に、本制度の適用はありません。

次に、②処分財産を共同相続人の1人または数人が処分したこと。

さらに、③処分財産を処分した共同相続人以外の共同相続人全員が、当該処分財産を遺産分割の対象に含めることに同意していることが必要です。

本件について検討してみます。仮に、新設規定を考慮せずに計算すると、お兄さんが売却した不動産の持分は遺産分割の対象となりませんから、あなたの具体的相続分は((3,000万円-1,500万円+1,000万円)×1/2=1,250万円となります。ところが新設規定を考慮すると、お兄さんが売却した不動産の持分相当額も遺産分割の時に遺産として存在しているものとみなされますから、あなたの具体的相続分は、(3,000万円+1,000万円)×1/2=2,000万円となることになります。

以上のように、お兄さんが売却した不動産の持分は、平成30年の法改正によって、あなたの同意の意思表示があれば、遺産分割において、遺産として存在するものとみなされるようになりました。

【相続・遺言について】相続財産⑤債務の場合

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産⑤債務の場合について考えてみたいと思います。

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【Q】◆父が亡くなり、相続人は兄と私の兄弟2人だけです。

①父は、友人Aさんと共同して事業を営んでおり、営業資金のため、銀行からAさんと連帯して1000万円のお金を借りていました。今後は、兄が父の跡を継ぎ、兄とAさんの二人で事業を営んでいくことになったので、兄とAさんは二人で借入金の責任を持つと言ってます。私は銀行から借入金の請求をされることはないのでしょうか?また、仮に父が兄に全財産を相続させるとの遺言を作っていた場合にはどうなるのでしょうか?

②父は、父の弟が会社に就職する際、頼まれて身元保証人になっていました。この身元保証債務についても兄と私が相続するのでしょうか?

 

【A】◆何が相続の対象になるかについて、民法が定める原則は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」というものです。したがって、所有権をはじめとする物権のほか、債権、債務、無体財産権、その他明確な権利義務といえないものでも、財産法上の法的地位といえるものであれば、全て包括的に相続の対象になります。これを包括承継といいます。ここで問題とされているものは、債務がどのように相続されるかという点にありますので、ご質問の連帯債務と保証債務に分けてご説明します。

 

1.連帯債務

まず、連帯債務とは、数人の債務者が同一の給付について、各自が独立して全部の給付をなすべき債務を負担し、そのうちの一人がこれを履行すれば、他のすべての債務者の債務も消滅するというものです。

連帯債務では、このように各債務者が全部の給付義務を負いますが、債務者相互間では負担部分が定まっており、債務者の一人が自己の財産をもって共同の免責を得たときは、他の債務者に対して、その負担部分に応じて求償できます。

連帯債務の相続について、判例は、共同相続人が法定相続分によって被相続人の債務を分割承継し、各自がその承継した範囲内において、本来の債務者とともに連帯債務者になるとしています。これによれば、共同相続人は、各自の法定相続分の割合でしか債務を負担せず、かつ、各自その範囲内で本来の債務者と連帯関係を生じることになります。

次に、遺言で相続分の指定がある場合について、民法第902条の2は「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。」と規定しています。債権者が知らない間に、債務者である被相続人が、勝手に債務のあり方を左右するのは妥当ではないというのが法の趣旨です。ですので、債権者は、遺言で指定された相続分を無視して、法定相続分に応じて、各相続人に対し、お金を支払えという主張をすることが可能となります。

ご質問のケースに即してご説明しますと、あなたとお兄様は、各500万円ずつお父さまの債務を承継し、各自その範囲内で本来の債務者であるAさんとともに連帯債務を負うことになります。

ですので、お兄様とAさんが、お二人で借入金の責任を持つと言われていても、また、遺言で相続分の指定があり、債権者がその内容を承認しない限り、法的には、あなたも500万円の範囲内で連帯債務を負うことになります。銀行から借入金の請求をされることはあり得ますので、銀行ともよく話し合っておくことが必要です。

 

2.身元保証債務

次に、保証債務の相続についてご説明します。保証債務も、原則として相続人が承継することになるのは金銭債務や連帯債務と同様です。しかしながら、身元保証といった継続的保証債務については、個人的信頼関係が基礎となっているため、保証人が死亡した以後の債務について相続性があるかどうか問題となります。

身元保証契約とは、身元保証人が、被用者の行為により使用者が受けた損害を賠償することを約する契約を言います。身元保証に関する法律は、①保証契約の存続期間を5年に制限し、②身元保証人に広範な契約解除権を認め、③裁判所の裁量により身元保証人の責任の範囲を定めることができるとしています。

身元保証の相続性については、身元保証契約は、これによって生じる債務が相続人にとって予測のできない責任を生じる可能性があることから、相続性がないとするのが判例です。

ですので、ご質問のケースに即してご説明しますと、お父様の身元保証債務について、あなたやお兄様が相続することはありません。相続が始まった後に、お父様の弟様が不祥事を起こして勤務先に損害を与えても、あなたやお兄様は責任を負うことはありません。

もっとも、身元保証人の生前(相続時)にその保証債務が既に具体的に発生している場合には、通常の損害賠償債務と同様に、相続人に承継されることになります。

【相続・遺言について】相続財産④借地・借家の場合

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産④(借地・借家の場合)について考えてみたいと思います。

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【Q】◆父が突然亡くなり、兄弟で財産を分けることになりました。

1.父は、生前、土地を賃借して、その上に持家を建て、そこに住んでいました。

①父が亡くなった後、この土地を借りる権利はどうなるのでしょうか?仮に父が、この土地を友人から無償で借りていた場合、違いはありますか?

②私たちの母は早くに亡くなくなっており、母の死後、父はAさんと事実上の夫婦として、父の持家に2人で長年にわたって住んでいました。現在もAさんは其の家に住んでいます。私たちとしては、家を自由に使うため、Aさんに家から出て行ってもらいたいのですが、これは法律上可能でしょうか?

2.父は生前アパートの一室を賃借して住んでいました。

①父が亡くなった後、このアパートを借りる権利はどうなるのでしょうか?仮に、このアパートが、父が長年の友人から無償で借りているものであった場合、違いがありますか?

②私たちの母は早くに亡くなっており、母の死後、父はAさんと事実上の夫婦として、そのアパートに2人で長年にわたって住んでいました。現在もAさんはそのアパートに住んでいます。このたび、Aさんは賃貸人(大家さん)から立ち退くように求められているそうです。私たちもAさんにはアパートから出て行ってもらいたいと思ってます。大家さんや私たちの請求は法律上認められますか?

 

【A】◆1.土地を借りる権利

民法上は、相続人は、相続開始により「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と定めています。これにより、被相続人の所有権や債権、債務、財産法上の法的地位などが包括的に相続の対象となります。

土地の賃借人たる地位についても、財産法上の法的地位といえ、相続の対象になるので、本件では、お父さんの賃借人たる地位を兄弟で相続することとなります。

他方、お父さんが無償で土地を借りていたという使用貸借契約の場合には、お父さんの死亡により契約は終了しますので、相続の対象になりません。

 

◆2.内縁の場合

お父さんの死亡により、持ち家の所有権は兄弟が相続します。内縁であったとしてもAさんには法定相続分はありません。そうすると、Aさんは、お父さんの死亡後、兄弟の持ち家に権限なく居住していることとなるので、兄弟は明け渡しの請求ができるのが原則です。

しかし、常にそのような主張を認めると、長年、お父さんの持ち家に居住しているAさんの利益を害します。

そのため、判例上は、相続人が内縁の寡婦に家屋の明け渡しを求めるのは権利の濫用だとして内縁の配偶者の保護を図ったものがあります。したがって、本件でも、明け渡しの請求が権利の濫用にあたらない限り、Aさんに家から出て行ってもらうことが可能です。

 

◆3.アパートを借りる権利

お父さんがアパートを賃借していた場合も、土地を賃借していた場合と同様に、賃借人たる地位を兄弟で相続することとなります。

また、アパートを無償で借りていた場合も、土地を無償で借りていた場合と同様に、お父さんの死亡によりその使用貸借契約は終了しますので、相続の対象になりません。

 

◆4.明渡しの請求

Aさんは法定相続人ではありませんので、お父さんの賃借権を相続することはありません。そうすると、お父さんの死亡により、大家さんからAさんに対する明け渡しの請求が認められそうです。しかし、これを認めるとAさんにとって酷です。

そこで、判例は、Aさんが相続人の相続した賃借権を援用して居住の権利を主張できることを認めました。

兄弟としては、相続した賃借権について、あえて賃料を不払いにして大家さんから債務不履行解除を受けたり、賃借権自体を放棄したりすることでAさんをアパートから出て行ってもらう方法も考えられますが、下級審の判例には、賃借権の放棄を無効と判断したものもあります。

したがって、本件でもAさんが賃借権を援用し、賃借権の放棄が無効と判断されたような場合には明け渡しの請求は認められません。

【相続・遺言について】相続財産③死亡退職金、香典、お墓、位牌、損害賠償請求権

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産③(死亡退職金、香典、お墓、位牌、損害賠償請求権)について考えてみたいと思います。

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【Q】◆1.父の勤めていた会社では、労働者が死亡した場合には死亡退職金を支払うとの退職金支給規定があります。この死亡退職金も父の相続財産に含まれるのでしょうか?

◆2.このたび、私が喪主として父の葬儀を執り行ったところ、多数の参列者の方から香典をいただきました。これも父の相続財産に含まれるのでしょうか?

◆3.お墓、位牌、家系図、仏壇も相続財産に含まれるのでしょうか?

◆4.実は父は飲酒運転をしていた自動車に跳ねられて亡くなりました(即死だったようです)。このことによって発生する父の自動車の運転者に対する損害賠償請求権は、相続財産に含まれるのでしょうか?

 

【A】◆1.死亡退職金

死亡退職金は、お亡くなりになった方への賃金の後払いの側面があり、この点からすれば相続財産に含むと考えるべきと言えます。

しかし、死亡退職金には、遺族の生活保障としての側面もあります。この点からすれば、遺族固有の財産と考えるべきとも言えます。

このように、死亡退職金のどの側面に着目するかで結論が異なることになりますが、実務上は、死亡退職金に関する支給規定(支給根拠)によるべきとされています。

つまり、退職金支給規定の支給基準、受給権者の範囲又は順位などの規定により判断されるべきものとされているのです。

例えば、国家公務員については、国家公務員退職手当法により受給権者を遺族としており、職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的として受給権者を定めたものと解されますので、死亡退職金は、受給権者固有の権利であって、相続財産には含まれないとされています。

民間企業でも、就業規則等で死亡退職金が定められている場合には、受給権者の範囲や順位等が定められている可能性が高いと思われます。

したがって、まずはあなたの父が勤めていた会社の就業規則等の退職金支給規定を確認する必要があります。

 

◆2.香典

香典は、被相続人の死後、死者への弔意、遺族への慰め、遺族が支出を余儀なくされる葬儀費用などの負担の軽減などを目的として、祭祀主宰者や遺族へ交付されるものです。

したがって、法的には祭祀主宰者や遺族への贈与と評価すべきものでありますので、相続財産には含まれません。

香典は通常は葬儀費用に充てられるものと思われますが、仮に葬儀費用に充てた後で残余があった場合でも、今後の法事の費用等に使用されることが多いと考えられますので、相続人間で当然に分配されるという性質のものではありません。

 

◆3.お墓、位牌、家系図、仏壇

お墓は墳墓、位牌・仏壇は祭具、家系図は系譜として、すべて祭祀財産です。

これらのものが、遺産分割によって容易に分けられないものであることは当然ですが、法律上も「系譜、祭具及び墳墓の所有権は」、「祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」とされ、祭祀財産は、祖先の祭祀の主宰者に帰属されるとされています。

したがって、これらの祭祀財産は、相続財産には含まれません。ちなみに、祭祀承継者は相続人に限定されません。承継順位は、第一順位が「被相続人が指定した者」、第二順位が「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者と定められた者」、第三順位が「家庭裁判所により定められた者」です。

 

◆4.相続と損害賠償請求権

交通事故の被害者が、加害者に対して損害賠償請求できることは当然です。逸失利益などの財産的損害や慰謝料(精神的損害)を請求できます。それでは、本件のように交通事故により即死した場合はどうなるのでしょうか。

この点、被害者は死亡により権利主体でなくなるのであるから、損害賠償請求権を取得することができず、相続人は、被害者である被相続人が取得しえない損害賠償請求権を相続することはできないのではないかとも思われます。

しかし、このような結論は、交通事故により数時間後に死亡した場合、被害者が損害賠償請求権を取得し、それを相続人が相続できることと比べても不当です。

この問題については、学説上争いがあるところですが、判例では、財産的損害についても、精神的損害についても、損害賠償請求権が相続財産に含まれるとされています。

したがって、父の加害者に対する損害賠償請求権は相続財産に含まれ、あなたはこれを相続することができます。

【相続・遺言について】相続財産②(生命保険)

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産②(生命保険)について考えてみたいと思います。

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【Q】父は生前に私を保険金の受取人とする生命保険契約を締結していました。この度、父が亡くなり、保険会社から保険金が支払われることになりました。

①この生命保険金も、父の相続財産に含まれるのでしょうか?私が保険金全額を受け取った場合、遺産分割に何か影響はありますか?

②保険金の受取人が「相続人」とされていた場合はどうなるのでしょうか?

【A】◆生命保険金と相続

①生命保険金が相続財産に含まれるか否かは、保険金受取人としてどのような指定がなされているかにより結論が異なります。

受取人が被相続人自身であった場合、観念的には生命保険金はいったん被相続人に帰属すると考えられるため、相続財産に含まれることになります。これに対し、受取人が「相続人」と指定されていたり、相続人のうち特定の者と指定されていたりした場合、生命保険金は相続財産とはならず、受取人固有の財産となるとされています。

本件ではあなたが受取人として指定されていたのですから、生命保険金は相続財産には含まれません。あなたは、相続によってではなく、保険契約による固有の権利として保険金請求権を取得することになります。

それでは生命保険金を取得したあなたと他の相続人との関係はどうなるのでしょうか?遺産分割にあたり相続人による生命保険金の取得という事情が考慮されるか否かが問題となります。

これは、生命保険金が特別受益となるか否かという問題です。仮に特別受益とされるのであれば、これを相続分の前渡しとみて、計算上この生命保険金を相続財産に加算して相続分を算定することになります。

この点については、生命保険金は、原則として特別受益とはならないとされています。したがって、原則として、生命保険金を取得したからといって、遺産分割において、あなたの相続分が減らされるわけではありません。

もっとも、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平感が到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に準じて処理すべきとされています。

具体的には、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を考慮して判断されます。

個々の事案によって結論が異なることになります。あくまでも他の事情にもよりますが、生命保険金の額が相続財産の総額に匹敵するほどの額であった場合は、著しい不公平な状態であると評価されやすいでしょう。

②保険金の受取人が「相続人」とされていた場合も同様です。判例では「被保険者死亡の場合の受取人を特定人の氏名を挙げることなく抽象的に指定している場合でも、保険契約者の意思を合理的に推測して、保険事故発生の時において被指定者を特定し得る以上、右の如き指定も有効であり、特段の事情のないかぎり、右指定は、被保険者死亡の時における、すなわち保険金請求権発生当時の相続人たるべき者個人を受取人として特に指定した」ものと解するのが相当とされています。

したがって、この場合でも、生命保険金は相続財産には含まれません。なお、相続人が複数いる場合の各相続人が保険金を受け取る割合については、各相続人が平等に取得するという説もありますが、判例は、原則として、法定相続分の割合による分配とする見解に立っています。

【相続・遺言について】相続財産①(預貯金)

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今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産①(預貯金)について考えてみたいと思います。

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【Q】一人暮らしの父が急病で入院して、そのまま亡くなりました。葬儀まで済ませてひと段落がついたところですが、入院費用や葬儀費用を支払うために父名義の預貯金を解約したいと考えています。どのように進めればよいでしょうか。

 

【A】◆1.平成28年の最高裁判決による影響について

①平成28年に最高裁判所が判例を変更するまでの状況

平成28年に最高裁判所が判例を変更する以前は、預貯金は、被相続人の死亡と同時に、相続人らに当然に分割されて相続されるため、遺産分割の対象とはならず、理論的には、各相続人の法定相続分の範囲内で解約・払戻しが可能であると考えられていました。

しかし、相続人かどうかや法定相続分の割合を把握することは困難であり、相続人間で揉めている場合もあるため、これまで金融機関は、自己責任で払戻しに応じるか、被相続人の死亡が分かると、預貯金口座などを凍結して払戻しを停止するという取扱いを行っていました。そのため、相続人が被相続人名義の預貯金口座を解約するには、金融機関所定の手続書類に署名と実印による捺印を相続人全員に行ってもらい、全員の印鑑証明書を添付して、金融機関に提出しなければならない場合がほとんどでした。

これでは、相続人間に争いがあったり、相続人の中に生死や所在不明の方がいたりする場合などでは、預貯金の払い戻しにかなりの時間がかかることになり、遺族が、被相続人の治療費や葬儀費用の支払いといった当面の費用の支払いに苦慮することになってしまいます。

そこで、判例が変更される以前は、相続人が、自ら相続した法定相続分の範囲で預貯金の支払いを求めて金融機関を提訴し、判決を得て支払いを受けるという方法も利用されていたところです。

②最高裁判所による判例の変更

ところが、最高裁判所が平成28年に判例を変更し、預貯金も、被相続人の死亡により各相続人らに当然に分割されて相続されるわけではなく、遺産分割の対象となると判断したため、預貯金の払戻しを行うには長い時間をかけてでも遺産分割を経るほかなくなってしまいました。

遺産分割の場面では、通常は預貯金も含めた全ての相続財産を考慮して分割方法を考える場合が多いでしょうから、これに沿った上記の最高裁判所の判断は自然なものではあります。ただ、相続人間に争いがある場合、遺産分割を調停や審判で最終的に解決するまでには何年もかかることがあり、遺産分割が終了するまで預貯金を解約して払い戻すことができないとなると、相続の際の当座の資金需要に対応できません。

そこで、この度の民法改正により、この問題に対応するための制度が創設されました。

 

◆2.民法の改正などによる対応について

①利用しやすい仮処分手続きの創設

まず、上記のとおり、これまでの仮処分手続は利用が困難であったため、家事事件手続法において、より利用しやすい手続きが創設されました。具体的には、「①遺産分割の審判や調停の申立てがあった場合に、②相続財産に属する債務の弁済や相続人の生活費の支払い等のために、審判や調停を申し立てた相続人やその相手方が、遺産に属する預貯金を(共同相続人の利益を侵害しない範囲で)その者が仮に取得することができる。」というものです。

この手続きにより、遺産分割の調停や審判が成立する前の段階で、相続人が預貯金の一部を仮に取得して、被相続人の死去前の治療費などの支払いを行うことができるようになります。ただ、どのような場合にどの程度の預貯金の取得が認められるかは裁判所の判断となり、また、遺産分割の審判や調停の申立てを行っていなければ利用できません。

②仮処分によらない預貯金の払戻し方法の創設

上記の手続きは、遺産分割の審判や調停の申立てを行ったうえで、さらに仮処分の申し立てを行って裁判所の判断を得なければならず、必ずしも手続きが簡単ではないため、この制度だけでは相続開始直後の資金の必要性に十分に対応できるとはいえません。

そこで、この度の改正により、各相続人が遺産である各預貯金口座ごとに、相続開始時の預貯金額の1/3に当該相続人の法定相続分を乗じた額の範囲内で、各金融機関ごとに法務省令で定められた金額(当面150万円)を上限として、家庭裁判所などの手続きを経なくても、単独で払戻しを受けられるという制度が創設されました。

この制度の創設により、限られた金額ではありますが、迅速に預貯金の払戻しを受け、被相続人の生前の治療費や葬儀費用の支払い等に充てることができるようになったことになります。この払戻しにおいては、上記の仮処分と異なり使用目的などは問題となりません。

なお、この制度によって相続人が払戻しを行った場合、その相続人は遺産の一部の分割により払い戻した部分を取得したものとみなすとされています。(後に、他の相続人のために払戻しを受けて支払ったなどの主張はできない。)

③遺産の一部分割

また、この度の民法改正により、遺産の一部分割が明文の規定として創設されたため、相続人は、遺産の一部分割を活用しやすくなり、裁判所に対しても審判や調停を申し立てやすくなりました。これにより、全部の遺産の分割には時間がかかることが想定される場合でも、遺産の一部分割という形で預貯金についてのみ先行して遺産分割を成立させ、払戻しを受けることが可能になります。