【孤独死をめぐるQ&A】Q1 相続に関する基礎知識① 相続人の範囲について

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【Q1】相続に関する基礎知識① 相続人の範囲について

身寄りがなく連絡を取っていなかったおじが亡くなったらしく、警察から連絡がありました。私が相続人になるのでしょうか。
このような場合、誰が法定相続人になるのかを教えてください。

【A】

① 相続人の範囲ですが、配偶者は必ず相続人になります。そして、配偶者以外の親族には順位がつけられており、第1順位が「子」及びその代襲相続人(孫、ひ孫等)、第2順位が「直系尊属」(両親、それぞれの祖父母等)、第3順位が兄弟姉妹及びその代襲相続人(甥、姪)となります。
② 亡くなったおじに第1順位、第2順位の相続人がおらず、おじの兄弟姉妹、つまり相談者の親も亡くなっている場合には、その遺産を甥・姪が相続するということになります。

【解説】

【1】相続人の範囲

① 亡くなった人のことを「被相続人」といい、亡くなった人の財産を引き継ぐ人を「相続人」と言います。
② また、ある人が亡くなったときに、法律で財産を引き継ぐ権利が認められた人を「法定相続人」といいます。
③ 民法は、法定相続人について、血族相続人と配偶者相続人の2種類を設けています。
④ 血族相続人については第1順位が「子」及びその代襲相続人、第2順位が「直系尊属」、第3順位が兄弟姉妹及びその代襲相続人としています。
⑤ このように血族相続人については順位が付けられており、先順位の相続人がいない場合に次順位の者が相続人になります。
⑥ これに対して、配偶者(夫又は妻)は常に相続人となります。

【2】配偶者

① 相続人となる配偶者は、法律上有効な婚姻、すなわち民法739条の婚姻届出をした配偶者を意味します。
② 相続人になるには日本国籍を有している必要はないので、配偶者が外国籍であっても法律上有効な婚姻をしていれば相続人になります。
③ 批判が多いところではありますが、現在のところ配偶者は民法739条の婚姻届出をした配偶者に限られているので、内縁の配偶者には相続権が認められません。
④ 配偶者が常に相続人になる根拠の一つとして、配偶者が生前被相続人の財産形成に寄与をしているということが挙げられることが多いですが、配偶者が相続人になるには配偶者でさえあればよく、同居の有無や生前の被相続人との関与の度合いは関係ありません。
⑤ 孤独死の場合、配偶者がいないかというとそうではありません。例えば、妻はいて法律上は離婚していなくても、ずっと別居しておりもう40年以上会っていないというようなケースもあります。
⑥ このような場合、夫の財産形成に一切寄与していないと言えますが、法律上の婚姻が継続している限り妻は相続人になります。
⑦ また、離婚調停中であっても、離婚成立前に相続が発生すれば配偶者は相続人になります。

【3】第1順位の相続人は子

① 子(及びその代襲相続人)は第1順位の相続人となります。子が数人いるときは、同順位で相続することになります。長男が優先ということはありません。
② 子が先に亡くなっていた場合、孫(直系卑属)がいれば、孫が相続人になります。子も孫も亡くなっている場合には、ひ孫がいれば、ひ孫が相続人になります。これを「代襲相続」と言います。
③ 子であればよく、男女の別、戸籍を同一とするか、実子・養子の別、嫡出子か嫡出でない子かなどは、相続人となるかどうかに影響はありません。
④ 自分の戸籍に入っていないのだから、相続人にはならないと勘違いする方もいるのですが、離婚した前の配偶者との子で、子が前の配偶者の戸籍に入っているときでも、その子は法定相続人になります。戸籍が一緒かは、相続とは無関係です。
⑤ 他方、再婚した相手の連れ子は、法律上は子ではありません。長期間一緒に住んでいたとしても法定相続人にはなりません。再婚相手の連れ子と養子縁組をしていた場合は、養子として法定相続人になります。
⑥ 孤独死をするような人だと子がいないのではないかと思われるかもしれませんが、実はいたというケースがあります。比較的多いのは、若い頃に結婚してすぐに離婚しており、子がいるが何十年と会っていないし、連絡先も知らないというケースです。周りの人も誰も故人に子がいたことを知らず、戸籍調査で初めて判明したということもあります。
⑦ 相続人になるかどうかは戸籍が同一か実際に交流があるかは関係がありませんので、仮に一度も会ったことがなくても、子は相続人になります。

【4】第2順位の相続人は親

① 第2順位の相続人は、直系尊属となります。直系尊属が相続人になるのは第1順位の相続人である子及びその代襲相続人(孫など)がいない場合(相続放棄や欠格の場合を含みます)です。
② まれに、「(被相続人の)親なのだから自分も相続できるはずだ」という相談者もいますが、親に相続権が認められるのは、被相続人に子(直系卑属)がいない場合だけです。
③ 直系尊属の中では親等が近い者が優先になります。父母のどちらかがいる場合には祖父母は相続人となりません。
④ 親であれば実親か養親かの区別はありませんが、直系尊属は親族に限られるので、姻族、俗にいう義理の父母は含みません。
⑤ 直系尊属に代襲相続はないので、両親のうち父が死亡していれば、母のみが相続人となり父方の祖父母は相続人にはなりません。

【5】第3順位の相続人は兄弟姉妹

① 第1順位の相続人である子及びその代襲相続人も第2順位の直系尊属もいない場合(相続放棄や欠格も含みます)、兄弟姉妹が相続人になります。
② 兄弟姉妹が数人あるときは全て同順位となります。兄弟姉妹には父母の一方を同じく兄弟姉妹(いわゆる半血の兄弟姉妹)も含みますし、養父母を同じくする兄弟姉妹も含みます。
③ 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子である甥・姪が代襲相続人になります。兄弟姉妹の場合代襲相続は甥・姪で終わり、その子は相続人ではなく、甥・姪がいなければ法定相続人はいないことになります。

【6】相続人がいない場合

① これまで解説した通り、法定相続人は、血族相続人と配偶者相続人の2種類であり、血族相続人は第1順位が子及び代襲相続人、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹(及び代襲相続人として甥・姪)であり、それ以外の親族は法定相続人にはなりません。
② どれだけ仲がよくでも、いとこは法定相続人になれません。
③ 相続人がいない場合、相続財産は国庫に帰属します。ただ、1.被相続人と生計を同じくしていた者、2.被相続人の療養看護に努めた者、3.1.ないし2.に準じて「特別の縁故があった」人などは、特別縁故者として、その申立てにより一定程度遺産が分与される可能性があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例64 所有者不明土地と令和3年改正

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【相談内容】
相談者(65歳男性)から、「7年前に死んだ父(当時82歳)の葬儀のとき弟(62歳)と喧嘩になり、それ以来顔を見るのも嫌で、遺産分割も手をつけていない。ただ、亡父名義の郷里の土地建物の固定資産税の請求書が来るので、私がずっと支払ってきた。法律が変わって国に土地を引き取ってもらえると聞いたが、どうすればいいのか」と相談された。

【検討すべき点】
令和3年4月、所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化を目的として民法などの大幅な改正が行われましたので、今後、このような相談が増えると予想されます。施行は令和5年4月27日です。

【1】所有者不明土地

① 「所有者不明土地」」とは。所有者を知ることができず、又は所有者の所在を知ることができない土地のことで、共有土地の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分を含みます。
② 少子化や過疎化の進行により、特に地方では所有者不明土地が増え、その総面積は平成28年の時点で、九州の面積(約367万ha)を超えているそうです。
③ 所有者不明土地が増える原因としては、被相続人が亡くなっても遺産分割されないケースがあること、遺産分割でも相続人が郷里の不動産を引取りたがらないこと、引き取っても管理も処分も出来ず固定資産税が課されること、相続登記や住所変更登記が義務ではないことなどが考えられます。
④ そうして遺産分割から外され相続登記も放置された不動産は、数次の相続を経るうち所有者不明土地に変わります。
⑤ しかし、所有者不明土地の増加は、隣接住民に迷惑をかけ、不動産の有効利用を阻害し、税収の阻害要因になります。

【2】所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法等

① そこで、平成30年11月15日、まず、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が施行され、同法では、「所有者不明土地」とは、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいうとされ、国が相続人等を探索する方針を示しました。
② 続いて、令和元年11月22日に施行された表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律で、所有者不明土地に関して、登記官が職権で長期間相続登記未了であることを登記に付記し、相続人に対して、直接登記手続を促すことにしました。
③ そして、令和3年4月21日、民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下相続土地国庫帰属法)が成立して、所有者不明土地への対策は一段落しました。

【3】令和3年民法改正(所有者不明土地)内容

【3-1】令和3年民法改正の概要

① この改正の趣旨は、1.所有者不明土地の発生予防と2.土地利用の円滑化も2点にあるといわれます。
② このうち1.発生予防については、不動産登記制度の見直しによって、相続登記・住所変更登記の申請が義務化される一方、相続土地国庫帰属法の制定により、条件次第では不要な土地を国庫帰属させることができるようになりました。
③ また、2.土地利用の円滑化に関しては、共有制度の改正、所有者不明土地管理制度等の創設、遺産分割の見直しなどが盛り込まれました。
④ 令和3年民法改正の内容は多岐にわたり、この改正に関する詳細な文献が続々と発刊されていますが、ここでは、重要な改正点を挙げるにとどめます。

【3-2】共有に関する改正

① 第一に、共有物の管理・処分に関して、共有者が不明又は行方不明の場合(以下、所在等不明共有者)、他の共有者全員の同意があれば共有物に変更を加える旨の裁判ができることになりました。共有物の管理に関しても同趣旨の規定が置かれています。これにより、所在等不明共有者がいる共有地の管理や変更ができるようになりました。
② 第二に、共有物の分割に関して、相続財産に属する共有物の分割は遺産分割によるべきであり、民法258条による共有物の分割請求ができないことを確認する一方(改正民法258条の2第1項)、相続開始後10年を経過したときは、すでに遺産分割の請求をしていた相続人から異議がない限り、同条による分割請求ができることになりました(同条2項)。なお、以上は不動産・動産のすべてに適用されます。
③ 第三に、共有不動産において所在等不明共有者がいる場合、他の共有者の請求によって、所在等不明共有者の持分を取得させる裁判ができることになりました。ただし、遺産分割すべき場合には相続開始10年経過していることが必要です。もちろん、所在等不明共有者は持分を取得した共有者に対して持分の時価相当額を請求できます。これによって不動産の共有解消のための新たな方法が生まれました。
④ 第四に、共有不動産において所在等不明共有者がいる場合でも、他の共有者全員が協力して、所在等不明共有者の持分を含めた共有物全体を第三者に譲渡することができることになりました(改正民法262条の3)。これによって、共有不動産そのものの処分が可能になります。なお、以上は、土地・建物の双方に適用されます。

【3-3】所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

① 改正民法では、第2編(物権)第3章(所有権)の第3節(共有)の後に第4節(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)として、264条の2から264条の8までの条文を追加しました。
② 具体的には、所有者不明土地について、必要があるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)をすることができるとされ、選任された管理人は、裁判所の許可を得れば、保存行為や土地の性質を変えない範囲内で、利用又は改良を目的とする行為以外についても、管理・処分する権限を与えられました。なお、所有者不明土地管理命令の効力は、対象土地にある動産にも及びます。
③ また、所有者不明建物についても、利害関係人の請求によって下された所有者不明建物管理命令による所有者不明建物管理人が、建物・建物内の動産、敷地に関する権利を管理・処分する権限を持つことになりました。
④ これにより、所有者不明土地や所有者不明建物の近隣住民等の利害関係人は、所有者不明土地管理人や所有者不明建物管理人による隣地・隣家の適切な管理が期待できるようになりますが、利害関係人には費用(予納金)負担のリスクがあること、どの程度の事情で要件を充足するのか、土地と建物の所有者が異なる場合の処理などの問題については運用を待たざるを得ません。

【3-4】管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

① この制度についても条文が追加されました。具体的には、所有者による土地や建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地や建物を対象として管理不全土地管理人や管理不全建物管理人による管理を命じる処分をすることができるようになります。
② なお、土地や建物の所分は所有者が知れているケースですので、所有者の合意がないと裁判所は処分を許可しません。

【3-5】相続法改正

① 相続法でもきわめて重要な改正がありました。第一に、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分をずることができるとされました。
② 「いつでも」というのは意味深で、もちろん唯一の相続人が単純承認したときとか、相続人が数人の場合に全部の遺産が分割されたときなどを除くとされていますが、相続人による相続財産の放置を看過しないとの態度が見て取れます。なお、この管理人には、不在者財産管理人の権限・義務等に関する民法27条から29条までが準用されます。
③ 第二に、相続開始後10年を経過して相続人が遺産たる共有物の分割請求をする場合には、民法900条から902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有分とするとされましたので、特別受益や寄与分を主張できなくなります。
④ 第三に、相続開始後10年を経過して遺産分割する場合でも、特別受益に関する民法903条から寄与分に関する民法904条の2までの規定は、原則として適用しないものとされました。つまり、相続開始後10年を過ぎると、共有物の分割請求の場合も遺産分割の場合も、特別受益や寄与分を主張できなくなることになります。
⑤ 第四に、これまで相続人のある事が明らかでないときに選任されていた相続財産管理人は、第一で述べた相続財産管理人と区別するため、相続財産の清算人と名前を変えます。しかし変わったのは名称だけではありません。
⑥ 従前の相続財産管理人制度では、選任の公告に2か月、債権者受遺者への請求申出の公告に2か月、相続人捜索の公告に6か月を要していた手続きを改め、相続財産清算人の選任公告と同時に、相続人があるならば一定の期間(6か月を下ることができない)内にその権利を主張すべき旨を公告するものとし、その期間内に満了する期間を定めて相続債権者や受遺者に対する請求申出を公告するとし、相続人捜索公告の条文を削りました。これによって、公告期間は6か月で済むことになり、相続財産清算人の手続きは従前に比べて各段に速くなります。

【3-6】不動産登記法の見直し

① 不動産登記法の改正では、所有権の登記名義人について相続の開始があったとき、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないとされました。遺産分割の場合も同様です。
② また、登記名義人の名称又は住所変更についても、変更から2年以内に変更登記を申請する義務が課されました。なお、これらに違反した者には、10万円以下又は5万円以下の過料に処せられます。

【3-7】相続土地国庫帰属制度の創設

① 今回の改正では、相続によって土地を取得した相続人が土地所有権を国庫に帰属させることができる制度も創設されました。以下、注意点を述べていきます。
② 第一に、土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができるとされました。「相続等」とは相続又は相続人に対する遺贈に限られます。
③ 第二に、その承認申請は、1.建物の存する土地、2.担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地、3.通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地、4.土壌汚染対策法2条1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地、5.境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地のいずれかに該当するものであるときは、することができないとされました。
④ 第三に、法務大臣は、6.崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの、7.土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他有体物が地上に存する土地、8.除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地、9.隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの、10.前6.~9.に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるものについては、承認しなくてもよいとされました。
⑤ このように条件が厳しく、管理も財務省や農林水産大臣が行ないますが、国としては不要な土地の国庫帰属は多くの場合認めないと推測されます。したがって、国庫帰属の法制度が用意されたからと言って、相談者に安易に、認められると説明することは避けなければなりません。
⑥ 第四に、承認申請のためには、事前の手数料のほかに、承認された場合には約10年分の管理費用に相当する負担金の納付が必要です。法務省民事局では、負担金の目安として、粗放的管理で足りる原野は約20万円、市街地の宅地200㎡では約80万円の金額を挙げています。

【4】相談者への回答

① 以上から、相談者に対しては、前記の令和3年民法改正の概略を説明したうえで、1.亡父の相続開始後3年以内に相続登記をしていなければ過料に処せられる可能性があること、2.それを避けるには、相続人である旨の申出をする方法があること。
② 3.相続開始後10年が経過すれば、遺産分割や共有物分割の手続きで特別受益や寄与分を主張できなくなるので、早目に遺産分割を行うこと、4.遺産分割の結果、相談者が郷里の不動産を取得して、その不動産の国庫帰属の承認申請をすることができる可能性はあるが、種々の厳しい条件をクリアできるか検討すること(亡父の土地に建物がある場合は解体、隣接地との筆界特定も必要になる場合もある)。
③ 5.さらに、国庫帰属の要件を満たしても負担金の納付が必要になること、6.亡父名義の郷里の不動産を放置していると、所有者不明土地管理命令や管理不全土地管理命令が下される可能性があることを説明します。なお、支払い済みの固定資産税は遺産分割の中で勘案(清算)してもらうことになるでしょう。
④ 要するに、相続開始後10年経過する前に遺産分割の調停を申し立てるべきですが、相続土地国庫帰属法によって、相続した不動産を簡単に国庫に帰属させることができるようになったわけではないことに注意が必要です。

【終活・遺言・相続相談】相談例63 空き家問題

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【相談内容】
相談者(44歳男性)から、「隣家に住んでいたおばあさんが亡くなって6年経つが、誰もその家を管理しておらず、屋根や塀が崩れかけ、屋内も覗ける状態で、さらに大木の枝が張り出して通行の邪魔になっている。何とかならないものか」と相談された。

【検討すべき点】
放置された空き家は、近年、大きな問題になっています。現時点では空家の問題点や空き家等対策の推進に関する特別措置法について説明し、市町村の担当部署に相談いただくとともに、行政を経由しない解決策の可能性について検討することになります。令和3年民法改正に管理不全の土地・建物に対する手当が盛り込まれましたので、これが施行されれば、空き家問題を解決できる方法が一つ増えることになります。

【1】空き家問題

① 全国の空き家は平成30年時点で約849万戸でしたが、その後も確実に増え、都市部でも、一見しただけでそれとわかる空き家が目につくようになってきました。
② きちんと管理されている空き家であれば問題ないのですが、相談例のように朽ち果てて幽霊屋敷になっている空き家は、防災、衛生、景観などの点で近隣住民の悩みの種です。
③ このような空き家が生まれる原因は様々で、建物所有者の相続が開始したものの相続人がいないケース、相続人はいるものの遺産分割がまとまらず放置しているケース、その建物には利用価値がなく税金の負担だけがかかるため、相続人間で建物の押し付け合いになっているケースなどが挙げられます。
④ また、相続人が建物を相続したものの、もともと被相続人がため込んでいた建物内動産(ゴミ)の処分に手間取っていたり、相続人自身が倉庫代わりに使っているケースや、再建築不可物件で建物の再築ができず、かといって取り壊すためにも数百万円の費用がかかるため、建物を潰すに潰せないといった事情があるケースもあります。

【2】空家等対策の推進に関する特別措置法

① こうした空き家問題に対応するため、多くの地方自治体で独自の空き家条例を定めていましたが、平成27年2月、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下空家法といいます)が施行されました。空家法の要点は以下のとおりです。
② 第一に、空家法2条1項で「空家等」とは、建築物又はこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理する物を除くと定められ、建物のみならず、敷地も立木も塀も同法の対象となりました。
③ 第二に、空家法3条で空家等の所有者又は管理者(以下所有者等)という)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとするとされました。したがって、抽象的ですが、所有者だけではなく、管理者にも努力義務があります。
④ 第三に、空家法では特定空家等という概念を設け、特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保全上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいうとし、市町村長は、特定空家等の所有者等に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令ができ、さらに行政代執行法による強制執行も可能になりました。なお、命令違反や立入調査拒否等に対しては過料の制裁があります。
⑤ 第四に、空家法は国、都道府県、市町村の役割分担を定めました。空き家対策も中心的役割は市町村が負うこととしましたので、各市町村に担当部署が置かれました。

【3】行政書士や弁護士の関与

【3-1】行政に対する働きかけ

① 相談例の隣家は特定空家等に該当しそうで、そうであれば、現行法下では、空家法による指導等を求めて市町村に相談してもらうよう相談者に勧めることになります。ただし、市町村がすぐに動いてくれる保証はありませんし、実効性があるとも限りません。
② そこで、行政書士としては、相談者や周辺住民から依頼を受け、他の事例の調査や被害や懸念の内容を文書にまとめるなどして、市町村に対応を働きかけることを検討すべきでしょう。

【3-2】相談者個人としての請求

① 空き家問題の解消を行政に頼らざるを得ないのは、周辺住民から空き家所有者等に対する具体的な請求権を観念するのが困難だからです。
② しかし、空き家からのゴミや木の枝等が相談者の土地に侵入している場合には、直接、隣家の所有者等に対し、妨害排除請求権や損害賠償請求権を行使することが考えられます。
③ また、訴訟に至らずとも、内容証明郵便などでその旨の通知や督促が届けば、空き家の所有者等が自発的に管理してくれるようになる可能性はあります。

【3-3】義務者の特定

① 空き家等の所有者等の特定は、一筋縄ではいかないことがあります。
② まず、空き家の土地・建物の全部事項証明書で各所有者を確認し、被相続人から相続人に対する相続登記がされていればその相続人が相手方になります。
③ 次に、相続登記が経由されていなければ、被相続人の住民票、除籍謄本から遡って相続人とその住所を特定し、相続人に対して空き家の管理を求めることになるでしょう。
④ 相続人全員が相続放棄していたり、相続人がいなかった場合には、現行法では、相続財産管理人の選任を申立てるしかありません。また、所有者等の死亡も確認できなければ、不在者管理人の選任を申立てることになります。そしてこれらの方法では、おおむね50万円から100万円の予納金が必要になります。
⑤ なお、相談例で、建物の所有者と土地の所有者が別の場合には、塀や大木の枝に関しては、その土地の所有者に対して適切な管理を請求できる可能性があります。また、隣家を管理している不動産管理業者がいるなら、適切な管理を求めることができるかもしれません。

【3-4】管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

① このような空き家問題に対し、令和3年民法改正では、相談例のような場合で隣家の所有者が不明なときは所有者不明土地管理命令や所有者不明建物管理命令が、隣家の所有者が明らかなときは管理不全土地管理命令や管理不全建物管理命令が認められることになりました。
② ただし、このような場合も費用の予納が必要ですし、その費用を回収できるかどうか不明です。また、これらの管理命令が認められるかどうか、その後、管理人がどのように対応してくれるのかも明らかではありません。

【終活・遺言・相続相談】相談例62 相続財産管理人

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【終活・遺言・相続相談】相談例62 相続財産管理人についての記事です。

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【相談内容】
相談者(72歳女性)から、「これまで世話をしてきた従姉(78歳)が孤独死した。従姉には私以外に係累がいない。だから、葬儀を出して伯父夫妻の墓に埋葬したが、家主から家賃6か月分(60万円)と特殊清掃の費用200万円の支払いを求められた。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相談者が従姉の連帯保証人でなければ、家主の求めに応じる必要はありません。むしろ、従姉に相続人がいないなら、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立て、相続財産法人の権利義務を清算してもらい、残余財産があれば特別縁故者としての財産分与を申立てるべきでしょう。なお、令和3年民法改正の施行後、相続財産管理人は「相続財産清算人」に変わりますが、ここでは、現行規定のままとして説明します。

【1】孤独死

① 高齢者の単独世帯は683万世帯であり、高齢者の人口約3,588万人の5人に1人が独居です。
② 「孤独死」の定義は明らかではありませんが、独居の高齢者が、病院ではなく自宅で心筋梗塞や脳出血などにより誰にも知られないまま亡くなり、死後2日以上を経過して発見された場合を指すとすれば、少なくとも年間約3万人が孤独死しているものと思われます。
③ 孤独死は来訪した親族や知人などによって発見されることが大半ですが、異臭に気づいた近隣住民の通報などによることもあり、死後相当期間が経過していることが少なくありません。
④ その場合は、まずは警察官が臨場して事件性の有無を調べ、遺体は司法解剖又は行政解剖します。
⑤ また、相続人がいなければ、死亡者の財産のうち預金通帳や現金などは警察が持ち帰り、その後は市役所などで保管します。したがって、相談者には、遺品の管理状態を確認します。
⑥ ちなみに、孤独死された方の自宅には飲みかけのお茶や洗濯物がそのままで、布団の上に人型の跡が残り、死臭が立ち込めているなど凄惨な状況があります。ゴミだらけの室内を復旧するために、200万円から300万円の特殊清掃費が必要となることもあります。

【2】相続財産管理人選任の申立て

① 被相続人に相続人があることが明らかでないとき、相続財産は法人とされ、家庭裁判所が、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任します(民法952条)。
② 相談例の場合には、従姉には法定相続人がいない様子なので、戸籍謄本でそれを確認し、相続財産管理人の選任を求めることになりますが、そうした手続きは弁護士が受任することができます。
③ なお、申立のためには50万円から100万円の予納金を求められますが、被相続人にそれ以上の預貯金があることが明らかであれば予納金は不要となることもありますし、手続きの途中で十分な相続財産があることが判明すれば、予納金は優先して返還されます。

【3】相続財産管理の手続

① 現行の手続では、まず、家庭裁判所が相続財産管理人を選任して、それを公告します。次にこの公告から2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産管理人は相続債権者・受遺者に対して2か月以上の期間を定めて請求申出の公告を行います。
② さらに、この公告期間が満了してなお相続人のあることが明らかでないとき、家庭裁判所は6か月以上の期間を定めて相続人捜索の公告(3回目の公告)を行い、この期間を過ぎると、相続人や相続財産管理人に知れなかった相続債権者らが権利を行使できなくなります。つまり、相続財産管理人の手続きには合計3回の公告、合計10か月の公告期間が必要となるのです。
③ この一連の手続きの中で、相続財産管理人は、遺産の内容を調査して債務があれば弁済します。相談例で家主から求められている賃料や特殊清掃費についても、相続財産管理人が相続財産の中から家主に支払いますので、その旨を連絡しておけば、家主も安心されるでしょう(家主も利害関係人として、相続財産管理人の選任を請求できます)。

【4】特別縁故者に対する財産分与の請求

① 現行法では、上述3回目の公告に当たる相続人捜索の公告期間が終われば、ほかに権利行使できる者がいないことが確定するので、特別縁故者の要件を満たす者は、家庭裁判所に対して清算後残存すべき相続財産の全部又は一部の分与を請求することができます。
② ただし、この財産分与請求ができるのは、相続人捜索の公告(3回目の公告)の期間満了後3か月以内に限られ、それは相続財産管理人の選任を申立てたときから1年以上先になりますから、失念して期間を徒過しないよう注意しなければなりません。

【5】特別縁故者に対する財産分与事件の手続き

① 上記の請求期間内に特別縁故者に対する財産分与の申立てについての審判があると、家庭裁判所は、その旨を遅滞なく相続財産管理人に通知してこの請求に関する意見を求め、相続財産管理人は、特別縁故者としての要件を満たすか、満たすとしたらどの程度の縁故があったと認められるかなどについて調査し、その結果を意見書にまとめて裁判所に報告します。
② なお、相続財産管理人は、それまでに相続財産の換価等の処分を行い、相続財産管理人の報酬付与を求め、清算後残存すべき相続財産を確定させておきます。
③ その後、家庭裁判所は、相続財産管理人の意見を参考にして、特別縁故者に対する財産分与の請求に対する審判を下し、請求が認容された場合は、相続財産管理人が審判確定後に財産分与を実行します。
④ また、請求が却下された場合は、請求者から不服申立て(即時抗告)できます。なお、特別縁故者に分与されなかった相続財産は単独所有の場合は国庫に帰属し、共有の場合は他の共有者に帰属します。こうして、これらの手続きを終えると相続財産管理人選任の決定が取り消され、事件が終了します。

【6】特別縁故者の該当性

① 相談者が特別縁故者に該当するかどうかの問題です。特別縁故者に当たるのは「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めていた者その他被相続人と特別の縁故があった者」とされています。
② 相談者と従姉が生計を共にしていなければ「被相続人と生計を同じくしていた者」には当たりません。次に「被相続人の療養看護に努めた者」に当たるかについては、通常期待されるような関係を超えて被相続人の面倒をみていた場合に限られます。したがって、たまに通院に付き添ったとか、入院時にお見舞いに行ったというだけでは、この要件を満たさないでしょう。
③ しかし、その他の事情から「その他被相続人と特別の縁故があった者」と認められる可能性もあります。そこで、相談者から、従姉との関係(面談、訪問、電話、相談など交流の有無と頻度、金銭的な関係、身元保証、冠婚葬祭の付き合いなど)を子細に聞き取って特別縁故者の該当性を検討します。

【7】その他の問題

① いったん相続放棄した相続人が、相続人捜索の公告期間満了後に特別縁故者として財産分与を求めることがあります。
② 自ら相続人の地位を放棄したのに権利主張するのは矛盾するように見えますが、債務超過と思い込んで相続放棄してしまったというケースがあるようです。
③ 相続放棄に至った事情は特別縁故者の該当性等の判断で考慮されることもありますので、諦める必要はないように思います。

【終活・遺言・相続相談】相談例61 遺留分侵害額請求権と特別受益

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(55歳女性)は、「亡くなった母(88歳)は、すべての遺産を私に相続させるという公正証書遺言を残してくれたが(積極財産8千万円。なお、相続債務は1千万円)、それを知った姉(57歳)から遺留分侵害額請求の通知が届いた。姉も、20年前に母から自宅購入の資金として2千万円の贈与を受けていたはずなので、納得できない」と相談された。

【検討すべき点】
かつての遺留減殺請求権は、平成30年の相続法改正により遺留分侵害額請求権に変わりました(令和元年7月1日以降に相続開始した場合に適用)。遺留分侵害額請求は著名な論点の一つですし、相談者の方もある程度の知識を仕入れてきますから、おぼろげな知識で対応するのは危険です。一つずつ条文に当たりながら検討しましょう。

【1】遺留分侵害額請求権

① 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む)又は受贈者に対し、遺留分侵害に相当する金員の支払を請求することができるとされます。
② しかし、この権利は、遺留分権利者が自分のために相続が開始したことと遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効によって消滅します(相続開始から10年間の除斥期間が経過したときも同じです)。
③ したがって、姉からの遺留分侵害額請求の通知が、以上の要件を満たしているかを確認します。
④ つぎに、遺留分侵害額請求の額を計算しますが、この点はたいへん間違えやすいので、条文に沿って見ていきます。

【2】遺留分の基礎財産の計算

【2-1】遺留分の基礎財産

① まず、「遺留分を算定する貯めの財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする」とされます。
② この条文だけで言えば、相談例の遺留分の基礎財産は8千万円+2千万円-1千万円=9千万円です。

【2-2】遺留分の基礎財産に組み入れられる贈与

① もっとも、「贈与は相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を参入する」とされ、これが第一準則です。
② しかし、姉に対する2千万円の贈与は20年も昔のことですから、この規定では、遺留分の算定に算入できません。
③ また、例外的に、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする」とされ、これが第二準則です。
④ しかし、母から姉への2千万円の贈与が20年前なら、その当時母がどの程度の資産を持っていたかを知らべて主観的要件を主張立証しなければなりませんから、第二準則によって姉への生前贈与を基礎財産に組み入れるのは困難です。

【2-3】相続人に対する贈与の組み入れ

① さらに、相続人に対する贈与については原則が修正されます。すなわち、「相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」と「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る)。」とする」とされました。これが第三準則です。
② なお、この条項は、持戻し免除の意思表示を素通りしていますので、この計算においては持戻し免除の意思表示の有無は無視して結構です。
③ そうすると、相続開始前10年間に行った被相続人から相続人に対する贈与は、それが特別受益と同様の要件を満たすなら遺留分の基礎に入りますが、相談例では姉に対する贈与は約20年前なので、この要件も満たさず、遺留分の基礎財産に算入できません。
④ 以上から、相談例では、第一乃至第三準則によっても遺留分の基礎財産は、8千万円-1千万円=7千万円となると思われます(第二準則の悪意を立証した場合のみが例外です)。

【3】遺留分侵害額請求権の額の計算

【3-1】遺留分侵害額と請求額

① そうすると、姉(相続人は姉と相談者の二人とします)の遺留分は、7千万円の1/4(1/2×1/2)である1,750万円であり、遺留分を侵害している額も同額で、姉は相談者に対して1,750万円を請求できるかのように見えます。
② しかし、遺留分侵害額として請求できる金額についても、修正が図られています。すなわち、遺留分権利者が請求できる遺留分侵害額については、「第1042条の規定による遺留分から第1号及び第2号に掲げる額を控除し、これに第3号に掲げる額を加算して算定する」とされるので(民法1046条2項)、今度はこの点を検討しなければなりません。

【3-2】遺留分侵害額請求権の修正

① まず、民法1046条2項1号では、「遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条第1項に規定する贈与の価額」とされますので、特別受益に該当する生前贈与は、遺留分侵害額請求の額から控除されます。
② そして、同条項は、上記で述べた民法1044条3項の規律(10年間の期間制限)をスルーしていますから(相続人の公平を図る趣旨)、10年以上前の生前贈与も、遺留分侵害額請求権から控除されます。
③ その結果、姉が遺留分侵害額請求できる金額は1,750万円-2千万円=-250万円となり、姉は遺留分侵害額請求権を行使できません。

【3-3】その他の修正

① なお、民法1046条2項2号では、「第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額」とあり、これも遺留分侵害額請求の額から控除されます。
② これは遺産分割の対象となる遺産がある場合で、その相続分については遺産分割で取得するべきなので遺留分侵害額請求の額から控除されるのですが、相談例では、姉が取得する遺産はなさそうです。
③ また、民法1046条2項3号により、「被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第3項において「遺留分権利者承継債務」という)の額」が遺留分侵害額に加算されますが、相談例の遺言は、相続債務もすべて相談者に承継させる内容と解釈されますので、加算されるべき金額はありません。

【4】結論

① 以上のとおり、相談例では、母から姉に対して20年前に行われた2千万円の生前贈与(特別受益)は、遺留分の基礎財産にこそ算入されませんが、遺留分侵害額請求の額の算定においてはマイナス要素として考慮され、その結果、姉は遺留分侵害額請求権を行使できません。
② これに対して、もし、行政書士や弁護士などが、20年前の相続人に対する贈与も遺留分の基礎財産に含まれると誤解していれば、姉には9千万円×1/4-2千万円=250万円の遺留分侵害額請求権が認められると説明してしまうかもしれません。
③ また、遺留分侵害額請求権の修正を忘れていれば、遺留分の基礎財産は7千万円だから、7千万円×1/4=1,750万円の遺留分侵害額請求権が認められると説明してしまうかもしれません。いずれも明白な誤りです。
④ なお、相談者が、対立する兄弟姉妹の特別受益を主張しながら、自分の特別受益については忘れていたり、隠していたりする場合があります。後日相手方にそれを指摘されると一気に守勢に回りますので、あらかじめ、依頼者にこの点について確認する必要があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例60 遺言無効

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【相談内容】
相談者(54歳女性)から、「入院中の病院で母(85歳)が亡くなったが、昨日、検認手続きで見た母の自筆証書遺言では、「姉(60歳)にすべての財産を相続させる」とされていた。私は母の介護をしていたので、母がそんな遺言を残すはずがない。絶対におかしいので、遺言を無効にできないものか」と相談された。

【検討すべき点】
この相談内容も、行政書士が業務として取り扱える内容ではありません。提携している弁護士の先生にお取次ぎする形になります。
検認は遺言の有効性を確認するものではないので、まず、遺言書を見せていただき、日付などの形式的要件を確認する必要があります。次に、遺言者の遺言作成時における状況を聞き取り、遺言無効の可能性を吟味し、遺言無効確認訴訟の手続を説明します。ただし、相談者は怒り、悔しさなどで興奮されていることが多いので、短時間で必要な情報を聞き出すことは困難です。まずは気持ちを落ち着けてもらい、後日事務所などでゆっくりお話しを伺うべきでしょう。

【1】形式的要件の不備による遺言無効

① 相談例では、自筆証書遺言を保有していた姉が検認を申立てたと思われますので、その遺言書原本は検認済証明書が付されて姉に返されたはずです。したがって相談者は手元に遺言書の写しがない可能性がありますので、検認調書を取り寄せてもらいます。
② つぎに、遺言書を確認できたとして、自筆証書遺言の形式的要件を満たさなければ、その遺言書は無効です。日付、捺印、署名がないといった場合は、一見して無効と判断できますが、よくあるのは「これは母の字ではない」という偽造の主張です。
③ もちろん、自筆かどうかを判断するために筆跡鑑定という方法があるものの、1.私的な筆跡鑑定には30万円から50万円の費用がかかること。2.相談者自身が母の筆跡も一部混在しているようだと認める場合は奏功しない可能性が高いこと。
④ 3.筆跡鑑定の資料として対照できる母の自筆の書面をできる限り多く用意する必要があること。4.筆跡鑑定には確立された方法論がないので、裁判所が私的な筆跡鑑定書を有力証拠として取り上げてくれるかは疑問であることを指摘し、偽造を立証するためには、筆跡の不自然さだけでなく、客観的に「母がそんな遺言書を書くはずがない」といえる具体的な事情を立証する必要があることを説明します。
⑤ なお、公正証書遺言の場合に形式的要件を欠くことは稀ですが、公証人による遺言書案の読み上げに対して、遺言者が「うん、うん」と言っているだけでも公正証書遺言が出来上がることがありますので、口授の態様などによって、公正証書遺言も無効となる可能性があります。

【2】遺言能力の欠缺

① 遺言書作成当時において遺言者に遺言能力がない場合も、遺言は無効となります。そこで、相談者に対しては、遺言者の入院歴、要介護度、認知症の有無、介護の状況を聞き出し、遺言者や相談者の日記やメールのやりとりが手元にないか確認します。
② 具体的には、入通院していた各病院の診療記録、介護施設や介護事業者の業務日誌や介護記録を入手してもらいます。前者では看護記録などで遺言者と看護師との会話やせん妄などの状態がわかりますし、後者では施設での遺言者の言動がわかります。それに、介護認定の調査票や主治医意見書には認知症についての記載もあるはずです。
③ そして、これらの記録を分析すれば、認知症の進行やまだら呆けなど経時的な状況が判明しますので、それをもとに遺言時の遺言能力の程度を判断します。
④ 遺言無効の調停や裁判では、この経過を時系列一覧表にまとめ、遺言者の遺言能力の減退を主張することになるでしょう。なお、遺言書の内容が複雑な場合は、遺言者にそれが理解できていたのかという疑問が残るので、遺言無効主張の補強材料となる可能性があります。

【3】遺言無効の主張

① 検討の結果、遺言無効の可能性があり、相談者も希望されるのなら、弁護士に依頼をして遺言無効確認請求事件として正式に受任してもらい、相手方に対して遺言無効を主張する旨の受任通知を送ってもらうことになります(予備的に遺留分侵害額請求も行ってもらいます)。
② そして交渉による解決が難しく、かつ、遺言無効の可能性が高いと判断すれば、遺言無効確認請求訴訟を提起します。
③ この場合の管轄は、被告の普通裁判籍の所在地か、相続開始時の被相続人の普通裁判籍の所在地の地方裁判所です。
④ もっとも、遺言無効確認には調停前置主義が適用されますので、提訴しても調停に付される可能性があります。なお、遺言無効確認調停事件の管轄は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所なので、余計な手間と時間がかかるかもしれません。
⑤ 遺言無効確認請求訴訟で勝訴が確定しても、そこから遺産分割が始まるので、全体の解決には長い時間がかかります。したがって、遺言無効で勝訴する見込みが低く、相談者の関心も遺言の有効性よりも取得できる財産の多寡にあるなら、まずは遺言無効確認調停を申立て、その中で遺留分侵害額請求や寄与分などを主張し、実利を図った方がよいかもしれません。

【4】依頼人との関係

① この類型で難しいのは、相談者が、経済的利益には目もくれず、どうしても遺言の有効性を認めたくないと主張される場合です。相談者にすれば、母が自分ではなく姉を選んだことがどうしても許せない、しかし、母はもうこの世にはいないので、遺言を無効にしなければ死んでも死にきれないという気持ちになるのです。
② もちろん相談を受けた行政書士や、その提携先の弁護士は、こうした相談者の気持ちをよく理解しなければなりません。ただし、調査や資料の分析を通じて、この遺言書は母の真意だったかもしれない(遺言無効確認請求訴訟では勝訴できない可能性が高い)との心証に至ることもあるでしょう。
③ この場合の相談者の説得は容易ではありませんが、遺言がある場合でも遺産分割協議は出来ますので、遺言の無効(又は存在)を確認しつつ遺留分侵害額請求の金額に近い形での遺産分割を成立させるといった工夫を検討すべきではないかと思います。
④ このように、すべての相続人が、少しでも多くの遺産を取得しているわけではなく、面子や気持ちの折り合いの問題があることを頭の片隅に置くべきでしょう。

【終活・遺言・相続相談】相談例59 相続税申告

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(64歳男性)から、「3ヶ月前に父(89歳)が他界したが、少し調べたところ、2億円を超える遺産がある。今から、妹(58歳)と遺産分割の話をするが、相続税はどうすればいいのだろうか。また、税理士はどうやって選べばよいのか」と相談された。

【検討すべき点】
相続税の申告は税理士に任せるべきですが、遺産分割の相談でも相続税の話は避けて通れません。相続税申告の基本的な事項を理解し、申告期限、未分割申告の効果、税理士への依頼方法なども押さえてください。

【1】相続税申告

① 相続税は、相続開始後10か月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署長に対して申告・納付します。よほど自信がない限り、相続税申告は税理士に任せるべきです。
② 相続税の申告をしないでいると、数か月後に、税務署から「無申告理由のお尋ね」が送られてくることがあります。これを無視した結果、調査され、申告漏れを発見されると期限後申告・決定となり、延滞税や加算税が課されます。
③ 遺言がなく、遺産分割協議もまとまらないまま相続税の申告期限を迎えてしまった場合は、課税相続財産を法定相続分に応じて相続したものと仮定して相続税を申告・納付します(未分割申告)。未分割申告では、その時点では配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用を受けられませんが、3年以内に遺産分割協議を成立させれば適用を受けられます。もっとも、逆に遺産分割が成立した場合でも、相続税申告(ゼロ申告)をしないでいると、これらの特例の適用を受けられません。

【2】準確定申告

① 相続税申告と一緒に語られることの多いものに、準確定申告があります。「準確定申告」とは、年の途中で死亡した被相続人の相続人(包括受遺者を含む)が、本来であれば被相続人が行なうべきであった所得税の確定申告を被相続人に代わって行うもので、申告・納付期限は相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
② たとえば、令和4年2月5日に死亡した被相続人が、令和3年分の確定申告をしていなかった場合には、相続人は、令和4年6月5日までに、被相続人の令和3年(令和3年1月1日から同年12月末日まで)の所得に対する所得税の準確定申告と、令和4年の所得(令和4年1月1日から同年2月5日まで)に対する所得税の準確定申告をすることになります。
③ なお、準確定申告をすることにより、被相続人が納めていた予定納税や、給与所得や雑所得における源泉徴収分の所得税が還付されることがあります(還付金は相続財産となります)。
④ そして、相続開始後、もっとも早くやってくるのが準確定申告の申告納付期限ですから、税理士への依頼や遺産調査の契機にもなります。

【3】相続税の計算

【3-1】相続税の計算方法

① 相続税の計算方法は以下のとおりです。
a.相続財産の総額を計算する(みなし相続財産なども含む)
b.債務、税金、葬儀費用、基礎控除額を控除する(課税相続財産とよぶ)
C.相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定して、各相続人の取得財産を計算する
d.相続人ごとに相続税率を乗じて仮の相続税額を算出して合計する(=相続税の総額)
e.遺言や遺産分割などにより実際に分けられた財産(具体的相続分)の割合に応じて、各相続人に相続税の負担額を割り振る(=各人の相続税額)
f.個別の事情により税額の軽減又は控除を行う(配偶者税額軽減、未成年者控除など)

② 注意を要するのは、いったん相続税の総額を算出してから。各相続人の具体的相続分に割り振って各相続人の負担額を算出する点です。

【3-2】課税相続財産

① 課税の対象となる相続財産(課税相続財産)としては、まず。被相続人の不動産、預貯金等の金融資産、自動車や貴金属などの動産、貸付金や交通事故死の場合の損害倍書請求権などの債権が挙げられます。
② 次に、相続以外の原因、すなわち遺贈、死因贈与、みなし相続によって相続人や受遺者が財産を取得する場合も、その財産は課税相続財産に含まれます。
③ 相続税法上の「みなし相続財産」とは、相続等によって取得した財産とは言えないが実質的にこれと同視して課税対象とするもので、具体的には、死亡保険金、死亡退職金が挙げられます。
④ また、相続開始前3年以内の生前贈与は、相続税法上の「みなし相続財産」ではありませんが、相続税の課税財産に算入されます。
⑤ なお、遺産分割で「みなし相続財産」といわれるのは、特別受益・寄与分による具体的相続分の修正要素であり(生前贈与が特別受益に当たるときはこれに該当します)、相続税法上の「みなし相続財産」とは一致しません。

【3-3】課税相続財産の評価方法

① 現金以外の相続財産の評価方法は以下のとおりです。
② 土地の評価は、相続開始年度の「路線価」によります。路線価は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(道路)ごとに付した1㎡あたりの標準金額で、国税庁が7月に公表します。
③ 宅地の価額は、宅地の形状などに応じた各種補正率で補正し、面積をかけて算出します(地価公示法に基づく公示地価の8割程度)。路線価がない地域では固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価します(倍率地域)。
④ 家屋は固定資産税評価額で評価し、預貯金については相続開始時の残高が課税評価額となります。
⑤ 上場株式は、相続開始日、相続開始前3ヶ月の平均額などを参照し、もっとも低い価額で計算します。取引相場のない株式は、会社の大小・株主構成により、同族株主等は、1.類似業種比準方式、2.純資産価額方式、3.両者の併用方式により、非同族株主等は配当還元方式によって計算されることが多いです。

【3-4】相続財産からの控除

① 墓所、霊廟、祭具などは、非課税財産です。この規定を悪用して黄金製の仏壇を作り、非課税にしようとして否認された例は有名です。
② 民法上は相続債務も相続財産ですが(民法896条)、相続税法では、積極財産だけが課税相続財産となり、相続債務は債務控除として処理されます。なお、連帯保証債務はほかに主債務者がいるので確実な債務とはいえず、原則として債務控除の対象とならないことに注意が必要です。

【3-5】基礎控除

① 改正相続税法の施行により、平成27年1月1日の相続から、基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の人数となりました。なお、平成26年末までに相続が開始した場合の基礎控除額は、5000万円+1000万円×法定相続人の人数でしたから、相続税法改正により、相続税が課税される相続案件の数は倍増したと言われています。

【4】税理士の関与

【4-1】税理士による相続税申告

① 相続税は相談者から税理士に依頼していただくのが基本です。しかし、税理士なら誰でも相続税申告に精通しているわけではありません。
② 税理士登録者は全国で約75,000人といわれますが、そのうち税理士国家試験合格者は約45%、免除者(税務署出身者)が約40%、公認会計士とのダブル登録が10%、弁護士が約0.7%です。
③ ただし、税理士国家試験合格者の選択科目は、消費税法、法人税法、相続税法などであり、相続税を選択せずに国家試験に合格される税理士も少なくありません。また、国税庁(国税庁・税務署含む)職員約5万人の内、相続税・贈与税を担当する資産税部門の人員は約4000人しかいないので、税務署OBの税理士が相続税に精通しているとも限りません。
④ 我々行政書士は、相続税をよく取り扱っている税理士と提携し、いつでも税理士の相談し、あるいは依頼者に税理士を紹介できるよう準備しております。

【4-2】税理士による遺言書作成

① 被相続人が税理士に遺言書の作成を頼むケースも少なくありません。特に、被相続人が会社経営していたり、不動産収入があった場合、顧問税理士に法人税や所得税の申告を任せている場合には、毎月顔を合わせている顧問税理士を信頼し、「遺言も頼むよ」となるのは自然な流れです。
② しかし、税理士にとって、遺言書作成は日常業務ではありませんし、相続税申告がない場合の遺言書の作成については、税理士は関与できません(弁護士法・行政書士法)。
③ 一方、相続税申告がある場合の遺言について、顧問先の要望に「できません」とは答えにくいのも事実でしょう。こうして作成された遺言書では、節税については考慮されていますが、遺言の確定性などについて問題があることがあります。

【4-3】税理士による遺産分割

① 会社経営者の相続開始後、その跡を継ぐ相続人が、顧問税理士に遺産分割のとりまとめを任せることがあります。なるほど顧問税理士であれば会社や被相続人の所得税申告を引き受けていたでしょうし、遺産の内容や生前贈与のみならず、相続人の人間関係も掌握されているでしょう。
② ただし、会社の顧問税理士は完全に中立な立場ではなく、後継者たる相続人の意向を忖度しがちです。また、税理士は遺産分割の専門家ではありませんし、顧問税理士自身が高齢になっておられることもあります。
③ そうすると包括条項が抜けていたり、計算が合わなかったりという可能性が生じます。したがって、遺産分割交渉は弁護士が、遺産分割協議書の作成は行政書士が、顧問税理士の意見を伺いながら担当する事が重要です。

【4-4】複数の税理の関与

① 相続人の全員が一人の税理士に相続税申告を依頼すれば、遺産の範囲に関しては、相続人のコンセンサスを形成しやすくなります。
② これに対して、相続人同士の中が険悪な場合など、ある相続人が依頼した税理士は信用できないと、別の税理士に相続税申告を依頼することもあります。この場合、税理士同士の間でトラブルが生じることもあります。
③ 相続人間で遺産の範囲や生前贈与、名義預金などについて合意できなければ、それぞれの税理士は依頼人たる相続人の意向に従わざるを得ないので、その結果、異なる内容の複数の相続税申告書が税務署に提出されることになり、税務署の興味を引くことに繋がります。
④ それぞれの相続人が自分の主張を税務署にすることに繋がり、税務署は税務調査を通じて実態の確認を行い、往々にして税額が上がることに繋がります。したがって、依頼人には一人の税理士に全員が依頼するように助言することになります。

【終活・遺言・相続相談】相談例58 相続放棄と限定承認

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例58 相続放棄と限定承認についての記事です。

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【相談内容】
相談者(55歳女性)から、「音信不通だった父(77歳)が半年前に亡くなったらしいと、伯母(80歳)から聞いた。父は事業に失敗し、貸金業者に多額の債務がある可能性がある。私は相続放棄できるのだろうか。相続放棄できても、自分の息子(23歳)や伯母に借金を継がせることにならないだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があるので、いつ、父の死亡を知ったのかを確認します。また、相続放棄した場合は初めから相続人でなかったことになるので、相談者の子に債務は引き継がれませんが、次順位の相続人として伯母が繰り上がる可能性があります。

【1】相続放棄の手続

① 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続開始地の家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出して申し立てします。なお、相続放棄の年間件数は約20万件です。
② 相談例では、伯母から父が死んだらしいと聞いただけですので、相談者としては、除籍謄本を入手して父の死亡を確認すべきですし、その確認をした時から3か月間は相続放棄できます。
③ なお、家庭裁判所は、熟慮期間(3か月)経過後の申述も受理します。相続債権者が熟慮期間経過後の相続放棄の効果を争う可能性がありますが、通例、相続債権者は相続放棄受理証明書を確認すれば法人内で損金処理できますので、その可能性は低いでしょう。

【2】相続債務の確認

① 相続債務の内容が不明のままでは相続放棄を決断できません。したがって、亡父の債務を調査することを勧めます。
② なお、相続債務の確認に時間がかかるなら、相続放棄期間伸長の申立てを勧めます。伸長期間は3か月が原則ですが、音信不通だった等の事情により、再度の伸長が認められることもあります。

【3】相続放棄の効果

① 相続放棄をすれば、初めから相続人にならないので、相談者の息子も債務を承継しません。ただし、同順位の相続人(子)全員が相続放棄すれば次順位の者(この場合は伯母)が繰り上がります。
② そこで、相談者が相続放棄した後、繰り上がる相続人(伯母)にもその旨を連絡し、相続放棄をしてもらうべきかという問題が生じます。
③ 相続放棄は債権者から催告が来てからでも遅くないので、伯母には相談者が相続放棄した事実を連絡しなくても良いとも言えます。
④ しかし、相談者が心配されるならば、繰り上がり相続人(伯母)に連絡して、相続放棄を勧めることが望ましいと思われます。
⑤ なお、相談例とは異なりますが、両親の片方が亡くなった場合に、子が相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹が相続人に繰り上がるので、注意が必要です(「相続分の譲渡・放棄」と「相続放棄」はまったくの別物です)。

【4】相続放棄と遺贈

① 被相続人に相続債務がある場合、遺産の一部を死因贈与契約や特定遺贈で相続人や孫に贈与・遺贈しておき、その相続人が相続放棄するという方法もあります。
② この方法によれば、相続債務を承継することなく特定の財産を手元に残すことができそうですが、不動産の死因贈与の受贈者である相続人が限定承認した場合において、信義則上、不動産所有権を相続債権者に対抗できないとして最高裁判例もあり、安心はできません。

【5】限定承認

① 限定承認とは、相続人が、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認をすることです。
② たしかに、遺産の範囲でのみ債務を負担すればよいというのは合理的に思えますので、遺産や相続債務の内容が判然としない場合に、限定承認を希望される相談者も少なくありません。
③ しかし、第一に、限定承認は、1.共同相続人全員が共同して行い、2.相続債権者らに対する公告が必要で、弁済のための相続財産の換価は競売によることとされ、3.相続人が複数の場合は、相続人の中から相続財産管理人の選任を要するとされるなど、厳格な手続きが予定されています。
④ 第二に、限定承認では相続不動産の値上がり益が確定したものとして、自動的に被相続人に対してみなし譲渡所得の課税が行なわれ、相続開始後4か月以内に準確定申告しなければなりません。したがって、相続不動産の相続時評価額が取得額等を上回る場合や、取得額が売買契約書等によって明らかにならない場合には課税リスクがあります。
⑤ 第三に、限定承認の中に、相続財産の債務超過が明らかになった場合、限定承認者や相続財産管理人は相続財産の破産を申し立てることができますが、これは義務ではありません。したがって、破産を申立てないなら、債権者を説得して按分弁済による任意整理を行うことになりますが、債権者はこれに同意する義務はありませんので、暗礁に乗り上げるリスクがあります。
⑥ 第四に、限定承認者や相続財産管理人の責任は重いにもかかわらず、相続財産の中から当然には報酬を得られません。
⑦ 以上から、相談者に限定承認を勧めると思惑違いになりかねませんので、事前に、問題点を説明しておく必要があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例57 使途不明金の扱い

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【終活・遺言・相続相談】相談例57 使途不明金の扱いについての記事です。

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【相談内容】
相談者(62歳女性)から、「1年前に施設で亡くなった母(90歳)の遺産が預金300万円だけだったので、おかしいと思って取引履歴を調べたら、相続開始の4年前に窓口で定額預金1000万円を解約し、3か月前に50万円ずつ14回にわたって700万円の普通預金ATMで引き出されていた。相続人は私と弟(59歳)だけで、かつて母と同居していた弟が預金を抜き取ったに違いない。そこで、(弁護士には委任せず)出金された1700万円を遺産に含めて遺産分割調停を申し立てたが、弟は「しらない」の一点張り。調停委員も「その問題は遺産分割調停では扱えない」といって取り合ってくれない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
使途不明金(不正出金)の問題は、遺産分割の付随問題の典型例で、相続分野におけるもっとも難解な論点の一つです。相談者の現実的な選択肢としては、調停不成立として審判を求めるか、調停を取り下げて不当利得返還請求又は損害賠償請求の訴訟を提起するしかなさそうですが、提携先の弁護士を紹介する等します。

【1】遺産分割の付随問題

① 「遺産分割の付随問題」とは、遺産分割の当事者などとの間で発生する種々の法律問題のうち、遺産分割審判の対象外の事項とされ、別の法的手段により解決せざるを得ない問題のことです。
② 具体例としては、使途不明金の他に葬儀・埋葬の関連費用、祭祀承継、遺産管理費用及び収益の分配、相続債務の整理・分配などが挙げられます。
③ ことに相談例のような場合、相続開始時に残っていた預貯金の額よりも使途不明金の額の方が大きいので、相談者とすれば、使途不明金を含めた分割でなければ納得できず、遺産分割調停での当事者の主張は先鋭に対立します。

【2】調停委員会の対応

① 付随問題は、もともと遺産分割の対象ではありません(この点で前提問題と異なります)。もちろん相談者が使途不明金に関する主張を諦め、現存する預金300万円のみを対象とする遺産分割で我慢するなら別ですが、それは難しいでしょう。
② そこで、遺産分割調停の2、3回目の期日までに使途不明金の扱いについて当事者が合意できる見通しがなければ、調停委員会は、調停を不成立として遺産分割審判に移行するか、遺産分割調停を取り下げるかを選択するように求めます(当事者が前提問題について合意できる見込みがない場合も同様です)。

【3】相談者の選択肢

① このような場合、相談者としてはどのように対応するべきでしょうか。
② 第一に、現存遺産(300万円)のみを対象とする遺産分割調停を成立させ、その後に、弟に対する不当利得返還請求や不法行為による損害賠償請求の訴訟を提起することが考えられます。
③ しかし、その訴訟で、弟が一転して使途不明金は母から贈与されたと主張するかもしれません。そこで、この方法を選択する場合には、一部分割である旨、あるいは使途不明金は贈与(特別受益)ではないことを確認しておくべきでしょう。
④ 第二に、調停を不成立として審判に移行した場合、使途不明金は遺産分割の対象ではないため、現存遺産のみを対象とする審判が下されるはずです。
⑤ そしてその後の不当利得返還請求等の訴訟で弟が使途不明金を特別受益と主張した場合は先程と同じ問題になりますが、その場合には審判をやり直すことができません。
⑥ また、遺産分割の調停や審判で時間を空費した後、しばらくしてから不当利得返還請求等の訴訟を提訴する場合は時効を援用される可能性もあります。
⑦ 第三に、調停委員会の勧めに従って調停を取下げ、不当利得返還請求等の訴訟により、遺産分割に先行して使途不明金の問題を解決する方法もあります。手戻りになるので、相談者としては不本意でしょうが、負担になるのは相手方(弟)も同様です。
⑧ 展開次第では訴訟中の和解による(遺産分割を含めた)解決もあり得ますので、これを勧めるのも選択肢の一つになります。
⑨ ところで、以上の選択肢は、いずれも不当利得返還請求等の訴訟を予定するものです。しかし、不当利得返還請求等の訴訟で勝訴できなければ、絵に描いた餅にすぎません。そこで、不当利得返還請求等の訴訟において勝訴の見込みがあるか否かを検討し、その見込みが薄いのなら、第四の方法として、譲歩の姿勢を見せながら少しでも有利な条件の下で遺産分割調停を成立させるべきでしょう。

【4】別訴における勝訴の見込み

【4-1】出金者の特定

① 通帳や取引履歴によって、被相続人名義口座からの相続開始前の出金が見つかっても、それだけでは誰が出金したのかわかりません。
② 相談例では、4年前の窓口での定額預金解約の際には本人確認されたはずですが、弟が母に同行し、出金伝票に代書して出金している可能性もあります。そこで、(弁護士照会制度を利用して)出金伝票を入手し、その筆跡・印影や本人確認書類によって弟との関与があったか否かを確認します。
③ 他方、当時の母の介護認定の調査票、主治医の意見書、介護記録などによって、母の健康状態や認知症の程度を調査し、母自身の意思によらない出金の可能性があるかを検討します。
④ 次に、相続開始3か月前のATMでの出金については、弟がキャッシュカードのありかや暗証番号を知っていた蓋然性があること、当時母が施設に入所していたことに加え、出金したATMが被相続人が入居していた施設から遠く、弟の生活圏(自宅や勤務先の最寄り駅)にあるといった事実が認められれば、弟が母のキャッシュカードを利用して出金できたと推定できそうです。

【4-2】出金の使途

① 弟が出金への関与を認めざるを得なくなっても、弟は、その使途について、1.母に出金金額を手渡した、2.母の生活費や自宅改修費用等に使った、3.母から贈与された、4.母から借りた(預かった)と反論する可能性があります。
② しかし、1.については、母に多額の出費を要する事情が見つからず、入所中の施設でも多額の現金を保管できなかったといった事情があれば弟の主張は不合理ですし、2.についても使途や領収証が明らかにならなければ同様で、不当利得返還請求等が、認められる可能性が高くなります。
③ また、3.の贈与を主張するなら(持戻しの免除の問題はあるとしても)特別受益として遺産分割で考慮されるべきことですし、4.については、貸金返還請求や預託金返還請求となるだけです。
④ こうしてみると、弟の側も使途不明金の説明に窮しますので、調停では「知らない」の一点張りということが起こります。しかし、不当利得返還請求等の民事訴訟になれば、何らかの説明が求められますから、これらの訴訟を利用した方がよい場合があると思います。

【4-3】遺産分割調停における方針

① 以上からすると、係属中の遺産分割調停においては、弟に証拠を突き付けて使途不明金への関与を認めさせ、それが贈与(特別受益)でないことを書面によって明らかにさせるべきです。
② 一方、母の認知症が軽度で、ある程度の意思能力が維持されており、むしろ母は傍にいる弟を頼りにしていた(生活費の出金を任せていた)等の事情があって、一部でもそれなりの領収証が提出されるなら、弟に対する包括的委任関係が認められ、不当利得返還請求等が棄却される可能性が出てきます。したがって、そのような場合は、無理をせず遺産分割調停の中で問題を解決すべきでしょう。
③ 以上のように、使途不明金の問題の解決には、事実の調査、法的評価や手段選択についての専門的な知見が必要ですので、弁護士への委任は不可欠と考えられます。

【4-4】相続税との関係

① 使途不明金については、税務面での問題があります。まず、相続開始3か月前の700万円の出金は、それが贈与だったとしても遺産とみなされ、相続税の課税相続財産に含まれます。
② 次に、4年前の1000万円の出金は、税務調査の末、弟名義の預金口座への同時期、同額の入金が確認できれば贈与とみなされ、弟に対して、多額の贈与税や無申告加算税が課税される可能性があります。そして、弟がその負担を免れるためには、税務署に対して、これは預かり遺産だと主張せざるを得ません。
③ しかし、その場合には全体の相続税額が変更されるため、弟のみならず、相談者も修正申告が必要になります。したがって相談者としては、弟が遺産分割調停で、使途不明金につき特別受益と持戻し免除を主張した場合でも、贈与税課税の可能性を指摘し、あるいは、やがて生じる相続税申告との矛盾を指摘して交渉できる可能性があります。
④ なお、同様のことは名義預金に関しても言えます。このように、使途不明金、生前贈与(特別受益)、名義預金等に関しては、課税上の問題を指摘して、遺産性を認めるように相手方を説得できる可能性があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例56 調停不成立と遺産分割審判

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【相談内容】
相談者(52歳男性)から、「亡母(享年83歳)の相続の件で弁護士に依頼し、長女(55歳)と次女(53歳)を相手方として遺産分割調停を申し立てたが話し合いがまとまらず、調停委員から、このままでは次回調停期日に調停を不成立とし、後は審判で判断してもらうことになると言われた。今の弁護士は信用できないので、審判になったらどうなるのか教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
この相談内容も行政書士や司法書士では対応できない、弁護士さんの独占業務の内容ですが、関連する相談として取り上げます。
遺産分割調停を不成立として、遺産分割審判に移行するとなった段階で、依頼人がようやく思惑通りにいかないと気づくことがあります。そうすると依頼人が依頼していた弁護士に対して不満を持ち、このような相談に来られることがあります。こういう事態を避けるためにも、遺産分割調停が不成立になり、遺産分割審判に至った場合を予想して、弁護士の先生方は依頼人に、説明しておく必要があります。

【1】遺産分割審判の説明

遺産分割の審判について相談者に説明すべき点は、概ね以下のとおりです。

【1-1】遺産分割審判の進行

① 遺産分割調停が不成立になれば、自動的に遺産分割の審判に移行します。遺産分割の審判は、裁判官が一切の事情を斟酌して遺産の分割方法を決める手続きです。
② 遺産分割調停の申立てから調停成立や遺産分割の審判迄の平均審理期間は、約12か月とされています。審判手続きでも、当事者の意見を聞き、あるいは立証を尽くさせるために審問が開かれることはありますが、調停事件で提出した書面や資料で十分と判断されたときには審問は開かれません。したがって「第一審がダメならば、第二審で最初から」という考えは通用しません。
なお、審判に対しては、2週間以内に即時抗告できます。

【1-2】遺産分割審判の対象となる遺産

① 遺産分割の対象となる遺産については、相続開始時点に存在していても、審判時に現存しないものは、審判の対象にはなりません。ですから、相続開始後に処分されてしまった遺産も対象にはなりません(民法906条の2第1項によって遺産とみなされるものは例外です)。
② また、審判では、当然分割される不当利得返還請求権や損害賠償請求権などの債権も、当事者間が審判対象とすることに合意していなければ対象外です。その結果、審判対象は、主として、審判時に現存する不動産と預貯金と株式になります。

【1-3】遺産の評価

① 遺産の評価については、特別受益や寄与分の計算では相続開始時の評価が基準になり、遺産分割の審判では分割時における評価が基準になります。
② 不動産については、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、実勢(鑑定)価格とするのかなどといった問題があるため、裁判所の手間を省くためにも、遺産分割調停の段階で、当事者にどの評価方法を採るのか合意しておくべきです。
なお、不動産や非公開株式の評価に関しては、抗告審での再燃を防ぐために鑑定が推奨され、費用を予納すれば鑑定はほぼ認められます。

【1-4】不動産の処分

① 審判は後見的立場からの具体的妥当性を重視するので、当事者の意図したとおりの分割にならないこともあります。たとえば、ひきこもりの相続人を自宅から追い出したいといった主張は、かえって裁判官の心証を害することになりかねません。
② また、遺産の価値の大半を自宅が占めるような場合は代償分割の審判が合理的ですが、相続人に代償金を払うだけの資力がないなどの事情を勘案し、当事者が望まなくても、自宅の任意売却や競売による換価を命じたり、共有分割の審判が下されることもあります。

【1-5】寄与分を定める処分の審判

① 特別受益の主張に関しては遺産分割審判の中でも考慮されますが、寄与分は、審判に移行した後、改めて家庭裁判所が定める期間内に寄与分を定める処分の審判を申立てる必要があり、それを怠ると遺産分割の審判の対象外とされることがあります。

【2】審判の予想

① 相談例では、相談者が申し立てた遺産分割調停の争点が明らかになっていません。そこで、相談者からこれまでの遺産分割調停の経過について事情を聞き、審判に移行することが相談者にとって有利か不利かを考えます。
② たとえば、相談例において、相談者が長女や次女の特別受益(あるいは使途不明金や名義預金)を問題にしたのに、長女や次女がこれを否定し、調停委員会もそれを追求してくれないというパターンが考えられます。
③ もちろん相手方に特別受益があることは相談者の側で主張立証しなければならず、それが奏功しないなら、特別受益がないものとして審判される可能性が高いでしょう。そうすると、調停不成立にするよりはむしろ調停で妥協を図った方が相談者の利益になるでしょう。
④ また、相談者の言い分が、自分は長男だし両親の面倒をみてきたことが評価されないのはおかしいとか、亡父の一次相続では長女や次女が得をしたので、今回は譲れないといった程度の主張であれば、審判でそれらの主張が認められる可能性は少ないので、調停不成立は避けたほうがよいと思われます。
⑤ 逆に、長女や次女の特別受益等については十分な主張立証があるものの、長女や次女が頑なにそれを認めない場合や、調停にも出頭しないような場合も考えられます。この場合にはむしろ審判を下してもらった方がよいでしょう。
⑥ なお、家庭裁判所は、調停が成立しない場合でも、調停に代わる審判をすることができます。これは、他の相続人は同意しているのに相続人の一人だけが調停案を頑固に拒んでいる場合や、調停期日に出頭しない場合に用いられます。
⑦ 相談例でも、調停委員会は、調停不成立とするのではなく調停に代わる審判を下す可能性がありますが、これによってある程度審判の結果を予想できること、調停に代わる審判に対しても異議を申し立てれば、審判に移行することを説明します。