【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q49 異なる宗教の霊園の墓地購入

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【Q49】私は、キリスト教を信仰しています。「過去の宗旨宗派は問いません」という広告を見て、霊園の墓地を見学しました。その霊園では、霊園を経営する寺院の信者にならなければならないと聞かされました。墓地は公共性が強いものなので、このようなことは許されないと思いますが、いかがでしょうか。

【POINT】
① 墓地の経営母体による違い
➁ 寺院の信教の自由との調和

1⃣ 墓地の種類
① 「墓地」と一口に言っても、現実にはいくつかの形態にわけることができます。例えば、墓地の経営母体に着目して分類すると、まず、⑴国や地方公共団体が経営する「公営墓地」、⑵それ以外の「民営墓地」に分けられます。
➁ そして、民営墓地についてさらに、㋐寺院が経営する「寺院墓地」、㋑その他宗教法人や公益法人が経営する「公益法人墓地」とに分けることができます。
③ 墓地を経営する主体がこれらのうちのどのような団体であるかによって、ご質問のような条件を付すことについての可否は異なります。

2⃣ 公営墓地
① 公営墓地の場合は、宗旨・宗派による制限は一切ありません。経営主体である国や地方公共団体が特定の宗教と結びつくことは、憲法によって禁じられています。
➁ したがって、公営墓地について、墓地使用権者を宗旨・宗派により限定することは、憲法上の問題が生じ、許されません。

3⃣ 寺院墓地
① これに対し、伝統的な寺院墓地では、その寺院の墓地使用権者になるためには、当該寺院の檀徒となることが必要とされているのが一般的です。
➁ その背景として、江戸時代幕府がすべての者をいずれかの寺院に所属させる寺請制度を採用し、宗門人別帳を一種の戸籍のように用いたことから、寺院ではその寺院に帰依する檀信徒のみが埋葬されてきました。その慣行が現在まで存在しているのです。
③ もう一つに、寺院には信教の自由が保障されていることがあります。墓地の使用を、自寺院の檀信徒のみに限定することは、信教の自由すなわち寺院の宗教活動の自由に含まれると考えられます。
④ そこで、寺院が自寺院の檀信徒のみに墓地の使用を認めることについては、法律上何ら問題ありません。ご質問のような条件を付することは違法ではありません。

4⃣ 公益法人墓地
① 伝統的な寺院墓地を除いた寺院経営墓地やその他の公益法人経営墓地(俗に霊園墓地と呼ばれることが多い)では、宗旨・宗派を問わないのが一般的です。
➁ 墓地の経営母体が寺院であっても、自宗派以外の者に対し、墓地の使用を認めることもまた信教の自由、寺院の宗教活動の自由に含まれるからです。その他の公益法人の場合には、特定の宗教団体が母体ではないからです。
③ もちろん、このような霊園墓地においても、霊園使用権者を霊園経営主体の宗旨の信奉者に限るとするものもありますが、墓地購入者を広く募集するという観点から、宗旨・宗派を問わないとする場合が多いように見受けられます。

5⃣ 墓地購入後に改宗した場合
① もっとも、当初、ご質問のような条件に同意して墓地を購入し、当該寺院の信者となったものの、その後、他の宗教を信仰するに至り改宗した場合には、前記寺院墓地といえども、埋葬自体を拒否することはできません。
➁ これは「埋葬拒否」の正当理由の有無という形で争われました。裁判例では、寺院の信教の自由よりも墓地使用権者の信教の自由が優先すると考え、寺院は改宗者の埋葬そのものを拒絶できないとしています。公衆衛生の観点からも埋葬拒否は許されないと考えられます。
③ 一方、埋葬の際に行う典礼に関しては、裁判例は、反対に寺院の信教の自由が優先し、墓地使用権者が他宗派による典礼を望む場合でも、寺院はこれを拒否することができるとしています。

【墓地・葬儀のトラブルQ&A】Q48 墓・納骨堂の種類

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【Q48】現在、妻と二人で「墓探し」をしています。墓・納骨堂にもさまざまな種類があるようですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

【POINT】
① 経営主体による違い
➁ 外形・納骨方法による違い
③ 管理・供養システムによる違い

1⃣ 経営主体による違い
① 一般の墓所、樹木葬、納骨堂問わず、遺骨を永続的に納めることを目的につくられるものは、墓地埋葬法の規定に基づき、都道府県知事の許可が必要です。
➁ 墓地、霊園の経営については永続性・非営利性が求められるため、株式会社等の営利法人による経営は許可されていません。
③ 現在販売されている墓地を経営主体に分けると、都道府県や市区町村などの自治体による「公営墓地」、寺院の境内もしくは隣接する場所にあり、檀信徒加入契約が必要になる「寺院墓地」、経営主体の名義は宗教法人等であっても石材店や開発業者が開発・販売に携わっている「民間墓地」に大別できます。
④ 「公営」に対して「民営」ではなく「民間」と称されるのは、民間業者は経営主体ではなく、あくまで開発・販売に参画している事業者であるという位置づけの為です。
⑤ それぞれの特徴を整理すると次のようになります。
⑴ 公営墓地
(メリット)
・経営・管理体制が比較的安定している。
・墓地使用料に割安感がある。
・宗教・宗旨・宗派不問。
・自分で石材店を選ぶことができる。
(注意点)
・募集数が少なく、募集時期が限られている。
・申込み資格に制限がある(遺骨の有無、在住歴など)。
・新規販売の区画ではなく、過去に別の墓があった区画が整地され販売されることも多い。
・墓石の形に制限があることもある。
⑵ 寺院墓地
(メリット)
・日々の勤行によって供養の空間が完成されている。
・都市部では比較的立地の良い場所にある。
・管理が行き届いている。
・管理規約等によらない融通が利くこともある。
(注意点)
・宗教・宗旨・宗派が制限されている。
・寺院との相性、住職の人柄などに左右される場合がある。
・石材店を指定されることがある。
・墓地使用規則がなかったり、墓地使用料、管理料などが明確にされていない場合もある。
⑶ 民間墓地
(メリット)
・販売数が多いので入手しやすい。
・申込みの資格制限が緩やかで、条件を気にせず選ぶことができる。
・墓石のデザインの自由度が高いところが多い。
・宗教・宗旨・宗派不問。
(注意点)
・墓地使用料・管理料は公営に比べて割高。
・石材店は指定業者制になっている。
・公共の交通機関を利用しにくい場所にあることも多い。
・管理や運営に差がある。
⑥ 地方に行くと、田畑の一角、山の一角、自宅の一角などに墓地を目にすることもありますが、これは「墓地埋葬法」が制定される以前(1948年以前)に作られたものです。
⑦ これらは法律施行以前に使用されている墓地または墓地経営の許可を受けたとみなされる者が経営している墓地で、「みなし墓地」と言われています。
⑧ みなし墓地については墓石の建替えや区画のリフォームは可能ですが、土地の使用権が複雑だったり、そもそも地目が墓地となっていないこともあり、新規で売り出されるケースはそう多くありません。

2⃣ 外形・納骨方法による違い
① お墓を見た目による違いで分類します。墓石を使用するタイプを一般墓とすると、樹木をシンボルとする墓所を樹木葬墓地といい、屋内にある遺骨の収蔵施設のことを納骨堂といいます。
➁ 墓石の形について、かつては縦長の和型の墓石が主流でしたが、近年建墓される墓の約4割は洋型といわれる横長タイプになっています。
③ 洋型の墓石には、「○○家」といった家名ではなく、「夢」「絆」「愛」「偲」といった文字が刻まれていることも多く、オブジェのようなお洒落な墓石も増えています。
④ 樹木葬墓地というと、「遺骨が自然に還る」「墓石が不要なので安い」というイメージをもつ人が多いのですが、骨壺を利用して納める場合もありますし、複数人分となると従来の墓石型墓地より割高になってしまうケースもあります。
⑤ 都市型の樹木葬墓地の場合は、墓石やタイル状のプレートをセットで購入しなければいけないところもあったり、そもそも樹木がほとんどない墓地でも樹木葬と称されていることもあり注意が必要です。
⑥ 納骨方法は、前述のように陶器等の骨壺に納めるケース、土に還るタイプの骨壺に納めるケース、遺骨をパウダー状にして土に納めるタイプなどなどさまざまです。承継を前提とするのか、また永代管理・永代供養システムの有無なども墓地によって異なります。
⑦ 一般墓と樹木葬の間をとったような外形をしているのが、芝生墓地です。各区画に外柵を造らず、芝生に背の低い墓石を置くシンプルなタイプですが、そこにシンボルツリーが植樹されていると樹木葬墓地と称されることもあります。
⑧ 納骨堂は都市部を中心に年々増加しています。納骨堂には納め方や参拝方法により、棚に並べて納める「棚式」、鍵付きロッカーに納める「ロッカー式」、仏壇と納骨堂が一体となった「仏壇式」、屋内に設置した墓石の中に納める「墓石式」、近年急速に増えている「自動搬送式」等があります。
⑨ 納骨堂は草むしりや清掃などメンテナンスの必要がなく、セキュリティ完備、立地条件等交通至便な場所に多く、購入費用も墓石を建てるよりリーズナブルです。
⑩ 特にカードをかざすと、遺骨を納めた納骨箱(厨子といわれる)が目の前に出てくる「自動搬送式」納骨堂は、高級感あふれる設備や共用スペースの充実度から注目を集め、近年都市部を中心に急増しています。

3⃣ 管理・供養システムによる違い
① 近代の日本の墓システムは「継ぐこと」を前提とする承継墓が主流でしたが、最近はそれを前提としない「永代管理」「永代供養」というシステムが注目されています。
➁ 「永代」とは、「承継者がいる限り永代にわたり」という意味です。「管理」は字のごとく管理をすることで、「供養」は仏教から派生した言葉なので、管理に加えてそこに宗教儀礼が伴うことを意味します。
③ つまり管理者が承継者に代わって管理・供養をするシステムのことで、墓の形やタイプを問いません。墓石を使用する一般墓であっても、近年は「期限付き墓地」として販売されるところもあります。このようなタイプは、一定期間を過ぎると遺骨を取出し別の合葬墓などに移して永代供養されます。
④ ご質問のようにご夫婦二人で入るお墓をお考えの場合、墓守がいない状況なら「永代管理」「永代供養」システムのあるお墓を選ぶとよいでしょう。
⑤ ただし、「供養」といってもその定義はまちまちで、何をもって供養とするかは寺院によって異なります。例えば毎年、個々に法要を行うことを供養とするのか、年に一回の合同法要を供養とするのかでも異なりますので、永代供養墓を購入する際は確認をしておくと良いでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q47 受け取った香典の帰属

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【Q47】父が亡くなった際、家族で相談のうえ、母が喪主になり葬儀を執り行いました。父の会社関係者のみでなく、兄や姉、自分の知人からも多額の香典を受け取りました。
葬儀の際の会計帳簿は母を補助していた兄が作成しましたが、母と兄は「香典は葬儀費用に使用した後、香典返しや法事の費用に使うつもりだ」と、収支を明かにしてくれません。香典の残額は遺産として相続人間で分割すべきではないでしょうか。

【POINT】
① 香典とは、どのような性質を持ているのか
➁ 香典を葬儀費用に充てた残額は、遺産に準じて扱われるべきか

1⃣ 香典の性質
① 香典は、葬儀の際に喪家に送られる金銭や物品などの贈与品を指しますが、現在では金銭による香典が一般化しています。
➁ 元来、香典には社会習俗・慣行に根差したもので、その意味合いも一様ではありませんが、香典には葬儀という不時の出費に対して喪家の負担を軽減し、同時に他日の援助を期待する相互扶助の意味合いもあるようです。
③ 葬儀への参列も死者や遺族との日頃の付き合い関係を表明する重要な機会であり、香典はその際に喪主や家族への見舞いとして贈られる儀礼的な意味合いをもつものです。さらに、忌中明けなどに、香典の半額程度の品物を返礼として贈る香典返しという慣習も存在します。
④ このように、香典は、慣習的に行われてきた一種の贈与と言えますが、誰に対する贈与、つまり受遺者は誰と考えたらよいのでしょうか。
⑤ 香典は直接的には、亡くなった父(被相続人)やあなた方兄弟姉妹との人間関係に基づいて送られたわけですが、死者には権利が帰属することはありませんので、被相続人は受遺者にはなりません。
⑥ また、あなた方と香典の送り主(贈与者)との人間関係は、香典を贈る動機の一つには含まれるでしょうけど、香典を贈る目的は、葬儀費用の一部に充ててもらうことにより、遺族の負担を軽くすることにあります。
⑦ そこで、香典は、葬儀の主宰者として、葬儀の準備や手配を行い、葬儀を実施する責任を負う喪主に対して贈られたものと考えられます。したがって、香典の受贈者は喪主であり、葬儀費用に充当されるべきということになります。

2⃣ 葬儀費用に充当した香典の残額がある場合
① 香典は、葬儀に関連する出費に充当されることを目的に支払われたものであれば、慰霊金といった名称が使用されていても同様に扱われます。
➁ したがって、これらを含む香典を、喪主が葬儀費用に充当すること、さらに、香典返しなど、葬祭に関連する諸費用に充てることも問題はありません。
③ それでも、香典が残った場合は遺産に準じて扱うべきでしょうか。この点については、喪主が葬儀を主宰し、葬儀費用を負担する以上は、香典は喪主に帰属しこれを葬儀費用に充当した余剰があったとしても、香典の残額も喪主に帰属すると考えられています。
④ したがって、香典の残額について、喪主は裁量によって、今後の祭祀費用に用いたり、福祉事業に寄付したり、あるいは、相続人に分配することもできますが、相続人側から遺産として分割を要求することはできません。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q46 葬儀費用の負担者

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q46 葬儀費用の負担者ついての記事です。

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【Q46】父が亡くなり、相続人は兄、私、妹の3人で、実家の地元に残り父のそばにいた次男の私が葬儀社と契約を行いました。実家は寺の代表的な檀家で伝統ある旧家ですので、葬儀社に任せる形で旧家にふさわしい大掛かりな葬儀を行い、高額な費用が掛かりました。
喪主は長男が務め、葬儀費用は私が立て替えのつもりで葬儀社に支払いました。ところが兄は、私が勝手に契約した葬儀だといい、立て替えた費用を支払ってくれません。葬儀費用は喪主が負担するものではないのでしょうか。

【POINT】
① 葬儀費用は誰が負担するべきか
② 葬儀費用として負担者に請求できる相当な金額は

1⃣ 葬儀費用と葬送の変化
① 国や時代を問わず、人間は葬送の儀式を営んできました。葬儀という死者との別れの儀式は、愛する者を失った生者のグリーフケアに必要な喪の作業ともいえるでしょう。
② 民法306条、309条は「葬式の費用のうち相当な額」について先取特権を認めています。貧しい人であっても葬儀が必要だと判断されているからです。
③ この「葬式の費用」の内容については、立法段階の議論を参照して、追悼の儀式と埋葬の費用が含まれると解されています。ただし、埋葬の費用には、墓地や墓石を購入する費用は含まれません。
④ また、通常、葬儀費用とは死者を弔うのに直接必要な儀式費用をいい、参列客への飲食の接待費用は含まれません。さらに、通夜と葬儀当日の費用のみで、四十九日や一周忌の法要の費用は含まれないとされています。
⑤ 日本の葬送産業においては、設備費と人件費を足してコストを計算し、しかるべき利潤を加えて対価を算出してそれらを対比するという通常の産業における競争原理がなかなか働きません。
⑥ 葬儀費用には、ある種の不合理な費用、すなわち「穢れ」に関与する対価、遺体に触れる作業をしてくれる人への感謝を金銭で表現したい、対価をけちると供養にならないという考えが働き、そのような考えが葬儀費用に含まれる傾向にあります。
⑦ 葬儀のあり方も多極化しています。孤独死された方の腐乱した遺体を処理し、その悪臭対処を行う業者も生まれています。
⑧ 葬儀をする場合でも、家族だけの直葬の場合から、参列者の目を意識した大規模な行事とする場合まで、選択肢の幅は非常に広く、よって、いわゆる「相当な」葬儀費用の設定が難しくなっています。どのような葬儀をするかで遺族の意見が相違している場合、慌ただしく葬儀が行われた場合には、費用負担でもめる危険性も高いでしょう。

2⃣ 葬儀費用の負担者
① 誰が葬儀費用を負担するかについては民法に規定はありません。先述の民法306条、309条も債務の負担者を定めているものではありません。
➁ この点について、学説と判例は多岐に分かれています。共同相続人全員で負担するとする説(葬儀費用は相続債務となり、相続人に分割帰属することになる:盛岡家裁昭和42年5月3日)。
③ 相続財産が負担するとする説(葬儀費用は民法885条の相続財産に関する費用に含まれる:盛岡家裁昭和42年4月12日)。
④ 喪主の負担とする説:東京地裁昭和61年1月28日。
⑤ 慣習ないし条理によるとする説:甲府地裁昭和31年5月29日。
⑥ 相当な費用は相続人の共同負担であるがそれ以上の支出は喪主の負担とする説。
⑦ これらのうち最近の有力説は喪主の負担とする説です。理由の一つは、葬儀費用でもめているケースは、遺産分割協議でももめていることが多く、遺産の中に含めて解決しようとすると、遺産分割協議が一層困難になるので、葬儀費用は遺産分割の枠外で処理した方がよいという判断です。
⑧ さらに現代では葬儀のあり方が多様化しているので、どのような葬儀が相当かということが言いにくく、「葬儀を自己の責任と計算とにおいて手配等して挙行した者(原則として喪主)の負担となると解すべき」(神戸家裁平成11年4月30日)であるという判断があります。
⑨ この場合の喪主は実質的に葬儀を自己の責任と計算とにおいて手配等した者とするべきで、形式的な喪主にその負担を負わせるのは妥当とは言えません。
⑩ 被相続人の実家家族と相続人である妻子が対立して実家家族が妻子を排除して葬儀を行い、形式的な喪主となったのは前妻の若年の子であったという前掲東京地裁昭和61年1月28日判決のケースでは「葬式を実施した者とは、葬式を主宰した者、すなわち、一般的には、喪主を指すというべきであるが、単に、遺族等の意向を受けて、喪主の席に座っただけの形式的なそれではなく、自己の責任と計算において、葬式を準備し、手配等して挙行した実質的な挙式主宰者を指すというのが自然であり、一般の社会通念にも合致するというべきである。したがつて、喪主が右のような形式的なものにすぎない場合は、実質的な葬式主宰者が自己の債務として、葬式費用を負担するというべきである」として、被相続人の兄から妻子への葬儀費用の請求を認めませんでした。
⑪ 喪主負担説に立って考えると、質問のケースでは、長男である喪主が「弟に葬儀契約締結を任せる」と事前にはっきりと委託していたのならば、喪主として単独で、あるいは少なくとも弟と共同主宰者として費用負担するべきでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q45 葬儀とグリーフケア

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【Q45】大切な家族を亡くした人は、死別の悲しみを体験するといわれていますが、この死別の悲しみは残された家族にどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、葬儀によって遺族の悲しみを癒すことはできるのでしょうか。

【POINT】
① 死別による悲嘆とは
② グリーフケアとは
③ 葬儀とグリーフケア

1⃣ 死別による悲嘆とは
1 悲嘆(グリーフ)
① 死別によって経験される「悲嘆(グリーフ)」は、一時的な反応であり、誰しも経験しうる正常な反応です。
② 通常の悲嘆は、ⅰ悲しみ、怒り、いらだち、不安、恐怖、罪悪感、絶望、孤独感、喪失感などの感情反応、
③ ⅱ否認、非現実感、無力感、記憶力や集中力の低下などの認知反応、ⅲ疲労、泣く、動揺、緊張、引きこもるなどの行動的反応、ⅳ食欲不振、睡眠障害、活力の喪失、免疫機能の低下などの生理的・身体的反応の4つに分類されます。
④ 悲嘆反応の種類や強さに関しては個人差が非常に大きく、同じ人でも時間とともに変化します。悲嘆が軽減されるのに必要な時間は、人によって大きく異なります。
⑤ 時間の経過に伴い、悲嘆は必ずしも直線的に軽減していくのではなく、気持ちや感情は波のように大きく揺れ動きます。
⑥ 故人の命日や誕生日、結婚記念日などが近づくと、故人が生きていた頃の記憶がよみがえり、気分が深く落ち込む「記念日反応」がみられることもあります。
⑦ 死別に伴う通常の悲嘆は決して病的なものではないですが、一方で新たな身体疾患や精神疾患、自死につながることもあります。
⑧ 配偶者との死別の場合には、「後を追うように亡くなる」といわれるように死亡のリスクが高まることが知られています。

2 通常ではない悲嘆
①死別による悲嘆は基本的に正常な反応であるものの、病状の持続期間と強度が通常の範囲を超え、日常生活に支障が出るような「複雑性悲嘆」と呼ばれる状態に陥ることもあります。
② 一般人口での有病率はおよそ2.4%~4.8%とされ、危険因子として、突然の予期しない死別、自死や犯罪被害による死別、同時または連続した喪失、遺体の著しい損傷、子どもとの死別など故人との間に深い愛着関係、過去の未解決の喪失体験や精神疾患歴、経済的な困窮、サポート・ネットワークの不足、訴訟や法的措置の発生などが挙げられています。
③ 複雑性悲嘆は、従来、精神疾患とは認められていませんでしたが、「遷延性悲嘆症」という疾患名が冠され、新たな精神疾患として位置づけられることになりました。

2⃣ グリーフケアとは
1グリーフケアの目的
① グリーフケアに関する厳密な定義は定まっていません。死別後の心理的な過程を促進するとともに、死別に伴う諸々の負担や困難を軽減するために行われる包括的な支援ととらえることができます。
② 死別による悲嘆は基本的に正常な反応であるものの、ときに複雑性悲嘆や、精神疾患や身体疾患への罹患、自死、死亡につながる危険性をはらんでいます。
③ このようなリスクの低減を図るため、元の正常な心身の機能を回復させることがグリーフケアの目標になります。
④ また、現実生活の困難や今後の人生設計など、故人亡き後の生活や人生をどう立て直していくかという課題にも死別に伴い直面します。必要に応じて、生活上の困難に対する問題解決的な支援も求められます。
⑤ 遺された人の抱えるニーズやリスクは多様であり、すべての人に同様の支援が必要なわけではありませんが、各人のニーズやリスクに応じた多層的な支援が望まれます。

2グリーフケアの分類
① グリーフケアは、提供される援助の内容に基づき、ⅰ情緒的サポート、ⅱ道具的サポート、ⅲ情報的サポート、ⅳ治療的介入に分類されます。
② 情緒的サポートとはいわゆる心のケアのことで、当事者の思いを尊重し、心の声にじっくりと耳を傾けることが大切です。
③ 家事や育児、経済的問題、法律問題など、目の前の現実的な困難に直面している人に対しては、問題の解決を手助けする直接的かつ具体的な支援、いわゆる道具的サポートが必要となります。
④ 情緒的サポートとは、悲嘆反応や対処方法などについての知識を提供することや、法律相談窓口や当事者団体といった各自のニーズに対応可能なサービスを提供している公的機関や民間組織など、社会資源に関する情報を提供することです。
⑤ 治療的介入とは、精神科医やカウンセラーなどによる専門的な治療のことで、うつ病や不安障害といった精神疾患が認められる場合には、薬物療法を含む精神科的治療が必要となります。
⑥ このように一般的には、故人亡き後の遺族への直接的、意図的なサポートがグリーフケアと考えられています。
⑦ 一方で、たとえば最後に故人との良い時間を過ごせたことや、故人らしい葬式を挙げられたことなど、遺族にとって少なからず救いや助けになる事象全般を広義のグリーフケアととらえることもできます。

3⃣ 葬儀とグリーフケア
1葬送儀礼や法事・法要
① 葬儀を含む死に関わる儀礼や慣習は、死者のためだけの行事ではなく、遺族にとっても重要な意義があります。葬儀や通夜といった非日常的な一連の儀式は、死を現実のものとして受け入れる手助けとなります。
② 日本独特の儀礼である拾骨儀礼、いわゆる骨揚げも死の現実を受容するための重要な手段といわれています。
③ 葬儀や通夜の場は、悲嘆の感情を公に表すことが許された社会的な機会であり、参集した親戚縁者は、故人にゆかりのある人々などと、故人の思い出やきもちを共有することは遺族の支えになります。
④ 葬儀後には各宗教儀式に則り、法事・法要が行われます。こうした儀式は、悲しみを共有する場を提供するだけでなく、記念日反応が懸念される節目の時期に行われ、加えて長期にわたって実施されるという点でグリーフケアとしての要素もあります。

2湯灌やエンバーミング
① 湯灌とは、臨終後に遺体を洗い清めることで、現在では主に葬儀社によって行われます。遺族は湯灌に立ち会い、協働するなかで、現世での故人の苦しみを洗い流せたと思えたり、死化粧を施されて穏やかにみえる故人の顔を眺めて安堵の気持ちを抱いたりします。
② 限られた時間ですが、故人を前にして、遺族同士で思い出を振り返り、思いを分かち合える機会でもあります。
③ 一方エンバーミングでは遺体の長期保存が可能となるため、急いで葬儀を行う必要がなくなり、落ち着いて準備を進めることができ、故人と顔を合わせる最後の時間をゆっくりと過ごせるようになります。
④ 死亡時の外傷や、長い闘病生活や薬の副作用によるやつれをなおし、生前の故人の顔に近づけることができます。
⑤ こうした湯灌やエンバーミングを通じて、故人が喜んでくれていると思えることが、辛い気持ちを少し楽にしてくれるかもしれません。

3墓や仏壇
① 遺族は故人のことを忘れて、新たな人生を歩み始めるのではなく、姿形はなくとも、故人とともに生きています。故人の写真を持ち歩き、ことあるごとに故人に語りかけたり、墓や仏壇の前で故人と対話したりします。朝の出かけに、夕方帰宅時に仏壇に話しかけることが日常になっている遺族も少なくありません。
② 肉体はなくとも、聞き役や相談役として故人の存在や役割は維持され、墓や仏壇は遺族が故人と向き合う窓口のような働きを有していると思われます。
③ 従来、お盆などの行事を通して死者と交わり、そして墓や仏壇を媒介として故人との強いきずなを維持し、亡き人とのつながりが、遺族の心のよりどころとなってきたのかもしれません。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q44 略式葬と親族の反対

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【Q44】現在、認知症の母を一人息子である私と妻とで介護しています。亡き父の葬式の時は何かと大変でしたので、母が亡くなった時は葬式をしないつもりでいます。その旨を母方の伯父・叔母に話したところ、こぞって反対されました。葬式はしなければならないのでしょうか。

【POINT】
① 略式葬とは何か
② 現行法が定めている「死者を葬るのに必要な手続き」
③ 略式葬の問題点

1⃣ 略式葬とは
① 最近、葬式をしないで火葬だけで済ませてしまう「略式葬」が増えています。「略式葬」は、葬式という儀礼を排するという点で、儀式を行う「無宗教葬」とは異なります。
② 都内ではすでに3割が略式葬であると言われています。なお、略式葬は、葬祭業者の間では「直葬」(ちょくそう)と呼ばれることが多いようです。
③ 略式葬が行なわれる場合には、⑴やむを得ず行われる場合と、⑵故人や遺族の自由な意思に基づいて行われる場合とがあります。
④ ⑴の原因として挙げられるのが、貧困世帯の増加と、いわゆる「孤独死」の増加です。⑵の略式葬増加の背景には、葬送に関する国民意識の変化、寺や葬祭業者に対する不信、遺族の故人に対する哀惜の念の欠如、マスコミが略式葬の存在をしばしば取り上げていることなどが考えられます。

2⃣ 死者を葬るための法的手続き
1 葬儀の基本的な流れ
① 最も多い仏式の葬儀を例にして一般的な葬儀の流れを見ますと、ⅰ臨終、ⅱ遺体の搬送と安置、ⅲ葬儀の打ち合わせと連絡、ⅳ納棺、ⅴ通夜、ⅵ葬儀・告別式、ⅶ出棺、ⅷ火葬、ⅸ骨上げ、ⅹ還骨法要・初七日法要、ⅺ納骨。
2 死者を葬るための法的手続き
① これに対して法が定めている死者を葬るのに必要な手続きは、以下のとおりです。
ⅰ死亡届の提出
① 死亡届は、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内にしなければなりません。なお、届出義務者以外の者で法に定めがある者は死亡届を提出することができます。
ⅱ火葬許可証の下付申請
① 埋葬(=土葬)、火葬を行おうとする者は、市区町村長の許可を受けなければなりません。火葬の場合、通常、死亡届に火葬許可申請書を添えて、市区町村役場の担当窓口に提出し、火葬許可証を交付してもらいます。
② 火葬する際、火葬場の管理者に火葬許可証を提出します。火葬終了後、火葬場では火葬許可証に必要事項を記入して返却してくれます。
③ 納骨する際に火葬済の証印が押された火葬許可証を墓地の管理者に提出し、焼骨を埋蔵します。
ⅲ略式葬と法律
① 以上見てきた通り、現行法で義務付けられている手続は、火葬の場合では、死亡届、火葬許可証の申請受領、そして火葬だけです。
② 納骨も法律上は義務ではなく、自宅等での保管も可能です。したがって、葬式という儀礼を省き、火葬だけで済ませてしまう略式葬も法的には可能です。
③ なお、水葬の場合については、船員法施行規則5条で「船長は、死体を水葬に付するときは、死体が浮き上がらないような適当な処置を講じ、且つ、なるべく遺族のために本人の写真を撮影した上、遺髪その他遺品となるものを保管し、相当の儀礼を行わなければならない」と定められています。

3⃣ 略式葬の問題点
① 略式葬は法的には問題はありませんが、安易に葬式なしで済ませてよいかというと一概にはそう言えないようです。
② 故人の立場から見た問題点、遺族の立場から見た問題点、精神的問題点の3点から考えられます。
③ 故人から見た問題点は、故人が葬式無用の意思表示をしていないにもかかわらず、遺族がお金を掛けたくないと火葬だけで済ませてしまう点です。故人の尊厳への配慮から、火葬のみの場合後日親族から非難され、葬式をやり直した事例もあるようです。
④ 遺族の立場から見た問題点は、遺族が故人の周囲の方々から「なぜ葬儀をしてくれなかった」と非難され、また、弔問がひっきりなしに自宅に来てその対応を迫られる点です。故人の社会的立場によっては、弔問客が多くなることが予想されます。葬儀を行うことで、その後の遺族の負担が軽減されることに繋がります。
⑤ 精神的問題点は、残された家族の死別の悲しみ、苦しさなどのグリーフは、心だけでなく、身体にも影響を及ぼす点です。葬儀を行うことで、心の区切りをつけた人はそうでない人に比べ、悲嘆(グリーフ)が解消しやすい、つまり葬儀はグリーフケアの面で有効であるということです。
⑥ いずれにしても、略式葬にするか否かは、「手間がかからない」「経済的負担が少ない」ということだけでなく、故人の生前の意思や上記問題点をよく考えて決めるべきでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q43 冠婚葬祭互助会の訪問販売

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q43 冠婚葬祭互助会の訪問販売

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【Q43】冠婚葬祭互助会業者が訪問勧誘に来て、「30万円コースに入れば市価の半額でいつでも利用できる。20年後でも利用できる」、「不要になればいつでも解約できるし、積み立てたお金は戻る」と言われました。良いことづくめに聞こえますが、信用して良いでしょうか。

【POINT】
① 葬儀費用についての不当な説明
② 中途解約
③ 清算ルール
④ クーリング・オフ制度

1⃣ はじめに
① ご質問のケースは、冠婚葬祭互助会の訪問勧誘で苦情になることが多い典型的なものです。このケースでは、多くの問題点を含みます。
② 第1に、「市価の半額で利用できる」と述べている点、第2に、「不要になったらいつでも解約できる」と述べている点、第3に「積み立てたお金は戻る」と述べている点です。

2⃣ 冠婚葬祭互助会とは何か
① 冠婚葬祭互助会とは、結婚式や葬式などが実際に必要となる前に契約し、代金を2カ月以上にわたり3回以上の分割で前払するものです。多くは、数千円ずつ数年間の分割で支払うというものです。
② 結婚式や葬式は、いつ実施することになるかは契約では決められないので、必要になった時にはいつでも利用できるという契約内容です。
③ 契約するときに、その契約で含まれるサービスの内容を決めておきます。必要になった時は契約で決めた内容のサービスを契約で決めた料金で受けることができます。
④ 最近では結婚式の利用は減り、葬式のために利用するケースが多くなっています。葬式の場合には契約してから20年後とか30年後に実施するという場合もあります。ですので、20年後でも利用できるという説明は嘘ではありません。

3⃣ 費用の説明
① 問題は「市価の半額で利用できる」との説明です。市価とは何を指しているのでしょうか。根拠が分かりません。サービスや商品の内容も分かりません。
② 他社と比較する公告のことを比較広告と言います。景品表示法による比較広告に関する考え方では、次の三つの要件をすべて満たすことが必要だとしています。
⑴ 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
⑵ 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
⑶ 比較の方法が適正であること

4⃣ 中途解約に関する説明
① 契約締結後、サービスの提供を受ける前に不要になった場合にはいつでも中途解約できることは事実です。冠婚葬祭互助会では、割賦販売法に基づく許可が必要ですが、その際には約款についても審査の対象となっています。
② 契約内容に中途解約ができることとなっていることが必要とされているので、この点は嘘ではありません。
③ 問題があるのは、「積み立てたお金は戻る」と言っている点です。冠婚葬祭互助会契約により支払うお金は、将来受ける葬式などのサービスの対価を前払いするというものであり、積立金ではありません。
④ 積立金であるという説明は、事実と異なります。また、中途解約した場合には、全額が戻るわけではなく、事業者によっても金額は異なりますが、一定の解約料は差し引かれる仕組みになっています。この点は契約書に明記されているはずなので、契約の際には必ず確認する必要があります。

5⃣ クーリング・オフ
① 訪問販売により互助会の契約を結んだり、契約してしまった場合に、やめることができるでしょうか。この場合には、特定商取引によるクーリング・オフ制度の適用があります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q42 訪問販売による契約

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【Q42】葬儀社の従業員が自宅に訪問してきて、「近くに会館ができた。事前相談の予約を受け付けているので来ないか」という勧誘をしました。断ると、「来週また来る」と言います。迷惑なので、断ることは出来ないのでしょうか。

【POINT】
① 訪問販売
② 特定商取引法による規制
③ 再勧誘の禁止
④ 契約してしまったとき

1⃣ 多い訪問販売
① 生前の葬儀契約の販売形態で圧倒的に多いのは電話勧誘と訪問販売によるものです。
② 最近では、説明会を開いたり、各種イベントを開催して、その際に相談会を開いたりして消費者から出向いてもらってじっくりと契約してもらうようにする努力や工夫をしている葬儀社などもありますが、まだ訪問販売などのよるものが多いのが現状のようです。

2⃣ 訪問販売に対する規制
① 葬儀契約の締結について訪問勧誘をする場合には、訪問販売にあたります。訪問販売は特定商取引法の規制対象になります。
② 葬儀の契約であっても同法の適用除外とはなっていません。特定商取引法では、訪問販売をする場合には、いくつかの規制を設けています。
③ 同法3条に定められていることが、事業者が勧誘のために訪問したら最初に氏名の明示をすることです。
④ 次いで、事業者は訪問販売をしようとする際に、その相手方に勧誘を受ける意思があることを確認する努力義務が課せられています。
⑤ さらに、事業者は契約しないと述べている消費者に対して居座って勧誘を続けたり、いったん帰ったものの、その後も勧誘の為に繰り返し訪問したりすることを禁止しているのです。したがって「契約するつもりはないので、もう来ないで欲しい」とはっきりと断ることが大切です。

3⃣ しつこく勧誘が来る場合
① 特定商取引法では、同法違反がある疑いがある場合には、消費者庁および都道府県が立入検査や報告徴収ができると定めています。
② 調査により違反が明白な場合には、違反の程度に応じて改善するように指導したり、違反が重大な場合には最大で2年間の業務停止と事業者名の公表ができます。
③ きっぱりと断っているのに居座ったり、しつこく何回でも訪問してくるような場合には、最寄りの自治体の消費生活センターに情報提供しましょう。
④ センターから違法行為はやめるように伝えてもらえばやめると思われます。他の消費者からの同様の苦情が多数ある場合は、上記のような行政処分の対象になる可能性があります。

4⃣ 契約してしまった場合
① しつこい訪問販売により断り切れなくなって、生前葬儀契約を契約してしまった場合の対策はクーリング・オフをすることです。
② 葬儀の生前契約ではなく、家族の誰かが亡くなった際に、訪問販売で葬儀社と契約した場合はクーリング・オフの適用除外とされています。
③ ご質問では生前契約についてですから、上記の適用除外は該当せず、クーリング・オフが使えます。それにより契約は最初にさかのぼって解消され、消費者は違約金なども含めて一切の支払を免れます。
④ クーリング・オフができるのは、消費者が事業者から申込みの内容を明らかにした書面を受け取った日か、あるいは契約内容を明らかにした書面を受け取った日かのいずれか早い方の日を初日と計算して、8日目までの消印により解除通知を出せばよいことになっています。
⑤ 事業者が消費者に渡した書面の記載内容が、特定商取引法で定めた項目について不足なく正確に書いてあることが必要です。
⑥ もし渡された書面の記載内容が不十分であったり、そもそも渡されていない場合は、契約をしてから8日を経過していてもクーリング・オフをすることが可能です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q41 病院で紹介された葬儀社の利用

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【Q41】父が病院で亡くなりました。病院からすぐに遺体を引き取ってくださいと言われ、選択の余地がないまま紹介された葬儀社に自宅まで遺体の搬送を依頼しました。
葬儀社は葬儀もまとめて行なうというのですが、遺体の搬送を依頼した以上葬儀も頼まなければならないのでしょうか。

【POINT】
① 抱き合わせ販売
② 独占禁止法違反の不公正な取引

1⃣ 遺体の搬送と葬儀
① 近年では、自宅で亡くなる場合より病院で亡くなるケースの方が一般的になっています。病院で亡くなる場合には、個々の病院にもよりますが、なるべく早く遺体を引き取るよう要求されるケースが少なくありません。
② しかし、家族は事前に心がけて準備をするような余裕はないので、慌てることになります。病院によっては、遺体の搬送をしてくれる葬儀社を紹介するところもあります。
③ 搬送してもらう際に、葬儀も一括して行うと勧誘する葬儀社も少なくありません。ご質問のケースでは、葬儀も一括して行うと葬儀社が言っているということですが、その意味がはっきりしません。論点を整理しながら考えていきます。

2⃣ 遺体の搬送だけの依頼
① とりあえず、遺体を自宅まで搬送してもらいたいという場合に、それが可能かという問題です。
② 葬儀社に依頼する場合に、依頼内容を「遺体の自宅への搬送だけ」と明確にして依頼することは可能です。その場合には、病院と自宅との搬送する距離によって価格が違う場合があるので、注意して費用の決まりについて確認しましょう。

3⃣ 搬送の際に注意すること
① このケースでは、自宅に遺体を搬送することにしているので、自宅に搬送してもらったうえで、あらためてどこの葬儀社に依頼するかを検討することになります。
② しかし、最近ではマンションで生活している人が多く、マンションによっては遺体の搬送が困難な場合があります。このような場合、葬儀社のほうで遺体を自社の関連する施設に搬送して保管できるという場合があります。
③ 自宅に遺体を搬送出来ない事情がある場合には、どこに遺体を搬送するかを決める際には、どのような葬儀を行うのか、葬儀社をどこにするのかの選択にかかわってくることもあります。ゆっくり考えるゆとりはないケースがほとんどです。

4⃣ 抱き合わせ販売の禁止
① 独占禁止法19条では、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」と定めています。不公正な取引方法は、公正取引委員会の告示によって定められております。
② その10項に「相手方に対し、不当に、商品または役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること」と規定し、抱き合わせ販売等を禁止しています。
③ 遺体の搬送に当たり、葬儀の実施の契約も一括してする必要があると主張する業者は、独占禁止法に違反する可能性があります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q40 団体契約等の割引が後から判明した場合

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q40 団体契約等の割引が後から判明した場合についての記事です。

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【Q40】父が生前所属していた団体と葬儀提携契約を締結していた葬儀社が「基本葬儀料金1割引、生花一対付き」としていました。それを知らずに、同じ葬儀社に個人で葬儀の依頼をして支払をした後にそのことを知ったのですが、差額の返金を求めることは可能でしょうか。

【POINT】
① 団体契約と個人契約の関係
② 契約の成立と効果

1⃣ ご質問の趣旨
① 父上が亡くなられたので葬儀社に依頼して葬儀を行ったところ、葬儀が終わった後で父上が生前所属していた団体がその葬儀社との間で葬儀提携契約を締結していたことが判明したという事例のようです。
② 葬儀社との葬儀契約で約束した葬儀費用は支払済みであるものの、団体との葬儀提携契約では団体の加盟メンバーであれば「基本葬儀料1割引、生花一対付き」で利用できる取り決めとなっていたので、支払済みの金額から、団体葬儀提携契約による内容に基づいた割引料金にしてもらえないか、差額を返還してもらえないかという趣旨に思われます。
③ 葬儀を実施する際の葬儀社への依頼も、団体と葬儀社の葬儀提携契約もいずれも契約です。そこで、契約問題としてどのように考えるべきかがポイントになります。

2⃣ 基本的な視点
① 消費者は自分で葬儀社との間で葬儀を依頼する契約を締結し、葬儀の実施をしてもらい代金を支払っており、契約関係は終了しています。
② 契約関係が終了した後に、亡くなった父上が所属していた団体が、たまたま今回父上の葬儀の際に利用した当該葬儀社との間で団体員が割引きで葬儀サービスを利用できる内容の葬儀提携契約を締結していたことが判明したわけです。
③ あらかじめ葬儀提携契約の存在を知っていれば葬儀提携契約によって割引料金で葬儀の依頼をすればよかったのに、知らなかったために正規料金で契約をしてしまったので、割引分を返還してもらえないかというものです。
④ 父上が所属していた団体と葬儀社との契約と、消費者が葬儀社と締結した契約は、内容も当事者も違う別々の契約です。別々の契約関係がある場合に、相互の関係はどのように考えるべきでしょうか。
⑤ そこで、団体が葬儀社と締結していた契約の内容はどのようなものだったのか、ということが重要になります。

3⃣ 団体の締結した契約
① まず、父上が生前所属していた団体とその葬儀社との葬儀提携契約の内容を確認する必要があります。
② 「基本葬儀料金1割引、生花一対付き」との規定の適用を受ける葬儀契約の範囲はどのように決められているか、その適用を受けるための要件や手続きなどについて、契約ではどのように定められているのか、その内容を確認します。
③ 葬儀団体契約の契約書などが手元にある場合には、手元の書類で確認します。手元に契約書などの契約内容が記載された書類がない場合には、父上が所属していた団体に控えか写しの発行を求めるか、葬儀社に依頼して契約書の控えか写しを交付してもらって確認してください。
④ その上で、団体に所属している本人の葬儀の際にも適用があることが確認できたら、団体割引で葬儀を依頼する場合の手続きについて確認します。
⑤ 団体員であることを証明するための資料、割引で葬儀をしてもらうための葬儀社への手続きや提出資料など、どのようなものが必要なのかを確認します。さらに葬儀が終わった後でもその手続きが利用できるかも確認します。
⑥ 以上を確認した上で、葬儀完了後であっても手続き的に可能であれば、割引分を返還してもらうことは可能です。また、事情を説明して考慮するように配慮を求めるのも一つの方法です。
⑦ ただ、団体契約による葬儀を利用する場合には、個別の葬儀の契約締結の段階で団体契約による利用であることを明示するなどの一定の手続きが必要とされている場合には、難しい可能性があります。
⑧ 葬儀社のほうであらかじめ亡くなった人が団体契約を締結している団体の所属メンバーだったかどうかなどを、葬儀のたびに調べて利用者に教えるべきだったという義務があるとまでは言えないと思われるからです。

4⃣ トラブルを防ぐために
① 生前葬儀契約の場合のところでも指摘したように、本人が亡くなった時の葬儀の実施については、契約した本人は亡くなっているために、本人に生前契約していたのか、どの葬儀社としていたのか、その内容はどのようなものだったのか、などを本人に直接確かめることができません。
② 亡くなった父上が所属していた団体が葬儀社と葬儀提携契約を締結していたことやその内容なども、亡くなった父上に直接確認することは出来ないことは、生前葬儀契約の場合と同じです。
③ 自分が死亡した後の葬儀に利用することができる制度がある場合には、自分が元気なうちに葬儀を実施することになる家族の方たちと情報を共有しておくことと、詳しい契約内容などのわかる資料をきちんと整理して共有しておくことが重要です。