【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q24 生前葬儀契約の注意点

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【Q24】葬儀社から「今、生前予約をして30万円前払すれば50万円のコースと同額の葬儀ができる」と言われました。まだ60歳であり、将来のことまで分からないので悩んでいます。

【POINT】
① 生前葬儀契約とは
② 生前葬儀契約の危険性

1⃣ 多様化する生前葬儀契約
① 最近では、自分が死んだあとの葬儀のことを考えて生前に自分のための葬儀の手配を考えたい人が増えつつあるようです。
② 雑誌の企画や消費者向けの講座などでも生前葬儀契約に関する講座は人気があるようです。
③ こうした事情が背景にあり、自分の生前に葬儀のための契約ができるタイプの契約もいろいろなものが出てきています。
④ かつてはこの種の契約としては冠婚葬祭互助会がある程度でしたが、現在では冠婚葬祭互助会以外のタイプのものもいろいろ出てきています。
⑤ ご質問のケースは勧誘内容しか分かりませんので、具体的にどのような内容の契約であるか不明です。ここでは、生前葬儀契約として可能性のあるものを考えていきます。

2⃣ 1回払いや2回払いの生前葬儀契約
① 最近販売されるようになった生前葬儀契約として、葬儀代金を契約時に一括払い、あるいは2回払いで自分が死んだ後の葬儀をパックで契約するタイプのものがあります。
② このタイプでも、事業者は質問にあるような勧誘を行うことが多いようです。
③ このタイプの契約で注意しなければならない点は、自分が死んで葬儀が必要になった時に、契約した事業者が存在していて経営状態も安定しており契約通りに葬儀を実施できる保証はない、ということです。
④ 冠婚葬祭互助会の場合には、割賦販売法に基づき経済産業省の許可が必要で、さらに同法では消費者が前払した金額の2分の1は保全する義務があると定めています。
⑤ しかし、1回払いや2回払いの生前葬儀契約の場合には、法律による規制は一切ありません。どのような事業者であっても個人でも、資産の規模などに関係なく自由にビジネスとして行うことができます。
⑥ 監督官庁などで経営状態をチェックする仕組みはありません。契約する消費者個人が契約相手の事業者が将来葬儀を実施できるかどうか判断しなければなりません。

3⃣ どのような葬儀をしたいか
① 第2に、自分がいつ死ぬかということは予想がつきません。自分が死んだときにどのような葬儀をするのが良いか、葬儀を行う家族にとって納得できるかということについて、今の時点で適切に判断することができるか、ということも大きな問題です。
② 葬儀のあり方や考え方が大きく変化している時代です。葬式の祭壇、棺のデザインや品質なども今決めてよいものかどうか。
③ また亡くなる本人の考えと残される家族の考え方が一致するとも限りません。

4⃣ 遺族との情報共有
① 第3に、生前葬儀契約は、契約した本人が死亡した場合に契約による葬儀が実施されるというものです。契約による債務の履行が必要になった時点では、契約者はもういないのです。
② したがって、生前葬儀契約をしたことやその具体的な内容を本人しか知らないのでは、契約した意味がありません。
③ 葬儀を行う遺族となる家族の人たちが、本人が契約した生前葬儀契約の内容なども含めてよく承知していることが必要です。
④ 具体的には、契約の際に本人とともに家族が同席して契約の締結や内容についても知る機会を持つこと、さらに契約した場合には、契約で事業者が約束したサービス内容を明確かつ平易な内容の書面として作成して保管しておくことが重要です。
⑤ 冠婚葬祭互助会も含め生前契約では、本人が死亡した時には生前契約のあることを誰も知らず、したがって別の葬儀業者に依頼して葬儀を実施してしまうことがよくあると言われています。契約時に家族が同席するあるいは契約内容を家族に周知することは不可欠と言えます。

5⃣ 契約内容は何か
① 冠婚葬祭互助会も含めて生前の葬儀契約では、「ここで契約しておけば、これですべての葬儀を行うことができて、一切金銭的な負担はかからない」と期待して契約する人が多いと思います。
② しかし、生前葬儀契約を利用していた場合でも追加費用が発生することがあります。生前葬儀契約では、葬儀を行う場合に必要な一定のサービスがパックされたパック商品です。問題はどのようなサービスが含まれているかということです。
③ 通常葬儀には、病院から自宅迄の遺体の搬送、枕飾り・祭壇の貸与、棺の販売などは含まれているのが普通です。ただし、病院と自宅が遠い場合追加料金が発生する場合もあります。
④ 自宅ではなく、斎場での葬儀をしたいと思っていても斎場の利用料金は含まれていない場合もあります。葬式の司会やアシスタントの人数、棺や祭壇のランクなどで価格は違ってきます。パックではどのような品質か注意が必要です。
⑤ さらに、火葬費用、火葬場までのタクシー代、食事代、お返しの費用などはパックに含まれていないことが普通です。霊柩車による火葬場への搬送費用、民間火葬場の場合は火葬費用が発生します。
⑥ お経をあげてもらったり、戒名をつけてもらう際の寺院へのお布施も別途必要となります。
⑦ 生前葬儀契約の場合、時間はあるので、何が含まれているのか、別途どのような費用が必要となるのかなど、よく検討することが大切です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q23 冠婚葬祭互助会契約の解約

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【Q23】70歳の父が将来の葬儀のことを考えて、36万円36回払の冠婚葬祭互助会の契約をしました。知人から「36万円で全部できるわけがなく、追加料金が発生する」と言われ、全部できると思って契約したので、それなら辞めたいと思い解約したいと告げたところ、「6回分の支払済み金額は解約手数料で戻らない」と言われました。正当な言い分でしょうか。

【POINT】
① 冠婚葬祭互助会とは何か
② 冠婚葬祭互助会の中途解約
③ 解約料の妥当性

1⃣ 冠婚葬祭互助会とは
① 冠婚葬祭互助会とは、葬儀や結婚式などが必要になった場合にサービスの提供を受けることを約束して、その対価を2カ月以上にわたり3回以上に分割して支払う契約を指します。数年間にわたり数千円程度を分割払いで支払うものが多くみられます。
② 分割による前払の方式をとっていることから、冠婚葬祭互助会は割賦販売法の規制が及び、経済産業省の許可が必要です。
③ 営業所ごとに営業保証金の供託が必要で(主たる営業所は10万円、その他の営業所は1か所ごとに5万円)、顧客からの預かり金が多くなるとその半額を保全することも義務づけられています(前受金保全措置)。
④ 金額と提供されるサービスの内容は、互助会業者によって数種類のコースを用意しているのが普通です。コースの内容は、料金内で提供できる範囲のサービスなどを組み合わせています。
⑤ 安いコースの場合には、例えばホールの使用料が含まれていないなど、葬儀に必要なサービスであっても含まれていないものがあるので、よく確認することが大切です。
⑥ さらに、葬儀には、料理、タクシーなどの費用、火葬場の支払、寺院への支払いなど、互助会で提供する以外のサービスなどが必要不可欠です。
⑦ そのため、葬儀を行う場合には、互助会への支払だけで葬儀を済ませることができるわけではありません。この点も消費者に誤解がないように十分説明が必要です。

2⃣ 冠婚葬祭互助会の中途解約
① 冠婚葬祭互助会は、サービスの提供を受ける前であれば中途解約ができます。冠婚葬祭互助会の使用する約款については割賦販売法による許可の際の審査対象になっており、現在では中途解約ができる内容になっているものであることが必要とされています。
② ただし、現在のところ、中途解約の際の解約料などの取扱いについては具体的な基準は定めておらず、互助会業者の自由に委ねています。
③ これまでは、契約金額の2割程度の違約金条項を定めているものが少なくありませんでした。また、支払済みの料金は返還しないというケースもしばしば見受けられました。

3⃣ 解約料と消費者契約法
① こうした事情のもとで以前から互助会の解約に伴うトラブルは少なくありませんでした。解約しても支払済みの金銭が返還されないとか、違約金が高すぎるという指摘が少なくなかったのです。
② 消費者契約法では「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」を不当条項とし、「当該超える部分」は無効であると定めています。
③ 違約金条項に定める違約金が平均的損害を超えているのではないかという指摘がされていたのです。
④ ある適格消費者団体が、冠婚葬祭互助会が用いていた中途解約に関して、一律契約金額の2割を解約料とする条項が平均的損害を超えるもので無効であるとして差止めを求めた事件があります。
⑤ この事件に関して大阪高裁は次のように判断しました(互助会側が上告しましたが、上告不受理で高裁判決が確定しています)。
⑥ 消費者契約法9条1項にいう「平均的損害」とは、同一事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される損害の額を指し、具体的には、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生ずる損害の額の平均値をいうものと解されると判断しました。
⑦ 次いで、冠婚葬祭互助会は、消費者から葬儀等の施行の請求を受けてはじめて、その消費者のために葬儀等の施行に向けた具体的な準備を始めるものであること、したがって、具体的な葬儀等の施行の請求がなされる前に契約が解約された場合には、損害賠償の範囲は原状回復の範囲に限られるべきであると判断しました。逸失利益の請求はできないと判断したわけです。
⑧ 具体的には、契約の締結及び履行のために通常要する平均的な費用の額が「平均的な損害」であり、その範囲は個々の消費者契約との関係において関連性が認められるものを意味すると判断しました。
⑨ 毎月の集金費用(1回600円の実費)と年1回のニュースの作成費用と送付費用および入金状況通知の費用であると判断しました。
⑩ 以上からすると、中途解約した場合には支払済みの月掛金は一切変換しないとする主張は不当なものであり、認められません。

4⃣ 不実告知による取消しの場合
① また、契約の締結について勧誘をする際に、事業者が「この契約には葬儀に必要なすべてが含まれている」旨の契約の内容についての不実の告知をしたために消費者が誤認した事実がある場合には、消費者契約法による不実の告知を理由に契約を取り消すことができます。その場合には支払済みの全額を返還するよう請求できます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q22 葬儀の生前予約・生前契約に関するトラブル

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【Q22】20年前に互助会の会員となり満期も過ぎました。父の葬儀で利用しようとしたら「20年前の12万円コースはなくなり、いまある30万円コースを利用すると18万円追加になる」と言います。では、解約すると言うと「解約手数料がかかるので7万円しか戻らない」と言われました。正当なことなのでしょうか。

【POINT】
① 冠婚葬祭互助会とは
② 追加料金請求の妥当性
③ 解約料請求の妥当性

1⃣ 冠婚葬祭互助会は前払式特定取引
① 生前に自分の葬儀のための契約をしておく契約で、古くから利用されているものが冠婚葬祭互助会です。冠婚葬祭互助会とは、割賦販売法で規制されている前払式特定取引に該当します。
② 割賦販売法では、規制対象の前払式特定取引を次の要件を満たす取引と定義しています。
③ 第1に支払条件に関して、消費者が商品の引渡しまたは役務(サービス)の提供を受ける前にあらかじめ2カ月以上にわたり3回以上の分割払いで料金を支払うものであることです。
④ 第2に、役務の場合、事業者が同法施行令で定められている役務を提供するものであることが必要です(商品の場合は指定制はありません)。
⑤ 同法施行令では「一 婚礼(結婚披露宴を含む)のための施設の提供、衣服の貸与その他の便益の提供及びこれに付随する物品の給付」と「二 葬式のための祭壇の貸与その他の便益の提供及びこれに付随する物品の給付」の2種類の役務を指定しています。以上の要件を満たす取引を指して、冠婚葬祭互助会と言っています。
⑥ やさしく言えば、毎月1000円から数千円の支払をしておくと、自分や家族の死亡などにより葬式などの冠婚葬祭が必要になった場合に、前払した費用で行うことができるということで、経済的に豊かでなかった時代のニーズにあった種類の取引だったといえるでしょう。
⑦ 現代社会においても自分の葬式で家族に負担をかけることを心配して生前に葬儀のための契約をしたいと考える人が増えています。
⑧ こうした事情から、冠婚葬祭互助会についても自分の生前に葬儀契約できるシステムという観点から消費者の注目を浴びているという事情があります。
⑨ 半面、契約締結時には、いつ葬儀が必要になるか予想することができないという特殊性のある契約です。例えば、契約締結時には健全経営をしていた事業者の経営状態が変わってしまうとか、物価の変動であるとか、社会事情や生活文化などの変化によって葬式のあり方もかわってしまうなどということは起こり得ます。
⑩ そのためにさまざまなトラブルも起こっています。ご質問のケースはその典型的なもので、契約締結から20年後にサービスの提供を求められても困ると言い出して問題が起こったケースと考えられます。

2⃣ 問題の所在
① 事業者の主張は「契約をしたのは20年前のことだ。現在は、20年前にあった12万円のコースはなくなっている」、「現在あるのは30万円コースであるから、18万円の追加料金を支払ってもらう必要がある」というものです。
② ここで問題となるのは、20年前に締結された冠婚葬祭互助会の契約の内容は何かということです。冠婚葬祭互助会の契約では、契約した消費者は、契約に基づいて事業者が提供するはずの商品やサービスに対して対価を支払うことを約束し、対価を契約で約束した支払方法で支払う債務を負います。
③ ご質問のケースでは、12万円を分割前払で支払うというもので、契約者であるご質問者(消費者)はその支払いを完了しているということです。
④ では、事業者は契約で12万円の対価をもらってなにを提供することを約束したのでしょうか。割賦販売法の定義でいうと、「葬式のための祭壇の貸与その他の便益の提供及びこれに付随する物品の給付」です。
⑤ 契約締結の際には契約内容として「こういう祭壇の貸与」、「こういう棺・骨壺などの給付」、「これこれの内容の便益の提供」といった具体的な内容を契約の際には決めていたはずです。
⑥ 冠婚葬祭互助会の契約とは、契約で対価と提供するサービスの内容を定めるもので、ただし、「葬式に関する約束したサービスの提供時期は将来のいつになるかは予想できない未定のものであるが、必要になった時は何年先になっても契約に従って提供しますよ」ということを約束するものであるということなのです。
⑦ したがって、事業者は、20年前の契約で約束した内容のサービスを提供する契約上の債務を負担していることになります。
⑧ 今現在20年前のコースが商品として販売されていなくても、締結した契約を履行する義務があることには違いはありません。
⑨ 20年前の契約で今はそのコースがないからということは、契約を守らなくてもよいという理由にはならないのです。この事業者の対応は、法的には根拠のない言い分です。
⑩ ご質問者は、20年前の契約で約束したサービスを提供するように事業者に対して要求する権利があります。追加料金を支払う義務はありません。
⑪ 事業者としては、20年前とは物価も違っているなどの事情があるから、12万円でサービスの提供を求められても採算が合わないという言い分があるのかもしれません。
⑫ しかし、もともと冠婚葬祭互助会というものは契約内容にそういうリスクをはらんでいるものであって、そうした事情を承知の上で事業として行っているわけですから、20年の経過の中で採算が取れない事情になったからといって追加料金を請求することは認められないというべきです。

3⃣ 対処方法
① 消費者がとることができる対処方法としては、契約に従ったサービスの提供をするよう要求する方法が考えられます。
② ただし、葬儀の場合には、葬儀が必要になってからそれほどの猶予期間をおくことはできません。したがって、数日程度の期間を区切って契約に従った債務の履行を請求し、期間内に債務の履行がないか、事業者が「30万円コースとの差額を支払わない限りできない」と拒絶するのであれば、債務不履行を理由に契約を解除することになるでしょう。そして現実の葬儀は別の業者に依頼せざるを得ないと考えられます。
③ 契約相手に債務不履行があった場合には、相手の債務不履行によって被った損害で、通常予想することができる範囲の損害については、相手方に債務不履行による損害賠償を請求することができます。
④ すでに支払った12万円の返還を求めるとともに、事業者が契約どおり履行してくれれば被ることがなかったであろう金銭的な被害について、損害賠償請求することができます。
⑤ 12万円コースと同様の内容の葬儀を実施したのに、新たに別業者に依頼せざるを得なかったために高い出費を強いられたという場合には、その部分を債務不履行に基づく損害として事業者に賠償請求できます。
⑥ ご質問では、30万円との差額を支払いたくないから契約をやめると述べた消費者に対して、契約を解約するのであれば解約料がかかると事業者は主張しています。
⑦ しかし、消費者が解約したいと言っているのは、消費者の自己都合によるものではなく、事業者が契約に基づく債務の履行を拒否しているためです。
⑧ つまり、事業者の債務不履行による契約解除にあたるわけです。自分が債務不履行を起こしているにもかかわらず、契約を守らないのであれば契約を解消するという消費者に対して解約料をとるといっているという理不尽な主張をしていることになります。
⑨ 契約の中途解約が消費者の自己都合によるものであれば、合理的な範囲で契約で定められている違約金であれば消費者は支払わなければなりません。
⑩ つまり、支払った金銭から差し引かれて残った差額しか返還されないこともやむを得ない場合があります。
⑪ しかし、ご質問のケースは、事業者が債務の履行を拒絶しているために起こったことなのですから、事業者は解約料をとることはできません。むしろ消費者に対して損害を賠償する義務を負うことになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q21 エンディング・ノートの有効性

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【Q21】遺言より簡単に書けそうなので、「エンディング・ノート」を書いてみようと思います。いざというときに子どもたちに迷惑をかけないように、「お葬式はしないでくれ」とか、「財産の種類や、それを相続させる人」を自筆で書こうと思うのですが、法的に効力があるのでしょうか。

【POINT】
① 葬儀方法の指定に効力があるか
② 特定財産承継遺言としての効力があるか

1⃣ 葬儀方法の指定の効力
① 葬儀方法には、さまざまな方法があり、社会的に大々的に行うのか、それとも家族だけでひっそりと行うのかでは、葬儀の準備の手間も費用も全く異なります。
② 大切な家族が突然亡くなったような場合には、遺族は何も考えられなくなってしまい、葬儀業者の言いなりになってしまうこともあります。
③ そうなってしまうと、故人が望んでもいなかった葬儀が執り行われてしまうだけでなく、遺族が非常に高額の葬儀費用を負担しなければならなくなってしまいます。
④ 遺族は宗教葬で行うのか無宗教葬で行うのか、誰に連絡して葬儀に来てもらうのか、納棺や花はどうするのか、葬儀参列者への種々の手配はどうするのかなど、突然の喪失感の中で、実にこまごましたことまで決めなければなりません。
⑤ したがって、自分が死亡した場合の葬儀方法について、エンディング・ノートで明確にしておくと、残された遺族が迷わないですむのではないかと思われます。
⑥ したがって、それは、残された家族に対する配慮として、できる限り尊重すべきだろうと思います。それは「お葬式はしないでくれ」と書かれている場合も同様です。
⑦ しかし、エンディング・ノートに自分の葬儀方法を指定していれば、遺族に対して法的な拘束力をもつと考えてよいかどうかについては、改めて考えてみる必要があります。
⑧ なぜなら、葬儀というものは、亡くなった人が主宰するものではなく、亡くなった人の祭祀を主宰する人が執り行うべきものだからです。
⑨ そもそも葬儀とは、故人のためだけに執り行われるものではなく、残された遺族の癒しのためにも執り行われるものであるともいえるかもしれません。
⑩ 祖先の祭祀を主宰すべき者は、民法897条に基づいて、単独承継されます。そうすると、祖先の祭祀主宰者としての地位を承継した者が、亡くなった人の葬儀方法についての判断権を有すると考えるべきでしょう。
⑪ つまり、葬儀方法の指定については、故人の意向を尊重することを前提として、最終的には祭祀承継者が判断するものと考えることとなります。
⑫ したがって、エンディング・ノートに「お葬式はしないでくれ」と書かれている場合、全く葬儀を執り行わないこととするのか、それとも、大々的な葬式はしないでくれという趣旨と受け取って、家族だけでひそやかに葬儀を執り行うこととするのかについては、祭祀承継者の判断にゆだねられるというべきでしょう。
⑬ もし全く葬儀を行ってほしくない場合には、祭祀承継者が迷ってしまわないように、どうして全く葬儀を行ってほしくないのかという理由も明確にしておいた方がよいと思われます。

2⃣ 特定財産承継遺言としての効力
① エンディング・ノートは、それ自体は遺言ではありませんが、自筆証書遺言の成立要件を満たしている限り、遺言としての効力を有する場合があります。
② 自筆証書遺言の成立要件は、遺言者がその全文・日付・氏名を自書して押印することです。なお、平成30年の民法改正により、自筆証書遺言と一体のものとして相続財産目録を添付する場合には、その目録については自書をすることを要しないとされ、パソコンで打った目録を添付することもできるようになりました。
③ したがって、エンディング・ノートの中に、自分の財産の処分方法について、どのような財産を誰に対して相続させるのかという全文を自書し、日付を書いて署名押印しておけば、その部分は自筆証書遺言として有効となります。
④ 自分の特定の財産を相続人に対して承継させるという趣旨の遺言を、従来は、いわゆる「相続させる」旨の遺言と呼び、最高裁判例が遺産分割方法の指定という意味を持つ遺言であるとしていました。
⑤ この点については、平成30年の民法改正によって、「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(以下、特定財産承継遺言という)と明文化されました。
⑥ したがって、エンディング・ノートの中に、自筆証書遺言の成立要件を満たす形で、「財産の種類や、それを相続させる人」を決めておけば、遺産分割の方法を指定する特定財産承継遺言としての効力を持たせることも可能です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q20 事前指定書や尊厳死宣言書の拘束力

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【Q20】終末期になったときのことを考え、事前に主治医の同意を得て、治療のことについては事前指定書を、無用な延命措置については拒否の尊厳死宣言書を作成しておきたいのですが、それらの書類を作成しておけば自分の意思は守られるのでしょうか。

【POINT】
① 事前指定書とはどういうものか
② 尊厳死宣言書とはどういうものか
③ 事前指定書や尊厳死宣言書に法的な拘束力はあるか

1⃣ 事前指定書とは
① 事前指定書とは、自分が判断能力を喪失したり意思疎通能力を喪失したりした場合に、自分に対してどのような医療行為を施して欲しいか、あるいは、施して欲しくないかについて事前に指定しておく文書のことを指しています。
② このような意思の表明を保障する法令は存在していません。
③ 終末期に至ったときに、無用な延命措置を行うのを拒否するのが尊厳死宣言書であるのに対し、必要な医療措置を行うことを求める、あるいは、無用な医療措置を行うのを拒否するのが事前指定書であると考えることができると思います。
④ これらの考え方は、一定の医療措置を消極的に拒否する面では重なり合うところもありますが、一定の医療措置を積極的に求める面では必ずしも重なり合わないところもありますから、対になる考え方だといえるでしょう。

2⃣ 尊厳死宣言書とは
① 尊厳死宣言書とは、自分が終末期を迎えて意思疎通能力を喪失したりした場合に、自分に対して死期を引き延ばすためだけの延命措置を行うことを拒否することを事前に表明しておく文書のことを指しており、リビング・ウイルと呼ばれています。
② 尊厳死宣言書についても、このような意思を保障する法令は存在していません。
③ 尊厳死宣言書に関しては「一般社団法人日本尊厳死協会」が設立されており。尊厳死宣言書の登録を受付けています。
④ この登録を行ったからといって、担当医師が尊厳死をそのまま受け入れてくれる保証はありませんが、医師会の行ったアンケートなどでは、多くの医師ができるだけ尊重すると回答しているようです。

3⃣ 事前指定書・尊厳死宣言書の法的拘束力
① 事前指定書や尊厳死宣言書には、直接的な法的拘束力は認められないとされています。一方では、本人の自己決定権はできる限り尊重すべきだといえます。
② しかし他方、医師は本人の生命のために最善の注意義務を尽くさなければならないのであって、本人がいいと言っているからといって簡単にその義務を放棄することはできません。
③ 本人の自己決定権は主観的なものであるのに対し、医師の最善の注意義務は客観的なものであって、この二つの判断が常に一致するとは限らないのです。
④ しかし、自分が終末期に至ったときに、自分らしい最後の生き方を決めるのは本人しかなく、他者がそこに介入できるものではないと思います。
⑤ そうだとすると、基本的には、本人の事前の意向を家族も医師も最大限に尊重するべきだと考えます。
⑥ 尊厳死宣言書については、その宣言が意味を持つ時点では本人がまだ生存しているのですから、遺言書としての効力が認められるはずはありません。
⑦ しかし、遺言者が回復の見込みのない末期状態となって延命装置を外すべきかどうかの判断を求められた段階では、事前の宣言書が存在している場合、一定の法的な効力を認めても良いだろうと思います。
⑧ たとえば、本人が末期状態となって延命装置が装着されている場合、医師が延命装置を外すと本人は死亡するおそれがあるのですから、その医師は殺人罪などに問われる危険性があります。
⑨ しかし、有効に作成された尊厳死宣言書が存在するのであれば、その医師が延命装置を外したことは、殺人罪などの違法性を阻却する事由として効力を認められることがあるだろうと思われます。
⑩ この点については、「終末期医療における患者の意思の尊重に関する法律案」(尊厳死法案)を提出する動きが活発化しています。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q19 遺言の有効性と修正等の方法

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【Q19】遺言では、後から書き足したりして修正したら無効になってしまうと聞きましたが、後から修正したり追加したりするにはどうしたらいいですか?

【POINT】
① 遺言の有効性についてはどのように考えればよいか
② 遺言の撤回・修正・追加はどのようにすればよいか

1⃣ 遺言の有効性
① 遺言は、遺言者の最終の自己決定権を尊重するものです。また、効果が発生する時点で本人が死亡しており、本人に真意を確認することができないですから、一定の方式に従ってなされることが厳格に要求されています。
② しかし、あまりに要式性を厳格に求めすぎてしまうと、結局は、遺言者の自己決定権が保障されない危険性も生じてくることになってしまいます。
③ また、遺言者の最終意思を尊重するといっても、遺言書の記載内容について、直ちには明らかにならないような場合もありますから、一定の解釈を行って意味を補う必要性を完全に避けることはできません。
④ 遺言を解釈するにあたっては、裁判所が補充的な解釈をなすこともできると考えるべきです。そうだとすると、遺言の方式性は厳格にするとともに、方式を備えた有効な遺言が存在する場合には、遺言の解釈は柔軟に行って、遺言者の最終意思を尊重すべきであると考えるのが最も適切ではないかと思います。
⑤ この点について判例は、「遺言の解釈に当たっては、遺言書の表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり、そのためには、遺言書の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言書作成に至った経緯およびそのおかれた状況等を考慮することも許されるものというべきである」とし、「全部を公共に寄與する」と記載されたかなりあいまいな遺言について、遺言執行者に受遺者の選定を委ねる趣旨を含むものと解釈して有効としています。

2⃣ 遺言の撤回・修正・追加
① 自筆証書遺言を修正するには、遺言者がその場所を指示して変更した旨を附記し、そこに署名押印しなければなりません。
② また遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができます。
③ 遺言者の最終意思の尊重原理を貫いているのであって、撤回の理由も必要ありませんし、撤回権を放棄することもできません。
④ また、遺言の撤回・修正・追加については、遺言の方式に従っていればよく、たとえば、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回・修正・追加することもできます。
⑤ 遺言を撤回する方法としては、前遺言を撤回する旨の後遺言を作成する方法が一般的かと思いますが、法律によって撤回があったものとみなされる場合が定められています。
⑥ 第1に、前遺言と後遺言とが抵触するときは、抵触部分について前遺言が撤回されたものとみなされます。
⑦ 第2に、遺言と遺言後の生前処分などの法律行為とが抵触するときも、前遺言が撤回されたものとみなされます。
⑧ 第3に、遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、破棄した部分について前遺言を撤回したものとみなされます。
⑨ 第4に、遺言者が故意に目的物を破棄したときも、前遺言を撤回したものとみなされます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q18 遺言の種類と保管方法

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【Q18】「遺言書」はきちんんと保管していないと危険だと聞いています。どこかで預かってくれるところがないでしょうか。

【POINT】
① 遺言の種類にはどのようなメリットとデメリットがあるか
② 遺言書の保管を確実にする方法にはどのようなものがあるか

1⃣ 遺言とは
① 遺言とは、家族関係や財産関係に関する一定の事項について、自分の死後に効果が発生することを意図する最終の意思表示のことを指しています。
② 遺言については、効果が発生する時点で本人が死亡しており、本人に真意を確認することができないですから、一定の方式に従ってなされることが厳格に要求されています(方式主義)。

2⃣ 遺言の種類
① 遺言の方式については、普通方式と特別方式とがあり、普通方式の遺言は、⑴自筆証書遺言、⑵公正証書遺言、⑶秘密証書遺言の3つの種類があります。
② 特別方式の遺言には、⑴危急時遺言:死亡危急時遺言・船舶遭難時遺言、⑵隔絶地遺言:伝染病隔離地遺言・在船時遺言の4つの種類があります。
③ 以下では、通常作成するのは普通方式遺言であり、その内多く作成される、自筆証書遺言と公正証書遺言について説明します。

Ⅰ 自筆証書遺言
① 自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付、氏名を自書し、これに押印する方式の遺言です。
② 自筆証書遺言を加除訂正するときも、遺言者がその場所を指示して変更した旨を付記し、そこに署名押印しなければなりません。
③ したがって、自筆証書遺言の要件としては、全文の自書、日付の自書、氏名の自書、押印の4つになります。なお、平成30年の民法改正により、自筆証書遺言と一体のものとして相続財産目録を添付する場合には、その目録については自書を要しないとされました。ただし、目録の毎葉に署名・押印が必要です。
④ 全文の自書については、偽造・変造を予防するために必要とされているのですから、厳格に解すべきで、パソコンやタイプライターで打った文書では自筆証書遺言とは認められません。
⑤ 添え手による遺言が自書と言えるかどうかも問題とされていますが、遺言者の意思表示を補助しているにすぎないと認められるような程度を超えたものは無効とすべきです。
⑥ 日付については、作成時の遺言能力の有無や抵触する複数の遺言の先後を確定するために必要なのですから、これも厳格に解すべきです。判例では、「昭和41年7月吉日」という日付を無効としたものがあります。

Ⅱ 公正証書遺言
① 公正証書遺言は、証人2人の立会いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口授し、公証人がこの口述を筆記して作成し、遺言者および証人に読み聞かせあるいは閲覧させて、遺言者および証人が筆記の正確なことを承認して署名押印し、公証人も以上を遵守した旨を付記して署名押印する遺言です。
② したがって、公正証書遺言の要件としては、証人2人の立会い、遺言者による口授、公証人による口述の筆記、読み聞かせまたは閲覧、遺言者および証人による承認と署名押印、公証人による付記と署名押印、の6つになります。
③ 以上のように公正証書遺言は、遺言者の口授・口述が要件とされており、口のきけない者や耳の聞こえない者は利用できませんでしたが、平成11年の民法改正によって、通訳人の通訳による申述または自書によって口述に代えることができるようになりました。耳の聞こえない者の場合も、通訳人の通訳によって読み聞かせに代えることができるようになりました。これらの場合には公証人はその旨を付記します。
④ 要件のうち、最も問題となるのは、証人の適格性です。証人適格については、⑴未成年、⑵推定相続人、受遺者およびその配偶者並びに直系血族、⑶公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および雇人は証人になれないこととされています。
⑤ したがって、欠格者が証人となった公正証書遺言は無効となります。しかし、他に2人の適格者がおり、欠格者が同席して立ち会っただけである場合には、遺言者の真意に基づく遺言の作成が妨げられたなどの特段の事情のない限り、公正証書遺言が無効となるものではないとされています。

3⃣ 普通方式の遺言のメリット・デメリット
①自筆証書遺言
・メリット:⑴手軽につくれる、⑵内容を秘密にできる、⑶費用がかからない
・デメリット:⑴要件が厳しい、全文自書、⑵偽造や変造のおそれがある、⑶紛失・隠匿等のおそれがある、⑷検認手続が必要、⑸能力の争いを生じやすい
② 公正証書遺言
・メリット:⑴偽造や変造のおそれがない、⑵保存が確実、⑶検認手続は不要
・デメリット:⑴手続が煩雑、⑵費用がかかる、⑶能力の争いは残る

4⃣ 遺言書の保管リスクと対処法
① 以上のように、自筆証書遺言には、手軽に作成できる反面、作成しているかどうかもわからないのですから、紛失・隠匿・破棄のリスクが付きまとってしまいます。
② 自筆証書遺言を作成した場合には、上記のようなリスクを避けるために、士業等に頼んで保管しておいてもらうという対処法が考えられます。
③ しかし、この方法では、頼んだ士業が自分よりも先に死んでしまうなどのリスクを避けることは不可能です。
④ 銀行の貸金庫に保管するという方法もありますが、死後貸金庫を開扉するのに中に入っている遺言が必要になるという矛盾が生じることや、貸金庫を開扉した人による隠匿・破棄のリスクは付きまといます。
⑤ 自筆証書遺言については、平成30年の相続法改正において、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定され、自筆証書遺言を法務局で保管する制度ができ、令和2年7月10日から施行されています。これについては変造などの防止や、検認手続が不要になるなどメリットがあります。
⑥ 公正証書遺言は、作成するのに手間や費用がかかってしまいますが、紛失・隠匿・破棄のリスクを避けることができます。
⑦ 公正証書遺言は原本が公証役場に保管され、遺言者には同内容の正本と謄本が交付されます。原本が公証役場に保管されていますので、正本等の紛失・隠匿・破棄がなされた場合でも、原本に基づいて再交付してもらうことができます。したがって公正証書遺言の作成は紛失・隠匿・破棄に関しては最もリスクの少ない方法と言えます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q17 献体意思と遺族の承諾

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【Q17】母は生前に献体を申し出ており、その際、兄(すでに死亡しています)が同意書にサインしています。私は母の遺体をいじられたくないので、献体したくありません。献体は断ることができるのでしょうか。

【POINT】
① 献体とはどういうことか
② 献体の意思は尊重されるか
③ 遺族が献体を拒否することができるか

1⃣ 献体とは
① 献体とは、自己の身体(遺体)を、死後、医学または歯学の教育として行われる身体の正常な構造を明らかにするための解剖(正常解剖)の解剖体として提供することを指しています(献体法2条)。
② つまり、献体による正常解剖は、犯罪捜査のための司法解剖や死因調査などのための行政解剖・病理解剖などと異なり、医学や歯学の教育の向上を目的としています。

2⃣ 献体の意思
① ある人が、自己の身体(遺体)を、死後、医学または歯学の教育として行われる身体の正常な構造を明らかにするための解剖(正常解剖)の解剖体として提供することを希望することを「献体の意思」があるといい(献体法2条)、献体の意思は尊重されなければならないこととされています(同法3条)。
② したがって、死亡した人が、献体の意思を書面によって表示しており、かつ、次の⑴⑵のいずれかに該当する場合には、死体解剖保存法7条に基づく遺族の承諾なくして、死体の正常解剖を行うことができます(献体法4条)。
⑴ 正常解剖を行おうとする者が属する医学または歯学に関する大学の学校長が、死亡した者が献体の意思を書面によって表示している旨を遺族に告知し、遺族がその解剖を拒まない場合
⑵ 死亡した者に遺族がない場合
③ ご質問の場合には、お母さんが書面によって献体の意思を表示していることが明らかですから、ご質問者が解剖を拒まない限り、ご質問者の承諾がなくても、正常解剖を行うことができることになります。

3⃣ 遺族による献体の拒否
① しかし、ご質問の場合、ご質問者が積極的に解剖を拒む場合には、献体の意思に基づいて正常解剖を行うことはできなくなってしまいます。
② 人が死亡した場合、その人の法的権利能力はなくなってしまい、法的主体としてその人の献体の意思が法的な力を持つことは難しくなります。法律上、死者を法的な主体として取り扱うことはできないものとされているからです。
③ そうすると、死者の祭祀主宰者(祭祀承継者)が死者に代わって法的権利を行使することになりますから、祭祀主宰者自身の意思を考慮しないわけにはいきません。
④ しかし、献体法3条が定めているように、死者自身が有していた献体の意思は、できる限り尊重されるべきでしょうし、医学や歯学の教育のために役に立ちたいというお母さんの意思は、それ自体尊いものとして考えるべきでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q16 成年後見人の葬祭の権限

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【Q16】入院中の成年被後見人がなくなりましたが、この被後見人には身寄りがありません。成年後見人は、葬儀の手配・火葬・納骨をすることができますか。

【POINT】
① 成年後見人と死後事務
② 成年後見人の葬祭の権限

1⃣ 成年後見人と死後事務
① 成年被後見人が死亡した場合には、成年後見は当然に終了し、成年後見人は原則として法定代理権等の権限を喪失することになります。
② 人が死亡すると、通常、死亡届の提出→葬儀→火葬→納骨などが必要となります。この「死後の事務」処理は、これまで相続人等の家族の仕事でした。
③ しかし、今日、身寄りのない高齢者や、身内とのかかわりの薄いかたちで生涯を終えていく高齢者が増えており(無縁社会)、死亡した成年被後見人に相続人がいない場合や、相続人が死後の事務にかかわることを拒んでいるような場合などがしばしば見受けられます。
④ このような場合、成年後見人は、成年被後見人の死亡後も、一定の死後事務を行うことを周囲から期待され、苦慮しながらも対応せざるを得ない状況に置かれることになります。

2⃣ 死亡届の提出
① 人が死亡した場合、同居の親族などの「届出義務者」は市町村に死亡の届出をしなければなりません。そして、この死亡届によって死者は除籍されます。
② 後見人は、平成20年5月1日から、死亡届出をすることができるようになりました。ただし、「届出義務」が課せられたわけではありません。

3⃣ 火葬・埋葬
① 後見における死後事務に関して、平成28年、民法典に873条の2が追加されました。ここには、成年後見人は、成年被後見人の死亡後に、家庭裁判所の許可を得て、「死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結」をすることができると定められています。
② これは、成年後見人が成年被後見人の死亡後に火葬・埋葬の手続きをすることを求められ、社会通念上これを拒むことが難しい状況にあることを考慮し、火葬・埋葬に関する成年後見人の権限を明文化したものです。成年後見人に火葬・埋葬の義務を負わせたものではありません。
③ この点は、墓地埋葬法を適用するうえで注意が必要です。墓地埋葬法9条1項は、「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない」と規定していますが、たとえ成年後見人がいたとしても、「埋葬又は火葬を行う者がないとき」に該当する場合もありうるということになります。
④ なお、民法873条の2に基づいて死後事務を行うことができるのは、成年後見人のみであり、保佐人や補助人は含まれません。これは保佐人・補助人に民法873条の2の死後事務に関する権限を付与すると、保佐人等が被保佐人等の生前よりも、強い権限を持つことになってしまうからであると説明されています。

4⃣ 遺体の引取り・葬儀・納骨
① 「遺体の引取り」「葬儀」「納骨」は、これまでみてきた「死亡届の提出」「火葬」「埋葬」とは異なり、成年後見人の権限内の事項として法律上明記されていません。
⑴ 遺体の引取り
・民法873条の2第3号が、「死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結」を成年後見人の権限に加えている以上、火葬・埋葬の前提として必要な遺体の引取りのために行う葬祭業者等との契約の締結も、成年後見人は当然行うことができるものと解されます。
⑵ 葬儀
・次に、成年被後見人の葬儀に関する契約は、「死体の火葬又は埋葬に関する契約」に含まれるのでしょうか。
・この点については、「葬儀は遺体の引取りおよび火葬とは異なり、その施行が公衆衛生上不可欠ではなく、これを行わないことによって相続財産が減少する等のおそれがないことから、成年後見人の権限に追加をしなかったものである。とくに、葬儀を行う場合には、無宗教で行うことも含め、どの宗教で葬儀を行うのかという宗教上の問題や、どこまでの費用であれば社会通念上許されるかという問題があり、成年後見人に権限を追加することとはせずに、相続人が行なうことが適当と判断したものである」、と説明されています。
・したがって、成年被後見人が亡くなり、身寄りがなかったため、成年後見人がやむを得ず葬儀を行った場合には、従前どおり事務管理の規定(民法697条)に従って処理することになります。
・この場合、成年後見人には、費用償還請求権は認められます(民法702条)が、報酬請求権は認められません。なお、葬儀は火葬と異なり、緊急性がないため、善処義務規定(民法874条・654条)で対処することは難しいと思われます。
⑶ 納骨
・納骨は、民法873条の2第3号の「埋葬」に準ずるものとして、成年後見人は納骨に関する契約を締結することができるものと解されます。
・遺体の処理は、埋葬(=土葬)によって完結するのに対し、火葬された遺体の処理は、納骨によって完結します(ただし散骨の場合は納骨しません)。
・遺体について、成年後見人による最終的処理(=埋葬)が民法873条の2第3号によって認められているのですから、成年後見人による遺骨の最終的処理(=納骨)についてももちろん法は認めていると解すべきでしょう。
・成年後見人になった弁護士や司法書士・行政書士が、成年被後見人の火葬を行った際、遺骨の引取り手がいないので、仕方なく自分の事務所で遺骨を保管していることもあるようです。上記のように解することで、成年後見人の事務所に遺骨を置いておくような事態は回避することができるようになるでしょう。

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