成年後見制度とは

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

本日はここ最近よく耳にする【成年後見制度】を取り上げてみたいと思います。

この【成年後見制度】、わかっているようでよくわからない。なんか高齢者のための制度とか、裁判所や弁護士がかかわる難しいものとか、介護で苦労されている方々が利用する制度などと思われている方が多いのではないでしょうか。

これらの理解もけして間違っているということではありませんが、成年後見制度の一面のみを見ている理解です。

成年後見制度とは、「認知症のお年寄りや、知的障がい・精神障がいのある方が、現在の能力・財産を生かしながら、終生その人らしい生活が送れるよう、法律面・生活面から保護し支援する制度です。」

たとえるならば、以下のような心配をサポートします。①脳卒中で父が倒れ入院した。不動産を整理して入院費に当てたいが・・・。②知的障がいを持つ我が子の生活・財産管理をどうしよう(親なきあと問題)③悪質商法で高額商品を買ってしまう認知症のおばあさんを守りたい。④今は元気。ただ将来認知症になった後のことが心配。などいくつか例示してみました。

①から③までは、成年後見制度のうち、【法定後見制度】というもので対応します。④は、【任意後見制度】というもので対応します。

【法定後見制度】とは、判断能力が低下したときに、家庭裁判所に後見人等を選任してもらい、その人に支援してもらいます。特定の支援者(後見人等の候補者)を同時に申立てることもできます。申立て時の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3つの類型があり、支援者をそれぞれ後見人・保佐人・補助人といいます。

後見人には取消権、代理権があり、保佐人には、同意権と取消権そして代理権が付与されることもあります。補助人も同意権と取消権及び代理権が付与されることがあります。後見人等支援者はこの取消権や同意権、代理権を利用して判断能力が低下した人にかわり、契約など法律行為を行うことで支援をしていきます。

【任意後見制度】とは、判断能力があるうちに、支援してもらう人との間で支援の内容を公正証書で契約しておき、判断能力が低下したときに任意後見監督人選任の申立てをおこなうことによって、すみやかに支援してもらえます。任意後見監督人が選ばれるまでの支援者を任意後見受任者、選ばれてからは任意後見人と言います。

任意後見人は契約で決めた代理権が付与されます。任意後見人はこの代理権を利用して、判断能力が低下した人のために、契約など法律行為を行うことで支援していきます。

本日は【成年後見制度】の大枠をご説明してみました。この制度は判断能力が低下した人たちを支援していくための制度です。かわいそうな人を守るという視点ではなく、同じ人として接し、その人の自己決定する意思を尊重し、残された能力を最大限活用し、地域社会で普通に生活できるようにサポートする「寄り添う」視点の制度です。

高齢の親御さんや障がいをお持ちのお子様がいるご家庭の皆様、将来の認知症などに不安のある皆様は、ぜひ当事務所の無料60分相談をご利用いただき、これからどのような手段が用意されているのかを実感され、次の行動をどうするのかを考える一助にしていただけると幸いです。

エンディングノートの内容を実現させる方法

エンディングノートには法的効果がないことは述べましたが、せっかく自分の将来を考え希望をまとめたのですから、エンディングノートに書いた希望をかなえたいですよね。

エンディングノートに書き込んだ内容のうちいくつかは実現させる方法があります。たとえば、けがや病気で身体が不自由になった時や認知症になり病状が進んだ後のことや自分が最後を迎えた後のことなどです。

【財産管理委任契約】けがや病気などで体が不自由になり銀行へ行くことや日常身の回りのことにも不自由な状態になると自分自身で財産を管理していくことが困難になります。このようなときに【財産管理委任契約】を利用しましょう。

この契約を結ぶことにより、財産管理を信頼できる人に任せることで、不動産や預貯金に関する手続きを滞りなく進めてもらうことができます。また、任せた人から定期的な報告をもらうことでその財産管理が適正になされているのかがはっきりします。体の不自由な親御さんの身の回りの世話を行うお子さん等とこの契約を結ぶことで、親御さんのために財産管理していることが明白となり、使い込みをしているのではなどの誤解や親族間のもめ事を防ぐこともできます。

【見守り・任意後見契約】病気や加齢などにより認知症になり症状が進んだなど自分の判断能力に衰えが始まった後のことを任せるのは【見守り・任意後見契約】を利用しましょう。

この契約を結ぶことで、自分自身の判断能力がしっかりしている間は契約を結んだ人と定期的な面談訪問などで変わりがないかを確認してもらえます。判断能力が衰えてきたと判定された際には、契約を結んだ相手が家庭裁判所に任意後見監督人の選定を申立てることでご自身の代理人として財産管理等を行うことができるようになります。

この制度は【法定後見制度】に非常に似ていますが、【任意後見契約】はご自身の判断能力がはっきりしている時に結ぶことができ、その後見内容も自分で判断することができます。何よりいざ判断能力が衰えてから家庭裁判所にて選定される法定後見よりも事前に契約することで万が一に備えておくことができ、後見人も自分で選ぶことができる点が特徴です。この任意後見契約を結んだ相手も任意後見監督人への報告などが義務付けられており適正な任意後見がなされるようになっております。

【尊厳死宣言書】自分の最後をいかに迎えるのか終末期医療の在り方についてですが、【尊厳死宣言書】を活用されたらいかがでしょう。これは不治の病にかかった時にどのような医療を望むのかをはっきりと意思表示しておくものです。

苦痛の中回復の見込みなく死期が近づく状態で病院のベッドに管に繋がれただ生を永らえるためだけの延命措置を望まず、安らかな最期を迎えたいと考えている方に有効なものです。実際にそのような状態で正常と認められる延命措置の拒否という意思表示ができるのかは疑問であります。家族や治療を行う医師に対し、延命措置を望まない自分自身の意思表示をあらかじめ残すことで周りの方々を悩みや混乱から助けることにもなるでしょう。

【生前契約・死後事務委任契約】自分の死後どのような葬儀を行ってほしいか、飼っていたペットのことや残した病院などへの支払いや家財道具の整理などの希望は【生前契約・死後事務委任契約】はいかがでしょう。

この契約は、生前に自分の死後行われる様々な手続きや儀式について自分の意思表示をすることで希望がかなえられ、残された家族などが迷い・もめることがなくなります。契約にすることで、自分の希望を示すのみではなくその内容を現実に実行してくれる人が存在することになります。

見てきましたような契約を結び活用することで、エンディングノートにまとめた自分の希望が実現することになります。どの契約書も【公正証書】で作成することでより法的に保護され確実な実現に近づきます。(任意後見契約は公正証書で作成することが法定されています。)

ご自分の将来と死後のことを考えることは今を見つめよりよく生きるためでもあります。この機会にぜひともご検討されてはいかがでしょうか。

 

見守りサービスからの任意後見契約・法定後見制度との違いについて

見守りサービスには様々な形態があることをお話し致しましたが、定期的に(月に1~2回)ご自宅などを訪問しサービス対象であるご本人様と面談を行う形態からのサービスについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

定期訪問でご本人様と面談を行うことで安否の確認を行うのみではなく、ご本人様の「心身の状態」「生活状況」を確認させていただきます。これはご本人様の「判断能力」の状態を判断する必要があるのです。

「判断能力」(事理を弁識する能力」)が不十分な方の法的保護の制度として後見制度があります。この法的保護が必要な状態か否かを見守りサービスで確認していくのです。

我々行政書士や弁護士・司法書士等が見守りサービスを行う際には、「任意後見契約」を締結しているケースがほとんどであると思います。法的保護が必要な状態であると思われた場合に家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申し立てをすることで、ご本人様が被害に遭うことを予防することができます。

【任意後見契約】とは任意後見人がご本人様の代わりに代理人として様々な契約や手続きを行う契約です。契約ですのでご本人様の判断能力が十分なうちに自分自身の将来を任せる人を選べることができます。

一方【法定後見制度】は「判断能力」(事理を弁識する能力)が不十分になった際、その度合いに応じて家庭裁判所が審判にて後見人(保佐人・補助人)が決定されるものです。

いずれの制度もご本人様の意思を尊重しその法的保護を図ることが目的ですが、いざ判断能力が不十分になってから慌てるのではなく、ご本人様やご家族様がよくよく話し合いをお持ちになられ、将来どのような自分でありたいかを考えるとき【見守りサービスや任意後見契約】という選択が浮かび上がるのではと思います。

このことはご自身の人生の終幕をいかに迎えるか、その後残されたご家族に何を残したいのかをご検討いただくことにもつながることかと思います。

ホームセキュリティと見守りサービス

TVコマーシャルでもよく目にされると思いますが【ホームセキュリティ】と【見守りサービス】。

同じものと思われている方が多いと思いますが、警備業法という法律から見ますと別物なのです。

【ホームセキュリティ】は各御家庭に設置する警備機器が異常を感知した際に、警備会社の基地局といわれる監視センターへ情報を送信します。センターに勤務する管制員がその異常情報を待機している警備員へ伝達することで皆様のお宅へ警備員が駆け付けることになります。警備業法上必ず警備員が現場へ駆けつけなければいけないことになっています。

【見守りサービス】は警備会社以外にも様々な事業者により提供されているサービスですが、その内容も事業者ごとに様々なものがあります。ホームセキュリティと同じような機器を設置しその異常情報を受信する形態もありますが、その先が大きく異なります。現場へ事業者の係員が駆け付けることなく、異常情報をあらかじめ取り決めた緊急連絡先へ伝達するサービスとなることが多いです。

現場へ駆付けたのちにその場で盗難等異常の発生を警戒防止する業務や人の身辺で負傷等の警戒をすることになると警備業法上の警備業務となり公安委員会の認定を受けなければ行うことができません。

しかし警備会社でなければ現場へ行けないかと申しますとそうではなく、異常情報に基づく警備警戒でなければ他の事業者も行うことができます。すなわち戸別訪問を行い居住者の方と面会することで無事を確認するサービスです。

【見守りサービス】には異常情報を提供してもらうものや戸別訪問によりお住いの方の安否を確認するもの、警備業務として現場対応を行うものも含まれます。

見守りサービスは弁護士や司法書士そして行政書士もご提供しているサービスです。士業は見守りサービスのみでなく、任意後見契約サービスもご提供しています。独居高齢者のご不安に寄り添えるそして離れて暮らすご家族の方々に安心をご提供できるサービスとなっております。