【孤独死をめぐるQ&A】Q49 認知症に備えてー成年後見、任意後見

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【孤独死をめぐるQ&A】Q49 認知症に備えてー成年後見、任意後見についての記事です。

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【Q49】一人暮らしの高齢者です。認知症になった場合、自分の財産が管理できなくなるのではないかと不安です。
後見という制度があると聞いたのですが、後見制度の概要や注意点を教えてください。

【A】後見制度には、後見、保佐、補助の3つの制度があります。判断能力の程度に応じて、財産管理を任せたりサポートしてもらったりすることができます。
また、任意後見契約という制度を利用すれば、あらかじめ後見人となって欲しい人を指定しておくことができます。ただし、任意後見契約をお願いする人は、財産管理を委ねるに足るだけの信頼ができるような方でないといけないので、注意が必要です。

【解説】

1 成年後見制度とは
① 成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって、判断する能力が欠けているのが常態化している方について、申立てによって、家庭裁判所が「後見開始の審判」をして、本人を援助する人として成年後見人を選任する制度です。判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3つの区分があります。
② 成年後見人が選任されると、成年後見人は、後見開始の審判を受けた本人に代わって契約を結んだり、本人の契約を取り消したりすることができるようになります。
③ 成年後見人申立てに当たり、特定の候補者を推薦して申立てをすることは可能です。法定相続人全員の承諾があるような場合は、候補者が選任されることが多いかと思いますが、法定相続人間で誰を候補者にするか争いがある場合や財産が多い場合には、家庭裁判所が職権で後見人を選任することもあります。
④ その結果、候補者が選任されない場合があります。その場合、多くは被後見人が必要とする支援の内容に応じて、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士等の専門職が成年後見人に選任されます。
⑤ 申立人が推薦した候補者以外が成年後見人に選任されたとしても、その点については不服の申立てはできません。
⑥ このように成年後見人は、必ずしも申立人が成年後見人に就任して欲しい人が選任されるわけではない点に注意が必要です。

2 成年後見人の費用
① 推薦した候補者が成年後見人になる場合、一定程度の人的関係があるので無償で引き受けてもらえることも多いかと思います。
② しかし、専門職が後見人に就任する場合は、成年後見の報酬が発生するのが通常です。
③ 報酬額は裁判所が決定します。その目安として東京家庭裁判所の発表によれば、基本報酬として原則月2万円。管理財産額(預貯金及び流動資産の合計額)が高額な場合、管理財産額が一千万円超五千万円以下の場合、月額3~4万円。
④ 管理財産額五千万円超の場合、月額5~6万円となっております。これとは別に付加報酬が加算されることもあります。
⑤ 成年後見は、一度手続きが開始すると、判断能力が回復するか亡くなるまで手続きが終了しません。認知症の場合、判断能力が回復するということは通常ないので、亡くなるまでの間、上記の基本報酬額が発生し続けることになります。

3 任意後見契約
① 上述のとおり、成年後見人は誰が選任されるかは確実ではありません。これに対して、任意後見契約を締結しておけば、後見人選任が必要になった場合、必ずその人に後見人になってもらえます。
② 任意後見契約は、任意後見契約に関する法律により、公正証書で行い、その旨が登記されることになります。
③ 本人の判断能力が不十分な状況になった場合、任意後見監督人選任の申立てを行います。任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が生じ、契約で定められた任意後見人が、任意後見監督人の監督の下、契約で定めた内容の後見業務を行うことができるようになります。
④ なお、任意後見監督人にも報酬が発生します。前掲の東京家庭裁判所のめやすでは、管理財産額が五千万円以下の場合には月額1~2万円、管理財産額が五千万円超の場合月額2万5千~3万円となっております。

4 任意代理契約(委任財産管理業務)
① 上記のように任意後見契約は、判断能力が低下した場合に備えた契約なので、判断能力が低下する前には効力が発生しません。
② そうしますと、判断能力はあるものの、寝たきりになってしまい、外出ができなくなってしまったような場合には、任意後見契約では財産管理を任せることができません。
③ そのような事態に対応するため、任意後見契約と同時に、財産管理に関する通常の委任契約を締結することがあります。このような契約を任意代理契約や財産管理契約、委任財産管理契約などと呼びます。

5 後見人が行なえる死後事務について
① 被後見人が死亡した場合、成年後見は終了します。
② そのため、原則として、成年後見人はその権限を行使することはできなくなってしまいます。
③ ただし、必要がある場合、被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除いて、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、被後見人が所有していた建物を修理したり(特定の財産に対する保存行為)、支払いを求められている被後見人の医療費等を支払ったりすること(弁済期が到来した債務の弁済)ができます。
④ また、下記のような本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為については、裁判所の許可を得て、行うことができます。
⑴ 被後見人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結(葬儀に関する契約は除く)
⑵ 債務弁済のための被後見人名義の預貯金の払戻し
⑶ 被後見人が入所施設等の残置していた動産等に関する寄託契約の締結
⑷ 電気・ガス・水道の供給契約の解約など
なお、成年後見人が後見業務の一環として行えるのは火葬、埋葬に関する契約のみであり、被後見人の葬儀を執り行うことは法律上認められていません。
⑤ このように死後の事務については、原則として成年後見人は行うことができないため、死後の事務まで委任したい場合には、死後事務委任契約を締結する必要があります。

【法定後見制度概要】

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●法定後見制度とは

・判断能力が不十分な高齢者、認知症当事者、知的障害者、精神障害者などの方々を本人の自己決定権を尊重しつつ、財産管理や契約を補助したり代理することにより安心して生活ができるように支援し、権利を守る制度

■ 法定後見制度を利用するケース

●生活する上で判断能力が低下していると、権利を守ることができなくなる危険がある

例1)実家で一人暮らしの母が認知症に。
・だんだん、病院の支払いや通帳の管理ができなくなってきた

●悪質な業者と不利な契約を締結してしまう危険性

例2)認知症の父と母の家に高額なふとんや浄水器がたくさんある
・給湯器も交換したばかりなのにまた新しいものに替わっている
・でも本人たちは知らないと言っている

●必要なサービスの契約や財産の管理ができなくなる

例3)妹は知的障害があり施設で生活。何十年も自分が面倒をみてきた
・最近、自分も年をとり、面倒を見ることができなくなってきた

例4)交通事故で高次脳機能障害と診断。
・かろうじて寝たきりではないが、色々な手続きができなくなった

■ 法定後見制度とは

●現在すでに判断能力が不十分な状態の人について

●本人や配偶者または四親等内の親族等の申立てにより

●家庭裁判所が審判とともに適任と認める人を

●成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)に選任する制度

●3つの類型は判断能力の程度で分かれる

・後見→判断能力が常に欠く常況

・保佐→判断能力が著しく不十分

・補助→判断能力が不十分

■ 法定後見制度の3つの類型

●医師の診断を元に家庭裁判所の裁判官が決定する

●後見→判断能力が常に欠く常況

・自己の財産を管理・処分することができない

●保佐→判断能力が著しく不十分

・自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である

●補助→判断能力が不十分

・自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある

■ 後見→判断能力が常に欠く常況とは

●本人が一人では日常生活を送ることができなかったり、財産の管理ができないなど、判断能力が全くない常況の場合のこと

●このような場合、家庭裁判所が後見開始の審判とともに成年後見人を選任し、審判が確定した本人を成年被後見人という

●成年後見人は、本人の財産管理を行い「代理権」「取消権」を行使できる
・「代理権」→本人に代わって本人のために契約等を行う
・「取消権」→本人が行った不利益な法律行為の取消しができる
※日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せない

■ 保佐→判断能力が著しく不十分

・自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である

●本人が一人で買い物など日常的な生活をすることはできるが、不動産売買や金銭の貸借または遺産分割協議等、重要な財産行為を一人ではできないなど、判断能力が著しく不十分な場合のこと

●家庭裁判所が保佐開始の審判とともに保佐人を選任し、審判が確定した本人を被保佐人という

●保佐人は特定の行為について、「同意権」「取消権」を行使できる
・「同意権」→本人の特定の行為に同意
・「取消権」→本人が同意を得ずに行った特定の行為を取消しできる

●本人の同意を得て、本人の行為についての代理権を保佐人に与えることもできる

■特定の行為→民法第 13条第1項に定める行為

民法第 13 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条但し書きに規定する行為(※)については、この限りではない。(※日用品の購入など日常生活に関する行為)

一 元本を領収し、又は利用すること
二 借財又は保証をすること
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
四 訴訟行為をすること
五 贈与、和解又は仲裁合意をすること
六 相続の承認もしくは放棄又は遺産の分割をすること
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること
九 第 602条に定める期間を超える賃貸借をすること 例)建物の賃貸借3年

■ 補助→判断能力が不十分

・自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある

●本人の判断能力が不十分、重要な財産行為を一人で行うには不安

●本人の利益のために誰かに代ってもらったほうがよい場合

●家庭裁判所が補助開始の審判とともに補助人を選任、審判が確定した本人を被補助人という

●補助人は、民法第 13条第1項に定める行為のうち、本人が必要とする一定の行為についてのみ同意権と取消権を与えられる
・また、その範囲内で被補助人に代理権を与える申立てができる

●補助の申立てにおいて注意すべき点
・申立てそのもの、同意権、取消権、代理権の内容について、すべて本人の同意が必要となることです。

【終活・遺言・相続相談】相談例15 成年後見制度とその問題点

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【相談内容】
相談者から「同居している母(83歳)の認知症が進んできた。姉や弟から私が母の財産を使い込んでいると誤解されたくないので、成年後見を利用して、自分が後見人になろうと思う。」と相談された。

【検討すべき点】
成年後見制度を利用したいという相談ですので、成年後見制度の説明をします。成年後見制度は判断能力が不十分な方の財産管理方法としてもっとも基本的な方法ですが、誤解されている点も少なくありません。問題点を説明し、相談者が成年後見制度を利用する目的と効果が一致しているかを確認する必要があります。

【1】成年後見制度

① 家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族等の申立てにより、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については後見開始、その能力が著しく不十分である者については保佐開始、その能力が不十分である者については補助開始の各審判を下し、それぞれ成年後見人、保佐人、補助人を選任します。
② 成年後見人には広く代理権を付与され、保佐人には重要な財産処分行為(民法13条1項規定)に関する同意権と取消権(審判で付与される場合は代理権も)、補助人には、それよりは限定的な同意権と取消権(審判で付与される場合は代理権も)が、認められます。

【2】成年後見人の選任

① 平成12年施行の成年後見制度の創設当初は、親族が後見人等になることが期待されていましたが、親族後見人が管理財産を費消するトラブルが多発し、専門職後見人が選任されることが多くなりました。
② 令和2年度に選任された後見人中の親族の割合は約19%、それ以外は専門職後見人が選任されています。ことに、多額の資産がある場合には専門職後見人が選任される傾向が強く表れています。
③ 申立人が後見人候補者を推薦しても、後見開始決定前に推定相続人全員に候補者に関する意見照会を行い、その結果、候補者の選任に反対する意見があれば、利害関係のない専門職後見人が選任される傾向にあります。
④ よって、資産額や推定相続人間の人間関係によっては、相談者自身が後見人になることは難しいケースが多くなります。

【3】成年後見制度の問題点

【3-1】財産利用に関する思惑違い

① 相談例のように、高齢者と同居している子が後見開始を申立てる場合、申立人には、自分が家庭裁判所から成年後見人に選任してもらって、高齢者の財産管理に「お墨付き」をもらいたいという期待があるのが一般的です。
② しかし、前述のように資産額や推定相続人同士の関係性によっては、申立人がそのまま後見人に選任されることは稀ですし、専門職後見人が選任されると相談者は母の財産を管理して使うことができなくなります。
③ たとえば、相談者が母の在宅介護をしている場合には、介護費用や医療費のほか、風呂や階段の手すり、バリアフリーへの改装、母所有の自宅建物の屋根の修繕など様々な出費が予想されますが、そのたびに専門職後見人に説明し、後見人から費用を支払ってもらわなければなりません。
④ もちろん母の持つ株式の処分や相続税対策についても同様で、母の財産はほぼ凍結された状態(母のためにのみ利用が可能で、基本的には投機的運用は認められない)になります。
⑤ よって後見開始の申立人やその親族は「成年後見を申立てなければ母の財産を利用できたのに」と不満に感じがちです。

【3-2】財産凍結に関する思惑違い

① 相談例とは逆に、非同居の子が、同居の子による親の財産の浪費を監視し、親の財産を保全する目的で後見開始を申立てる場合があります。しかし、成年後見人は後見開始の申立人に対して、直接に報告義務を負うわけではありません。したがって、申立人や親族や推定相続人といえども、後見人が説明をしない場合に成年後見の内容を知りたければ、家庭裁判所の許可した範囲に限られますが、記録を閲覧などするしか方法がありません。
② また、本人に事理弁識能力が残っている場合には、後見開始から保佐開始や補助開始の審判に移行しますので、その場合に、被保佐人や被補助人本人が、自宅の修繕や孫への贈与等を希望すれば、保佐人や補助人が本人の意思に従って出金を認める可能性があります。
③ つまり、後見開始が認められれば申立人の思惑通りに監視できるというものではないということです。

【3-3】後見監督人・後見制度支援信託

① 相談者の母の財産が少なく、相談者に兄弟がいなかったり、兄弟が賛成している場合は、相談者自身が後見人に選任されることがあります。しかし、後見人に選任された相談者は、領収証を集め整理し、収支の帳簿を付けて、被後見人の財産管理業務を行い、家庭裁判所に報告する義務を負います。
② 家庭裁判所は親族後見人による財産の横領を警戒し、後見監督人の選任に同意するか、後見制度支援信託を利用するか選択を迫ります。これは申立人に対して「あなたを信用できません」というようなもので、気持ちよいものではなく、何方を選択するにせよ費用が掛かります。

【3-4】専門職後見人の費用

① 専門職後見人や後見監督人が選任された場合、報酬が発生します。家庭裁判所が金額を決めますが、本人の財産額に応じて基準が示されており、最低額は月額2万円となってます。本人の財産額が5千万円以上の場合は月額6万円となり、年額では72万円にもなります。
② この報酬は本人の財産から支払われます。被後見人の家族からすれば、将来の相続財産が減っていくことを意味します。

【3-5】専門職後見人の問題点

① 後見人は、財産管理だけではなく、身上監護についても配慮すべき立場にありますが(民法858条)、専門職後見人が被後見人の日常生活の世話をすることは難しく、ほとんどの場合、その業務は財産管理に重きを置かれます。
② 専門職後見人が被後見人に会いに行かないとか、家族の相談に乗らないとか、被後見人の施設入所に協力しないとか、親族からの不満の声も多く聞かれます。
③ 被後見人の親族などは成年後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所に対して解任を求めることができます。

【3-6】やめられない成年後見

① 成年後見制度にも問題点はありますが、申立人や家族が不満を抱いても、いったん申立てを行った以後は、成年後見を止めることはできません。被後見人は事理弁識能力を回復する以外には、一生涯成年後見人のお世話になることになります。

【4】他の注意点

① 相談例では姉や弟から疑われたくない、ということでしたので、専門職後見人が選任されても問題ないケースと思いますが、姉や弟にも成年後見を申立てることは説明しておくべきです。

【終活・遺言・相続相談】相談例14 判断能力に疑問がある高齢者と金融機関

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【相談内容】
相談者から「これまで父(85歳)の生活費を父名義の預金口座からカードで引き出してきたが、預金残高が少なくなったので、父と一緒に銀行へ行って1年前に契約した投資信託の解約を銀行に申し込んだ。ところが、待たされた末、銀行は成年後見人をつけないと解約に応じられないという。銀行を訴えられないか」と相談された。

【検討すべき点】
銀行が成年後見人の選任を求めたのは、預金名義人(父)の認知判断能力に疑問を持ったからでしょう。銀行を訴えたとしても、解約に応じるよう銀行に命じる判決が出る可能性は低そうです。父の投資信託を解約するためには後見開始を申立てるしかないと思われます。なぜそのようなことが起きるのか、これからどうすればよいかについて、相談者に説明します。

【1】高齢者に対する金融機関の対応

① 金融機関にとって高齢者は投資信託等金融商品売り込みのターゲットですが、逆に、高齢者による預金の引き出しや投資信託の解約は難題の一つです。
② 認知判断能力が低下したと思われる高齢者との取引に応じたのでは、後日、金融機関の責任を追及されかねないからです。預金名義人のキャッシュカードと暗証番号を利用してATMから出金される場合はともかく、やや頼りない高齢の預金名義人が直接窓口に来られて多額の預金や投資信託の解約を申し込まれた場合には、この問題が顕在化します。
③ 金融機関は預金名義人の認知判断能力に疑問があれば、受領権者としての外観を有する者への弁済(民法478条)の要件を満たさない可能性があるため、ほぼ例外なく、「成年後見人を付けてください」という対応をとります。
④ 相談者としては、後見開始を申立て、成年後見人から金融機関に対して投資信託の解約を申し入れるしかありません。
⑤ 最高裁判所事務総局家庭局作成の「成年後見関係事件の概況」によれば、法定後見の審判の申立ての動機として、「預貯金の管理・解約」を挙げるものが37.1%で最多です。つまり、金融機関がこのように対応するため、認知判断能力に疑いありと見受けられる場合には成年後見等を申立てせざるを得ない状況です。
⑥ しかし、相談例では、1年前に投資信託契約を締結しているので、相談者が納得できないものも当然です。

【2】金融機関の取り組み

① このような問題に対応するため、金融庁は、令和2年7月、高齢者に金融商品を頻繁に売買させて手数料を稼いだり、投資信託を勧誘する場合に他の商品と比較させないといった金融機関の手法を問題視するとともに、高齢者の預金の引き出しについても、それが医療や介護など明らかに預金名義人本人のための支出であれば柔軟な対応が望ましいとして、行政指導に乗り出しました。
② 全国銀行協会も、令和3年2月18日、認知判断能力が低下した高齢者らに代わって親族などが預金を引き出すことを条件付きで認めるとの見解を発表しました。
③ これによると、預金引き出しには原則として預金者本人の意思確認は必要で、依然として認知判断能力に問題がある場合には法定後見制度の利用を促すものの、医療費や介護施設の費用の支払など預金者本人の利益になることが明らかな場合には、引き出しにも柔軟に応じるよう全国の銀行に促すようです。
④ そうだとしても、診断書や主治医の意見書は必要か、医療機関等への直接振込に限って認めるのか、投資信託などの金融商品の解約はどのような条件下で認めるのか等の詳細はまだ決まっていません。

【3】代理出金機能付信託

① 金融機関でも、認知判断能力が減退した高齢者の預金の出金について、代理出金機能付信託という商品を用意しています。
② 「代理出金機能付信託」とは、預金契約者の認知判断能力が低下した場合に備え、契約者が金融機関に預金を信託し、契約者が指定した家族等の代理人が契約者の信託預金を引き出せるという信託商品です。
③ 大手銀行のどの信託も仕組みはほぼ同じですが、契約者は一定額以上の預金を信託銀行に信託し、その際に信託額の1~2%程度の管理手数料を支払い、出金の権限を持つ代理人と閲覧者を指定します。信託された預金を引き出せるのは代理人のみで、閲覧者が監視するというシステムで、代理人が預金を引き出した際には、閲覧者に通知されるため、不正の防止に役立つとされています。
④ このシステムを導入すれば、契約者が自分の意思を表示できず預金を引き出せなくなっても、代理人が生活費などを契約者の口座から支払うことができるということになります。

【4】代理出金機能付信託の問題点

① 代理出金機能付信託は契約行為ですから、その契約を行う時点では、預金契約者に契約を締結する意思能力が備わっていることが前提です。したがって、父の言動が怪しくなってきたと気づいたときには手遅れかもしれません。
② 代理出金機能付信託の長所は、後見開始の申立てと比べれば、比較的簡単であり、長男が代理人、次男を閲覧者と指定すれば、、家族の中で完結することです。それは専門職後見人や成年後見監督人に介入されることがないことを意味しています。
③ 受託者である銀行に対しては管理手数料を支払う必要がありますが、月額の利用料は少額に抑えられるので、専門職後見人等に支払う報酬に比べれば割安と思われます。
④ しかし、代理出金機能付信託は、家族の中で完結するが故に心許ない点があります。出金されたお金の使途は限定されませんので、閲覧者(次男)にも、代理人(長男)が出金したお金を何に遣ったかはわかりません。また、閲覧者に指定されなかった推定相続人(たとえば三男)には、出金の事実は通知されないので、蚊帳の外に置かれるような状態になります。このことが将来の争族(相続紛争)の原因になる可能性があります。

【5】相談者への説明

① 今回の相談例では、父に認知判断能力に問題があると思われる事情があるなら、銀行の言う通り、後見開始の申立てをするしかないと説明せざるを得ません。
② 仮に医師の診断書などで、父の認知判断能力が投資信託の解約に必要な判断能力を保持しているとされた場合は、その診断書などで金融機関と交渉することになります。

【終活・遺言・相続相談】相談例12 おひとり様の入所者の終活

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【終活・遺言・相続相談】相談例12 おひとり様の入所者の終活に関する相談についての記事です。

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【相談内容】
サービス付高齢者向け賃貸住宅(サ高住)の担当者から、「身寄りがなく認知症の入所者(95歳女性)の病気が進行し、余命いくばくもないと分かった。連帯保証人がいないので、これから先の、財産の管理、延命治療、ご遺体の引取り、葬儀埋葬、賃料の請求、貸室の明渡し等について、どうすればいいかわからず困っている」と相談を受けた。

【検討すべき点】
介護施設も、身寄りのない入所者にもしものことがあった場合には、対応に苦慮します。認知症が進行して事理弁識能力がないなら、財産管理契約も遺言もできません。利害関係人である施設は、後見開始の申立権者ではありませんので、本人申立てを検討します。

【1】サ高住の実情

① サ高住は高齢者の居住の安定確保に関する法律によって創設された民間施設で、比較的健康な高齢者向けの住まいとしてスタートし、特別養護老人ホーム待機者の受け皿として発展してきました。
② 様々な業者が参入して過当競争状態になり、令和元年度は53施設が倒産又は廃業しました。サ高住は賃料だけでは経営が成り立ちにくいので、約8割の施設が訪問介護ステーションやディサービスを運営し、これらのサービスと併せて収益を上げています。

【2】介護施設の立場

① サ高住の経営的な視点だけで考えれば、要介護度が高く、自社が提供する介護サービスで売上を稼ぐことができ、かつ、手のかからない高齢者で部屋が埋まっているのが理想です(介護サービスが不要な自立した方は割に合いません)。その上、入所契約の際に保証人(推定相続人)がいれば安心できます。
② しかし、空室が多いと経営が苦しくなるので贅沢は言えず、保証人がなく、身寄りもない高齢者でも生活保護受給者でも、とりあえず入所させることがあります。そのような入所者が死亡した際には、ご遺体の引取り、賃料等の請求、貸室の明渡しなどの処理に窮します。
③ ちなみに、縁者がいないケースでは、市町村長に申告することによって無縁仏として処理してもらえますが、財産はあるが、相続人が不明な場合、その後の処理も問題になります。

【3】成年後見の活用

① 認知症の入所者について後見が開始すれば、施設(サ高住)は成年後見人に入所者の財産管理を任せることができます。
② 入所者死亡時には、成年後見人が死亡届を提出し、火葬及び埋葬に関する契約の締結に関する家庭裁判所の許可を得て、火葬、埋葬手続きを行うこともできます。
③ しかし、被後見人の葬儀については民法873条の2第3号に例示されておらず、成年後見人が葬儀を執り行うことまでは認められていませんので、葬儀は直葬になります。
④ 被後見人の相続開始後、成年後見人は貸室の明渡しや入院費通院費の支払いも弁済期の到来した債務の弁済(民法873条の2第2号)として行うことができます(残置物の廃棄や保管のための寄託契約の締結は「その他相続財産の保存に必要な行為」(同条3号)として、家庭裁判所の許可を得て行ないます)。
⑤ 成年後見人には延命治療の同意権はありませんが、相続開始すれば相続人に管理財産を引き渡す義務があるので、事前に入所者の戸籍を調べて親族(推定相続人)の有無や所在を確認し、連絡を取ってくれると期待できます。そうすれば、延命治療、葬儀及び埋葬などについて、親族の意見を伺うこともできます。このように身寄りのない入所者の成年後見人が選任されることは施設(サ高住)にとっては好都合になります。

【4】後見開始の申立て

① 後見開始の申立ては、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人等に限られており、介護施設などの利害関係人は含まれません(民法7条、11条、15条1項)。そこで、身寄りのない入所者でも、多少なりとも事理弁識能力が残っているなら、その入所者本人からの後見開始の申立てを試みることになります。
② しかし、入所者が意思表示できなかったり、あるいは「自分はまだ大丈夫だ。金を他人に任せる気はない。」と主張するならば、この方法は使えません。そうなると、四親等内の親族を探し出し、事情を説明して後見開始の申立てをお願いすることになります。
③ 四親等の親族も判明しないときは、市町村長から後見開始の申立てをお願いするしかない(老人福祉法32条)ので、市区町村の老人福祉課に相談することになります。

【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居についての記事です。

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【相談内容】
相談者(62歳男性)から、「田舎で一人暮らしをしている母(86歳)が認知症のようなので、心配している。弟(次男59歳)もいるが、私は長男だし、私の2人の子も就職して家を出たので、母を引き取って、妻(60歳)と3人で暮らそうと思うが、どうだろう」と相談された。

【検討すべき点】
子が認知症の親を引き取って面倒を見るというのは美談とも言えるいい話です。しかし、実際の世話をするのが息子ではなくその配偶者であれば、その配偶者の理解は不可欠ですし、先々のことも考えておかなければなりません。また、兄弟姉妹への配慮や田舎の実家の処分も検討材料です。善意だったとしても、それが仇にならないように、将来を予測したアドバイスが必要になります。

【1】親と同居のパターン

① 別々に暮らしていた子が高齢の親と同居して面倒を見るパターンとしては、概ね以下の4つに分類されます。
(1)子が親を田舎から呼び寄せる「引取り」
(2)子が実家に戻って親と同居する「実家での親との同居」
(3)複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション」
(4)子が自宅と実家を行き来する「半同居」
相談例はこのうちの(1)のパターンです。

【2】当事者の心理

① 一般的に高齢の親は住み慣れた自宅から離れたいとは思わないので、母の気持ちを考える必要があります。それでも、母が長男の申出に応じたのなら、自宅で自立して暮らす自信がなくなり、地元の施設にも入りたくない(大勢の前で恥をかくのが怖い)といった気持があるからかもしれません。
② 長男としては、長男の責任を果たしたい(在宅介護してあげたい)という気持ちが強いのだろうと思います。男性で単身の子が親を引き取るというパターンはあまり見られないので、配偶者(妻)が母の面倒を見てくれるだろうという、甘い考えがありそうです。
③ しかし、相談者の妻としては、義母との同居は歓迎できることではないケースが圧倒的です。そうであれば、同居すれば義母の資産を流用させてもらえるとの期待を抱くことは当然あり得ますし、いざとなれば施設に入居してもらうという考えもあり得ます。
④ 一方、次男は母の介護問題から逃げられるので、あまり文句を言わないでしょう。長男一家が母の財産を多少流用することも想定範囲かもしれません。しかし、母の財産が一気に減少したり、母から長男一家への恨みつらみを聞かされたり、長男が母を引き取って間もなく施設に入所させたりといった事情が生じれば、「親孝行は口先だけ」と長男夫婦を非難し始めるでしょう。

【3】同居と介護

① 親との同居は、もちろん在宅介護を意味しますが、在宅介護のたいへんさは経験してみないとわかりません。介護サービスを利用するとしても、徘徊、癇癪、愚痴、下の世話などを経験し、それまでの生活が制約され、認知症が進んだ親から感謝されなくなれば、やがて我慢の限界を迎えます(認知症の見当識障害から、排泄物を弄んだり壁に塗りたくる等の症状も見られますので、そうなると一層我慢することが辛くなります)。そうなると施設への入所を選択せざるを得なくなります。
② 母の他界後、遺産分割の段階になれば、長男夫婦には「介護の苦労はどう評価してくれるのか」という気持ちが生じます。
③ 寄与分(民法904条の2)には、「特別の寄与」との厳しい要件があり、よほどのことがなければ認められません(上記のような症状の親の面倒を見る程度では、認められません)。
④ 平成30年民法改正では、配偶者の苦労に配慮して、相続人ではない親族(相続人の妻など)が被相続人に対して無償で療養看護などの労務を提供した場合には、特別寄与料が認められることになりました(民法1050条)が、寄与分と比べて要件が大幅に緩和されたわけではありません。実際どのような場合に請求が認められるかも、まだ判例がなく不透明です。
⑤ したがって、相談者は、同居後に在宅介護が不可能な状態になったらどうするのか、また、在宅介護は特別の寄与に認められにくいということを考えなければなりません。

【4】親の財産管理

① 親と同居するには、他の兄弟姉妹から親の資産の流用を疑われないように、親の財布と子の財布を完全に分ける必要があります。具体的には、親子双方が別の家計簿をつけ、親の出費は出来る限り口座引き落としや振り込みを利用し、ATMからの現金出金を避け、1年に1度は他の兄弟姉妹に預金通帳の写しや収支の明細を送ることを勧めます。日常生活を写真や動画に写しそれを送るなどの工夫が大切です。
② このことは、長男が母の成年後見人になったとした場合に必要となる行為でもあり、成年後見を申し立てない場合でも、任意財産管理契約を締結したのと同じ運用と報告をすべきだということです。
③ よく問題となるのは、孫の入学や卒業の祝い金、結婚祝、出産祝、新築祝等の現金出金ですが、兄弟姉妹の各ケースを同額としておくなど、事前に話し合いで決めておけば、紛争を回避できます。
④ また、母を迎え入れるのに、バリアフリーなどのリホームや階段風呂場トイレなどに手すりを設置する等の工事を行う場合も、事前に兄弟姉妹の同意を得て、領収書を保存することが大切です。
⑤ 母の住んでいた田舎の実家は、帰る予定がないならば、空家問題を避けるためにも早めに処分すべきです。これは相談例では弟がいますので、よく話し合って決める必要があります。
⑥ 相談例でいう弟の立場の人から相談を受けた場合のアドバイスとしては、長男に母の生活費を教えてもらい、その一部でも分担して母名義の口座に仕送りすることをお勧めします。これは長男の浪費の抑止にもつながります。

【5】他の同居のパターン

① 相談例とは違うケースですが、【1】同居のパターンの(2)「実家に子が同居」のケースについて、子が身軽な単身者である場合が多いようです。この場合、非同居の兄弟姉妹からは、同居の子が自分の都合で親に寄生しているとみられるリスクが高くなります。このケースは親の預金の流用や自宅相続などの問題でもめやすいため、親の財産管理は【1】(1)の「呼び寄せて同居」パターンより気を使い厳格にすべきでしょう。
② これに対して【1】(3)の複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション型」のパターンは、たとえば2か月ごとに、長男や次男・長女や次女の家を行ったり来たりするもので、あまり多くは見られませんが、高齢の親にとっては移動が負担になり、頻繁な環境の変化は認知症の進行にも悪影響を与えるので、あまりお勧めはできません。
③ また、【1】(4)の「子が実家と自宅を行き来する半同居」は、子が金曜の夜から日曜日まで実家に戻り親の介護をするといった方法です。その子にとっても大きな負担になることは自明なので、兄弟姉妹の仲がこじれることは少ないのですが、二重生活の為、費用面でも、体力面でもこの負担が重くなり、長続きしないケースが多くなります。

【6】親の言動についての注意

① 同居の場合に限定されませんが、認知症が進んだ高齢の親は、子どもの気を引きたいがゆえに、目の前の子に迎合する言動が多くみられ、目の前にいない子の悪口を言う傾向があります。
② 例えば、次男に「長男夫婦にご飯を食べさせてもらえない」「長男に預金通帳を取り上げられた」といい、長男には「頼りになるのはおまえだけだ」「次男は私の財産を狙っている」などと媚びるのです。高齢者として自然ともいえる行動ですが、子どもらがその言動を真に受けると、確実に争族の種になります。これを避けるためには親に「子供の悪口は言わない」ことを約束してもらうことと、兄弟姉妹間で話合い、親の言動を真に受けないとしておくことですが、実際は難しいところです。

【7】相続開始前の紛争(前哨戦)

① 親と同居していること非同居の子の対立が深まれば、相続開始前でもトラブルが生じます。
② 長男が親が「次男の顔も見たくない」と言っているとして、次男との面会を遮断することがあります。実際、親が同居の子の顔色をうかがってそのような発言をすることもありますが、非同居の子からすれば、それは許せるものではありません。そこで、自宅に押し掛け、警察を呼ばれ、弁護士に依頼して面会交流を求める親子関係調整調停事件に発展することもあります。
③ しかし、子に「親との面会を求める権利」はありません。「親が会いたくないといっている」として調停期日の出頭を拒否されると打つ手がありませんし、人身保護法2条の申立ても要件が厳しく、うまくいく見込みはあまりありません。
④ そこで、腹に据えかねた非同居の子が、ディサービスの帰りに親を連れ去るといった自力救済も起こり得ます。これに対して、同居の子が親の取返しを図ろうとすると、今度は非同居の子が「親は家に帰りたくないといっている」と主張します。
⑤ さらに、親を確保した子が、遺言書を書かせ合うといったこともあります。離婚事件の子供の取り合いに似ていますが、こうなると手の施しようが有りません。
⑥ その他、非同居の子が、同居の子が親の財産を費消することを予防するために後見開始を申し立てることも頻繁に見受けられます。そして、同居の子は家庭裁判所からの意見照会で後見開始の申し立てを知ることになりますが、例外なく激怒し紛糾します。
⑦ 相続前でもこれだけもめていれば、相続発生後に紛争になるのは必至です。親との同居はその遠因となるかもしれませんので、相談者には以上のリスクをお伝えし、十分に検討していただくようお勧めします。

なるほど納得!遺言書のあれこれ

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今回は、【遺言制度】に関して、「なるほど納得!遺言書のあれこれ」と題した説明資料のご提供です。

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今、終活という言葉が広く世間に知れ渡るようになり、併せて法的効果のある「遺言制度」に関するお問い合わせが非常に増えております。

弊所では初回相談を1時間無料で対応しておりますが、遺言制度に関するご相談をいただく場合、遺言制度の説明に時間を要してしまうのが実状です。

そこで、「なるほど納得!遺言書のあれこれ」と題して説明資料を作成いたしました。下記のリンクからPDFの資料を読むことができます。

相談の予約をする前に、一読すると遺言制度の全体像がご理解いただけるものと思いますので、お時間あるときにお試しください。

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【終活・遺言・相続相談】相談例7 望まれない介護者 

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【終活・遺言・相続相談】相談例7 望まれない介護者についての記事です。

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【相談内容】
相談者(女性55歳)から、「久しぶりに尋ねた一人暮らしの父の家に、見知らぬ女性が上がり込んで、父の世話をしている。妻に先立たれた父は、その女性を頼りにしているようだが、ときどき怖がっているようにも見え心配だ」と相談された。

【検討すべき点】
その女性(介護者)は善意で父の世話をしてくれているのかもしれませんが、そうでない可能性もあります。父本人、隣人、親戚らに父と介護者との関係を確認し、必要に応じて、地域包括支援センターの援助を求め、介護認定を受けることや、成年後見開始の申立てなど、しかるべき対策が必要になると思われます。

【1】望まれないボランティア

① 介護サービスの従事者以外の方が、認知症傾向のある高齢者の家に入り込み、高齢者の世話をしていることがあります(同性の場合も異性の場合もあります)。このような方は、その昔、高齢者に「世話になった」「特別なご縁があった」などと主張し、自らを「ボランティア」と称して食事、掃除、洗濯などをして高齢者に取り入ります。また、高齢者も話し相手ができ面倒をみてもらえるので、歓迎する傾向があります。
② その介護者が真に善意で、あるいは高齢者との信頼関係から面倒をみてくれるならばありがたいことです。しかし、こうした方が高齢者の通帳や印鑑を管理し、勝手に預金を引き出し、世話代などの名目で金銭を取得しているケースも散見されます。
③ さらに、高齢者に婚姻届を作成させて配偶者になったり、養子縁組を届け出て養子になったり、あるいは自分に対する遺贈を書いた遺言書を作成させたりするケースもあります。
④ このような場合のターゲットになる高齢者は、配偶者や子供のいない、孤立している、小金を持っている、認知症の初期でお金の管理ができないといった共通点が見られます。
⑤ このような介護者は高齢者の財産を勝手に使った点などを指摘されると、高齢者から暴力を振るわれたとか、性的関係を強要されたとか逆切れすることもあります。

【2】相談者へのアドバイス

① このような場合、まず、相談者の父から通帳を預かって取引の履歴を確認し、収支に不自然な点がないかを確認します。それが困難な場合や、不自然な多額の出金がある場合には、介護者に説明を求めます。説明で不明点が解消されればよいのですが、そうでない場合は次の手段を講じます。
② 説明が不自然な場合や、介護者による金銭の消費や搾取が判明した場合、弁護士に依頼して返還請求をすることになります。もし、本人の判断能力が十分でないならば、四親等内の親族である相談者から成年後見制度利用の申立をしてもらいます。
③ これに対して、介護者が「父は認知症ではない」「財産を取り上げるのはかわいそう」などといって法定後見制度の利用に反対したり、医師の診断を受けることを妨害したりしますが、取り合う必要はありません。
④ 介護者と父との婚姻や養子縁組を防止するには、父と区役所や市町村役場に同行して、縁組等の届出に関する不受理届を提出する方法があります。

【3】高齢者虐待

① 平成18年、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)が施行されました。同法は、養護者又は高齢者介護施設従事者等による高齢者虐待の防止を目的としており、虐待の例として、身体的虐待(殴る、蹴る、つねる、縛るなど)、性的虐待(高齢者夫婦間のDVも含む)、心理的虐待(脅迫、恫喝、侮辱)、ネグレクト(介護や世話の放棄・拒否や不合理な制約)、経済的虐待(年金・預貯金・財産等の取り上げや処分)などが挙げられます。
② もし、介護者に預金通帳を取り上げられている場合には、経済的虐待に該当する可能性が高く、高齢者に対して恫喝や侮辱をしている場合には心理的虐待のおそれがあります。
③ このような場合、相談者に高齢者虐待防止法の内容を説明し、地域包括支援センターや市区町村の高齢者窓口へ通報や相談をするように勧めます。地域包括支援センターや高齢者窓口の担当者が自宅を訪問して調査し、虐待の有無やその保護、介護認定や成年後見制度の必要性なども検討してくれます。

【終活・遺言・相続相談】相談例6 一人暮らしの親について子供からの相談

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【相談内容】
相談者(女性50歳)から、「母親(82歳)が田舎で一人で暮らしているが、認知症が始まってきているように感じて、振り込め詐欺や悪質商法の被害に遭わないか不安です。同居することはできませんが、何か良い方法はありませんか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
「おひとりさま」の問題の一つとして、特殊詐欺や悪質商法の被害に遭いやすいということが言えます。一度そうした被害に遭うと、その情報が流通して、何度も特殊詐欺や悪質商法のターゲットとなることがあります。
ハード面の対策として、固定電話の見直しなどが挙げられます。ソフト面でも、高齢者の寂しさを癒すために接触の機会を増やすことで、話す時間を作っていくことが大切です。

【1】特殊詐欺等への対策

① 令和元年の調査によると、振り込め詐欺の認知件数は約17,000件で、被害総額は約315億円、検挙率は約40%です。また、振り込め詐欺の進化形としてアポ電強盗やアポ電空き巣も増えています。
② 「アポ電強盗」とは警察官等を装った電話で、自宅にある金銭の額や在宅のタイミングを聞き出し、強盗に入る手口です。「アポ電空き巣」は同様に金銭の金額を聞き出し、電話で呼び出して、そのすきに空き巣に入る手口です。アポ電の認知件数は、令和元年4月から6月の3か月間で約35,000件でした。
③ これらの犯罪の9割以上は、一人暮らしの高齢者の固定電話を利用しています。
④ そこで、これらの犯罪に合わないようにするには、「固定電話を解約して、家族などとの連絡を携帯電話に代えること」が有効です。
⑤ また、「固定電話に録音予告をする機能を付けた防犯装置を設置」する。もしくは、知らない電話番号からの電話には、「出ないで留守電で対応」する、「いったん切って、かけ直す」癖をつける、「通話してもお金に関する話はしない」、「家族とは合言葉を決めておく」などの対策が有ります。

【2】悪質商法

① 一人暮らしの高齢者は、そのほかにも、マルチ商法、利殖商法、アポイントメント商法、点検商法などの悪質商法のターゲットです。これらの商法は、訪問販売や電話勧誘により、高齢者の興味を引きやすい健康や趣味に関する話題や、老後資金の不安につけ込んだ儲け話をきっかけにしたり、家屋の状態が緊急の修繕が必要などと誤解を誘い、同情をひきだし、ときには居座り恫喝するなどして、不要な高額商品を売りつける点に特徴があります。
② これらの商法に騙されないための第一は最初の勧誘を拒絶することです。電話の勧誘に関しては、特殊詐欺の対策と同じ方法が適当であります
③ 訪問による販売に関しては、知らない人が訪ねて来ても玄関を開けないといった習慣が必要です。また、契約をする前に(書類にサインをする前に)、家族に相談する癖をつけることも重要になります。

【3】高齢者の話し相手

① 高齢者が特殊詐欺や悪質商法の被害に遭う背景には、高齢者が家族や社会と疎遠になっている事情があります。
② 高齢者は年を経るにつれて、体力・気力が落ち、食欲がなくなり、物忘れが増え、目や耳が不自由になり、膝の痛みで歩けなくなるなどして、次第に、それまでできていたことができなくなります。親しい友人・知人も施設に入所したり他界したりしていなくなり、話し相手を見つけることができません。若い人とは話題も合いません。それが、特殊詐欺や悪質商法の被害に遭う遠因となります。
③ たとえば、相談者が実家に帰った際には、家の中に見慣れない物がないか注意を払うようにします。到底消費できない大量の商品(トイレットペーパーや布団、野菜など)がある場合は黄色信号です。
④ 「こんなに買ってどうするの」と咎めると、「ないと困るから買ったんじゃない」と言い返されますが、じつは、その商品の販売員とのわずかな時間の会話が、目的である場合が多くみられます。
⑤ こうした物品の購入は、悪質商法とまでいかなくても、よくない兆候です。
⑥ 金融機関も、こうした高齢者に、株式、投資信託、保険を売り込んでいます。散らばった書類の中に、金融商品の分厚いパンフレットや取引結果報告書がないか探します。
ただし、取引に気づいた子供が金融機関に文句をつけても、「ご本人が希望されたことです」とか、「価値ある商品をお買い求めいただいているので、そのまま資産として保有されれば如何でしょうか」と体よく追い払われます。
⑦ 要するに、高齢者自身は、社会とのかかわりを求めていて、その販売員と話ができるのがなによりも楽しみになっているのです。

【4】対策

① したがって、相談者に対して、母と頻繁に会えなくても、こまめに連絡して話し相手になるようにアドバイスします。その際の注意点として、「何か買ったんじゃないでしょうね」などと詰問調になることなく、「最近、話し相手になってくれる人はいるの」と優しく尋ねることの方が有効で、その話し相手がどのような属性かが重要です。「○○さんが、よくしてくれるの」と知らない名前が出てきたときは、要注意です。
② 相談者の母親の年齢(82歳)からすれば、田舎にはまだ多くの親戚や知人がおられるはずです。里帰りのときには、その方々を回って、何かあればすぐに連絡するようにお願いしておくことも重要です。
③ さらに介護認定を受ける状態になれば、ケアマネジャーにも相談しておきます。地区の担当する民生委員や地域包括支援センターにも相談しておくことが重要です。
④ なお、すでに大量の商品を売っている店や、株式取引で頻繁に自宅を訪問している金融機関がある場合には、弁護士などに依頼して、代理人としてその店や金融機関に対し、母に対する販売活動を中止するように申し入れることを検討する必要もあるかもしれません。
⑤ また、判断能力に問題がない場合は、任意後見契約と委任財産管理契約を、判断能力が不十分な状態であれば、成年後見制度を利用して、それらの店や金融機関に対して、取引の中止を求める方法も検討する必要があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例3 高齢の夫婦二人暮らしの方々の相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例3 高齢の夫婦二人暮らしの方々の相談ついての記事です。

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【相談内容】
相談者夫婦(夫85歳、妻80歳)から、「今のところ自宅で二人暮らしをしているが、週刊誌やTVを見ると終活などが必要と言われて、今後のことが気になったきた。何から準備すればよいのか」との相談。

【検討すべき点】
高齢者世帯のうち、夫婦二人暮らしの世帯数は800万を超え、その人数は1600万人おられる計算になります。高齢の夫婦そろっての相談というのはあまり多くはないのですが、このことはご夫婦がお互いを気遣いサポートし、生活も安定していると考えても良いのではないでしょうか。しかし、そのようなご夫婦が相談に来られたということは、何らかの動機があり、必要に迫られていると考えた方がよいでしょう。

【回答・解説】

【1】生活・健康に関するお悩み

① 多く見られるのは、夫婦どちらか一人の健康が損なわれ、二人で暮らすことが困難になり、どうすればよいかと心配する生活自立のお悩みです。高齢の夫婦がお互いを支え合い何とか生活しているところ、片方が健康を害すると、途端にその生活が成り立たなくなることがあります。

② そのようなお悩みに関する相談であれば、地域包括支援センターの存在を紹介し、そちらへの相談や支援の要請をお勧めすることが大切になります。ちなみに地域包括支援センターは各自治体で別の呼称の場合もあり、世田谷区では「あんしんすこやかセンター」と呼称されます。

③ また、介護保険サービスの概要、施設入所、任意財産管理契約、成年後見制度などの説明も必要になろうかと思います。また、配偶者名義の家に配偶者死亡後にも住めるのかという相談も良くみられますが、条件はありますが、民法改正により創設された、「配偶者居住権」の説明も必要になります。

【2】子供のいない夫婦の相続に関するお悩み

① 高齢の夫婦が揃っての相談でよく聞かれることの一つに、「自分が先に亡くなった場合、配偶者はどうなるのか」というものがあります。特に子供がいない夫婦の場合にはこのお悩みは多く聞かれます。

② また、この相談をされる方の多くの方に、「自分が亡くなった後の遺産は全て配偶者が相続するから、お金の心配はない」という危険な思い違いをされている方が見受けられますので、注意が必要です。

③ 子供のいない夫婦のどちらかが亡くなられれば、先に死亡した配偶者の兄弟姉妹(又は甥・姪の場合もある)が相続人として登場することになります。仮に亡くなった配偶者の直系尊属(親・祖父母)が存命であれば、その直系尊属が相続人になります。

④ 夫婦二人暮らしの方々が、それぞれの兄弟姉妹や甥姪と親戚付き合いをしていればまだしも、疎遠であることが多く見受けられるので、残された配偶者は遺産分割協議で苦労することになります。したがって、残される配偶者に遺産の全てを相続させ、疎遠な親戚との遺産分割協議を回避するには、遺言を残すべきです。

【3】子供がいる夫婦に関するお悩み

① 子供がいる夫婦の場合、子供への相続に関するお悩みが多くなります。子供と遺産の扱いに関して意見に隔たりがある(老親は自宅に住み続けたいが、子供は売却して現金で相続したいなど)場合や、そもそも残された配偶者と子供に血縁関係がない(前妻・前夫の子や養子縁組した子)場合などです。

② 相続人である配偶者に認知症がみられる場合や、子供が複数いる場合で子供の間で遺産を巡る意見の相違がみられる場合なども、相続が争族(争いのある相続)状態になる可能性があります。

③ このような事情の有無をよく聞き取り、まずは、被相続人となる先に亡くなるであろう方の意向を確認して、それに沿った形で推定相続人間での話し合いや、遺言書の作成を勧めることになります。また、認知症や怪我や病気で判断能力が欠ける状態への備えとして、任意後見契約や家族信託の検討も必要になるかもしれません。

【4】夫婦そろっての遺言

① 夫婦間に年齢差がある場合は特にそうですが、統計的に男性の寿命の方が短いので、夫が亡くなった場合についてのみを検討され、夫のみ遺言を作成されるケースが多く見受けられます。しかし、どちらが先に亡くなるかは分かりませんので、夫婦そろっての遺言書作成をお勧めします。

② ただし、夫婦そろっての遺言と言っても、「共同遺言」(同じ遺言書に夫婦連名で作成した遺言)は無効とされているので、注意が必要です。

③ 遺言で配偶者にすべての財産を相続させるとしても、その配偶者が先に死亡してしまっているケースも考えねばなりません。この場合亡くなった配偶者に相続させるとした遺産は宙に浮く形となり、相続人間で遺産分割協議が必要になってきます。

④ 配偶者が死亡した時点で、遺言を書き換えることも考えられますが、その時点で遺言能力を喪失している危険性を考えると、遺言作成時に、相続させるとした配偶者が死亡した場合を想定した、予備的遺言にしておくことをお勧めします。
具体的には、宙に浮くことになる遺産の行先を考えておくということです。兄弟姉妹などの他の相続人でも、どこかの団体への遺贈(寄付)も考えられます。その場合、遺言執行者を定めることや、遺贈先の了解を取り付けることが必要となってきます。