【終活・遺言・相続相談】相談例4 一人暮らしの高齢者の相談

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(77歳女性)から、「2人の子供は独立し、4か月前には夫が他界して、私もおひとりさまになってしまった。これからどうやって生きていけばいいのか途方に暮れている」と相談を受けた。

【検討すべき点】
一人暮らしの高齢者世帯数は約683万世帯(男性約222万世帯、女性約460万世帯)です。近くに相談できる身内や知人がいないため、孤立している方も少なくありません。こうした方は、やがて病気になったり、生活できなくなればどうすればいいか、認知症になったら誰が面倒を見てくれるのかといった、不安を常に感じています。特に配偶者を亡くした直後は、精神的に落ち込みがちなので、注意が必要です。

【回答・解説】

【1】おひとりさま

① 一人暮らしの高齢者を「おひとりさま」と呼ぶことがあります。「おひとりさま」という言葉はテレビドラマの題名に使われ有名になりましたが、このドラマの主人公は30代の女性であり、まだ、高齢者を対象とした言葉ではなかったようです。
② その後NHKの番組で、地域社会と隔絶し、孤独な生活を送る高齢者の増加現象を「無縁社会」として取り上げ、人間関係の希薄化や生き甲斐などの問題により、消費者被害や孤立死などのリスクが高まることに警鐘を鳴らしました。こうして高齢者のおひとりさまがクローズアップされたようです。
③ しかし、高齢者の一人暮らしを「おひとりさま」と呼んだとしても、その中には子や兄弟姉妹などの推定相続人がいる場合と、推定相続人がいない場合、独居であっても、完全な一人暮らしか施設入所されているかなどで事情は異なります。

【2】配偶者を失った場合の心情に対する理解

① 相談者には2人の子供がいるので、本来、相談相手に困らないはずです。また、相談者はまだ若いので、まだ認知症のリスクも現実化しないと思われます。したがって健康に関する不安が顕在化していないのなら、年金支給に合わせて今後の生活設計を見直すとか、生前整理や断捨離を始めるとか、あるいは遺言をお勧めする、子供が将来自分の面倒を見てくれるか心配であるならば、委任財産管理契約や任意後見契約を検討するなどという回答になることが考えられます。
② 心配なのは相談者の心身の状態です。というのも、配偶者が亡くなると(子供の有無にかかわらず)残された配偶者は生活のリズムが狂い、喪失感から気力を失いがちで、一気に老けると言われています。この傾向は妻に先立たれた男性に顕著ですが、夫に先立たれた女性も落ち込んでしまい、生活のリズムが乱れ、不安が高じることが見受けられます。
③ したがって、このような兆候が見られる場合には、相談者の気持ちに寄り添い、亡くなった配偶者の菩提を弔い、故人を偲んで昔話を聞くとともに、新たに何かするべきことを見つけて、相談者を元気づけることが大切です。

【3】相談者へのアドバイス

① まじめな方ほど、「自分がしなければならないこと」を探そうとされます。そして、気持ちが弱っているときには、高齢者は、終活ビジネスの宣伝文句に乗せられて、不要なことに手を出してしまいがちです。
② 例えば、終活や遺言のセミナーに参加すれば、任意後見、財産管理、家族信託、遺言信託を勧められるでしょう。終活フェアでは、葬儀の予約や墓地の購入を勧められることが多くみられます。
③ しかし、それは相談者に本当に必要なことでしょうか。2人の子供が気にかけてくれているならば、相談者にとって、それらは喫緊の課題ではありません。そうであれば、相談者には配偶者のいない新しいライフスタイルを模索するようにアドバイスした方がよいと思われます。
④ 例えば、高齢者のサークル活動は、今、活況のようです。中には商売目的のものも見られますが、山歩きや寺社巡りなど、多額の費用がかからないものはたくさんあります。そのメンバーも同じような経験をされた方が多く所属されていますので、その方々と語らうことが、気持ちを落ち着ける効果を生み出すと思われます。

【4】保証人問題

① 一般的にはおひとりさまが不安に感じておられるのは、施設入所、入院の際の身元保証人が見つからず、入所や入院を断られるのではないかという問題です。介護施設や病院は、ケアプランへの同意、手術や延命など治療方針への同意、死亡した際の遺体の引取り、利用代金の支払などのために身元保証人を求めます。
② 厚生労働省は通達を出しており、施設や病院は身元保証なしに入所や、入院できるようにするべきであるとしていますが、その後も身元保証人を求める施設病院が大半ですので、この心配は尽きません。
③ そこでNPO法人などの各種法人による見守り、財産管理、福祉サービス支援、身元保証サービスに葬祭支援までまとめたサービスが注目を浴びています。
④ しかし、これらのサービスを提供する業者が将来も健全な運営をしており、いざというときに頼れるという保証はありません。葬儀や埋葬、墓石の売買なども同じことが言えます。つまり、葬祭業者や霊園業者は、「いざというときに子供たちに迷惑をかけないよう今から準備しておきましょう」と言って、墓地の永代使用権や墓石を売り込み、高齢者を囲い込みがちです。
⑤ しかし、最初に多額のお金を支払わせて長期にわたりサービスを提供するという類型の終活ビジネスでは、常に、事業者が集めた金を流用して別の事業に投資し、失敗して破綻するというリスクがあります。そのようなリスクを避けるための冷静な判断には孤立しないことがもっとも重要です。

【5】士業の関与

① 配偶者を亡くしたばかりの相談者の動揺や不安が大きく、このまま放置することが見過ごせないのであれば、見守り契約をお勧めするべきでしょう。定期的に訪問をしたり、事務所にお越しいただき、相談事を伺いながら話し相手を務め、生活上のアドバイスや行政手続きのサポートをして差し上げる。これは高齢者医療で行われていることと何ら変わりません。法的な問題解決ばかりに固執することはありません。

【終活・遺言・相続相談】相談例3 高齢の夫婦二人暮らしの方々の相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例3 高齢の夫婦二人暮らしの方々の相談ついての記事です。

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【相談内容】
相談者夫婦(夫85歳、妻80歳)から、「今のところ自宅で二人暮らしをしているが、週刊誌やTVを見ると終活などが必要と言われて、今後のことが気になったきた。何から準備すればよいのか」との相談。

【検討すべき点】
高齢者世帯のうち、夫婦二人暮らしの世帯数は800万を超え、その人数は1600万人おられる計算になります。高齢の夫婦そろっての相談というのはあまり多くはないのですが、このことはご夫婦がお互いを気遣いサポートし、生活も安定していると考えても良いのではないでしょうか。しかし、そのようなご夫婦が相談に来られたということは、何らかの動機があり、必要に迫られていると考えた方がよいでしょう。

【回答・解説】

【1】生活・健康に関するお悩み

① 多く見られるのは、夫婦どちらか一人の健康が損なわれ、二人で暮らすことが困難になり、どうすればよいかと心配する生活自立のお悩みです。高齢の夫婦がお互いを支え合い何とか生活しているところ、片方が健康を害すると、途端にその生活が成り立たなくなることがあります。

② そのようなお悩みに関する相談であれば、地域包括支援センターの存在を紹介し、そちらへの相談や支援の要請をお勧めすることが大切になります。ちなみに地域包括支援センターは各自治体で別の呼称の場合もあり、世田谷区では「あんしんすこやかセンター」と呼称されます。

③ また、介護保険サービスの概要、施設入所、任意財産管理契約、成年後見制度などの説明も必要になろうかと思います。また、配偶者名義の家に配偶者死亡後にも住めるのかという相談も良くみられますが、条件はありますが、民法改正により創設された、「配偶者居住権」の説明も必要になります。

【2】子供のいない夫婦の相続に関するお悩み

① 高齢の夫婦が揃っての相談でよく聞かれることの一つに、「自分が先に亡くなった場合、配偶者はどうなるのか」というものがあります。特に子供がいない夫婦の場合にはこのお悩みは多く聞かれます。

② また、この相談をされる方の多くの方に、「自分が亡くなった後の遺産は全て配偶者が相続するから、お金の心配はない」という危険な思い違いをされている方が見受けられますので、注意が必要です。

③ 子供のいない夫婦のどちらかが亡くなられれば、先に死亡した配偶者の兄弟姉妹(又は甥・姪の場合もある)が相続人として登場することになります。仮に亡くなった配偶者の直系尊属(親・祖父母)が存命であれば、その直系尊属が相続人になります。

④ 夫婦二人暮らしの方々が、それぞれの兄弟姉妹や甥姪と親戚付き合いをしていればまだしも、疎遠であることが多く見受けられるので、残された配偶者は遺産分割協議で苦労することになります。したがって、残される配偶者に遺産の全てを相続させ、疎遠な親戚との遺産分割協議を回避するには、遺言を残すべきです。

【3】子供がいる夫婦に関するお悩み

① 子供がいる夫婦の場合、子供への相続に関するお悩みが多くなります。子供と遺産の扱いに関して意見に隔たりがある(老親は自宅に住み続けたいが、子供は売却して現金で相続したいなど)場合や、そもそも残された配偶者と子供に血縁関係がない(前妻・前夫の子や養子縁組した子)場合などです。

② 相続人である配偶者に認知症がみられる場合や、子供が複数いる場合で子供の間で遺産を巡る意見の相違がみられる場合なども、相続が争族(争いのある相続)状態になる可能性があります。

③ このような事情の有無をよく聞き取り、まずは、被相続人となる先に亡くなるであろう方の意向を確認して、それに沿った形で推定相続人間での話し合いや、遺言書の作成を勧めることになります。また、認知症や怪我や病気で判断能力が欠ける状態への備えとして、任意後見契約や家族信託の検討も必要になるかもしれません。

【4】夫婦そろっての遺言

① 夫婦間に年齢差がある場合は特にそうですが、統計的に男性の寿命の方が短いので、夫が亡くなった場合についてのみを検討され、夫のみ遺言を作成されるケースが多く見受けられます。しかし、どちらが先に亡くなるかは分かりませんので、夫婦そろっての遺言書作成をお勧めします。

② ただし、夫婦そろっての遺言と言っても、「共同遺言」(同じ遺言書に夫婦連名で作成した遺言)は無効とされているので、注意が必要です。

③ 遺言で配偶者にすべての財産を相続させるとしても、その配偶者が先に死亡してしまっているケースも考えねばなりません。この場合亡くなった配偶者に相続させるとした遺産は宙に浮く形となり、相続人間で遺産分割協議が必要になってきます。

④ 配偶者が死亡した時点で、遺言を書き換えることも考えられますが、その時点で遺言能力を喪失している危険性を考えると、遺言作成時に、相続させるとした配偶者が死亡した場合を想定した、予備的遺言にしておくことをお勧めします。
具体的には、宙に浮くことになる遺産の行先を考えておくということです。兄弟姉妹などの他の相続人でも、どこかの団体への遺贈(寄付)も考えられます。その場合、遺言執行者を定めることや、遺贈先の了解を取り付けることが必要となってきます。

【任意後見制度】任意後見契約の注意点 認知症になったとき、確実に後見が始まるか(2)

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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約の注意点 認知症になったとき、確実に後見が始まるか(2)について考えてみたいと思います。

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【3】受任者が任意後見監督人の選任請求をしないのは違法

任意後見契約を結んだケースのうち、任意後見監督人が選任され任意後見が開始した件数は全体の5%程度と言われています。この数字をどう評価するかですが、任意後見を開始する前に本人が認知症などにならずに亡くなるという場合もあります。

一方本人の判断能力が低下しても任意後見契約をスタートさせることなく財産管理契約を依然として継続させている例がかなりあるのではないかという推測もなされています。

その理由としては、任意後見契約に移行しなくても財産管理契約を継続していくことで、受任者の仕事は変わらず特に困ることもないということと、むしろ任意後見監督人に監督されるので煩わしいということ、任意後見監督人の選任手続きをとることがめんどうで、さらに任意後見監督人に対する報酬で費用がかかること、任意後見制度をよく理解していないこと、といった原因が考えられます。

代理権の消滅する場合を定めた民法111条と委任の終了する場合を定めた民法653条は、本人の意思能力の喪失を代理権の消滅及び委任契約の終了の事由としていないので、本人が意思能力を喪失しても委任は終了せず、代理権も消滅しないというのが通説です。

しかしながら、判断能力が不十分となったら、本人(委任者)の保護のため任意後見契約をスタートさせるという内容の任意後見契約を結んでおきながら、本人が実際そうなってしまってからも、受任者が財産管理契約をそのまま継続しているような状態は明らかに違法であり、受任者を監督する者が事実上誰もいない状態となって、結局、受任者による不正、代理権の濫用を防ぐことができないといったことになりかねません。

【4】本人の判断能力が低下してきたとき

財産管理契約からスムーズに任意後見契約に移行する対策として次のような事項が考えられます。
①財産管理契約の条項中に「本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になったときは、受任者は、家庭裁判所に、任意後見監督人の選任を請求する。」とする一文を入れて、監督人の選任請求義務を明記する。
②継続的見守り契約を結ぶ
③受任者を監督する者をおき、受任者をチェックするとともに指導する。

公益社団法人リーガルサポート(司法書士会)や権利擁護センターぱあとなあ(社会福祉士会)、公益社団法人成年後見支援センターヒルフェ(東京都行政書士会)などはこのようなシステムを取り入れていますが、監督人として信頼できる者を配置することでも同様な役割は果たせると思われます。

その他に、監督者としないまでも、受任者を複数として相互にけん制させる形態によって、判断能力低下後において放置されることを防止することは可能と思われます。

また、契約を締結する公証役場の現場でも、公証人が単に契約内容を当事者に読み聞かせるだけでなく、特に、受任者に対して、制度の趣旨並びに任意後見監督人の選任請求義務の条項についてよく砕いて説明し、本人の判断能力が低下してきたと感じたら、スムーズに任意後見に移行する手続きをとることを理解してもらう必要があります。

【任意後見制度】任意後見契約の注意点 認知症になったとき、確実に後見が始まるか(1)

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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約の注意点 認知症になったとき、確実に後見が始まるか(1)について考えてみたいと思います。

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【1】財産管理契約は本人の判断能力が低下してきたら終了させる

認知症などにより本人の判断能力が低下し、事理弁識能力が不十分な状況になったら、本人、配偶者、四親等以内の親族又は任意後見受任者等の請求により、家庭裁判所は、任意後見人を監督する任意後見監督人の選任をします(任意後見契約法4条1項)。

任意後見契約は、家庭裁判所がこの任意後見監督人を選任したときから効力を生じ、任意後見事務が開始します。同時に、今までの財産管理契約は役目を終えて終了します。

しかし、財産管理契約が終了して、任意後見契約に移行するといっても、任意後見人(財産管理契約の下では受任者)が本人のために行なう事務が大きく変わるわけではなく、よく似た内容の事務(本人の生活、療養看護、財産の管理に関する事務)を行なうことになります。

任意後見が開始するとその時から任意後見人が行なう事務を家庭裁判所が選任した任意後見監督人が監督(チェック)することになり、その点が大きく異なります。

任意後見監督人が任意後見人の事務が適切に行われているかどうかを監督し、家庭裁判所は任意後見監督人からの定期報告に基づき任意後見人の事務処理をチェックすることによって任意後見人を間接的に監督することにより、任意後見人の不正行為を防止します。

【2】「移行型」が採用されるわけ

それでは、誰が本人の判断能力の衰えを察知し、任意後見監督人の選任を請求するかということになります。

請求できることができる者は上記のとおり、本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者等ですが、「移行型」であれば、任意後見受任者は移行前(任意後見監督人が選任される前)において、財産管理契約のもとで、本人の生活、療養看護及び財産の管理事務を行ない、本人を見守ってきていることから、本人の判断能力の低下に他の誰よりもいち早く気づくはずで、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求することが可能と考えられます。

このようなことから、財産管理契約と任意後見契約を連結した「移行型」が優れているということで多くの任意後見契約の希望者から支持されています。

【任意後見制度】任意後見契約の注意点 財産管理契約と同じ内容で良いか

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【1】老い支度は移行期前の財産管理契約から

これまで述べてきたとおり、任意後見契約を締結したいとする高齢者の内、判断能力が低下する前でも既に、足腰が衰え外に出るのが大変であるとか、寝たきりの状態であるとか、あるいは施設に入所するに当たって、日常生活上の事務を自ら行うことができなくなっている等の理由により、生活、療養看護及び財産の管理の事務について第三者に任せる任意後見契約と同内容の支援を受けたいとする要望があり、そのような要望を実現するための契約が「移行前財産管理契約」と呼びならわされている委任契約です。

【2】事務の範囲と受任者・任意後見人の監督は別問題

判断能力に問題ない場合は、通常の生活を送ることが困難であっても、後見が開始される要件の「事理を弁識する能力が不十分な状況」(任意後見契約法2条1号)に該当しないことから、任意後見制度を利用することができません。

しかしながら、日常生活上の事務を自ら行うことができなくなっている本人(委任者)にとっては、認知症となる前でも後でもそれは連続した日々の老後を生きていくことであり、その間通常の生活をしていくのに必要な支援は同じはずです。

これについて、受任者の権限濫用を防止する見地から、財産管理契約の委託する事務の範囲を任意後見契約の事務の範囲に比べ狭くして、なるべく個別に列記すべきだとする意見があります。受任者の信頼性が明らかでないケースではそういえるでしょう。

財産管理契約において受任者に任せる事務の範囲は、本来的には本人の財産の状況及び精神・身体の健康状況並びに誰が受任者であるかなどによっておのずと違ってくるのであり、事務の範囲を狭くした個別列記であってもそれで本人が通常の生活を送ることが可能であるならば、受任者による不正を抑制する見地から制限を設けることに意味があると思われます。

しかし、本人(委任者)にとってはそれで用を足さず困る場合もありますので、結局は、本人が必要とする事務によってその範囲は決まるものと考えます。

また、任意後見契約における事務の範囲は、認知症等により正常な判断ができにくくなっている本人保護のために広範に設定されるのが通例ですが、正常な判断ができる現在であっても全幅の信頼を寄せることのできる受任者にすべてを任せたいという委任者もいることでしょう。そうすると、基本的には、財産管理契約と任意後見契約は同一内容であっても、特に問題はないということになります。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 任意後見契約の解除制限

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【1】民法の規定と任意後見契約法の規定

財産管理契約は、委任契約の一種ですから基本的には委任の規定に従い各当事者はいつでも解除する(将来に向かって失効させる)ことができます(民法651条1項)。一方、任意後見契約は、民法の特則を定めた任意後見契約法に基づくものですから、解除の効力についても同法の規定によって判断することになります。

同法では、任意後見契約が発効する前(すなわち家庭裁判所において任意後見監督人が選任される前)は、本人又は任意後見受任者は、いつでも公証人の認証を受けた書面によって契約を解除することができるとしています(任意後見契約法9条1項)が、任意後見契約が発効した後(家庭裁判所において任意後見監督人が選任された後)は、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て解除することができることになっています(同法9条2項)。

【2】任意後見監督人が選任されていないとき(移行前)

本人はまだ判断能力があって、任意後見監督人の選任をしていない状態であれば、本人からでも、受任者からでもあるいは双方の合意によっていつでも解除することができます。

本人又は受任者の一方からの解除による場合は、解除通知書を公証人の認証を受けた後、配達証明付き内容証明郵便で相手方(受任者あるいは本人)に送付する必要があります。終了の登記を申請する際には、郵便局から受領した内容証明郵便の謄本と配達証明のはがきを添付書面として東京法務局(民事行政部後見登録課)に提出する必要があります。

契約の合意解除の場合は、合意解除の意思表示を記載した書面に公証人の認証を受けた後、当該書面の原本又は認証ある謄本を添付書面として終了の登記を東京法務局(民事行政部後見登録課)に提出する必要があります。

【3】任意後見監督人がすでに選任されているとき(移行後)

本人の判断能力が低下し、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されている場合は、無条件での解除はできないこととなっています。

この場合は、解除する側に「正当な事由」がある場合(例えば、後見人の不正行為、不行跡、任意後見人の遠方への引越しや長期入院など)に限り家庭裁判所が許可をして、解除することができます。本人の解除をしたいとする理由の説明を基に、根拠ある場合は裁判所は許可することになると思われます。

その理由は、任意後見監督人の選任によって任意後見契約が効力を生じた後については、本人の判断能力が不十分となっているので、任意後見人に自由に解除を認めると、本人の身上監護及び財産管理が放置されてしまう危険があります。

また、本人の解除を自由に認めると、本人に不利益が生じることを理解しないまま任意後見契約を終了させてしまうことにもなりかねないことから、任意後見がスタートした後には解除について一定の制限が設けられているからです。

契約解除についての家庭裁判所の許可を受けたときは、本人又は任意後見人である解除申立人が、相手方に解除の意思表示をし、任意後見契約を終了させることになります。

申立人又は相手方は登記所に対して任意後見契約終了の登記を申請しなければなりません。その際の添付書面として、①解除の意思表示を記載した書面、②①の書面が相手方に到達したことを証する書面、③家庭裁判所の許可があったことを証する書面、④③の審判の確定証明書を提出する必要があります。

【4】任意後見人の解任

任意後見人に「不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は・・・任意後見人を解任することができ」ます(任意後見契約法8条)。

任意後見人の解任の審判がされると、裁判所書記官の嘱託により任意後見契約の終了の登記がされることになります。単独の任意後見人が解任された場合に、本人に判断能力があり、任意後見契約を望んでいる場合は新たな第三者と任意後見契約を締結し、直ちに任意後見監督人の選任手続きをとることになります。

既に本人に判断能力がなく他の後見人が必要と判断されたときは、任意後見監督人等から法定後見開始の審判の請求をすることとなります(任意後見契約法10条1項、2項)。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 管理人(受任者)の途中変更

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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約移行型の財産管理契約の注意点 管理人(受任者)の途中変更について考えてみたいと思います。

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【1】財産の管理人(受任者)を途中で変更できるか

財産の管理人を変更するということは、財産管理契約の受任者すなわち契約の相手方を変更することを意味しますので、そのような場合は、当該受任者との契約を解約することになります。

そして、新たな受任者と改めて移行型任意後見契約を締結することになります。

もっとも、任意後見契約については移行後(家庭裁判所で任意後見監督人を選任したあと)の財産の管理人すなわち任意後見人の変更は制限されています。

財産の管理人すなわち任意後見既契約の受任者を変更する場合は、新たな受任者と任意後見契約を締結する必要があります。

今までの旧任意後見契約については、終了の登記を、委任者又は受任者から申請することが必要です。新たな任意後見契約については、公証人が後見登録登記所(東京法務局民事行政部後見登録課)に嘱託することになります。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 遺言の代理はできない

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【1】遺言は本人でなければできない

遺言は、法律に決められた事項について、遺言者が単独で法律で定められた方式でする相手方のない意思表示で、遺言する者だけの意思に基づくものですので、これを第三者(受任者等)に代わりにやってもらうことはできません。

遺言は15歳以上であればすることができます。ただし、遺言をするには意思能力があることが必要です。例えば、認知症のように、自分の行為の結果を正確に認識できない人は遺言をすることはできません。

遺言をする人は、遺言をする時点でその能力があればよいので(民法963条)、任意被後見人や成年被後見人であっても物事の判断能力を回復していれば、法律で定めた遺言の方式に従わなければならないのはもちろんですが、医師2人以上の立会いのもとに遺言をすることはできます。

【2】遺産分割は受任者が本人に代わって参加できる

本人が遺産分割協議に関する事項について受任者に代理権を与えているときは、受任者が遺産分割協議に参加し意見を述べることができます。

その際、本人に判断能力があれば本人の指示に従って、あるいは判断能力の低下前になされた本人の意思の表明に従って、遺産分割協議で意見を述べることになりますが、判断能力のない状態であれば、本人の利益を保護ないし確保する立場から、少なくとも本人の法定相続分に沿った意見を述べることになるものと考えます。

【3】任意後見監督人等が本人を代表する場合がある(利益相反行為)

任意後見監督人がすでに選任されている場合(すなわち「移行後」)において、任意後見人(受任者)が本人(委任者)とともに共同相続人であるときは、両者は利益相反の関係に立ちますので、この場合には任意後見監督人が本人を代表することになります(任意後見契約法7条1項4号)。

任意後見監督人が選任される前であれば、受任者は、他の中立的立場の第三者に本人の代理人となってもらうのが相当です。

これらの手続きを怠って任意後見人(受任者)が利益相反行為を行なった場合、その行為は無効となる上、任意後見員(受任者)はその職務を解任等されてしまうおそれがありますので、注意が必要です。

【4】本人と受任者(任意後見人)との利益相反行為

次のような行為は利益相反行為にあたるとされ、受任者(任意後見人)が本人の代理人として取引などをしても無権代理行為(代理権を有しない者が代理人として法律行為を行なうこと)となります。

①本人(A)と受任者(B)とが共同相続人の立場にあるときは、双方の間で利益が相反する関係となり、このような場合はBがAを代理することは禁止されています。

遺産分割協議のほか、相続放棄のような単独行為についても最高裁は利益相反を認めています。ただし、他の相続人全員が相続放棄している場合や、全員が一斉に放棄する場合は該当しないとしています。

②BがAの所有する不動産の贈与を受けたり買い受けたりする場合、不動産を受ける者がBの配偶者や内縁関係にある者も同様に利益相反行為に当たります。

③Bの債務を担保するために、Aの不動産に担保権を設定したり、Aを保証人とすることなども利益相反行為に当たります。なお、Bの財産をAに贈与するようなAに利益をもたらすだけの行為であれば、利益相反行為には該当しないことになります。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 自宅は手放したくない

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約移行型の財産管理契約の注意点 自宅は手放したくないについて考えてみたいと思います。

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【1】財産管理契約では通常「処分」は含まれない

財産管理契約では、土地や建物などを売却する不動産の処分行為は、委任の範囲に入れないのが通例です。「移行型」の場合の委任契約の代理権目録の記載も「財産の管理、保全」であり、「処分」は受権範囲に入れておりません。

したがって、この定型文例による限り、財産管理契約では、受任者には不動産を処分する権限が与えられておりませんので、自宅を処分されるということはありません。

もっとも委任する事務の内容及び範囲は、本人(委任者)と受任者とで自由に決めることができるので、自宅を処分したくないということであれば、代理権の範囲についての記述中に、自宅の処分を行なってはならない旨明記すればよいということになります。

仮に、当初の契約に代理権の範囲として不動産の処分を入れていた場合、あるいは逆にそれを「管理、保全」に縮小する場合は、任意後見契約では、一部解除は認められていませんので、締結済みの財産管理契約及び任意後見契約を合意解除して、新たに縮小した代理権目録による契約を締結することになります。

【2】移行後の任意後見契約でも「処分」を含めないことは可能

任意後見契約では、不動産の保存、管理のほか処分をも含めた代理権を受任者に付与するのが実務において通常行われていますが、特に、自宅のような本人にとって特別の思い入れのある重要な財産については、これを除外して代理権の範囲を設定することも可能です。

また、財産管理契約と同様に、代理権の範囲から「不動産の処分」それ自体を除外することもできます。また、自宅は手放したくないが、将来施設に入るようなことがあったら処分することもやむを得ないと考えるのであれば、その旨を受任者によく伝えておくことも必要ですし、重要財産の処分について慎重に対処してほしいと考えるなら、任意後見人一人の判断に任せず、不動産を処分する場合は、任意後見監督人の承認を得るようにしておくことも可能です。

公正証書に実務では、重要な委任事項について任意後見人がその事務を行なう際に、任意後見監督人の書面による同意を必要とすることも行われております。

ちなみに、法定後見の場合には、成年後見人が本人の不動産を処分するときは、家庭裁判所の許可を要するとされています。(民法859条の3)。

【任意後見制度】財産管理契約の注意点 医療行為への同意 

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今回は、【任意後見制度】に関して、任意後見契約移行型の財産管理契約の注意点 医療行為への同意について考えてみたいと思います。

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【1】医者の治療方針への同意の現状

医師が患者(本人)に対して医療行為を行なう場合、本人の同意を得なければなりませんが、このとき本人に判断能力があれば、自己決定権に基づき医療行為を受けるか否かを本人が決断することになります。

本人に判断能力がなく、親族もいない場合、いても疎遠で関与を拒否しているような場合、医師が任意後見人(受任者)に当該医療行為を受けることについての諾否を求めてくることがあります。

【2】医療行為の同意は委任や代理になじまない

患者が医師から説明を受け、医療行為についての諾否を表明する権利は患者本人の自己決定権に基づく固有のものであって、委任及び代理にはなじまないと解されています。したがって、財産管理契約及び任意後見契約の代理権(本人に代わって事務を行なう権限)には含まれません。

また、一般的に任意後見契約の「代理権目録(任意後見契約)」には、「医療行為、入院契約、介護契約、その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入退所契約に関する事項」との記載がありますが、この委任事項には医療行為についての決定権・同意権は含まれないことになります。

【3】法制審議会意見

このことについて、法制審議会(法務省民事局参事官室「成年後見制度の改正に関する要綱試案の解説ー要綱試案・概要・補足説明」)では、成年後見において医療行為に関する決定権・同意権について、一時的に意識を失った患者又は未成年者に対する医療行為に関する決定・同意と共通する問題であり、それら一般の場合における決定・同意権者、決定・同意の根拠・限界などについて、社会一般のコンセンサスが得られているとは到底言い難い現在の状況の下で成年後見の場面についてのみ医療行為に関する決定権・同意権に関する規定を導入することは時期尚早であるとしています。

【4】今後の課題・・・医療行為に関する任意後見人の権限

前述の法制審議会の意見を踏まえながらも、委任者の強い希望があり、かつ受任者が了解する場合、医師から医療行為についての説明を受け、当該医療行為を受けることについての諾否を表明することに関する事項について代理権を付与するとの公正証書も見受けられます。

ただ、その場合でも、例えば、遺言公正証書末尾の付言事項と同じように、任意後見契約公正証書の本文中に、判断能力喪失の場合における受任者の医療行為への関わりの内容、程度を受任者にあまり過負担とならないよう、希望事項(付言事項)として記載する程度にとどめている例もあるようです。

医療行為に関する任意後見人の諾否の権限については、上記の通り不透明な状況です。当面、受任者にとっては、医療行為に関する決定・同意は財産管理契約及び任意後見契約における身上監護の事務の範囲を超えた事項であり、これに応ずる権限も義務もないということになります。

しかしながら、少なくとも公正証書の付言事項として、本人の希望を記載した事項については、受任者は担当医師に本人の判断能力を失う前の希望として伝える必要はあると思われます。

この医療行為についての決定・同意権については、日本は超高齢社会を迎え、一人住まいの高齢者が増える現状において、速やかな検討と法整備が期待されます。