【相続・遺言について】秘密証書遺言

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、秘密証書遺言について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】①秘密証書遺言はどのように作るのですか?
注意すべきことはありますか?
②他の方式と比べて、秘密証書遺言の長所短所は何ですか?

【A】◆1.秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま、その存在を公証人に証明してもらう遺言のことです。
自筆証書遺言や公正証書遺言の場合と同様、法の定める方式に従わなければならない点に注意が必要です。

まず、遺言者が遺言書を作成して、署名押印をします。遺言者が遺言書を封筒に入れて封をして、遺言書に使用した印と同じもので封印をします。これを公証人へ持参して、証人2人と公証人の面前で、自分の遺言書である旨を申述します。
公証人は、その遺言書が提出された日付け及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人と共にこれに署名し印を押します。これによって遺言書が存在することが公に証明されます。

秘密証書遺言の作成手続きでは、内容について公証人や証人は関与しませんので、遺言内容が他人に知られることはありません。また、公証人が公証するため、遺言書が本物かどうかといった争いは起こりません。

◆2.秘密証書遺言の長所と短所
①秘密証書遺言の長所
秘密証書遺言は、公正証書と同様に公証人が関与することで、他人による偽造・改ざんの恐れをなくすことができます。遺言の存在を明確にしつつ、その内容を他人に秘密にできる点で、公正証書遺言とは異なる長所を持ちます。
秘密証書遺言は、自分で署名押印をすればよいので、自筆証書遺言と違って、財産目録以外もパソコンを使ったりまたは代筆してもらったりしてもかまいません。
秘密証書遺言の方式に違背があり、秘密証書遺言として認められない場合でも、自筆証書遺言の要件を満たしていれば、有効な自筆証書遺言と認められますので、自筆で作成することも選択肢に入ると思います。

②秘密証書遺言の短所
一方で、秘密証書遺言の短所としては、自筆証書遺言や公正証書遺言に比べて手続きが煩雑なことが挙げられます。また、公正証書遺言と異なり、内容に関しては公証人が関与しませんので、遺言として要件が欠けている場合無効となってしまいます。
できれば公正証書遺言の方式で作成することをおすすめしますが、そうでない場合、内容の考案に当たっては、我々行政書士や弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。
作成された秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に、遺言者の責任で保存することになります。そのため紛失や滅失、発見されないといった心配があります。
また、公正証書遺言とは異なり、遺言者が亡くなった後に、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

【相続・遺言について】公正証書遺言

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、公正証書遺言について考えてみたいと思います。

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【Q】公正証書遺言はどのように作るのでしょうか?
他の方式の遺言と比べて、公正証書遺言の長所短所はなんですか?

【A】◆1.公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人が法律に定める方式に従って作成する遺言です。
公正証書遺言は、次の方式に従って作成されます。
①証人2人が立ち会う。
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する(口頭で述べる)。
③公証人が、遺言者の口授を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせ、又は閲覧させる。
④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押す。ただし、遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
⑤公証人が、その証書が①から④の方式に従って作成したものである旨を付記して、これに署名し、印を押す。

◆2.公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言は、原則として公証人役場で作成しますが、例外的に、遺言者の身体が不自由であったり、病気等のために公証人役場に行くことが困難な場合には、公証人が、遺言者の自宅や病院等に出張して遺言書を作成することもできます。
そして公正証書遺言を作成するにあたり、通常以下のような書類が必要になります。
①遺言者本人の印鑑登録証明書
②遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
③財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
④遺産に不動産が含まれる場合には、その登記簿謄本及び固定資産評価証明書
なお、これ以外にも必要とされる書類がある場合もあるので、事前に公証人役場で確認するのがよいでしょう。
また、公正証書遺言を作成する際には、証人が2人必要となりますが、未成年者・推定相続人・受遺者とそれぞれの配偶者など、一定の範囲の利害関係人は証人になれませんので、これらに当たらない人に証人をお願いしましょう。
いずれの場合でも、遺言内容の確認や必要書類、作成手数料等を事前に公証人と打合せる必要があります。

◆3.公正証書遺言の長所と短所
①公正証書の長所としては以下のことが挙げられます。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されますので、自筆証書遺言のように法定の方式を誤って遺言が無効になるということは、ほとんどありませんし、公証人が遺言者の遺言能力を確認しますので、後に遺言能力について紛争が生じる可能性は、自筆証書遺言の場合に比べれば低いと言えるでしょう。
また、公正証書遺言は、作成後、公証人役場に原本が保管されますので、偽造や変造のおそれや、隠匿、紛失のおそれもありません。また、相続人等の亡くなった人と利害関係を有する人は、公証人役場において、亡くなった人が公正証書遺言を作成していたかどうかを検索することができますので、相続人が公正証書遺言の有無を調べてくれれば必ず相続人に発見してもらえます。
さらに、公正証書遺言は、家庭裁判所での検認の手続きを経る必要がありません。
②公正証書遺言の短所
公正証書遺言の作成にあたり、証人が立ち会いますので、遺言の内容が他人に知られる点です。また、公正証書遺言を作成するのに、一定の手数料が発生します。必要書類の収集や、証人の確保などに手間がかかることが挙げられます。

【相続・遺言について】自筆証書遺言

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今回は、【相続・遺言】に関して、自筆証書遺言について考えてみたいと思います。

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【Q】遺言書はどのようにして作るのですか?
作成する上で、注意すべきことは?
他の方式に比べて、自筆証書遺言の、長所と短所はなんですか?

 

【A】◆1.自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者の真意を確保し、偽造、変造を防止するために、すべて自筆で作成することが必要です。民法で厳格に遺言の方式を規定し、その方式を満たさないものは無効とされます。
自筆証書遺言の場合は、遺言の全文自書、日付及び氏名の自書、これに押印が必要です。

◆2.自書とは
文字通り、自分で書くことです。したがってパソコン等により作成することや、代筆をさせることはできません。判例では、カーボン複写を用いた遺言は有効とされています。自書する場合、他人の助けを借りる程度で、他人の意思が介入したと認められないことが筆跡上判定できる場合には、自書の要件を満たしており有効とされます。

◆3.相続財産目録についての自書要件の緩和
平成31年1月13日より自筆証書遺言の自書を一部緩和する法改正が施行されました。
民法第968条2項は「前項の規定にかかわらず、自筆証書とこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」と改正し、自書を相続財産目録に関しては、不要としました。
偽造防止として、自書によらない目録の毎葉に遺言者の署名及び押印を要求し、特に自書によらない記載が両面にわたる場合については、その両面に遺言者の署名押印を要求しています。
これにより、相続財産目録に関しては、パソコン等による作成、代書、不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しなどを添付することが可能となりました。

◆4.日付の記載
日付は、遺言作成時の遺言能力の有無、内容の抵触する遺言の先後関係を明らかにして撤回の有無の判断をするために、自書して記載することが必要です。
日付がない場合遺言は無効です。
日付は年月日を明らかにすることが必要です。西暦でも元号でも結構です。例えば、日付が特定されれば構わないので、月日の記載を「自分の誕生日」という表現にしても有効とされています。
ただし、令和2年1月吉日のような記載は、日付が特定されないので無効です。
日付の記載場所は、本文を記載して、署名の前に記載されるのが通常です。
裁判例では、遺言の全文、氏名を自書して押印したものを封筒に入れ、封印(遺言書に押印した印鑑と同じもの)し、封筒に年月日を記載した場合も有効と判示されています。
ただ、争いを避けるために、本文の後、署名の前に日付を記載しましょう。

◆5.氏名の記載
氏名は、遺言者と同一性を確認することができれば足りるので、雅号などでもよいです。判例では、名のみの記載であっても、遺言の他の記載内容から遺言者の同一性が分かる場合には、有効と判示されたものがあります。
争いを避けるために、署名は戸籍上の氏名を正確に記載してください。

◆6.押印
押印は、遺言者の同一性及び遺言者の意思に基づくことを担保するためですので、遺言者本人が押印してください。
使用する印に別段制限はありません。判例では指印も有効としています。後々の争いを避けるためには、実印を使用して、印鑑証明書を添付することが望ましいでしょう。

◆7.自筆証書遺言の長所と短所
①長所
他の遺言の様式に比べ簡易であること。
②短所
要式通りに作成するのが困難であり、無効や紛争になりやすい点です。
作成したい自筆証書遺言を如何に保存するか、紛失や偽造、破棄の危険性が高いという点です。

◆8.自筆証書遺言の保管制度の新設
平成30年7月6日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立されました。施行は令和2年7月10日です。
これは自筆証書遺言のみを対象に、遺言書保管所で遺言書保管官が取り扱います。遺言者が自ら遺言書保管官に対して一定の申請書を添付して遺言書の保管を申請します。
申請できる遺言書保管所には定めがあり、遺言者の住所又は本籍又は所有不動産の所在地を管轄する遺言書保管所になります。
遺言者はいつでも遺言書保管官に対して、内容の閲覧や撤回を申し出ることができます。
また、誰でも、特定の死亡している者について、自分が相続人、受遺者等になっている遺言書が、遺言書保管所に保管されているか、保管されている場合には、遺言書保管事実証明書の交付を請求できます。
相続人、受遺者等は遺言書保管ファイルに記載されている事項を証明した書面の交付を請求できます。
この制度により、今まで短所として考えられていた点のうち、所在不明や偽造を防止する仕組みが整ったと言えるでしょう。

成年後見無料相談会

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は無料相談会のお知らせをします。

成年後見に関する無料相談会を、東京都行政書士会の行政書士で構成される、公益社団法人成年後見支援センターヒルフェの世田谷地区主催で、開催いたします。私もメンバーとなっております。

会場は世田谷区民会館別館【三茶しゃれなーどホール】5階集会室スワン。

三軒茶屋駅徒歩3分(世田谷区太子堂2-16-7)

日時:令和2年3月3日(火) 13:00~16:30

予約電話番号03-3426-1519(受付:東村)

予約なしでも相談できます。

皆様のお越しをお待ち申し上げております。

【相続・遺言について】遺言能力

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺言能力について考えてみたいと思います。

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【Q】①父が遺言書を作成しようとしているのですが、遺言書は誰でも作れるのでしょうか?

②父に視覚機能障害がある場合、遺言書を作成することはできるのでしょうか?
また、言語機能障害や聴覚機能障害がある場合はどうでしょうか?

③父も高齢になり、認知症が進行して、1年前、後見開始の審判を受けました。父は遺言書を作成することはできないのでしょうか?
仮に父が後見ではなく、保佐開始や補助開始の審判を受けていた場合であれば、遺言書作成に関して、何か違いがあったのでしょうか?

【A】◆1.遺言書を作成できる者
遺言を作成するには、民法上遺言作成能力が必要とされており、法律上は、満15歳になった者は遺言を作成することができるとされています。
もっとも、遺言をするときに、判断能力(法律上は意思能力という)がなければならないと規定されています。そのため、判断能力がない状態で遺言を作成しても、その遺言は無効となります。
したがって、ご質問のお父さまは判断能力に問題がなければ、有効に遺言を作成することができ、判断能力がないときには遺言が作成できないということになります。

◆2.視覚機能障害、言語障害、聴覚障害のある場合
①お父さまに視覚機能障害がある場合
普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

ア)自筆証書遺言は、遺言者が遺言書全文を自書しなければなりません。ここで、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力を自書能力といいます。
視覚機能障害がある方でも、自分で字が書ける場合であって、遺言書のすべてを自書した場合には、遺言は有効に成立すると言われています。

イ)公正証書遺言は、遺言者が遺言内容を口頭で、公証人へ伝え、公証人がこれを筆記し、公証人がその内容を遺言者に読み聞かせ、または閲覧させることで、内容を確認してもらうことで作成されます。そのため、視覚機能障害がある方でも、遺言の内容を公証人へ伝え、公証人から遺言の内容を聞いて、内容を確認する能力があれば、遺言書は有効に作成することができます。

ウ)秘密証書遺言は、公証人1人および証人2人の前に封印した遺言書を提出して、遺言の存在は明らかにしながら、内容は秘密にして遺言書を保管することができる方式です。この場合遺言者は、公証人と証人の前に遺言書に使用した印と同じ印を使用して封印した封書を差し出し、自己の遺言である旨と、遺言者の住所と氏名を述べなければなりません。
この秘密証書遺言の場合、封印した遺言書には遺言者の署名と押印が必要ですが、それ以外の記載には法律上制限がありません。そのため視覚機能障害がある方が、全文自書された場合やパソコンで本文を作成されても、又は、他人に代筆を頼んで作成しても、遺言能力があれば、これは有効なものとなります。

②お父さまに言語障害、聴覚障害がある場合

ア)ます、自筆証書遺言は自書能力があれば、有効に作成することができます。

イ)公正証書遺言は作成につき、遺言者は遺言内容を口頭で公証人に伝えなければなりません。しかし、遺言者が言語障害や聴覚障害の方の場合、口頭で伝える代わりに、通訳人の通訳(手話通訳等)により申述し、又は筆談で公証人に伝えることで、遺言書を作成することができます。
公証人が作成した遺言書を読み聞かせなければなりませんが、これも通訳人を介して行えば問題はありません。

ウ)秘密証書遺言の場合、遺言者が自書やパソコンで遺言書を作成できれば、有効な遺言書が作成できます。
公証人と証人に遺言者が遺言書を作成した旨と、氏名と住所を申述しなければなりませんが、通訳人を介して申述するか、封印をした封筒に自書することで有効に秘密証書遺言を作成することができます。

◆3.判断能力に問題がある場合
①お父さまが後見開始の審判を受けている場合
判断能力が常にない者に対して後見開始の審判話されます。そのため、後見開始審判を受けた者(成年被後見人)は、原則として遺言を作成しても、有効なものと判断されません。
一時的に判断能力を回復した時に遺言を作成する場合には、医師2名の立ち会いがあれば、有効に遺言を作成することができます。
成年被後見人が遺言を作成する場合、その後見人や後見人の配偶者や子に対して利益となる遺言を作成しても無効と規定されています。もっとも、後見人などが、成年被後見人の配偶者や直系血族や兄弟姉妹であった場合にはこの規定は適用されず、遺言は有効となります。

②お父さまが保佐開始の審判、補助開始の審判を受けた場合
判断能力が低下した場合、その判断能力を補うために、保佐開始の審判や補助開始の審判がなされることがあります。その場合、一定の行為について、保佐人や補助人の同意が必要となることがあります。同意がない行為は保佐人や補助人によって取り消されることとなります。
しかし、法律上被保佐人や被補助人が遺言を作成するときには、保佐人や補助人の同意は必要ありませんので、被保佐人や被補助人は有効に遺言を作成することができます。

 

【相続・遺言について】遺言書の書き直し

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺言書の書き直しについて考えてみたいと思います。

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【Q】私は、今、長男に自宅を相続させるという内容の遺言書を作成するつもりです。しかし、遺言書作成後に事情が変わって、次男に自宅を相続させたいという場合、一度作成した遺言書を書き直すことはできるのでしょうか?
また、長男に自宅を相続させるという内容の遺言書を作成した後に、自宅を売却することが必要になった場合、自宅を売却することはできるのでしょうか?

【A】◆1.遺言書の書き直しについて
遺言とは、遺言者の最終意思を法律上も尊重しようという制度ですので、生前にその意思が変わった場合には、何らの理由無く、いつでも書き直すことができますし、前にした遺言を撤回することもできます。
そしてその撤回権を放棄することはできません。つまり遺言書に「この遺言は今後絶対に取り消さない」と書いてもそのような記載に効力はなく、自由に撤回できます。
遺言の撤回をするときは、その旨の遺言書を作成するのが一般的です(撤回遺言による撤回)。その際、撤回の対象となった遺言書と同一の方式による必要はありません。つまり、公正証書遺言を撤回するのに、自筆証書遺言でも撤回できるということです。遺言書の内容は「遺言者〇〇は令和〇年〇月〇日付で作成した自筆証書遺言を全部撤回する」といった条項を盛り込むのです。
ここで注意しておくこととして、撤回遺言も遺言ですので、民法に定めのある遺言の方式を守らなければいけないということです。撤回遺言が方式を満たしていないときには、撤回遺言が無効となります。

◆2.遺言書を作成した後の抵触行為について
遺言の撤回は、撤回遺言を作成しなければならないわけではありません。遺言書を作成した後に、その内容に抵触する行為があった場合には、その抵触する部分については、遺言書の内容を撤回したとみなされます。これは抵触行為をした遺言者の意思を考えれば、前の遺言の効力の存続を望まないことが明らかであると言えるからです。
①.抵触遺言
前にした遺言と抵触する内容の遺言がなされた場合、その抵触する部分については撤回があったものとみなされます。撤回遺言と似ていますが、抵触遺言の場合、遺言の条項中に「撤回する」という文言がなくても、また遺言者が前にした遺言内容を忘れていた場合でも、撤回の効力が生じます。
例えば、前の遺言で「甲不動産をAに遺贈する」としておきながら、後日「甲不動産をBへ遺贈する」との遺言を作成した場合は、Aへの遺贈は撤回されたものとみなされます。この場合、後の遺言書に「Aへの遺贈を撤回する」と書く必要はありません。
②.抵触する生前処分
遺言者が遺言をしたのちに、その遺言内容に抵触するような行為をした場合、その抵触する部分について遺言書の記載は撤回されたものとみなされます。例えば「遺贈する」と遺言書に書いておいた物を、第三者へ売却した場合などです。
また、抵触する行為には身分行為も含まれるとされています。裁判例では、遺言者が、妻に財産を相続させる旨の遺言をした後に、協議離婚した場合や、終生扶養を受ける前提で養子縁組をし、財産を養子に遺贈する旨の遺言をした後に、協議離縁をし、かつ実際に扶養を受けていない場合に遺言の撤回を認めたものがあります。
③.遺言書または遺贈の目的物の破棄
遺言者が故意(わざと)に遺言書や遺贈の目的物を破棄した場合に、その破棄した部分について遺言が撤回されたものとみなされます。
遺言書の破棄とは通常は、遺言書を捨てたり、切断したり、文字を塗りつぶしたりして、内容が判別できないようにしますが、最高裁判例では、遺言者が自筆証書遺言の文面全体の左上から右下に斜めに赤色ボールペンで斜線を引いた場合に、文字が読めるとしても、行為一般の意味に照らすと、遺言書全体を不要とし、かつ、遺言全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるとして、「故意に遺言書を破棄したとき」に該当すると判示したものがあります。
遺贈の目的物の破棄とは、例えば、遺贈するとしていた建物を取り壊すなどを言います。

◆3.本件について
相談者は一度作成した遺言書を自由に書き直す(撤回する)ことができます。よって、長男に自宅を相続させるという内容の遺言を撤回する旨の遺言(撤回遺言)、または、次男に自宅を相続させるという内容の遺言(抵触遺言)をすれば、長男に自宅を相続させるという内容の遺言は撤回されたものとみなされます。
また、相談者が生前に自宅を処分することは自由ですので、次男に自宅を贈与すれば「抵触する生前処分」に該当するため、長男に自宅を相続させるという内容の遺言は撤回されたものとみなされます。

【相続・遺言について】遺言書の作成

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【Q】
①私も高齢になって来たので、相続について考えるようになりました。私には妻と子供2人がいますが、皆仲が良いので私の死後財産を巡ってもめるようなことはないと思います。私のような場合遺言書を作成する必要性はあるのでしょうか?
②遺言書を作成しようと思うのですが、遺言には種類があると聞きましたが、どのようなものでしょうか?
③私は、妻と相続について話し合っています。妻と一緒に同一の書面で遺言書を作成することは構わないのでしょうか?

【A】◆1.遺言は有益なもの
遺言書を作るか、作らないかは、あなたの自由ですので、奥さんとお子さんとの間で争いがおきるおそれがないと思われるのであれば、作らなくてもかまいません。
しかし、遺産をどのように分けるのか、特に不動産、預貯金、有価証券、現金、貴金属、骨董品など多くの種類がある場合、誰がどの遺産をどのくらい相続するか、話し合って決めるのはかなり手間と時間がかかります。その間にもめごとが起こる可能性もあります。
あなた自身で、ご自分の財産を誰にどのように相続してもらいたいかを決めて遺言書に記しておくことは、それなりの意味を持つと思われます。
その際に、付言事項という、遺言書として法的な効力はないものの、あなた自身の気持ちを遺族に伝える項目を記すこともできます。
この付言事項によって、残された遺族がもめることなく、遺残を相続できるとも言えます。

◆2.遺言の種類
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、特別方式による遺言があります。この中で、特別方式による遺言は、危急時遺言、隔絶地遺言があります。以下では、利用されることが多い、自筆証書遺言、公正証書遺言を説明します。

①自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が、全文、日付、及び氏名を自書し、印を押すことによって出来上がります。
全文、日付、氏名を全部自分で書かねばならず、パソコンを使用したり、他人に代書してもらったりは、無効です。ただし、今回の民法改正により、平成31年1月13日からは、相続財産の目録については、自書でなくともよくなりました。パソコンで作成したり、代書を頼んだり、預貯金の通帳のコピーを使用したり、不動産登記の全部事項証明書を目録として使用することもできます。
この場合、偽造などを防止するために、目録の各葉に署名と押印が必要です。
印は実印でも、認印でも構いません。
このように自筆証書遺言は自分一人で作成できるメリットがありますが、紛失したり、変造されるといったデメリットもあります。
この点、令和2年7月10日より法務局が自筆証書遺言を預かってくれる法制度が開始されます。

②公正証書遺言
公正証書遺言は、法務大臣が任命監督する、公証人(元裁判官や元検察官等)が作成するもので、遺言者が、成年に達した証人2人の立会いの下、公証人に遺言の趣旨を口述し、公証人がそれを筆記し、公証人がそれを遺言者及び証人に読み聞かせ、閲覧させ、筆記が正確であることが確認されたら、それぞれが署名押印し、最後に公証人が署名押印をすることによって出来上がります。
公正証書遺言は、原本を公証役場で保管しますので、紛失や変造の恐れはありません。
公正証書遺言を作成する際に、公証人が遺言者の意思や判断能力(遺言能力)を確認してくれますので、後日無効と判断されにくいというメリットがあります。

◆3.共同遺言の禁止
共同遺言(同一の書面で複数の人が遺言を作成すること)は禁止されています。
その理由として、遺言は遺言者の最終の意思の基づき、自主独立になされるべきであり、また撤回の自由を認められているので、共同遺言は他人の意思の影響を受けていると疑いを生ずる余地があり、撤回の自由を妨げる恐れがあるからです。

【相続・遺言について】相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

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今回は、【相続・遺言】に関して、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策について考えてみたいと思います。

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【Q】夫の父が亡くなりました。私は、夫の父の生前、長期間夫の父を介護してきました。私は夫の父の相続人ではありませんが、夫の父の相続に関して何らかの権利を主張することはできないのでしょうか?

 

【A】特別寄与料の支払い請求が認められる場合があります。
今回の民法改正により、被相続人の親族が、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭(特別寄与料と言います)の支払いを請求することができるようになりました。

◆1.請求できる人
特別寄与料を請求できる人は、「被相続人の親族」です。被相続人の子の配偶者や被相続人の兄弟姉妹及びその配偶者などが含まれます。ただし、相続人、相続の放棄をした者、相続人の欠格事由に該当する者及び廃除により相続権を失った者は含まれません。

 

◆2.特別の寄与とは
特別の寄与と言えるためには、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をすることが必要です。
①無償
ある程度のお礼を被相続人から受け取っていた場合、特別寄与料の請求ができなくなるかは難しいところです。お礼の額やその内容などによっては、実質的に「無償」であるとして、特別寄与料の請求が認められる可能性はあるように思われます。
②療養看護その他の労務の提供
療養看護とは、病気療養中で介護が必要な状態にある被相続人を介護することを言うと考えられています。労務の提供が様々な形が考えられますが、その典型例は、被相続人が営んでいる事業に協力した場合を挙げることができます。
③財産の維持又は増加
財産の維持の例としては、農家の長男が家業である農業を無償で行い、被相続人の財産である農地を手放さなくて済んだ場合があげられます。
単に、被相続人の相談に親身に乗るなど、相続人の精神的ケアに尽くした場合等は、財産の維持又は増加がありませんので、特別の寄与をしたとは認められないでしょう。
④「特別」の寄与
寄与の程度としては、「特別の」寄与とされていることから、何らかの寄与があったというだけでは足りず、一定程度以上の寄与が必要となると思われます。ただし、どのような場合に「一定程度の寄与」があったと認められるかは、現在において明確な基準はありません。

◆3.今回のケースについて
今回のケースでは、あなたは被相続人の子の配偶者ですから「親族」に含まれます。
あなたは長期間被相続人を介護してきていますから、その介護が無償であり、その介護により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたと言えるのであれば、特別寄与料の請求が認められることになります。

◆4.どのようにして請求するか
まずは、相続人との話し合い(協議)により、特別寄与料のの額や支払い方法などを決めることになります。ただし、特別寄与料の額は、被相続人が死亡時に持っていた財産から遺贈の価額を差し引いた残額を超えることができません。
話し合いがまとまらないときや、話し合いができないときは、家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求することになります。
この場合、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めることとされています。

◆5.いつまでに請求するか
被相続人が死亡したことと相続人とを知った時から6か月を経過するまでか、被相続人の死亡の時から1年を経過するまでに、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求しなければなりません。
相続人と話し合いをしているうちに期限が過ぎていたということにならないように気を付ける必要があります。

【相続・遺言について】寄与分の決定

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、寄与分の決定について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】寄与分はどのようにして決めるのですか?手続きを教えてください?

【A】寄与分の決定は、まず共同相続人間で話し合ってみて、まとまらないときには、家庭裁判所の手続きである調停や審判によることになります。

◆1.協議(相続人間での話し合い)

寄与分に関する話し合いは、遺産分割協議と同じく共同相続人全員で行わなければなりません。寄与分は相続開始後、遺産分割協議が成立する前までに決定されておくべきものですので、遺産分割協議の中であわせて話し合いで決めるのが普通です。

 

◆2.調停

共同相続人間の話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てて、調停の場で寄与分について話し合いで決めることになります。

調停手続きは、裁判所を利用して話し合うための手続きです。調停委員の方々が各相続人の言い分を調整してくれる分、当事者だけでの協議よりまとまる可能性は高いと言えますが、共同相続人全員が合意に至らなければ、調停成立となりません。

寄与分についての調停を申し立てる場合には、遺産分割の調停も併せて申し立てるのが普通ですが、実際には、寄与分の調停をあえて申立てるのではなく、遺産分割調停の中で、寄与分について主張することが多いです。

寄与分の調停は、寄与分を申し立てる相続人が申立人となり、他の共同相続人全員が相手方になります。

管轄(どこの裁判所で扱うか)は、原則として相手方の住所地の家庭裁判所もしくは当事者が合意で定める裁判所になります。遺産分割調停が既に行われている場合、その遺産分割調停が行われている裁判所が管轄裁判所になります。

 

◆3.審判

共同相続人間での協議や調停で合意できないときは、家庭裁判所に寄与分を定める旨の審判の申立てをすることになります。

審判手続きは、裁判官が当事者から提出された証拠等に基づいて判断する手続きです。

寄与分を定める審判の申立ては、遺産分割の審判事件の申立てがなされていることが要件とされていますので、遺産分割審判が申し立てられていない場合、寄与分の審判の申立てと一緒に遺産分割の審判を申し立てる必要があります。

なお、調停を申し立てることなく、ただちに寄与分の審判の申立てを行うことも可能ですが、ただちに審判が開始されることは少なく、裁判所により職権で調停に付されるのが普通です。

管轄は遺産分割審判が申し立てられている場合には、遺産分割の審判事件が扱われている裁判所になります。遺産分割審判と同時に申し立てる場合には、相続が開始した地(被相続人が亡くなった場所)を管轄する裁判所になります。

 

◆4.定め方

寄与分が認めれれるには、寄与行為をした時期、その方法、態様、通常の扶養義務の範囲を超える程度の特別の寄与であったこと、その結果どのようにして財産が維持され増加したのかの関連性が明確に示されなければなりません。

したがって、調停手続・審判手続きの中で、寄与分を主張する人は、上記事情を裏付けるための立証活動をしなければなりません。例えば、扶養型や財産給付型では、扶養金額や財産給付を裏付ける領収書や預貯金通帳等の動きから立証すべきこととなります。

新年のご挨拶

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

昨年中は大変お世話になりました。本年も一層のご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

本年の営業は本日1月6日より開始いたしております。

年末年始家族が集まり、様々な話に花が咲いたことでしょう。相続や遺言、終活についてのお話しもあったかと存じます。

当事務所では、世田谷区内を中心とした都内の皆様からの、相続、遺言、終活についてのご相談を承っております。

初回相談60分無料とさせていただいておりますので、是非お気軽にお問合せ下さい。

お問い合わせは事務所03-3416-7250または携帯電話090-2793-1947まで。

自動車販売店様も新春の仕事始めを迎えられていることと存じます。
東京都内の車庫証明のご用命は弊所へお申し付け下さい。

お問い合わせは携帯電話090-2793-1947まで、お待ちしております。