【終活・遺言・相続相談】相談例30 名義預金

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例30 名義預金についての記事です。

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【相談内容】
相談者(77歳女性)から、「これまで夫(85歳)の給与や退職金などを私名義の預金口座に入れて貯めてきた。その一部は長女(48歳)とその子ども(孫17歳)の名義の預金にしているが、次女(44歳)には知らせていない。夫が亡くなった場合何か問題になるだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
配偶者や親族の名を借りた名義預金は多用されていますが、相続税対策としては効果がありません。税務調査が入るような場合には、被相続人からの生前贈与を主張してもほぼ認められず、課税対象の遺産であることを認めて修正申告することになるでしょう。また、名義預金は、遺産分割においても遺産性をめぐって紛争の種になります。

【1】名義預金

① 「名義預金」とは、実質的な所有者と名義上の所有者が異なる預貯金のことです。相続税回避の手段として、あるいは生前贈与の準備として、よく使われます。財産評価基本通達では名義預金の評価方法は決まっていませんが、税務署にとっては最重点の調査対象です。

【2】税務調査

① 不動産を生前贈与した場合、法務局は税務署に対して贈与を原因とする所有権移転登記があった旨を連絡し、税務署は、贈与税の申告期限(贈与の翌年3/15)までに贈与税申告がなければ、所有権移転登記を受けた受贈者に対して贈与税の申告を忘れていないかを問合せます。
② これに対して、預貯金を相続人等に移動した場合には、金融機関から税務署に対してその旨が報告されるわけではありません。したがって、税務署から直ちに贈与税申告に関する問い合わせがあるわけではありません。
③ しかし、税務署がこれと目星をつけていた案件で相続が開始し、相続税申告に不審な点があった場合には、過去に遡って親族の預貯金を含めて取引履歴をチェックし、無申告の贈与あるいは遺産の可能性がある(名義預金)と判断した場合には、税務調査を行います。
④ そうして、税務署が調査の目的で相続人を来訪した時点では、親族名義を含めて預貯金の履歴は全て明らかになっているのです。

【3】配偶者名義の名義預金

【3-1】遺産性

① 夫の所得は夫婦共有財産を構成することが多いでしょうが、相談例のように、妻が自分名義の預金として保管しているケースはまま見受けられます(もちろん逆の場合もあります)。
② 妻としては、自分が財産を握っておきたい、夫の相続が発生しても子に権利を主張されたくない、相続税も減らしたいという思惑もあるのかもしれません。
③ しかし、妻が専業主婦で数十年間さしたる所得がなく、妻名義の預金が親の相続等によって得た固有資産というわけでもなく、夫から渡された給料等を貯めていたという以外に合理的な説明がつかなければ、配偶者名義の預金の全部又は一部は、亡夫の名義預金とみなされる可能性が高くなります。

【3-2】配偶者税額軽減との関係

① 配偶者名義の預金が遺産だと認められても、配偶者が配偶者税額軽減の適用を受ければ、1億6千万円までは、非課税になりますから、税務署も無駄な調査はしないとも考えられます。
② しかし、税務署の立場からすれば、たとえば申告された亡夫の遺産は1億円だが、妻名義の預金2億円も名義預金(遺産)だとすれば、妻は2億円以上の遺産を取得することになるので、配偶者税額軽減の上限である1億6千万円を軽く超え、これに応じた相続税を課税できます。
③ さらに、配偶者以外の相続人も相続するなら、課税対象となる遺産全体の増加により、それら相続人が負担する相続税額も増額できます。

【3-3】配偶者名義の名義預金の危険性

① 夫の相続が開始し、相談者が自分名義の預金は夫の遺産ではないものとして、残りの遺産について子らと遺産分割し、相続税を申告したとしましょう。
② 2年後に税務調査が入って相談者名義の預金は遺産だと指摘された場合、修正申告が必要になります。これに対して、名義預金は自分のものだと主張しても原資の立証が問題になりますし、仮に夫から贈与を受けたと主張すれば贈与税を課税されることになります。
③ そして、修正申告だけですむならばよいのですが、過少申告加算税10%や重加算税35%を課税されるおそれがあるほか、妻の隠蔽仮装行為(相続税法19条の2第6項)が認定されれば、修正申告においては、配偶者税額軽減の適用が認められません(同法19条の2第5項)。
④ したがって、相談者に対しては、夫の相続が開始したときには、少なくとも、原資の説明がつかない相談者名義の預金は亡夫の遺産として相続税を申告するべきであると説明します。
⑤ なお、相談者が夫よりも先に死亡した場合には、名義預金がそのまま相談者の遺産とみなされる可能性が高く、全体の相続税額が増えてしまうことになりかねません。このように配偶者名義の名義預金は大きなリスクがあり、お勧めできません。

【4】親族名義の名義預金

① 親族名義の名義預金も配偶者名義預金のそれと変わりなく、税務署からは相続税の潜脱目的ではないかと疑われます。孫名義の預金は、子への相続、孫への相続の二代飛ばし効果がありますから、より厳しく対応されます。
② 配偶者名義の預金は、実際に配偶者が管理しているでしょうが、世帯を別にする長女や孫の名義預金では、通帳やカードの保管状況が問題になります。さらに、贈与の主張が通っても、それが相続開始前3年以内の贈与であれば、相続税の課税相続是財産ですし、3年より前で7年以内の贈与であれば、贈与税と無申告加算税を課されることになります。
③ そもそも、相続税より贈与税の方が税率は圧倒的に高く、少なくとも税務署に対して、名義預金性を否認して被相続人からの贈与を主張することに意味はありません。

【5】贈与の時効

① 上記の説明に対して、相談者から「贈与は10年以上も前のことですから、贈与税は時効ですよね」と言われることがあります。
② 贈与税の時効は6年(故意に申告しなかった場合7年)ですから、贈与から10年経過すれば時効が完成していると思いがちです。
③ しかし、贈与行為が認められるには贈与契約書などの資料が必要ですし、そもそも税務署は7年以前の金銭移動については、名義預金か貸付金だとみなして贈与行為そのものを認めません。それが意図的な脱税行為とされれば、重加算税を課税されるリスクもあります。
④ なお、贈与税の時効の起算点は申告期限の翌日からで、令和3年1月1日に行なった贈与の申告期限は令和4年3月15日となるので、令和4年3月16日から時効が進行します。原則的な事項の完成は令和10年3月15日となり、贈与行為そのものから6年以上たてば時効が完成するわけではありません。
⑤ よって、贈与税の時効を期待することは現実的ではなく、相続税を節税したいならば、暦年贈与等の方法を利用していただくしかないと思われます。税務に関するご相談になりますので、具体的な詳しい説明は税理士に確認する必要があります。

【6】名義預金と遺産分割

① 相続人全員が名義預金の遺産性を認めるなら遺産分割の対象ですが、名義人(相談者や長女ら)が被相続人から贈与で取得したので固有資産であるなどと主張し、他の相続人(次女)がそれを否認すれば、遺産の範囲に争いが生じます。
② この場合には、遺産分割の前提問題として地方裁判所での遺産確認等の訴訟を先行させることになりますが、確実に相続紛争の長期化を招きます。
③ したがって、相談者に対しては、夫が亡くなった場合には、配偶者(相談者)名義の預金の一部は亡夫の遺産と認め、長女や孫名義の預金についても名義預金として遺産と認めるのか、改めて夫から長女らへの贈与として扱うのかを決め、その上で遺産分割をして相続税を申告するように説明します。
④ なお、遺言書を書く場合には、こうした混乱を避けるために、名義預金も遺産として処分するように勧めます。