【終活・遺言・相続相談】相談例60 遺言無効

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例60 遺言無効についての記事です。

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【相談内容】
相談者(54歳女性)から、「入院中の病院で母(85歳)が亡くなったが、昨日、検認手続きで見た母の自筆証書遺言では、「姉(60歳)にすべての財産を相続させる」とされていた。私は母の介護をしていたので、母がそんな遺言を残すはずがない。絶対におかしいので、遺言を無効にできないものか」と相談された。

【検討すべき点】
この相談内容も、行政書士が業務として取り扱える内容ではありません。提携している弁護士の先生にお取次ぎする形になります。
検認は遺言の有効性を確認するものではないので、まず、遺言書を見せていただき、日付などの形式的要件を確認する必要があります。次に、遺言者の遺言作成時における状況を聞き取り、遺言無効の可能性を吟味し、遺言無効確認訴訟の手続を説明します。ただし、相談者は怒り、悔しさなどで興奮されていることが多いので、短時間で必要な情報を聞き出すことは困難です。まずは気持ちを落ち着けてもらい、後日事務所などでゆっくりお話しを伺うべきでしょう。

【1】形式的要件の不備による遺言無効

① 相談例では、自筆証書遺言を保有していた姉が検認を申立てたと思われますので、その遺言書原本は検認済証明書が付されて姉に返されたはずです。したがって相談者は手元に遺言書の写しがない可能性がありますので、検認調書を取り寄せてもらいます。
② つぎに、遺言書を確認できたとして、自筆証書遺言の形式的要件を満たさなければ、その遺言書は無効です。日付、捺印、署名がないといった場合は、一見して無効と判断できますが、よくあるのは「これは母の字ではない」という偽造の主張です。
③ もちろん、自筆かどうかを判断するために筆跡鑑定という方法があるものの、1.私的な筆跡鑑定には30万円から50万円の費用がかかること。2.相談者自身が母の筆跡も一部混在しているようだと認める場合は奏功しない可能性が高いこと。
④ 3.筆跡鑑定の資料として対照できる母の自筆の書面をできる限り多く用意する必要があること。4.筆跡鑑定には確立された方法論がないので、裁判所が私的な筆跡鑑定書を有力証拠として取り上げてくれるかは疑問であることを指摘し、偽造を立証するためには、筆跡の不自然さだけでなく、客観的に「母がそんな遺言書を書くはずがない」といえる具体的な事情を立証する必要があることを説明します。
⑤ なお、公正証書遺言の場合に形式的要件を欠くことは稀ですが、公証人による遺言書案の読み上げに対して、遺言者が「うん、うん」と言っているだけでも公正証書遺言が出来上がることがありますので、口授の態様などによって、公正証書遺言も無効となる可能性があります。

【2】遺言能力の欠缺

① 遺言書作成当時において遺言者に遺言能力がない場合も、遺言は無効となります。そこで、相談者に対しては、遺言者の入院歴、要介護度、認知症の有無、介護の状況を聞き出し、遺言者や相談者の日記やメールのやりとりが手元にないか確認します。
② 具体的には、入通院していた各病院の診療記録、介護施設や介護事業者の業務日誌や介護記録を入手してもらいます。前者では看護記録などで遺言者と看護師との会話やせん妄などの状態がわかりますし、後者では施設での遺言者の言動がわかります。それに、介護認定の調査票や主治医意見書には認知症についての記載もあるはずです。
③ そして、これらの記録を分析すれば、認知症の進行やまだら呆けなど経時的な状況が判明しますので、それをもとに遺言時の遺言能力の程度を判断します。
④ 遺言無効の調停や裁判では、この経過を時系列一覧表にまとめ、遺言者の遺言能力の減退を主張することになるでしょう。なお、遺言書の内容が複雑な場合は、遺言者にそれが理解できていたのかという疑問が残るので、遺言無効主張の補強材料となる可能性があります。

【3】遺言無効の主張

① 検討の結果、遺言無効の可能性があり、相談者も希望されるのなら、弁護士に依頼をして遺言無効確認請求事件として正式に受任してもらい、相手方に対して遺言無効を主張する旨の受任通知を送ってもらうことになります(予備的に遺留分侵害額請求も行ってもらいます)。
② そして交渉による解決が難しく、かつ、遺言無効の可能性が高いと判断すれば、遺言無効確認請求訴訟を提起します。
③ この場合の管轄は、被告の普通裁判籍の所在地か、相続開始時の被相続人の普通裁判籍の所在地の地方裁判所です。
④ もっとも、遺言無効確認には調停前置主義が適用されますので、提訴しても調停に付される可能性があります。なお、遺言無効確認調停事件の管轄は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所なので、余計な手間と時間がかかるかもしれません。
⑤ 遺言無効確認請求訴訟で勝訴が確定しても、そこから遺産分割が始まるので、全体の解決には長い時間がかかります。したがって、遺言無効で勝訴する見込みが低く、相談者の関心も遺言の有効性よりも取得できる財産の多寡にあるなら、まずは遺言無効確認調停を申立て、その中で遺留分侵害額請求や寄与分などを主張し、実利を図った方がよいかもしれません。

【4】依頼人との関係

① この類型で難しいのは、相談者が、経済的利益には目もくれず、どうしても遺言の有効性を認めたくないと主張される場合です。相談者にすれば、母が自分ではなく姉を選んだことがどうしても許せない、しかし、母はもうこの世にはいないので、遺言を無効にしなければ死んでも死にきれないという気持ちになるのです。
② もちろん相談を受けた行政書士や、その提携先の弁護士は、こうした相談者の気持ちをよく理解しなければなりません。ただし、調査や資料の分析を通じて、この遺言書は母の真意だったかもしれない(遺言無効確認請求訴訟では勝訴できない可能性が高い)との心証に至ることもあるでしょう。
③ この場合の相談者の説得は容易ではありませんが、遺言がある場合でも遺産分割協議は出来ますので、遺言の無効(又は存在)を確認しつつ遺留分侵害額請求の金額に近い形での遺産分割を成立させるといった工夫を検討すべきではないかと思います。
④ このように、すべての相続人が、少しでも多くの遺産を取得しているわけではなく、面子や気持ちの折り合いの問題があることを頭の片隅に置くべきでしょう。