【終活・遺言・相続相談】相談例63 空き家問題

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(44歳男性)から、「隣家に住んでいたおばあさんが亡くなって6年経つが、誰もその家を管理しておらず、屋根や塀が崩れかけ、屋内も覗ける状態で、さらに大木の枝が張り出して通行の邪魔になっている。何とかならないものか」と相談された。

【検討すべき点】
放置された空き家は、近年、大きな問題になっています。現時点では空家の問題点や空き家等対策の推進に関する特別措置法について説明し、市町村の担当部署に相談いただくとともに、行政を経由しない解決策の可能性について検討することになります。令和3年民法改正に管理不全の土地・建物に対する手当が盛り込まれましたので、これが施行されれば、空き家問題を解決できる方法が一つ増えることになります。

【1】空き家問題

① 全国の空き家は平成30年時点で約849万戸でしたが、その後も確実に増え、都市部でも、一見しただけでそれとわかる空き家が目につくようになってきました。
② きちんと管理されている空き家であれば問題ないのですが、相談例のように朽ち果てて幽霊屋敷になっている空き家は、防災、衛生、景観などの点で近隣住民の悩みの種です。
③ このような空き家が生まれる原因は様々で、建物所有者の相続が開始したものの相続人がいないケース、相続人はいるものの遺産分割がまとまらず放置しているケース、その建物には利用価値がなく税金の負担だけがかかるため、相続人間で建物の押し付け合いになっているケースなどが挙げられます。
④ また、相続人が建物を相続したものの、もともと被相続人がため込んでいた建物内動産(ゴミ)の処分に手間取っていたり、相続人自身が倉庫代わりに使っているケースや、再建築不可物件で建物の再築ができず、かといって取り壊すためにも数百万円の費用がかかるため、建物を潰すに潰せないといった事情があるケースもあります。

【2】空家等対策の推進に関する特別措置法

① こうした空き家問題に対応するため、多くの地方自治体で独自の空き家条例を定めていましたが、平成27年2月、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下空家法といいます)が施行されました。空家法の要点は以下のとおりです。
② 第一に、空家法2条1項で「空家等」とは、建築物又はこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理する物を除くと定められ、建物のみならず、敷地も立木も塀も同法の対象となりました。
③ 第二に、空家法3条で空家等の所有者又は管理者(以下所有者等)という)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとするとされました。したがって、抽象的ですが、所有者だけではなく、管理者にも努力義務があります。
④ 第三に、空家法では特定空家等という概念を設け、特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保全上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいうとし、市町村長は、特定空家等の所有者等に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令ができ、さらに行政代執行法による強制執行も可能になりました。なお、命令違反や立入調査拒否等に対しては過料の制裁があります。
⑤ 第四に、空家法は国、都道府県、市町村の役割分担を定めました。空き家対策も中心的役割は市町村が負うこととしましたので、各市町村に担当部署が置かれました。

【3】行政書士や弁護士の関与

【3-1】行政に対する働きかけ

① 相談例の隣家は特定空家等に該当しそうで、そうであれば、現行法下では、空家法による指導等を求めて市町村に相談してもらうよう相談者に勧めることになります。ただし、市町村がすぐに動いてくれる保証はありませんし、実効性があるとも限りません。
② そこで、行政書士としては、相談者や周辺住民から依頼を受け、他の事例の調査や被害や懸念の内容を文書にまとめるなどして、市町村に対応を働きかけることを検討すべきでしょう。

【3-2】相談者個人としての請求

① 空き家問題の解消を行政に頼らざるを得ないのは、周辺住民から空き家所有者等に対する具体的な請求権を観念するのが困難だからです。
② しかし、空き家からのゴミや木の枝等が相談者の土地に侵入している場合には、直接、隣家の所有者等に対し、妨害排除請求権や損害賠償請求権を行使することが考えられます。
③ また、訴訟に至らずとも、内容証明郵便などでその旨の通知や督促が届けば、空き家の所有者等が自発的に管理してくれるようになる可能性はあります。

【3-3】義務者の特定

① 空き家等の所有者等の特定は、一筋縄ではいかないことがあります。
② まず、空き家の土地・建物の全部事項証明書で各所有者を確認し、被相続人から相続人に対する相続登記がされていればその相続人が相手方になります。
③ 次に、相続登記が経由されていなければ、被相続人の住民票、除籍謄本から遡って相続人とその住所を特定し、相続人に対して空き家の管理を求めることになるでしょう。
④ 相続人全員が相続放棄していたり、相続人がいなかった場合には、現行法では、相続財産管理人の選任を申立てるしかありません。また、所有者等の死亡も確認できなければ、不在者管理人の選任を申立てることになります。そしてこれらの方法では、おおむね50万円から100万円の予納金が必要になります。
⑤ なお、相談例で、建物の所有者と土地の所有者が別の場合には、塀や大木の枝に関しては、その土地の所有者に対して適切な管理を請求できる可能性があります。また、隣家を管理している不動産管理業者がいるなら、適切な管理を求めることができるかもしれません。

【3-4】管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

① このような空き家問題に対し、令和3年民法改正では、相談例のような場合で隣家の所有者が不明なときは所有者不明土地管理命令や所有者不明建物管理命令が、隣家の所有者が明らかなときは管理不全土地管理命令や管理不全建物管理命令が認められることになりました。
② ただし、このような場合も費用の予納が必要ですし、その費用を回収できるかどうか不明です。また、これらの管理命令が認められるかどうか、その後、管理人がどのように対応してくれるのかも明らかではありません。