世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例23 相続税対策一般についての記事です。
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【相談内容】
相談者(55歳男性)から「父(84歳)が亡くなったときの相続税の話が聞きたくて、市役所の法律相談へ行ったが、税理士に聞いてくれの一点張りで役に立たなかった。どんな相続税対策があるのか教えて欲しい」と相談された。
【検討すべき点】
そもそも税務に関する相談は税理士法により、税理士のみがおこなえると定められています。そこで、行政書士や弁護士などが相談会などで出来る範囲が問題となりますが、相続税の計算方法や各種制度の一般的な内容(国税庁のホームページに記載されている説明程度)を解答することが限度であると考えられます。具体的な相続税額を計算することは、税理士法に抵触する危険があるので注意が必要です。
そこで計算方法の説明(表にしてわかりやすく説明することは問題ないと思われます)、各種相続税額の軽減制度の概要の説明を行うことになると思います。
【1】相談者に対する基本的な対応
① 相談者は往々にして全財産を開示せずに、特定のケースや節税方法についてのみ尋ねることが多くみられます。そして曖昧な知識のまま答えると「専門家(行政書士等)が言った」と利用されかねません。
② そのような場合、「行政書士は頻繁に変更される財産評価基本通達に精通しているわけではなく、税理士法の定めにより、一般的な説明を差し上げるのみで、最終的な責任は負えない」ことを事前説明して、「わかる範囲で説明します。最終的には必ず、税理士に確認するようにしてください」と念を押すことが必要です。
【2】相続税の計算と対応する節税方法
① 相続人の財産がどの程度あるのかを伺い、現時点で相続が発生した場合の相続税を計算してもらいます(行政書士はあくまで計算方式を示し、電卓などで計算するのは相談者にしてもらいます)。
② 相続税の計算方式は次の通りです。
A: 相続人それぞれの相続財産額を計算(みなし相続財産、債務、税金、葬儀費用を含める)し、その総額を計算する。
B: 基礎控除額を控除する。
C: 相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定して、各相続人の取得財産を計算する。
D: 相続人毎に相続税率を乗じて仮の相続税額を算出し、それを合計する(=相続税の総額)。
E: 遺言や遺産分割などにより実際に分けられた財産(具体的相続分)の割合に応じて、各相続人に相続税の負担額を割り付ける(=各人の相続税額)。
F: 個別の事情により税額の軽減又は控除を行う(配偶者控除、未成年者控除、税額加算など)。
③ 次に、このAからFの各段階の応じた節税方法は次の通りです。
A1: 相続財産中の不動産の評価を下げる=小規模宅地の特例・土地活用・タワマン節税
A2: 相続財産中の金融資産を減らす=評価が逓減する資産の購入(不動産、貴金属の購入など)・生前贈与(暦年贈与、おしどり贈与、教育資金贈与)
A3: 相続財産の膨張を抑制する=生命保険金・相続時精算課税制度
B1: 相続債務を増やす=建築資金の借入・土地活用・タワマン節税
B2: 基礎控除額を増やす=養子縁組
D1: 具体的相続分を減らす=養子縁組
F1: 税額軽減=配偶者税額軽減・未成年者控除
【3】節税対策の基本方針
① 一般に、節税方法として頻繁に利用されるのは、暦年贈与、小規模宅地の特例、配偶者税額軽減の適用、生命保険だと思います。
② このうち、小規模宅地の特例と配偶者税額軽減は、本来、相続開始後の処理(遺産分割の問題)ですから、相続税の申告を依頼する税理士に任せるのが基本ですが、遺言書作成や遺産分割協議でも、事前にその要件を確認しておく必要があります。
③ なお、小規模宅地の特例、配偶者税額軽減の適用を受けるためには、相続税がかからない場合でも、相続税の申告が義務ですので注意が必要です。
④ 10ヶ月以内に相続税の申告を行わなければなりませんが、申告ができない場合は、とりあえず未分割(法定相続分)で申告(相続税法55条)し、それから3年以内に遺産分割をすれば、更正の支給により、これらの制度を適用してもらえます。その後も、やむを得ない事情があれば適用の可能性があるので、慌てる必要はありません。
⑤ 未分割の申告をせず、あるいは、いったん遺産分割協議を成立させたのちで、小規模宅地の特例や配偶者控除を使うため、改めて遺産分割のやり直しをした場合には、贈与税や所得税が課税される可能性があるので、やり直しはきかないと考えて下さい。
⑥ それ以外の節税対策(暦年贈与・生命保険・養子縁組)は、相続人間の不平等を招くことが心配の種です。相続税対策と争族対策は別物ですが、円満な笑顔相続こそ最高の節税対策とも言えます。