世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は後見制度に関して、「知的障害のある子供の将来の生活が心配な場合は。親なき後の財産管理」の続きを考えてみましょう。
【Q】私には子供が2人います。45歳になる長男には知的障がいがあります。自宅に夫と3人暮らしで、夫婦で長男の面倒を見てきましたが、昨年夫が亡くなり、私も今年70歳になりました。今後いつまで長男の面倒をみることができるのか、日々不安に感じています。長女は結婚しており、長男のことも気にかけてくれてはいますが、生活に余裕があるわけではなく、私の様に自宅で長男の面倒をみるというのは不可能です。そう思って、夫婦でつましい生活を送り、預貯金は4000万円ほどあり、賃料収入のあるアパートを一軒持っています。私が死んだあと、なんとか長男が暮らしていけるようにしたいと思いますが、どのようにすればよいでしょうか。
【A-3】日常生活自立支援事業を活用する
お子さんが、一人暮らしはできるけれども重要な契約ができないとか、お金の管理ができないというようなタイプの場合は、どうでしょうか。このような場合には、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の援助を利用する方法をおすすめします。
日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助を柱とし、年金や福祉手当がきちんと振り込まれているかどうかの確認、預金からの生活費の引き出し、医療費、社会保険料、電気・ガス・水道料金などの公共料金、日用品の購入代金の支払いなど日常的な金銭管理を手伝ってもらえます。また、預貯金の通帳や年金証書、保険証書、不動産の権利証、契約証、実印、銀行印、カードなどの重要な書類等を社会福祉協議会に預かってもらうこともできます。
あなたのお子さんに、ある程度の生活費があり、きちんと生活していける状態であれば、こうした援助を利用しながらある程度の年齢になるまで一人暮らしが可能だと思います。
日常生活支援事業を利用するには、まず市区町村の社会福祉協議会に相談し、まず、あなたとお子さんの状況を理解してもらいます。お子さんがお金の管理ができないというようなこともきちんと話し、子どもと日常的な金銭管理、書類の預かり等、必要な援助を内容とする契約を結んでもらい、日々の生活を見守ってもらいます。
例えば、病気が進んで一人暮らしが難しくなってくれば、そのときには、日常生活支援事業の福祉サービスの利用援助を利用して、施設に入ることなども可能でしょう。もちろん、すべて社会福祉協議会や行政まかせというわけにはいきません。成年後見人の選任が必要になったりする場合には、後見人ではないにしても、兄弟姉妹の助けを借りることなどが不可欠になります。兄弟姉妹とはよく話をして、そのような協力については了解を得ることが望ましいと言えましょう。
【A-4】ある程度の判断能力がある場合には
お金だけをきちんと渡せば生活できるが、きわめて体が弱いというようなことも考えられるかもしれません。そのような場合には、信託を利用する方法もあります。生前に親が信託契約を締結し、一定の財産を信託財産として受託者に委託し、親の死後一定額を受託者から子どもに支払わせるという方法です。信託を利用するのは、海外では多くみられるようですが、日本ではまだ歴史も浅く、財産の名義が受託者に移ることもあって、事例は多くはないようです。
【A-5】親自身が能力の低下に不安を感じたときは
死ぬまで子どもの面倒を見るつもりでも、病気などでそれが難しくなることもあると思います。親自身の判断能力の低下に備えておくことも考えておいた方がいいかもしれません。そのときには、親が誰か信頼のおける人と財産管理契約や任意後見契約を締結しておくことが考えられます。これらの財産管理人として弁護士や司法書士、行政書士などを選び、自分が亡くなった後には兄弟姉妹と連絡を取ってもらい、子どもの後見開始申立ての力になってもらうことなども考えられるでしょう。
親なき後の財産管理には、お子さんの状態をみながら、いくつかの方法を組み合わせ、成年後見や、遺言、任意後見契約などの制度を使い、社会福祉協議会や行政の手も借りて、親がある程度安心できるような準備をすることになります。その時には弁護士や司法書士、行政書士等の法律家の知恵も利用してもらいたいと思います。