【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q41 病院で紹介された葬儀社の利用

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【Q41】父が病院で亡くなりました。病院からすぐに遺体を引き取ってくださいと言われ、選択の余地がないまま紹介された葬儀社に自宅まで遺体の搬送を依頼しました。
葬儀社は葬儀もまとめて行なうというのですが、遺体の搬送を依頼した以上葬儀も頼まなければならないのでしょうか。

【POINT】
① 抱き合わせ販売
② 独占禁止法違反の不公正な取引

1⃣ 遺体の搬送と葬儀
① 近年では、自宅で亡くなる場合より病院で亡くなるケースの方が一般的になっています。病院で亡くなる場合には、個々の病院にもよりますが、なるべく早く遺体を引き取るよう要求されるケースが少なくありません。
② しかし、家族は事前に心がけて準備をするような余裕はないので、慌てることになります。病院によっては、遺体の搬送をしてくれる葬儀社を紹介するところもあります。
③ 搬送してもらう際に、葬儀も一括して行うと勧誘する葬儀社も少なくありません。ご質問のケースでは、葬儀も一括して行うと葬儀社が言っているということですが、その意味がはっきりしません。論点を整理しながら考えていきます。

2⃣ 遺体の搬送だけの依頼
① とりあえず、遺体を自宅まで搬送してもらいたいという場合に、それが可能かという問題です。
② 葬儀社に依頼する場合に、依頼内容を「遺体の自宅への搬送だけ」と明確にして依頼することは可能です。その場合には、病院と自宅との搬送する距離によって価格が違う場合があるので、注意して費用の決まりについて確認しましょう。

3⃣ 搬送の際に注意すること
① このケースでは、自宅に遺体を搬送することにしているので、自宅に搬送してもらったうえで、あらためてどこの葬儀社に依頼するかを検討することになります。
② しかし、最近ではマンションで生活している人が多く、マンションによっては遺体の搬送が困難な場合があります。このような場合、葬儀社のほうで遺体を自社の関連する施設に搬送して保管できるという場合があります。
③ 自宅に遺体を搬送出来ない事情がある場合には、どこに遺体を搬送するかを決める際には、どのような葬儀を行うのか、葬儀社をどこにするのかの選択にかかわってくることもあります。ゆっくり考えるゆとりはないケースがほとんどです。

4⃣ 抱き合わせ販売の禁止
① 独占禁止法19条では、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」と定めています。不公正な取引方法は、公正取引委員会の告示によって定められております。
② その10項に「相手方に対し、不当に、商品または役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること」と規定し、抱き合わせ販売等を禁止しています。
③ 遺体の搬送に当たり、葬儀の実施の契約も一括してする必要があると主張する業者は、独占禁止法に違反する可能性があります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q40 団体契約等の割引が後から判明した場合

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【Q40】父が生前所属していた団体と葬儀提携契約を締結していた葬儀社が「基本葬儀料金1割引、生花一対付き」としていました。それを知らずに、同じ葬儀社に個人で葬儀の依頼をして支払をした後にそのことを知ったのですが、差額の返金を求めることは可能でしょうか。

【POINT】
① 団体契約と個人契約の関係
② 契約の成立と効果

1⃣ ご質問の趣旨
① 父上が亡くなられたので葬儀社に依頼して葬儀を行ったところ、葬儀が終わった後で父上が生前所属していた団体がその葬儀社との間で葬儀提携契約を締結していたことが判明したという事例のようです。
② 葬儀社との葬儀契約で約束した葬儀費用は支払済みであるものの、団体との葬儀提携契約では団体の加盟メンバーであれば「基本葬儀料1割引、生花一対付き」で利用できる取り決めとなっていたので、支払済みの金額から、団体葬儀提携契約による内容に基づいた割引料金にしてもらえないか、差額を返還してもらえないかという趣旨に思われます。
③ 葬儀を実施する際の葬儀社への依頼も、団体と葬儀社の葬儀提携契約もいずれも契約です。そこで、契約問題としてどのように考えるべきかがポイントになります。

2⃣ 基本的な視点
① 消費者は自分で葬儀社との間で葬儀を依頼する契約を締結し、葬儀の実施をしてもらい代金を支払っており、契約関係は終了しています。
② 契約関係が終了した後に、亡くなった父上が所属していた団体が、たまたま今回父上の葬儀の際に利用した当該葬儀社との間で団体員が割引きで葬儀サービスを利用できる内容の葬儀提携契約を締結していたことが判明したわけです。
③ あらかじめ葬儀提携契約の存在を知っていれば葬儀提携契約によって割引料金で葬儀の依頼をすればよかったのに、知らなかったために正規料金で契約をしてしまったので、割引分を返還してもらえないかというものです。
④ 父上が所属していた団体と葬儀社との契約と、消費者が葬儀社と締結した契約は、内容も当事者も違う別々の契約です。別々の契約関係がある場合に、相互の関係はどのように考えるべきでしょうか。
⑤ そこで、団体が葬儀社と締結していた契約の内容はどのようなものだったのか、ということが重要になります。

3⃣ 団体の締結した契約
① まず、父上が生前所属していた団体とその葬儀社との葬儀提携契約の内容を確認する必要があります。
② 「基本葬儀料金1割引、生花一対付き」との規定の適用を受ける葬儀契約の範囲はどのように決められているか、その適用を受けるための要件や手続きなどについて、契約ではどのように定められているのか、その内容を確認します。
③ 葬儀団体契約の契約書などが手元にある場合には、手元の書類で確認します。手元に契約書などの契約内容が記載された書類がない場合には、父上が所属していた団体に控えか写しの発行を求めるか、葬儀社に依頼して契約書の控えか写しを交付してもらって確認してください。
④ その上で、団体に所属している本人の葬儀の際にも適用があることが確認できたら、団体割引で葬儀を依頼する場合の手続きについて確認します。
⑤ 団体員であることを証明するための資料、割引で葬儀をしてもらうための葬儀社への手続きや提出資料など、どのようなものが必要なのかを確認します。さらに葬儀が終わった後でもその手続きが利用できるかも確認します。
⑥ 以上を確認した上で、葬儀完了後であっても手続き的に可能であれば、割引分を返還してもらうことは可能です。また、事情を説明して考慮するように配慮を求めるのも一つの方法です。
⑦ ただ、団体契約による葬儀を利用する場合には、個別の葬儀の契約締結の段階で団体契約による利用であることを明示するなどの一定の手続きが必要とされている場合には、難しい可能性があります。
⑧ 葬儀社のほうであらかじめ亡くなった人が団体契約を締結している団体の所属メンバーだったかどうかなどを、葬儀のたびに調べて利用者に教えるべきだったという義務があるとまでは言えないと思われるからです。

4⃣ トラブルを防ぐために
① 生前葬儀契約の場合のところでも指摘したように、本人が亡くなった時の葬儀の実施については、契約した本人は亡くなっているために、本人に生前契約していたのか、どの葬儀社としていたのか、その内容はどのようなものだったのか、などを本人に直接確かめることができません。
② 亡くなった父上が所属していた団体が葬儀社と葬儀提携契約を締結していたことやその内容なども、亡くなった父上に直接確認することは出来ないことは、生前葬儀契約の場合と同じです。
③ 自分が死亡した後の葬儀に利用することができる制度がある場合には、自分が元気なうちに葬儀を実施することになる家族の方たちと情報を共有しておくことと、詳しい契約内容などのわかる資料をきちんと整理して共有しておくことが重要です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q39 宗教儀礼と信教の自由

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【Q39】浄土真宗の門徒ですが、キリスト教の葬式に出席する場合、賛美歌を歌ったり、聖書を読むことに参加しなければならないのですか。

【POINT】
① 葬儀への参加
② 信教の自由との関係

1⃣ ご質問の背景
① 葬儀の方式が自分が信仰している宗教とは違うものである場合に、葬儀を実施している宗教の方式に従いたくないがどうすればよいかという趣旨の質問だと思います。
② 自分が信仰している宗教の方式ではないとしても、亡くなった人や遺族の方の信仰している宗教によって実施されている葬儀であるということを考慮して、亡くなられた方を悼む気持ちから参加しようと考える人であれば、このような疑問を抱かないだろうと思うからです。
③ また、自分が信仰している宗教の方式による葬儀ではないなら、自分の宗教観に反することはできないと考えているのであれば、葬儀には出ないという判断をすることは自由です。
④ 葬儀には参加するけれども、自分の信仰する宗教とは異なる行為はしたくないと考えるから、このような質問が出てくるのであろうと考えられます。

2⃣ どう考えるか
① ここでまず考えなければならないことは、自分に信仰する宗教があるように、亡くなった人や遺族にも信仰する宗教はあるということです。
② その信仰する宗教によって葬儀を実施するのは、亡くなった人や遺族の人たちの自由ですし、これらの人々の宗教の自由は尊重すべきものです。
③ 葬儀の儀式の中で、賛美歌を歌ったり、聖書を読んだり、献花をしたりするのは、亡くなった人を弔うための儀式です。
④ 葬儀に参加する際に、どのような気持ちで参加するのかということによるのではないかと思われます。賛美歌を歌いたくなければ黙っていればよく、歌うことを強制されるわけではありません。
⑤ ただ、亡くなった人や遺族の方たちにも自分たちが信仰する宗教によって葬儀を実施する自由があることを尊重すべきだと思われます。
⑥ 遺族の方たちに対して自分の信仰する宗教観を押し付けることはできないということは認識しておく必要があるでしょう。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q38 宗教者への謝礼

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【Q38】かつて檀家総代を務めたことのある父が死亡し、通夜のときに住職に50万円を渡すと「檀家総代を務めたことのある人には院号をお渡しすることになっており、最低70万円です。香典も集まるでしょうから、明日の葬儀が始まるまでに20万円を用意するように」と言われました。
この20万円は支払わなければならないのですか。

【POINT】
① 戒名とは
② 戒名の価格
③ 寺院からの指示の意味

1⃣ 戒名、院号とは
① 住職は、亡くなった方の生前の社会的地位が院号にふさわしいものであるという理由で、戒名の中でも最高位の院号を付与するためのお布施としてさらに20万円の支払いを要求しているものと考えられます。
② そもそもお布施というものは志ですから、その性質から考えると住職から金額を指定して支払うように要求するというのはおかしいようにも感じます。
③ しかし、現代社会では葬儀の際の戒名も、ランクによって価格があるものとなっており、実質的には戒名の売買契約と同様の趣旨の契約となっているものと思われます。
④ 住職は故人には院号を付与するので、さらに20万円の対価の追加を支払うよう請求しているということになります。これに対して質問者は「支払わなければならないか」と疑問を抱いています。
⑤ ただ、この情報だけでは質問の意図が不明確です。通夜の際に支払った50万円の趣旨がなにかが不明です。葬儀のための読経のためのお布施なのか、戒名の対価としてのお布施だったのか、戒名はどのような戒名のつもりだったのか、などです。
⑥ さらに20万円を支払うべきかという疑問ですが、院号は必要だがさらには支払いたくないということなのか、院号はいらないので支払いたくないということかも不明確です。
⑦ 以下は院号はいらないのでこれ以上は支払いたくないという趣旨であった場合で考えてみます。

2⃣ 住職の発言の意味
① 戒名をつけてもらうのは、一種の契約です。
② 現代社会における戒名の実態を踏まえると、このランクの戒名をつけてもらいたい、それについてはこの金額のお布施を支払うという合意に基づいて、お布施を支払い、戒名をつけてもらうということになります。
③ つまり、双方の合意=契約によるものであるということです。
④ どのような戒名をつけるか、それに対していくらのお布施にするのか、について寺院や住職に決定権限や命令する権限があるわけではありません。
⑤ この住職の発言の趣旨は、客観的には「提案」であり、住職からの「申出」であるということになります。民法上の表現では「契約の申込み」であることになります。
⑥ したがって、この申込みに対して承諾するのか、承諾しないのかは相手方である相談者に選択の自由があります。
⑦ 相談者が「支払いたくない」と考えるのであれば、断る自由があります。この場合院号は付与されず、追加の20万円を支払う義務もないということになります。

3⃣ お寺との関係
① 法的な整理は以上のようになります。
② しかし、故人はお寺の檀家総代も務めたことがあるということであり、長くこのお寺の檀家であったと思われます。お寺との関係は、単に契約問題としてのかかわりだけではありません。
③ そこで今後のお寺との付き合いなども含めて、関係がぎくしゃくしたりしないように、院号までは必要ないことの事情などを説明するなどして丁寧な対応をするように心がけるなど、法的な問題とは別の点からの配慮が必要ではないかと思われます。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q37 心付け・追加サービスの支払義務など

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【Q37】葬儀の実施に当たり、葬儀社から、当初の契約による葬儀社への支払のほか、運転手・火葬場職員・会食の際の配膳人へのチップなどの心付けを支払うよういわれることがあると聞きました。
また、葬儀の際に追加のサービスをしたとして、追加料金の支払を求められる場合もあるようです。これらは支払う義務がありますか。

【POINT】
① 葬儀サービスの場合の寸志・チップなどの支払義務の有無
② 追加サービスの対価の支払義務
③ 不当利得の考え方

1⃣ チップ・心付けとは
① 「チップ」とは「サービスや芸などに対する慰労や感謝の気持ちとして与える少額の金。心付け。祝儀」との意味。「心付け」とは、「世話になる人に感謝の気持ちを示すために与える金銭や品物。祝儀。チップ」といった意味であると国語辞典などでは説明されています。
② いずれにしても、感謝の気持ちを表すために少額の金銭などを渡すものを指しているということで、契約に基づいて提供されるサービスの対価として支払うべき法的な債務ではないということです。
③ 古くから、旅館の仲居さん、冠婚葬祭でお世話をしてくれる人などに、少額の金銭を心付けとして渡す習慣があったことは事実です。
④ 契約社会が浸透してきている現代社会では、契約に基づく対価関係が中心となり、このような習慣もすたれてきているようです。
⑤ 以上のように、心付けやチップというものは、あくまでも感謝の気持ちを表すためのもので、契約に基づいて法的に支払う義務があるものではありません。
⑥ 質問は「支払う義務はあるか」というものです。法的な支払義務はあるのか、つまり支払わないときに裁判に訴えることで支払いを強制できる性格のものか、という意味になろうかと思います。
⑦ このような観点からは、法的な支払義務はないということになります。感謝の気持ちを表すために支払っても良いし、対価を適正に支払っているのだからと支払わなくても構いません。

2⃣ 追加サービス
① 葬儀の実施の際に、葬儀社の判断で、契約では約束していなかったサービス業務などを行う場合が見受けられます。例えば予想以上に会葬者が多く、受付の人員を増員したなどです。
② 契約内容になかったサービスの提供などが必要となった場合、契約者と協議をして、合意に基づいて行うことが基本です。この場合には、追加サービス提供についての契約が締結されているので、消費者は、契約に従って追加の料金を支払う義務を負います。
③ 問題は葬儀社の判断だけで追加サービスを提供し、後日、追加サービスの対価を当然に請求することができるのか、消費者は支払義務を負うのかという問題です。
④ 対価の支払義務は、契約によって生じます。したがって、葬儀社だけの判断で提供したものは、追加サービスの提供に関する契約はないので、契約に基づく対価の支払い義務はないということになります。

3⃣ 不当利得をめぐる問題
① 葬儀社が勝手に行った追加サービスについては、消費者は常に一切支払わなくても良いのでしょうか。実は契約によるものではないからといって、常に一切の支払義務はないとは言えないという難しい問題があります。
② 民法には契約などがないにも関わらず、相手の労務の提供などによって利益を受けた者は、そのために相手に損失を与えている場合に限って、自分が得た利益の限度で返還しなければならないという規定があります。
③ つまり、契約などの法的根拠がないのに、相手の労務の提供などによって結果的に利益を得てしまった場合の清算について定めているわけです。
④ 以上のように、いかなる経緯で葬儀社が契約内容とはなっていない追加のサービスの提供をすることになったのか、追加サービスの内容、それによって消費者が得た経済的利益の有無と金額などによって対処が違ってくることになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q36 疑問がある立替金

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【Q36】都区内で葬儀社の「立替料金」の中に火葬費用一式として20万円(最上等、冷蔵保管3日、休憩室30席用、骨壺青磁3号一式)となっていました。後で火葬場のホームページで費用を調べると、合計してもこの金額にならず7万円程多く請求されていることが分かりました。差額は立替金ではないのでしょうか。

【POINT】
① 葬儀契約と立替金
② 立替金の内容

1⃣ 立替金とは
① 葬儀を実施する場合には、葬儀社が行なうことの他に、寺院に依頼すること、送迎のためのタクシーや飲食代、火葬場に支払う費用、などがかかります。葬儀社が「葬儀一式」でいくらいくらと説明していたとしても、すべて葬儀社の提供するサービスだけで葬儀を行うことはできません。
② こうした事情から、葬儀社では、葬儀社自体が提供するサービス以外のことについても消費者に代行し、支払も立て替えて支払う場合があります。ご質問のケースはそうした事例に関するものです。

2⃣ 立替金の項目の明示がないと聞き
① 契約をした時に契約内容に、葬儀社が実施する葬儀サービス以外の内容について立替払をすることが盛り込まれていることが少なくありません。
② このような場合には、何の費用を立て替えてもらうことになっているのかが明確になっているので、トラブルは起こりにくいと思われます。
③ しかし、契約の時には立替払をすることが明示されていない場合があります。このような場合、契約内容となっていないのに葬儀社が立替えて支払ったものを、「頼んだわけではないので支払いたくない」ということでトラブルになる場合があります。
④ このようなことを避けるために、葬儀の契約をする段階で、葬儀社に立替て支払ってもらうものの内容を具体的に明確にしておくことが重要です。
⑤ では、契約で立替払をすることが明確にされていない場合には、どのように考えたらよいでしょうか。例えば、火葬費用のように、現実にサービスの提供があり、利益を得ている場合には、本来は火葬場に対価を支払う義務があるものです。
⑥ それを葬儀社が立替えて支払っていることによって、消費者は、火葬場に対する支払いを免れるという利益を得たことになるので、消費者は、葬儀社の出費によって得た利益分は葬儀社に対して支払う義務があることになります。
⑦ これとは異なり、火葬場の従業員や送迎の為のタクシーの運転手などに心付けを支払う慣習があるからと、契約で立替払いの内容を明示していないのに、葬儀社が心付けを立替払いしたとして消費者に請求してくる場合があります。
⑧ このような場合には、心付けを支払う法的義務があるわけではなく、葬儀社との契約内容にも明示されていないうえ、消費者は実質的な利益を得ているわけではないので、支払う義務はないと考える余地があります。

3⃣ ご質問のケース
① ご質問のケースでは、葬儀社との契約で火葬費用については葬儀社が立替金として支払う内容となっていたもので、葬儀社は契約の履行として立替払をしたケースです。
② ところが、火葬費用としての立替金の内容について「火葬費用一式として20万円(最上等、冷蔵保管3日、休憩室30席用、骨壺青磁3号一式)」と表示されていたのに、消費者が火葬を実施した火葬場のホームページに掲載されている費用で「最上等、冷蔵保管3日、休憩室30席用、骨壺青磁3号一式」を計算したところ7万円が多く請求されていることが判明したとのこと。
③ 消費者は「差額は立替金ではないでしょうか」という疑問を持っているわけですが、このような場合には、まず、葬儀社に対して直接請求金額の内訳明細を明確にするよう説明を求める必要があります。その上で、過大な請求であれば支払義務はないということになります。
④ 火葬場の従業員等に対する心付けを立替払いしていたという場合には、心付けは契約に基づく対価の支払ではないので、葬儀社との契約の際に「心付けの支払が習慣として行われているので、心付けについても立替払に含まれる」旨が明示されていなかった場合には、心付け部分については契約内容にはなっていないと考えられます。したがって、心付けの立替分については、支払の義務はないと考えることが可能です。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q35 サービスの品質への不満

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【Q35】葬儀社が「ご心配なく、全部致します」と言うので、受付から案内まで頼んだのですが、態度も横柄で案内も気が利かず、親戚から不満が出ました。葬儀社に言ったら「あくまで無料サービスだから責任は取れない」という返事でしたが、問題はないのでしょうか。

【POINT】
① サービスの品質
② 無料サービス

1⃣ 契約内容の確認を
① 葬儀社に葬儀の依頼をするのも契約です。したがって、どのような内容の契約をしたのかが重要です。ご質問の事例では契約内容が全く分からないので、何とも言えませんが、受付から案内まで行うということも含まれていたのではないかと思われます。
② 受付・案内は、葬儀社の方で人手を用意するということです。葬儀サービスでは、これらの人件費はコストの多くを占めるものなので、この点が無料サービスということは考えにくいと思われます。
③ 受付と案内ということですと、配置された人数も1人ではないはずです。何人を配置することになっていたのかも大切なポイントです。
④ 契約するときに、どのような内容のことを葬儀社に依頼するのか、内訳の明細をきちんと提出してもらいましょう。「ご心配なく」等、口頭だけで済まさないことが大切です。

2⃣ 気が利かないなど
① 受付や案内などの態度が横柄で気が利かないなどの苦情に対して、「無償サービスだから責任は取れない」という回答だったとのこと。無料であったかどうかも疑問ですが、もう一つ難しい問題があります。受付業務なども依頼内容に入っていた場合に、「横柄」だという苦情が親戚から出た場合には、事業者に法的責任が発生するかどうかという問題です。
② 横柄・気が利かないとは、具体的にどのような態度だったのか、仕事上どのような支障が生じたのかという問題です。確かに、親戚や葬儀に参列した人々からすると、葬儀社の対応が心のこもった丁寧なものだったかどうかは大切なことです。
③ しかし、契約どおり人も配置してやるべきことは一通り行っていたということであれば、債務不履行があるとまでは言えないのではないかと思われます。
④ たしかに親切な対応を期待しますが、不親切な対応だから債務不履行だと直ちには言えないのです。これは飲食店や介護ヘルパーなどのサービス業での接客対応と似ていると言えます。
⑤ したがって、感情的に気が利かないとか、横柄という評価をするだけでなく、するべき事務を怠っていたといった具体的なことをはっきりさせる必要があります。単に、横柄だっということでは、債務不履行などの問題にはならないと思われます。

3⃣ 葬儀社を選択する時に
① 葬儀で対応の良くない受付などは困ります。そこで、葬儀社を選択する場合には、あらかじめ葬儀社を利用したことのある地域の住民などから情報を収集するなどして、判断材料にすることが大切です。
② 葬儀社に電話をした時の電話の応対、契約のための打合せでの対応や説明が親切かどうか、質問にはきちんと答えてくれるか、見積りを示して丁寧に説明してくれるか、渡される書類は分かりやすいようにまとめられているか、などもチェックすべき点です。
③ 契約の締結についてやりとりをしている段階での対応が良くない場合には、消費者に対する配慮が足りないということであり、従業員教育も行き届いていない可能性があると考えた方が良いでしょう。

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q34 納得できない物品(棺)の品質

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【Q34】葬儀での棺は豪華なものにしたいと考え、三面彫刻入りを15万円で頼みました。実際には彫刻部分をはめ込んだもので棺自体も何か頼りない製品だったので、割引なり納得できる棺への取替を要求したいのですが、可能でしょうか。

【POINT】
① イメージ違いの場合は不可
② 勧誘時の説明が事実と違っていた場合は契約の取消事由
③ 契約内容とは異なる商品が引き渡されていた場合は追完請求できる

1⃣ 葬儀契約で問題が起こりがちな理由
① 葬儀契約における棺が、現実に引渡しを受けてみたら、自分がイメージしていたものよりも品質が劣る粗末なものだった、という苦情です。
② 葬儀契約では、棺の品質に限らず、祭壇などでも類似のトラブルが起こりがちです。考えられる理由は大きく分けると二つあります。
③ 第1は、日常的に経験している取引ではないため、利用者には品質と価格のバランス等がわからないことが挙げられます。棺は段ボール製の1万円以下のものや、数万円の合板使用のもの、総ヒノキで彫刻を施した数百万円のものなど棺の価格帯は広くなっています。
④ 第2に、棺などを決める際には、現物を見ないことが多い点です。現物を見ないで注文をする典型例は通信販売ですが、特定商取引法で通信販売の広告表示には、返品の可否を明示することを義務づけております。
⑤ 葬儀契約における棺の売買も現物を見ないと同様のことが起こりがちですが、通信販売ではないので、返品制度はありません。最近では葬儀社側もカタログを用意する等対策はしていますが、それでも現物を確認しているわけではないので、トラブルは起こり得ます。
⑥ ご質問のようなトラブルが起こる理由としては、イメージ違い、事業者の説明に問題があった場合、引き渡された商品が契約内容と違う商品だった、という3パターンが考えられます。

2⃣ イメージ違い
① 引き渡された棺は、契約で約束したものであったものの、利用者がイメージしたものとは違った、という場合なにか苦情が言えるのでしょうか。
② 通信販売に該当しない葬儀契約の場合には、返品制度に関する規制があるわけではないので、利用者には返品権はありません。民法の契約の原則で考えることになります。
③ 民法によれば、売買契約を締結し、事業者が契約の内容に従って商品の引渡しをすれば、事業者の債務の履行は完了します。顧客は、当然に、契約に従って対価を支払う義務を負うことになり、値引きや交換を求めることはできません。

3⃣ 勧誘時の説明が事実と違っていた場合
① 利用者が棺の品質について不満を抱いた理由が、契約の締結について勧誘をする際の事業者の説明に問題があったことによる場合はどうでしょうか。
② 勧誘の際の事業者の説明が「この15万円の棺は、無垢材に直接彫刻を施した豪華なものです」と説明し、この説明を信じた利用者が「それならば」とこの15万円の棺を選んだ場合に、実際の商品が合板の棺の一部に彫刻をはめ込んだものであり、利用者が不満を抱いた場合です。
③ この場合は、契約の履行には問題がないものの、事業者の勧誘時の説明に問題があったということになります。
④ 葬儀契約は個人と葬儀業者との契約ですから消費者契約に該当し、消費者契約法の適用があります。消費者契約法4条1項および5項では、事業者が契約の締結について勧誘をするにあたり、販売する商品の品質などに関する重要な事項について事実と異なる説明をし、消費者が、事業者の説明が事実であると誤認して契約を締結した場合には、その契約を取り消すことができると定めています。
⑤ 取消しは、追認できる時から1年間可能です。現物が届いてすぐであれば取消しは可能です。そこで利用者は、ご質問の棺の売買契約を取り消して、納得できる棺の売買契約を新たに締結すればよいことになります。

4⃣ 引き渡された商品が契約の内容に適合しないとき
① 葬儀社との契約内容は「無垢材に彫刻を施した棺を15万円で販売する」との内容だったのに、実際に引渡しをされた棺は合板で彫刻をはめ込んだものだったという場合、売買契約に基づいて引き渡された商品が「契約内容に適合しない商品だった」ということになります。一種の債務不履行に当たります。
② 令和2年4月から施行されている改正民法では、購入者は、引き渡された商品が契約の内容に適合しない場合には、不適合に気が付いた時から1年間は、事業者に対して追完請求をすることができると定めています。
③ ご質問のような場合の追完とは、契約内容に適合した商品と交換するように請求することができるということです。追完請求をする場合には、合理的な相当期間を定めて、この期間内に追完して欲しいと請求します。
④ 指定した期間を経過しても追完されない場合には、適合しない程度に応じた減額請求ができます。つまり値引きの請求ができるということになります。

【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q33 オプションとその料金

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、シニア世代の将来設計、終活・相続支援・成年後見制度に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【Q33】葬儀社から見積もりを受け取ったら、葬儀基本料金とは別にオプションとして「棺 布張り棺10万円」とありました。棺なしに葬儀はできないので、葬儀基本料金と二重取りされているのではないでしょうか。

【POINT】
① 葬儀基本料金の内訳
② オプションの意味の確認

1⃣ 葬儀契約は内容があいまいになりがち
① 契約は、通常具体的に事業者が提供する商品やサービスの内容を決め、あわせてその提供時期、対価など契約条件を決めることによって成立します。
② 事業者が提供する商品やサービスの内容が不明確であったり対価などの契約条件が曖昧である場合には、トラブルの元となるので要注意です。
③ 契約の内容というのは、事業者が約束してくれることを意味しますから、内容が曖昧だと何を約束してもらっているのかがはっきりしないということになるため、トラブルになる危険性が高い訳です。
④ ところが、葬儀に関する契約では、葬儀社が提供する商品やサービス内容が曖昧であることが少なくなく、しばしばトラブルが生じています。
⑤ 葬儀社によっては「葬儀一式」とか「葬儀基本料金」などの表現をしている場合がありますが、これらは用語の定義があるわけでもなく、葬儀社ごとに恣意的に使用しているものにすぎません。
⑥ よって何が含まれているのかは葬儀社ごとに様々です。ですので、内訳明細がない場合には、何が含まれているのかわかりません。
⑦ 葬儀社の方では、「常識的にこの内容」と考え、消費者は「葬儀に必要なものすべて」と考える。結果、葬儀終了後にトラブルが多々生じてくる結果となります。

2⃣ オプションとは
① もう一つの問題は、葬儀社によっては、オプションという言葉を使用していることがある点です。
② 事業者の方は、基本料金には含まれていないものをオプションとして用意しているので、オプション料金を支払えば利用できます、と説明します。
③ オプションというと、旅行パックなどでよく聞きますが、基本のパックに含まれていない観光地での観光やレジャー参加など、旅行パックとは別にオプション契約をしてオプション料金を追加するイメージです。
④ 葬儀の場合も、基本料金に含まれていないサービスの追加を依頼する場合がオプションであるというイメージを持つのも無理はないでしょう。

3⃣ ランクアップの場合
① ところが、葬儀の契約ではもともと基本料金に含まれている棺や祭壇、使用するホールのランクを上げる場合も、オプションと呼ぶ場合があります。
② この場合には、基本料金に含まれている棺・祭壇・ホール使用料とオプション料金の関係が曖昧だとトラブルになります。ご質問は典型例です。
③ トラブルを避けるには以下の点が重要です。第1に、基本料金に含まれている内容について内訳明細を出すように求めます。ついで、棺の料金も入っていることが分かったら、ランクアップのオプションを選択した場合には、オプションの追加料金はどのように算出しているかを確認します。
④ この場合、基本の棺の代金は基本料金に含まれているとすれば、ランクアップの代金と基本の棺の料金の差額がオプション料金と考えるのが一般的だと思います。
⑤ しかし、この点も確認が必要で、事業者によっては基本料金はそのまま全体としてのセット料金なので、基本の棺ではなくランクアップした棺を使用する場合でも、基本料金を値引きしないケースがあります。
⑥ この問題は約款をどう解釈するかという問題になりますが、日本では約款の解釈に関する法律はありません。事業者側は「約款は定めた側の解釈で」と主張するケースが多く、消費者側の理解とずれているケースが散見されます。
⑦ ご質問のケースでは内訳明細が明示されていないケースのようですので、まずは、内訳明細の開示を求め、ランクアップ料金の算出方法について確認が必要です。