【終活・遺言・相続相談】相談例57 使途不明金の扱い

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(62歳女性)から、「1年前に施設で亡くなった母(90歳)の遺産が預金300万円だけだったので、おかしいと思って取引履歴を調べたら、相続開始の4年前に窓口で定額預金1000万円を解約し、3か月前に50万円ずつ14回にわたって700万円の普通預金ATMで引き出されていた。相続人は私と弟(59歳)だけで、かつて母と同居していた弟が預金を抜き取ったに違いない。そこで、(弁護士には委任せず)出金された1700万円を遺産に含めて遺産分割調停を申し立てたが、弟は「しらない」の一点張り。調停委員も「その問題は遺産分割調停では扱えない」といって取り合ってくれない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
使途不明金(不正出金)の問題は、遺産分割の付随問題の典型例で、相続分野におけるもっとも難解な論点の一つです。相談者の現実的な選択肢としては、調停不成立として審判を求めるか、調停を取り下げて不当利得返還請求又は損害賠償請求の訴訟を提起するしかなさそうですが、提携先の弁護士を紹介する等します。

【1】遺産分割の付随問題

① 「遺産分割の付随問題」とは、遺産分割の当事者などとの間で発生する種々の法律問題のうち、遺産分割審判の対象外の事項とされ、別の法的手段により解決せざるを得ない問題のことです。
② 具体例としては、使途不明金の他に葬儀・埋葬の関連費用、祭祀承継、遺産管理費用及び収益の分配、相続債務の整理・分配などが挙げられます。
③ ことに相談例のような場合、相続開始時に残っていた預貯金の額よりも使途不明金の額の方が大きいので、相談者とすれば、使途不明金を含めた分割でなければ納得できず、遺産分割調停での当事者の主張は先鋭に対立します。

【2】調停委員会の対応

① 付随問題は、もともと遺産分割の対象ではありません(この点で前提問題と異なります)。もちろん相談者が使途不明金に関する主張を諦め、現存する預金300万円のみを対象とする遺産分割で我慢するなら別ですが、それは難しいでしょう。
② そこで、遺産分割調停の2、3回目の期日までに使途不明金の扱いについて当事者が合意できる見通しがなければ、調停委員会は、調停を不成立として遺産分割審判に移行するか、遺産分割調停を取り下げるかを選択するように求めます(当事者が前提問題について合意できる見込みがない場合も同様です)。

【3】相談者の選択肢

① このような場合、相談者としてはどのように対応するべきでしょうか。
② 第一に、現存遺産(300万円)のみを対象とする遺産分割調停を成立させ、その後に、弟に対する不当利得返還請求や不法行為による損害賠償請求の訴訟を提起することが考えられます。
③ しかし、その訴訟で、弟が一転して使途不明金は母から贈与されたと主張するかもしれません。そこで、この方法を選択する場合には、一部分割である旨、あるいは使途不明金は贈与(特別受益)ではないことを確認しておくべきでしょう。
④ 第二に、調停を不成立として審判に移行した場合、使途不明金は遺産分割の対象ではないため、現存遺産のみを対象とする審判が下されるはずです。
⑤ そしてその後の不当利得返還請求等の訴訟で弟が使途不明金を特別受益と主張した場合は先程と同じ問題になりますが、その場合には審判をやり直すことができません。
⑥ また、遺産分割の調停や審判で時間を空費した後、しばらくしてから不当利得返還請求等の訴訟を提訴する場合は時効を援用される可能性もあります。
⑦ 第三に、調停委員会の勧めに従って調停を取下げ、不当利得返還請求等の訴訟により、遺産分割に先行して使途不明金の問題を解決する方法もあります。手戻りになるので、相談者としては不本意でしょうが、負担になるのは相手方(弟)も同様です。
⑧ 展開次第では訴訟中の和解による(遺産分割を含めた)解決もあり得ますので、これを勧めるのも選択肢の一つになります。
⑨ ところで、以上の選択肢は、いずれも不当利得返還請求等の訴訟を予定するものです。しかし、不当利得返還請求等の訴訟で勝訴できなければ、絵に描いた餅にすぎません。そこで、不当利得返還請求等の訴訟において勝訴の見込みがあるか否かを検討し、その見込みが薄いのなら、第四の方法として、譲歩の姿勢を見せながら少しでも有利な条件の下で遺産分割調停を成立させるべきでしょう。

【4】別訴における勝訴の見込み

【4-1】出金者の特定

① 通帳や取引履歴によって、被相続人名義口座からの相続開始前の出金が見つかっても、それだけでは誰が出金したのかわかりません。
② 相談例では、4年前の窓口での定額預金解約の際には本人確認されたはずですが、弟が母に同行し、出金伝票に代書して出金している可能性もあります。そこで、(弁護士照会制度を利用して)出金伝票を入手し、その筆跡・印影や本人確認書類によって弟との関与があったか否かを確認します。
③ 他方、当時の母の介護認定の調査票、主治医の意見書、介護記録などによって、母の健康状態や認知症の程度を調査し、母自身の意思によらない出金の可能性があるかを検討します。
④ 次に、相続開始3か月前のATMでの出金については、弟がキャッシュカードのありかや暗証番号を知っていた蓋然性があること、当時母が施設に入所していたことに加え、出金したATMが被相続人が入居していた施設から遠く、弟の生活圏(自宅や勤務先の最寄り駅)にあるといった事実が認められれば、弟が母のキャッシュカードを利用して出金できたと推定できそうです。

【4-2】出金の使途

① 弟が出金への関与を認めざるを得なくなっても、弟は、その使途について、1.母に出金金額を手渡した、2.母の生活費や自宅改修費用等に使った、3.母から贈与された、4.母から借りた(預かった)と反論する可能性があります。
② しかし、1.については、母に多額の出費を要する事情が見つからず、入所中の施設でも多額の現金を保管できなかったといった事情があれば弟の主張は不合理ですし、2.についても使途や領収証が明らかにならなければ同様で、不当利得返還請求等が、認められる可能性が高くなります。
③ また、3.の贈与を主張するなら(持戻しの免除の問題はあるとしても)特別受益として遺産分割で考慮されるべきことですし、4.については、貸金返還請求や預託金返還請求となるだけです。
④ こうしてみると、弟の側も使途不明金の説明に窮しますので、調停では「知らない」の一点張りということが起こります。しかし、不当利得返還請求等の民事訴訟になれば、何らかの説明が求められますから、これらの訴訟を利用した方がよい場合があると思います。

【4-3】遺産分割調停における方針

① 以上からすると、係属中の遺産分割調停においては、弟に証拠を突き付けて使途不明金への関与を認めさせ、それが贈与(特別受益)でないことを書面によって明らかにさせるべきです。
② 一方、母の認知症が軽度で、ある程度の意思能力が維持されており、むしろ母は傍にいる弟を頼りにしていた(生活費の出金を任せていた)等の事情があって、一部でもそれなりの領収証が提出されるなら、弟に対する包括的委任関係が認められ、不当利得返還請求等が棄却される可能性が出てきます。したがって、そのような場合は、無理をせず遺産分割調停の中で問題を解決すべきでしょう。
③ 以上のように、使途不明金の問題の解決には、事実の調査、法的評価や手段選択についての専門的な知見が必要ですので、弁護士への委任は不可欠と考えられます。

【4-4】相続税との関係

① 使途不明金については、税務面での問題があります。まず、相続開始3か月前の700万円の出金は、それが贈与だったとしても遺産とみなされ、相続税の課税相続財産に含まれます。
② 次に、4年前の1000万円の出金は、税務調査の末、弟名義の預金口座への同時期、同額の入金が確認できれば贈与とみなされ、弟に対して、多額の贈与税や無申告加算税が課税される可能性があります。そして、弟がその負担を免れるためには、税務署に対して、これは預かり遺産だと主張せざるを得ません。
③ しかし、その場合には全体の相続税額が変更されるため、弟のみならず、相談者も修正申告が必要になります。したがって相談者としては、弟が遺産分割調停で、使途不明金につき特別受益と持戻し免除を主張した場合でも、贈与税課税の可能性を指摘し、あるいは、やがて生じる相続税申告との矛盾を指摘して交渉できる可能性があります。
④ なお、同様のことは名義預金に関しても言えます。このように、使途不明金、生前贈与(特別受益)、名義預金等に関しては、課税上の問題を指摘して、遺産性を認めるように相手方を説得できる可能性があります。

【終活・遺言・相続相談】相談例56 調停不成立と遺産分割審判

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【相談内容】
相談者(52歳男性)から、「亡母(享年83歳)の相続の件で弁護士に依頼し、長女(55歳)と次女(53歳)を相手方として遺産分割調停を申し立てたが話し合いがまとまらず、調停委員から、このままでは次回調停期日に調停を不成立とし、後は審判で判断してもらうことになると言われた。今の弁護士は信用できないので、審判になったらどうなるのか教えて欲しい」と相談された。

【検討すべき点】
この相談内容も行政書士や司法書士では対応できない、弁護士さんの独占業務の内容ですが、関連する相談として取り上げます。
遺産分割調停を不成立として、遺産分割審判に移行するとなった段階で、依頼人がようやく思惑通りにいかないと気づくことがあります。そうすると依頼人が依頼していた弁護士に対して不満を持ち、このような相談に来られることがあります。こういう事態を避けるためにも、遺産分割調停が不成立になり、遺産分割審判に至った場合を予想して、弁護士の先生方は依頼人に、説明しておく必要があります。

【1】遺産分割審判の説明

遺産分割の審判について相談者に説明すべき点は、概ね以下のとおりです。

【1-1】遺産分割審判の進行

① 遺産分割調停が不成立になれば、自動的に遺産分割の審判に移行します。遺産分割の審判は、裁判官が一切の事情を斟酌して遺産の分割方法を決める手続きです。
② 遺産分割調停の申立てから調停成立や遺産分割の審判迄の平均審理期間は、約12か月とされています。審判手続きでも、当事者の意見を聞き、あるいは立証を尽くさせるために審問が開かれることはありますが、調停事件で提出した書面や資料で十分と判断されたときには審問は開かれません。したがって「第一審がダメならば、第二審で最初から」という考えは通用しません。
なお、審判に対しては、2週間以内に即時抗告できます。

【1-2】遺産分割審判の対象となる遺産

① 遺産分割の対象となる遺産については、相続開始時点に存在していても、審判時に現存しないものは、審判の対象にはなりません。ですから、相続開始後に処分されてしまった遺産も対象にはなりません(民法906条の2第1項によって遺産とみなされるものは例外です)。
② また、審判では、当然分割される不当利得返還請求権や損害賠償請求権などの債権も、当事者間が審判対象とすることに合意していなければ対象外です。その結果、審判対象は、主として、審判時に現存する不動産と預貯金と株式になります。

【1-3】遺産の評価

① 遺産の評価については、特別受益や寄与分の計算では相続開始時の評価が基準になり、遺産分割の審判では分割時における評価が基準になります。
② 不動産については、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、実勢(鑑定)価格とするのかなどといった問題があるため、裁判所の手間を省くためにも、遺産分割調停の段階で、当事者にどの評価方法を採るのか合意しておくべきです。
なお、不動産や非公開株式の評価に関しては、抗告審での再燃を防ぐために鑑定が推奨され、費用を予納すれば鑑定はほぼ認められます。

【1-4】不動産の処分

① 審判は後見的立場からの具体的妥当性を重視するので、当事者の意図したとおりの分割にならないこともあります。たとえば、ひきこもりの相続人を自宅から追い出したいといった主張は、かえって裁判官の心証を害することになりかねません。
② また、遺産の価値の大半を自宅が占めるような場合は代償分割の審判が合理的ですが、相続人に代償金を払うだけの資力がないなどの事情を勘案し、当事者が望まなくても、自宅の任意売却や競売による換価を命じたり、共有分割の審判が下されることもあります。

【1-5】寄与分を定める処分の審判

① 特別受益の主張に関しては遺産分割審判の中でも考慮されますが、寄与分は、審判に移行した後、改めて家庭裁判所が定める期間内に寄与分を定める処分の審判を申立てる必要があり、それを怠ると遺産分割の審判の対象外とされることがあります。

【2】審判の予想

① 相談例では、相談者が申し立てた遺産分割調停の争点が明らかになっていません。そこで、相談者からこれまでの遺産分割調停の経過について事情を聞き、審判に移行することが相談者にとって有利か不利かを考えます。
② たとえば、相談例において、相談者が長女や次女の特別受益(あるいは使途不明金や名義預金)を問題にしたのに、長女や次女がこれを否定し、調停委員会もそれを追求してくれないというパターンが考えられます。
③ もちろん相手方に特別受益があることは相談者の側で主張立証しなければならず、それが奏功しないなら、特別受益がないものとして審判される可能性が高いでしょう。そうすると、調停不成立にするよりはむしろ調停で妥協を図った方が相談者の利益になるでしょう。
④ また、相談者の言い分が、自分は長男だし両親の面倒をみてきたことが評価されないのはおかしいとか、亡父の一次相続では長女や次女が得をしたので、今回は譲れないといった程度の主張であれば、審判でそれらの主張が認められる可能性は少ないので、調停不成立は避けたほうがよいと思われます。
⑤ 逆に、長女や次女の特別受益等については十分な主張立証があるものの、長女や次女が頑なにそれを認めない場合や、調停にも出頭しないような場合も考えられます。この場合にはむしろ審判を下してもらった方がよいでしょう。
⑥ なお、家庭裁判所は、調停が成立しない場合でも、調停に代わる審判をすることができます。これは、他の相続人は同意しているのに相続人の一人だけが調停案を頑固に拒んでいる場合や、調停期日に出頭しない場合に用いられます。
⑦ 相談例でも、調停委員会は、調停不成立とするのではなく調停に代わる審判を下す可能性がありますが、これによってある程度審判の結果を予想できること、調停に代わる審判に対しても異議を申し立てれば、審判に移行することを説明します。

【終活・遺言・相続相談】相談例55 遺産分割調停の申立て

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例55 遺産分割調停の申立てについての記事です。

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【相談内容】
相談者(54歳男性)から、「近くに住んでいた伯母(86歳)が亡くなり、伯父(81歳)と私を含む甥・姪7人の合計8人が相続人になった。しかし、従兄弟たちの一部とは伯母の遺産に関する認識がかみ合わないので調停が必要だと思うが、どうすればいいか」と相談された。

【検討すべき点】
相談者が、自分で申立てるつもりで遺産分割調停の一般的な手続きについて質問されているのなら、その手続きを説明します。しかし、遺産分割調停の過程では、前提問題をはじめ様々な専門的知識が必要になりますから、最初から弁護士が受任するということが相談者のためになることが多いものです。
したがって、事案の内容を伺いながら、調停で問題になりそうな点を指摘して、紛争性があると判断すれば、弁護士への委任を勧めることになります。

【1】遺産分割調停手続きに関する説明

【1-1】管轄

① 遺産分割調停を申し立てる場合の管轄は、「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」又は「当事者が合意で定める家庭裁判所」になります。
② 相談例の場合、相手方は7人いるので、その相手方の住所地としていくつかの家庭裁判所を選択できますが、相続人全員の便宜を考えて決めるべきでしょう。
③ なお、最初から遺産分割の調停ではなく、遺産分割の審判を申立てることも可能です。遺産分割審判の管轄は、被相続人の住所地(相続開始地)を管轄する家庭裁判所又は合意管轄裁判所ですから、相談者は、相続開始地を選択して遺産分割審判を申立てることもできます。
④ ただし、審判の申立てを受けた家庭裁判所が事件を家事調停に付すると判断すれば、結局は調停管轄権を持つ家庭裁判所に移送されますので、かえって時間を無駄にすることになりかねません。

【1-2】申立書等

① 相談者は調停申立ての具体的方法を知りたいのかもしれませんが、その説明には時間がとられますし、相談者も具体的な内容は覚えられません。したがって、調停申立書の書式、提出書類、提出方法、申立費用等の情報は、家庭裁判所のHPで入手できることを説明した上で、特に気にされる点について回答します。
② そして、時間があるなら、申立書の写しは相手方に送付されるので、相手方の感情を害するような記載を控えること(または非開示を希望すること)、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本などの取り寄せや遺産に関する資料の整理や提出に手間取ること、法定相続情報一覧図を提出した場合でも追加して戸籍謄本等の提出を求められる可能性があることなどを指摘します。それが煩わしいと思う場合は、司法書士や弁護士に依頼することを勧めます。

【1-3】遺産の特定

① 遺産をできる限り明らかにしてから調停を申し立てるべきであり、家庭裁判所が後見的立場から遺産や特別受益を調査してくれると期待すると当てが外れます。この点を誤解している方が多いので、説明が必要になります。
② なお、相談例の相談者は被相続人の近くにお住まいで、被相続人の通帳などを保管している可能性があるので、それを取りまとめて(家庭裁判所の書式に従った)遺産目録を作成するように説明します。

【1-4】調停期日

① 調停を申し立てた後、2か月程度で第1回の調停期日が指定され、以後、1ヶ月から2ヶ月に1度の割合で調停が開かれること、調停には調停委員会を構成する調停委員2名と対面して遺産分割の内容を協議することなどを説明します。
② また、調停委員の関心は、遺産の範囲の確定、特別受益や寄与分をどのように取り扱うか、どのような調停案が適切か、調停不備の場合に審判に移行するべきかにあるので、当事者が調停期日で延々と心情を訴えてもあまり効果がないことを指摘し、もし、主張したいことがあるなら書面にまとめるべきと説明します。

【1-5】調停の結末

① 相続人全員が同意すれば遺産分割調停が成立します。当事者が多数になる場合には、調停期日に不出頭となる当事者が予想されますが、その場合でも、1.電話会議システム又はテレビ会議システムの利用、2.調停条項の書面による受諾の方法、3.調停に代わる審判の利用などの方法により、調停を成立させることができます。
② これに対して、数回の調停期日を経ても調停成立の見込みがないときは調停不成立となり、自動的に遺産分割審判に移行します。なお、相続人の範囲や遺産の範囲などに問題があると、調停の取下げを求められることもあります。

【2】前提問題

① 遺産分割調停を申し立てるに当たって、遺産分割の前提問題の確認は避けて通れません。遺産分割とは、相続人に遺産がどのように分配するかの問題ですから、法定相続人が確定し、遺産の範囲が確定し、かつ、遺言や遺産分割協議によって遺産の分配方法(各相続人の具体的相続分)が決まらない場合にはじめて、遺産分割に適した状態になります。
② したがって、1.法定相続人に関して認知、廃除、縁組無効や親子関係不存在、相続欠格等の争いがある場合、2.遺産分割時に存在する遺産の範囲に争いがある場合(名義預金や使途不明金)、3.遺言や遺産分割協議の有効・無効が争われている場合には、これらの問題を先に片付けておかなければ、遺産分割に適した状態になりません(遺産分割の前提問題)。
③ 前提問題が未解決でも、調停委員会は当事者全員が合意すれば遺産分割調停を成立させることができますし、調停不成立後に家庭裁判所は遺産分割審判を下せますが、その審判には既判力がないので、結論に不満のある当事者は別途の訴訟などでその判断の当否を争うことができ、紛争の一回的解決の要請(訴訟経済)に反します。
④ そこで、一般に、遺産分割の前提問題は、遺産分割を行う前に訴訟など(認知と相続人廃除等の効力は別途の審判手続きによります)で解決しておくことが望ましいとされ、遺産分割調停中に前提問題に関する合意が難しいと判明した場合には、調停委員会から、調停を取下げて訴訟などで前提問題を解決するよう求められることがあります。
⑤ したがって、遺産分割調停を申し立てる前に、前提問題がないかを相談者に確認し、もし前提問題があるなら、調停の中で合意できる見込みはあるのか、それが難しいなら遺産分割調停前に訴訟などによって前提問題を解決しておくべきではないかと検討を促します。

【3】遺産分割の対象となる遺産

① 相談者によると、「遺産に関する認識がかみ合わない」とのことですので、遺産分割の対象となる遺産について整理しておきます。
② 「遺産分割の対象となる遺産」とは、1.相続開始時に存在し、2.分割時にも存在し、3.未分割の遺産であると考えられています。ただし、以下の点に注意が必要です。
③ 第一に、不動産、株式、現金、借地権などは相続開始後は共有状態ですから、3.の要件を満たし、1.2.の要件も揃えば遺産分割調停及び同審判の対象となります。
④ 第二に、債権は、相続によって当然分割となるから共有状態が解消され、3.の要件を満たしません。ただし、最高裁は、投資信託受益権や個人向け国債、投資信託受益権から相続開始後に発生した元本償還金又は利益分配金について、当然分割債権にならない旨を判示し、普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権についても、遺産分割の対象となる判断をしましたので、これらの債権を対象とした遺産分割の調停や審判は可能です。
⑤ これに対して、貸金債権、賃料債権、不当利得返還請求権や不法行為による損害賠償請求権は当然分割債権となるので、3.の要件を満たしませんが、相続人全員が同意する場合には遺産分割調停及び同審判の対象とすることができます。
⑥ 第三に、相続開始前に出金された預貯金(使途不明金)は1.の要件を満たさず、相続開始後に出金された預貯金(同)は2.の要件を欠きますが、相続人全員が合意すれば遺産分割調停及び同審判で対象とすることができます。
⑦ なお、後者に関しては、平成30年相続法改正により、相続開始後かつ遺産分割前に財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意があれば、その遺産を遺産分割の対象とすることができ、共同相続人が財産処分をした場合には、その共同相続人の同意は不要とされました。
⑧ 第四に、相続開始前の相続債務や相続開始後の葬儀費用や遺産管理費用は、遺産分割調停の中で負担割合を協議することはできますが、1.から3.までの要件を満たさないので、遺産分割審判で対象とすることはできません。
⑨ 最後に、遺産の一部についての遺産分割も有効です。したがって、遺産性に争いのある部分や引き取り手のない遺産(山林・農地など)は、遺産分割の対象から外すことができます。

【4】遺産分割調停の申立てについての注意

① まず、相談例のように、多数の相続人(相手方)がいる場合は、申立前に、相続人間で相続分の譲渡(民法905条1項)や相続分の放棄を試み、当事者の人数を減らしておくべきです。
② もっとも、1.相続分の譲渡や相続分の放棄は「相続放棄」とは違い、譲渡者・放棄者は相続債務を免れないこと、2.相続分の譲渡は相続人以外に対しても行えること、3.相続分の譲渡や放棄は印鑑証明書を付した家庭裁判所所定の書面によること、4.相続分の譲渡や放棄には遡及効がないこと、5.相続分の譲渡や放棄後に遺産分割が成立する場合、司法書士に相続登記手続の方法を確認する必要があること、6.相続分の譲渡や放棄により対価を得た場合には相続税が課税されること、7.遺産分割調停申し立後に相続分全部を譲渡した当事者は手続きから排除されることなどに注意が必要です。
③ 次に、相続人の中に意思能力に問題がありそうな高齢者がいる場合には、あらかじめ成年後見人を選任してもらっておくべきです。
④ また、被相続人の先代や先死亡した配偶者名義の不動産などが残っていたということもあり、一次相続と二次相続の二軒の遺産分割調停を申し立てることがあります。古い日付の一次相続では法定相続分が異なる場合もありますので(昭和22年5月2日以前に相続開始した場合は家督相続、昭和55年12月31日以前に相続開始した場合は配偶者の相続分が少なくなっています)、相続開始の日付に注意して下さい。

【終活・遺言・相続相談】相談例54 遺産分割と遺産整理

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【相談内容】
相談者(54歳男性)から「3か月前に母(77歳)が亡くなり、相続については相続人である次男(51歳)・長女(50歳)とほぼ合意できた。今後、どのように手続きを進めればよいか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
遺産分割について合意出来たのなら、遺産分割協議書を作成して遺産の処分を始めます。遺産分割協議書は、不動産の所有権移転登記の原因証書となり、預貯金・株式・投資信託の名義変更・解約・売却などに必要な重要書類ですから遺漏ないよう正確に作成する必要があります。遺産の処分手続きも煩雑なことが多いので、双方とも行政書士等士業に任せるのが堅実です。

【1】遺産分割協議書の作成

【1-1】遺産分割協議書の作成

① 遺産分割協議がまとまれば、すべての相続人が署名・捺印して遺産分割協議書を作成します(通常は相続人全員分の遺産分割協議書を作ります)。
② 捺印する印鑑は実印を用い、作成する遺産分割協議書全通に作成日付から発効後3ヶ月以内の印鑑証明書を添付して綴じるようにします。また、契印をお願いします。
③ なお、相続人全員が一堂に会して遺産分割協議書を作成することが困難な場合(相続人が遠隔地に散らばっている場合など)に、一人ずつが署名捺印した同一の内容の遺産分割協議書を全員から集める方法もあります。
④ また、相続人を確定できる戸籍謄本も用意しておき、他の相続人から求められれば写しを差し上げます。
⑤ 平成29年5月29日から、全国の法務局において各種相続手続きに利用することができる法定相続情報証明制度が始まりました。法務局に戸除籍謄本等の束と併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれます。そして、その後の相続手続きには法定相続情報一覧図の写しを利用でき、戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

【1-2】遺産分割協議書作成の注意点

遺産分割協議書を作成する際に見落としがちな点は、以下のとおりです。
① 遺産分割協議成立後に見つかった遺産の処理についての取り決め(包括条項)は忘れずに記載して下さい。実際、遺産分割後に株式配当金や還付金などが明らかになることが少なくありません。
② 相続財産からの果実(相続開始前後の賃料など)の帰属者を誰にするか、相続債務(ローン、医療費、葬儀費用など)を誰が支払うかなども(債権者には対抗できませんが)、遺産分割後に争いになりやすい問題ですので、遺産分割協議書に記載するよう勧めます。譲渡所得税や固定資産税の負担についても同様です。
③ 海外資産、ゴルフ会員権、郷里の山林・田畑など換価困難が予想される遺産は、できる限り、相続人の一人に単独取得してもらうことを勧めます。
④ 令和3年の不動産登記法の改正により、遺産分割から3年以内の所有権移転登記が義務付けられ、過料もあります。したがって、相続人の誰もが欲しがらない不動産でも処分を決めなければなりません。
⑤ 相続土地国庫帰属法によって不要な土地を国庫に帰属させる方法も創設されましたが、要件が厳しく、どのように運用されるかまだ未知数です。したがって、現状では、最も多くの遺産を取得する相続人にそれらの遺産を取得させるしかないと思われます。

【1-3】行政書士の関与

① 相談例では、相続人間の話し合いによって、ほぼ遺産分割の合意ができたとのことですから、その内容をむやみに変更することは差し控えます。ただし、、相続人漏れ、遺産漏れ、名義変更や換価・分配などの手続の確認、課税リスクなどには注意が必要です。
② 遺産分割が成立しても、その後の処理に難渋することが予想されるならば、遺産分割協議書の作成にのみを受任するのではなく、遺産分割の履行(遺産整理)も含めて受任すべきです。

【2】遺産別の相続手続き

【2-1】不動産の所有権移転登記

① 不動産につきましては、遺産分割協議書を原因証書として取得者から所有権移転登記を申請します。ただし、当事者の表示や不動産の特定等に瑕疵がある場合は登記できませんので、遺産分割協議書案の段階で、司法書士に対して記載に問題がないかを照会した方がよいでしょう(未登記や非課税の不動産が抜けていないかも確認しましょう)。

【2-2】預貯金の名義変更・解約払い戻し

① 預貯金について、従前は相続人から法定相続分の預金払い戻し請求ができるとされていましたが、平成28年12月19日最高裁判決により、現在は遺産分割の対象です。したがって、遺産分割により、相続人の一人が単独で預貯金を相続する場合には、遺産分割協議書等を金融機関に提示して名義変更を求めます。
② また、遺産分割で預貯金を解約して払戻金を分配すると決めた場合も、同様の手続によります(遺産分割協議書に代えて、代表相続人の届を提出して解約する方法もあります)。

【2-3】株式・投資信託

① 株式・投資信託なども、遺産分割協議書などを提示してそれを取得する相続人に名義変更しますが、売却換価した代金を分配する場合(清算型)には、以下の注意が必要です。
② まず、株式等の共有もあり得ますが、手続が複雑になるので推奨はできません。したがって、相続人の一人が代表相続人として名義変更し、代表相続人が売却を指示する方法をとります。
③ もっとも、代表相続人がその金融機関に口座を持っていなければ、新規に口座を開設しなければなりません。また、株式等は値段が上下して損益が出ますので、遺産分割で代表相続人に名義移転した場合には直ちに売却するよう取り決めておきます。

【3】遺産分割の履行(遺産整理)

【3-1】遺産整理

① 「遺産整理」とは、成立した遺産分割に従って遺産を処分することです。もともと遺産整理という法律用語はなく、金融機関が遺言信託に基づかない(遺言がない)場合に相続手続きを代行する商品(サービス)を表すものとしてこの名称が用いられてきました。
② 遺産分割成立後の手続は前述のとおりですが、煩雑で手間がかかります。特に、不動産や株式・投資信託等を売却し、あるいは預貯金を解約し、払い戻して、その結果得られた金員を相続人間で分配(清算)するとの内容を含む場合、その処理に当たる代表相続人を選ぶのが原則ですが、代表相続人に何らかの障害が生じると手続きがストップします(放置・延滞リスク)。
③ そして、そのまま時間が経過して、その間に遺産分割協議書や印鑑証明書の原本を紛失すれば、再度これらの書類を徴求しなければならなくなります(保管リスク)が、遺産分割の内容に不満を持つ相続人がいれば、応じてくれるとは限りません(居直りリスク)。
④ さらに、代表相続人が払戻しを受けた預貯金や株式等の売却代金を勝手に費消してしまうリスクもあります(横領リスク)。
⑤ したがって、遺産分割の内容を迅速かつ確実に履行するためには、相続人ではない専門職である第三者の関与(遺産整理受任者の選任)が望ましいと言えます。

【3-2】行政書士による遺産整理

① 金融機関が遺産整理業務を行っていることは前述のとおりですが、行政書士も遺産整理業務の受任者として適任です。

② 弁護士や司法書士も遺産整理業務を行いますが、利益相反にならないように注意が必要です。行政書士はそもそも紛争性がある場合は受任できませんし、誰か一人の相続人の代理人になることもありませんので、権利義務に関する書類の作成とその密接関連付帯業務として遺産整理業務が行政書士法上の業務になります(監督官庁である総務省の正式な解釈です)。
③ 相続人との契約で、行政書士が遺産整理受任者となり、成立した遺産分割に従って遺産を処分すること、換価・売却によって得た遺産は預かり口座で保管し、相続人からの照会に応じること、株式や投資信託は遺産整理受任者名義の口座に移管後直ちに売却すること、不動産売却の方法や期限などを記載します。特に清算型遺産分割では、相続人に安心してもらうためにこうしたルールが必要です。

【終活・遺言・相続相談】相談例53 不動産の相続

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例53 不動産の相続についての記事です。

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【相談内容】
相談者(60歳男性)から、「半年前に母(85歳)が亡くなり、長男の私と次男(56歳)、三男(53歳)の3人が相続人となった。遺産としては、母が住んでいた自宅くらいしかない。ずっと独身の三男は、1年前から自宅に居候していて、「母から頼まれたから、自宅は俺が相続する」と言って言うことを聞かない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
不動産が遺産に占める割合は4割を超えるといわれ、遺産分割でもかなりの割合で不動産の評価と分割方法が問題になります。特に、被相続人の自宅が遺産のほとんどを占め、しかも相続人が居住している場合には、自宅を誰が相続するかで意見対立が生じやすくなります。

【1】不動産の遺産分割の方法

一般に、不動産の分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割があります。

【1-1】現物分割

① 現物分割は、遺産中に複数の不動産がある場合に複数の相続人が別々の不動産を取得する分割方法です。兄が3000万円のA不動産を取得し、弟が6000万円のB不動産を取得し、その差額を調整するため、弟が兄に代償金1500万円を支払うというように、代償分割と組み合わせて行なわれることが多いです。
② なお、相続不動産が自宅兼テナントビルの1棟だけという場合、兄が1階から3階部分の区分所有権を取得し、弟が4、5階の区分所有権を取得するといった現物分割の方法もありますが、後々、その建物の権利でもめます(たとえば、雨漏りの修繕やエレベータの保守点検など共有部の管理費で対立します)。
③ したがって、現物分割でうまくいくのは、相続人の数に応じた独立の不動産がある場合になります。

【1-2】代償分割

① 代償分割は、相続人の一人が遺産である不動産を相続し、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。相続不動産は取得者の単独所有となるので後顧の憂いはありませんが、代償金の金額(不動産の評価)をめぐって対立しやすく、また、取得者に代償金を支払うだけの資力や信用がなければ成立しません。
② なお、相続不動産を取得する相続人が、代償金の支払に代えて自己所有不動産や持分を他の相続人に譲渡する場合には譲渡所得税を課税されることがあるので、等価交換の特例を検討します(税理士への相談は不可欠です)。

【1-3】換価分割

① 換価分割は、相続不動産を売却して、その代金を相続人間で分配する方法です。市場で売却するため代償分割と比べて不動産の評価については問題が起こりにくく、相続人間の関係を公平に清算できる点で理想的です。
② ただし、当該不動産の承継に固執する(売却に反対する)相続人がいれば、この方法では解決できません。
③ また、換価分割では不動産を処分するため、相続税の他に譲渡所得税が課税されます。したがって、換価分割による代金を得る場合は、代償分割で代償金を得る場合と比べると、譲渡所得税が課税される分だけ手取り額が下がるという短所があります。
④ 換価分割の具体的方法についても注意が必要です。たとえば、3人の子が換価分割する場合、持分3分の1ずつの所有権移転登記を経由し、3人が売主となって不動産を売却することになるのが原則です。
⑤ しかし、遠方居住の子がいる等の事情により、手続を簡略化するために、一人の子の単独名義で登記した上で、その名義人が不動産を売却して、他の相続人に分配金を支払うという方法が採られることが少なくありません。
⑥ しかし、思ったような金額で売れず、もう少し、もう少しと躊躇しているうちに長期間が経過することがあります。ところが、ようやく不動産を売却した後、名義人(売主)の子にだけ譲渡所得税が課税され、分配金の支払いを受けた他の子には贈与税が課税される可能性があります。
⑦ これを避けるためには、遺産分割協議書の中で、名義人の子はあくまで換価分割のために不動産を単独取得し、その後売却して代金を分配することが明らかになるように記載する必要があります。また、相続人間では、売却の時期や値段もはっきりと決めておくべきでしょう。

【1-4】共有分割

① 共有分割では、遺産分割協議の結果、各相続人が不動産の共有持分を取得する分割方法です(各相続人の持分が法定相続分通りとか限りません)。
② 遺産分割が成立しなくても、相続不動産は各相続人の共有に属しますから、遺産分割での不動産の共有分割は問題の先送りに過ぎないと思えます。
③ しかし、遺産に関しては分割の方法や分割の禁止が定められていますので、相続人が遺産の分割を求めるためにはまず遺産分割によるべきであり、いきなり共有物の分割請求(民法256条、258条)を求めることはできないと解され、令和3年民法改正でも、相続財産に属する共有物の分割は遺産分割によるのが原則で、民法258条による分割請求ができないことが確認されました(改正民法258条の2第1項)。したがって、共有分割の遺産分割は、共有物の分割請求の条件を整える必要があります。
④ したがって、延々と時間をかけて遺産分割協議や遺産分割調停を続けるよりは、法定相続分通りで相続不動産を共有分割してしまい、その後の共有物分割請求訴訟で分割を求める方が早道になる可能性があります。
⑤ 共有物分割請求訴訟においては、競売や任意売却による処分も考えられますし、全面的価格賠償の判決を得て、適切な相続人が相続不動産の所有権を手に入れることができるかもしれません。

【2】自宅の処分

① 相談例の場合、複数の不動産はないので、現物分割は不適です。三男が自宅の承継に固執するなら、相談者と次男は、三男に対して代償金を支払うよう求めることになりますが(代償分割)、三男の資力が乏しければそれも期待できません。三男が「自宅を退去しない」「絶対に売らない」と主張する以上、換価分割もできません。
② このような場合、相談者としては、遺産分割調停を申立て、調停委員会による三男の説得を期待しますが、三男が(共有分割も含めて)自宅の処分に同意しなければ、調停の成立は期待できません。
③ したがって、調停は不成立として遺産分割審判に移行してもらい、遺産の競売や任意売却による換価(家事事件手続法194条)又は代償分割(同法195条)の審判を期待することになります。なお、換価分割ですら相当でない場合は共有分割の審判が下されることもあるようです。

【3】譲渡所得税

① 遺産を処分する場合(換価分割や清算型遺言など)には、譲渡所得税が問題になります。譲渡所得税とは不動産などの資産を売ったときの譲渡所得(譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除)に対して、事業所得や給与所得とは分離して課税される(分離課税)所得税の一種です。
② その税額に関しては、譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として所得税15%、住民税5%及び復興特別所得税2.1%(計22.1%)が課せられ、所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得として、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税2.1%(計41.1%)が課税されます。
③ 例えば、亡母が昭和62年に6500万円で買った不動産を相続し、令和3年に5000万円で売却した場合には、譲渡価格<取得費ですから、課税すべき譲渡所得がなく、譲渡所得税はかからないはずです。ところが、取得費の金額を証明するためには昭和62年当時の売買契約書等が必要で、契約書等によって取得費を証明できないときは、取得費は譲渡価格の5%(250万円)しか認められません。そうすると(5000万円-250万円)×0.221(長期譲渡)=10,497,500円の譲渡所得税が課税されます。
④ 便宜上、ここでは復興特別消費税や特別控除、減価償却を無視していますが、いずれにしろ、30年前の売買契約書などがあるかないかによって、換価による手取り額にはかなりの差が出るのです。
⑤ ちなみに、譲渡所得税の申告期間は譲渡日の翌年の2/16から3/15ですから、令和4年2月に相続不動産を売却したら、申告期限を過ぎた場合、令和5年の初夏に税務署から「譲渡所得」に関する問い合わせのお手紙が来ます。
⑥ なお、税務面としては、そのほかにも、居住用財産の特例など各種特例の適用の可否、遺産分割に関する士業報酬を譲渡費用として控除できるかなどの問題もあります。最初から税理士の相談することが大切で、いつでも相談できる税理士を探しておくことが大事になってきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例52 一次相続と二次相続

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【相談内容】
相談者(52歳男性)から、「父親(84歳)が死去し、遺言はなかったが、母(83歳)がすべての遺産を相続するといっている。子は兄(長男54歳)と私(次男)の2人だけだが、兄はすでに母の意見に賛成した。ここは私も譲って、母の言う通りにした方がいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
夫婦の片方が亡くなった場合(一次相続)、他方配偶者が全財産を相続するケースが多く見受けられます。しかし、複数の子がいる場合に、他方配偶者も死亡した場合(二次相続)のことを考えると、諸手を挙げて賛成できるわけではありません。今後、どのような問題が生じるかを想像して、一時相続でもそれなりの遺産分割を行うことを勧めます。

【1】配偶者の不安

① 高齢でも夫婦そろっていれば、愚痴や不満を口にしながらも自然と助け合って生活しているものですが、片方が亡くなると、残された配偶者は一気に不安になります。
② そして「お父さんの財産は、2人で築き上げてきたものだから、私がもらう」といった言い分で遺産の単独取得にこだわりがちです。なお、一人っ子の場合には、残された配偶者と子の関係がよほど悪くなければ親子2人だけで話合えることなので、大きな問題になることは稀です。

【2】子らの思惑

① 高齢の親世代と子世代の間には、経済的格差が生じており、40代から60代にかけての子世代は、教育資金で財産が減り、年金の受給年齢も気になるところです。資産を増やす方法といっても、退職金を除けば、株式投資や暗号資産などリスク性向の高いものか宝くじ以外に見当たりません。
② ですから、子らも、一時相続の際にいくばくかの財産を相続させてほしいというのが正直な気持ちです。しかし、複数の子がいる場合には、お互いに相手の出方を見てしまいますし、自分だけが反対して母の機嫌を損ねたくないという迷いが生まれます。
③ 下手に権利を主張して母の介護を任されても困ると思うかもしれません。そうして、二次相続の際には法定相続分をもらえるはずだからと考え直して、母の言い分を認める流れになりがちです。

【3】一次相続で配偶者に相続財産を集中させることの問題点

① 遺産を配偶者に集中させると以下のような問題を生じます。
② 一次相続において遺産の取得を我慢した子らは、二次相続では、必ず、相応のものを相続したいと考えます。
③ したがって、父の遺産を吸収した母の財産の目減りが気になりますし、ほかの兄弟も母の財産を狙っているのではないかと疑心暗鬼になりがちです。
④ 自分以外の兄弟が母と同居をし始めたと聞くと、親を取り込まれたと感じ、知らないうちに遺言書を作成されて自分は相続から外されるのではないかと不安に思います。そうして、後見開始の申立て、親の取り合いや遺言書の書かせ合いなどに発展することもあります。
⑤ 母が死亡すれば(二次相続)、もう気を遣うべき親は存在しませんから、子らは、相続人としての権利を主張します。遺言書があっても、遺言無効を主張し、遺産分割になれば特別受益や寄与分を主張して紛糾する可能性が高くなります。
⑥ そうした紛争リスクを減らす方法の一つは、一次相続でも子らに相応の遺産を分配しておくことです。

【4】配偶者税額軽減のフル活用

① 配偶者が遺産を総取りする理由として、配偶者税額軽減を利用できるからとよく言われます。そこで、その合理性を検討してみます。

【4-1】一次相続での相続税の課税

① 例えば、遺産が1億6000万円で、妻、長男、次男の3人が相続人だとします。
② 簡略化(負債などなし、各種特例もなし)して計算しますと、課税相続財産は1億1200万円。
③ 法定相続分に応じた各相続人の負担額は、妻が980万円、子らは370万円となります。
④ 相続税の総額は、1720万円で、これを法定相続分通りで遺産分割すれば、長男と次男は430万円の税額になります。
⑤ 妻は、配偶者税額軽減により、課税されません。
⑥ これに対して、被相続人の妻が遺産全部を相続するなら、長男と次男は相続税は0円となり、妻も、相続税は0円です。
⑦ したがってこの時点で課税されませんから「せっかくお父さんが貯めた遺産を税金に取られるのはもったいない」という目的を果たしたことになります。

【4-2】二次相続での相続税の課税

① しかし、二次相続迄考えると、合計の税負担は増える可能性があります。
② 前述の例で、一次相続では法定相続分通りに遺産分割し、その直後に母が他界した(二次相続)としましょう。そして母にはもともと1億円の固有財産があったと仮定します(母の遺産は1億8000万円)。
③ 子の母の遺産を二人の子が相続すると、課税相続財産は、1億3800万円。法定相続分に応じた相続税額は各1370万円になります。
④ 相続税の総額は2740万円となり、二人の子らは、一次相続と二次相続を併せて3600万円の相続税負担をすることになります。
⑤ これに対し、一次相続では母が遺産を単独相続していた場合(母の遺産は2億6000万円)、課税相続財産は2億1800万円、法定相続人の法定相続分に応じた各相続人の相続税額は2660万円となり、相続税額の総額は5320万円となります。
⑥ そうすると、一次相続こそ相続税が課税されずに済みましたが、二次相続では5320万円の相続税を負担することになり、一次相続で法定相続分通りに相続した場合に比べると、1720万円多く相続税がかかることになります。

【4-3】数字のトリック

① 以上の試算は、もちろん仮定に仮定を重ねたものです。母の固定資産は5000万円かもしれませんし、2億円かもしれません。83歳の母の平均余命は約10年ですが、その間、介護付き有料老人ホームに入所していれば、その費用だけで優に3000万円以上の出ていくことになるでしょう。
② このように考えてみると、一次相続で母に遺産を集中させることは、母の財産が少なく、母が高額の施設に入所して長生きする場合には節税に寄与します。
③ 逆に、母の蓄えが多く、早くお亡くなりになる(又は倹約する)と想定すれば、より高額の相続税を招く可能性があるのです。
④ したがって、配偶者税額軽減をフルに活用できることは、二次相続での紛争のリスクを冒してまで配偶者が遺産を全部取得する決定的な理由にはなりません。

[終活・遺言・相続相談]相談例51 非同居の子からの遺産分割協議の相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例51 非同居の子からの遺産分割協議の相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(64歳女性)から、「郷里の父(91歳)と母(90歳)は2年前に別々の施設に入ったが、8か月前に父が肺炎で亡くなった。ずっと両親と同居していた兄(66歳)が「後のことは俺がする」というので任せていたが、最近、兄から「母も同意している。すぐに遺産分割協議書に署名捺印して印鑑証明書と一緒に送り返してくれ」という手紙が届いた。どうすればいいか」と相談された。

【検討すべき点】
非同居の子からの相談です。(遺言書ははなかったものとします。)兄が求めている遺産分割協議書の案が納得できるなら兄の言うとおりにすればいいでしょうが、遺産の内容がはっきりしていなかったり、内容が不合理なら遺産分割を急ぐ必要はありません。

【1】非同居の子の立場

① このブログでは、親と同居している子は、非同居の子から「親に寄生している」と疑われがちだと説明してきました。しかし、非同居の子が常にそう考えるわけではありません。
② たとえば、この相談例で、相談者が進学を機に18歳で郷里を出たのに対して、兄は地元で就職して両親と同居し、その妻とともに、20年近く両親の世話をしてきたといった事情があるとしたら、相談者は「親の面倒を見てもらって申し訳ない」という気持ちかもしれません。
③ また、相談者も義理の両親の介護をしていれば、兄夫婦のたいへんさはよく理解できるでしょう。そうすると母に余計な心配を掛けさせたくないし、兄が全部やってくれているのなら、兄に従おうという気持ちになっていたとしても不思議ではありません。
④ つまり、遺産分割協議書とはどういうものなのか分からないので、質問しに来ただけという可能性もあります。したがって弁護士は、相談者の率直な気持ちを伺うべきですし、相談者が気乗りしないようなら、遺産分割協事件として依頼を勧めるのは不適切です。

【2】提案内容の検討

① 相談者が兄が作成した遺産分割協議書等を持参していれば、その内容を拝見します。父の遺産は全て母が取得するとか、自宅不動産は兄が相続し、預貯金は母と兄と相談者が法定相続分どおりに分けるといった内容であれば、それなりに合理的です。
② 逆に、兄が父の遺産のほぼすべてを相続するという内容で、預貯金額なども含めて遺産の評価が一切わからないという場合は問題です。仮に、相談者は自分は相続しなくても良いと考えていたとしても、「どのくらい譲ったかは知っておきたい」というのが人情でしょう。
③ もちろん、相談者が兄による財産の費消を疑っている場合なら、積極的に遺産の内容や評価について説明を求めるべきです。

【3】署名押印を急がされる場合

① 相談例のように、相続開始10ヶ月の相続税申告・納付の期限が迫ってから、いきなり、遺産分割協議書への署名捺印と印鑑証明書の交付を求められ、「すぐに遺産分割しなければ(配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用を受けられず)、莫大な相続税がかかることになる」と迫られることがあります。
② しかし、相続税の申告納付期限までに遺産分割が成立しなければ、未分割の申告をすれば足ります。
③ たしかに、未分割の申告では、相続人は、配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用がないことを前提に計算された、相続税をいったんの納税しなければなりませんが、本来の申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立すれば、更正の請求をして、それらの特例の適用を受けることができます。
④ ですから、当面の納税資金を用意出来る限り、慌てる必要はありません。
⑤ また、同居の子から「節税のため、とりあえず遺産分割協議書に署名捺印してくれ。後で遺産分割協議をやり直せばいいから」と頼まれることもあります。しかし、遺産分割協議のやり直しができる保証はありませんので、このような申出には従うべきではありません。
⑥ 時折、節税目的と称して強要された遺産分割協議は無効だという訴訟を目にしますが、印鑑証明書をつけて遺産分割協議書に自署している限り、その効果を覆すのは極めて困難です。
⑦ なお、遺産分割協議をやり直した場合には、税務署から2回目の遺産分割協議による財産取得を贈与と認定され、贈与税が課税される可能性が非常に高くなります。
⑧ さらに、同居の子から、「母の相続ではお前の言い分を聞くから、父の相続は俺に任せてくれ」と言われることもありますが、父の相続(一次相続)で譲った分を母の相続(二次相続)で取り返せるわけだはありません。

【4】弁護士への委任

① 相談者が兄の要請に納得がいかないなら、遺産を調査して兄と交渉すべきです。遺産の調査は行政書士がお手伝いすることは可能ですが、代理人としての交渉は弁護士の独占業務になります。
② ただし、施設入所の90歳の母の意思能力が十分ではない場合には、問題が複雑になります。
③ 相談者と兄が同意し、母も積極的に反対の意思表示をしないなら、亡父の相続人3人による遺産分割が成立するでしょう。母の推定相続人である兄も相談者も母の意思能力の欠缺を争わないため、結果的にそれが問題にならないからです。
④ しかし、弁護士が代理人として関与し、意思能力がない当事者がいることを知りながら遺産分割を成立させることは勧められませんので、原則として、母の後見開始の申立てをさせることになると思います。
⑤ 後見開始の審判が出ると後見人が母に代わり、遺産分割協議に参加します。その場合、家庭裁判所は母の相続分については、常に法定相続分の確保を求めてきます。結果、兄や相談者の思い描くような遺産分割ができなくなる可能性が高くなります。

【終活・遺言・相続相談】相談例50 同居の子からの遺産分割協議の相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例50 同居の子からの遺産分割協議の相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(50歳男性)から、「同居していた母が2週間前に脳梗塞で亡くなり、葬儀を終えました。相続人は自分と弟(48歳)だが、葬儀後、弟とは連絡を取っていない。弟とはもめたくないが、どのように相続の話を切り出せばよいか」と相談された。

【検討すべき点】
最初に確認したいのは、遺言の有無ですが、今回は遺言がなかったものとして考えます。被相続人と同居していた相続人は、早めに相続財産目録を作成し、その他の相続人に提示して遺産分割協議を呼びかけるべきです。完全な相続財産目録が作れなかったとしても、遺産分割に積極的な姿勢を示すことで円満な遺産分割協議を期待できます。

【1】同居の子の立場

① 同居の子である相談者が、かいがいしく母の世話をしたという事情があるなら、相談者としては「長男としてするべきことはした」との思いがあるはずである。また、高度の認知症や長患いにより、配偶者ともども介護に苦労したのなら、「弟には感謝してもらいたい」と思うかもしれません。
② しかし、事情をよく知らない非同居の子からは、親の財産を取り込んでいるのではないかと疑われるかもしれません。そして、相続開始後、適切な時期に同居の子が遺産の開示や遺産分割協議の働きかけをしなければ、非同居の子は、遺産について明らかにできない事情があるのではないかと勘繰りますし、一度その疑いが生じれば、膨らむことはあっても、萎むことはありません。
③ したがって、同居の子である相談者は、あらぬ疑いを避けるためにも、迅速に相続財産目録を作成して非同居の子(弟)に報告するべきです。
④ なお、自分の財産をしっかりと抱え込み、同居の子に対してさえ内容を教えないまま亡くなる方もいますが、その場合には相談例49の方法で遺産を調査します。

【2】相続財産目録の作成

① 相談者があらかじめ亡母から財産の詳細を知らされていたのなら、早速、相続財産目録を作成します。目録を作成する場合には、遺産を特定するだけではなく、その経済的価値がわかる資料も添えられれば、なおよいでしょう。そうすれば、相談者が隠し事をしていないことが伝わりますし、取り分の期待値も早目に明らかになって、紛糾する可能性が下がるからです。
② たとえば、不動産については、全部事項証明書や固定資産税などの請求書兼納付書又は固定資産評価証明書の写しを添付します。預貯金については、死亡日前後まで記帳された通帳の写しや死亡日現在の残高証明書を添付します。
③ 財布の中の現金は概算で足りますが、0円というのはいただけません。株式・投資信託等については金融機関から届いている取引明細書を添付しておけば足りるでしょう。動産(自動車や貴金属等)については、どの程度の値段で換価できるか不明ですから、評価額を記載しない方法もあります。
④ もっとも、相続財産目録は迅速に交付すべきで、完璧を期す必要はありません。更に調査中の遺産があり、修正する予定があるなら、その旨を付記するようにします。

【3】税理士の関与

① 相続税の申告を税理士に依頼するなら、税理士が作成してくれる税額計算書(案)を相続財産目録に代えても構いません。ただし、それを入手するには時間がかかりますので、あらかじめ、他の相続人に、税理士に依頼していることを伝えておくべきです。
② 被相続人が生前に申告を頼んでいた税理士であれば、遺産の内容を把握しているでしょうし、税理士にとっても相続人全員から相続税申告業務の代理を受けた方が合理的です。相続人同士の緩衝材としての役割を税理士に期待することもできるでしょう。
③ 調査の過程で、生前贈与や名義預金の問題が出てきた場合には、税理士の関与が不可欠と言えます。

【4】遺産分割協議の申出

① 相談者としては、四十九日の法要から相続開始後3ヶ月くらいの時期までには、相続財産目録とともに遺産分割の案を示して協議を申し出るべきでしょう。
② 通夜や葬儀の席で相続の話を切り出すのはいささか非常識ですし、しかしながら、相続人を待たせるわけにもいかないからです。

【5】遺産分割事件

① 相談者が相続財産目録を作成して遺産分割案を示しても、弟が納得しなければhな試合を行いますが、それでもまとまらない場合には、弁護士に依頼していただくことになります。
② なお、相談者の「もめたくない」を額面通りに受け取るのは危険です。というのも、自分たち夫婦は最後まで母の在宅介護に追われていたのだから、多めにもらっても当然だが、「もめたくない」という意味の場合や、すでに十分な生前贈与を受けているので、「もめたくない」という場合もあるからです(特に生前贈与は隠されている傾向にあります)。
③ このような場合は、「もめて当然」ですので、早い段階で弁護士に依頼することが必要になってきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例49 遺産の調査

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(61歳女性)から「1か月前に施設に入っていた母(89歳)が他界した。施設に入る前に母と同居していた弟(58歳)からは何の報告もない。弟に知られずに、母の遺産を知る方法はないだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
相続が開始した場合、被相続人と同居していなかった相続人から、「同居していた相続人が明らかにしてくれない遺産を調査したい」と相談されることはよくあります。相談者自身でできる遺産調査方法を説明しますが、できれば、同居の相続人から任意に開示してもらうよう勧めます。

【1】不動産の調査

① 被相続人名義の不動産については、相談者も存在を把握している可能性が高いでしょう。その場合には、その不動産の全部事項証明書や固定資産税評価証明書を入手し、さらに非課税の不動産を含めて漏れがないよう非課税込みで名寄帳を取り寄せるよう勧めます。
② 被相続人から他の相続人に対して自宅購入資金を提供した可能性がある場合(特別受益)には、被相続人がその不動産の共有持分を持っている可能性がありますので、その不動産の全部事項証明書も入手します。
③ 土地の評価については、固定資産税の評価額のほかに、国税庁の路線価図・評価倍率表で路線価を確認します。固定資産税評価額は実勢価格の7割、路線価は実勢価格の8割とされているので、固定資産税評価額を0.7で、路線価を0.8で割り戻せば、おおよその実勢価格が把握できます。
④ 遺産分割では不動産の評価が問題になるので、固定資産税評価額、路線価、おおよその実勢価格を早めに把握することには意味があります。

【2】預貯金の調査

① 預貯金・株式・投資信託等については、思い当る金融機関に出向き、除籍謄本や戸籍謄本によって相続人であることを証明し、相続開始時の残高証明書と現在までの取引履歴(通常は10年間の履歴、解約済み口座を含む)を取得します(株式等については、株式会社証券保管振替機構に対して必要書類を郵送して照会します)。
② 金融機関への照会の際には、名寄せや全店検索も要請します。これらの作業は相続人本人に行なっていただくほうが簡便ですが、二度手間にならないように、行政書士や弁護士等が代理人として、調査した方がよいかもしれません。
③ 開示された銀行口座の取引履歴に、電気・ガス・水道・電話・NHK・保険料・介護施設利用料・固定資産税・住民税等の引落や、年金の受給履歴がない場合は、ほかに口座がある可能性が高いので、被相続人の生活圏にある別の金融機関に調査の範囲を広げます。
④ 特に、高齢者は郵便貯金や農協を利用していることが多いので、ゆうちょ銀行とJAバンクへの照会は必須です。ただし、ネット銀行・ネット証券・暗号資産(仮想通貨)等の遺産は、被相続人のスマートフォンやパソコンを調べないと判明しないことがあります。
⑤  このような方法で得られた取引履歴の中で、母がかくしゃくとしていた頃に、多額の出金があった場合には、他の相続人への生前贈与(特別受益)の可能性があります。また、母が自分の財産を管理できなくなってから以降に、ATMで数度に分けて不自然な出金があれば、不正出金(使途不明金)の可能性があります。
⑥ なお、相続開始直前の出金も、それが葬儀費用等として通常予想される額を超えていれば、同様に、遺産性が問題になることがあります。

【3】名義預金・現金・動産等の調査

① 現金(預金口座から出金されたもの)、動産(貴金属・時計や高価な服飾品など)、名義預金(被相続人が管理していた親族名義の預貯金口座)は、通例、士業による調査でも判明しません。ただし、自宅の金庫や貸金庫に、現金、金等のインゴット、証券、預金証書、親族名義の通帳などが保管されていることがありますので、それらの開扉の際には必ず立ち会うべきです。
② なお、弁護士や士業に依頼したり、遺産分割調停を申立てれば(家庭裁判所に頼めば)、隠された遺産が明らかになるはずだと期待される方がいますが、その可能性はほぼありませんので、調査には限界があります。

【4】相続債務の調査

① 被相続人が負担している相続債務については、残されたクレジットカードや請求書から判明しますが、非同居の相続人にはわかりません。そこで、不動産に抵当権が設定されていないかを確認し、信用情報の開示請求を行って債務を確認します。
② 信用情報機関への情報開示請求は、除籍謄本や被相続人との関係を証明する戸籍謄本等を揃えて郵送にて申請します。信用情報機関は「JICC」「CIC」「KSC」がありますので、それぞれに情報開示請求を行います。

【5】任意開示

① これらの方法でも、遺産の全てを把握するのは困難ですから、被相続人と同居し、手元に預金通帳等の資料があると思われる相続人に任意に遺産を開示してもらうのが、最も効率的です。
② 相談例では、まだ相続開始後1か月であり、弟は遺産を調査中なのかもしれません。そうだとすれば、いきなり、「遺産を開示しろ」というのでは非常に失礼であり、話がこじれます。
③ そこで、同居の相続人に対しては、「介護費・治療費や葬儀費用は払えたのか、一部負担した方がいいのではないか」、「準確定申告の期限(相続開始後4か月以内)が迫っているが大丈夫か」、「相続税の支払い(相続開始後10か月以内)は大丈夫だろうか」、「負債が多いなら相続放棄(相続開始後3ヶ月以内)を検討した方がいいのか」といったことを婉曲に伝え、同居の相続人が自然に遺産を開示するような流れを作ることをお勧めします。その反応を見てから、遺産の調査にかかっても遅くはありません。

【6】その他の方法

① 相続人全員が同一の税理士に相続税申告を依頼した場合、その税理士からの報告によって遺産の内容が判明することがあります。厳密には遺産ではありませんが、相続開始前3年間の生前贈与や生命保険などは相続税の課税対象ですから(相続税法19条)、それが明らかになることもあります。
② 遺言によって指名された遺言執行者からの相続財産目録の交付(民法1011条1項)によって遺産の内容を把握できることもあります。ただし、遺言執行者による相続財産目録は遺言執行の対象財産に限られますので、過度に期待することはできません。
③ 行政書士や弁護士等士業に遺産調査を依頼すれば、行政書士や士業は相続人に代わって上記の手続を行えますし、不動産や遺留分等の評価も調べられます。ただし、行政書士や弁護士等であっても、基本的に相続人の権限以上のことはできませんので、士業による調査でも全容が解明できない可能性があることにご留意ください。

【終活・遺言・相続相談】相談例48 自筆証書遺言がある場合の手続き

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(62歳女性)から、「3か月前に母(92歳)を亡くしたが、母の手書きの遺言書(封筒に入っていたが、封入も封印もないもの)を預かっている。ただ、弟も母に何か書かせていたらしい。どうしたらいいだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
時折、複数の子に請われるまま、高齢の親が複数の自筆証書遺言を書くケースがあり、後日、紛争の原因となります。他の兄弟姉妹の出方をうかがっても意味はありませんので、相談者には淡々と自筆証書遺言の検認を行うよう勧めます。

【1】検認手続き

① 遺言書の保管者は、相続開始を知った後、遅滞なく検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。封印のある場合は家庭裁判所での検認期日まで開封することができません(民法1004条3項)。なお、公正証書遺言と遺言書保管所保管の遺言は、検認は不要です。
② 家庭裁判所に遺言書検認の申立をすると、裁判所は検認の審判期日を定め、遺言者の相続人全員に対して呼出状を発します。相談者には、この手続きを説明し、早めに検認を申立てるよう勧めます。
③ 相談例では弟も自筆証書遺言を保管している可能性があるので、弟に対して、相談者が遺言書を持っていることと検認を請求することを知らせ、もし、弟も遺言書を持っているなら、同じ家庭裁判所に牽引を請求するよう促します。
④ 直接、弟にその書面を見せてもらうことも考えられますが、検認を求める方が堅実です。
なお、検認手続きが終われば、申立人は検認済証明書を付した遺言書をを返してもらい、その他の相続人には、その遺言書を内容とする検認調書の交付を求めることになります。

【2】遺言書の有効性

① 相談者が保管している遺言書は封入も封印もない場合なので、封筒の中の遺言書を見ることができます。そこで、相談者が遺言書を持ってきているなら、中身を拝見して遺言の有効性を確認します。
② この場合、自筆証書遺言ですので、全文自筆、署名捺印、日付等の形式要件と筆跡・印影を確認し、形式的有効性を確認するとともに、検認期日に訊かれることになる作成の状況(日時・場所・同席者・経緯など)や保管の経緯も確認しておきます。
③次に、遺言者の年齢から遺言能力が気になるので、遺言書作成当時に被相続人がどのような状態だったかを確認します。

【3】遺言を見て確認するポイント

① 自筆証書遺言では、形式的要件以外に遺言の内容に問題がある可能性があります。そこで、遺言書を拝見できるのであれば、以下の点をチェックします。
② 第一に、遺言の確定性の点から、相続分の指定か、特定財産の処分が記載されているのか(特定財産承継遺言)、処分文言はどうなっているのか(相続させる遺言か遺贈か、あるいは取得させる、承継させる、任せるなど)、遺族なら特定遺贈なのか包括遺贈なのか割合的包括遺贈か、一部遺言でないか、予備的遺言や条件付遺言ではないか、などを確認します。
③ 第二に、履行の確保の観点から、遺言執行者を指定しているかどうかなどを確認します。
④ 第三に、その遺言が共同相続人に公平なものか、また、遺留分侵害していないかを考えます。その他、自筆証書遺言では、遺言書の文言があいまいで、遺言者の意思が確定できないときがあります。そのよう場合には、相談者に質問しながら、遺言の解釈によって遺言内容を確定できる可能性があるかを考えます。

【4】複数の遺言

① 複数の遺言がある場合には、後の遺言が優先します(民法1023条1項)。
ただし、弟が母に書かせたらしいという書面がなにか、相談時点で明らかになっていません。そもそも認知症が進むなどして判断能力が低下している高齢者は、以前に遺言書を書いたことを忘れたり、目の前にいる人の言いなりになって遺言書を書いたりします。
② また、日記やチラシの裏に遺言めいたことを書くこともあります。したがって、検認によって、弟が持っている書面の形式と内容を確認する必要があります。
③ なお、家庭裁判所は、遺言らしい書面であれば検認しますから、検認を受けたからといって、その書面が遺言であるということにはなりません。また、弟が保管している書面が有効な遺言だったとしても、双方の遺言の内容が重複、抵触しない場合もあり、その場合には前の遺言も、その全部又は一部が有効になる可能性があります。

【5】遺言と遺産分割協議

① 遺言があっても、その内容を知ったうえで、相続人と受遺者の全員が遺産分割に合意した場合には、その遺産分割協議が有効になると解されます。ですから、遺言の内容が当事者全員にとって不合理なものであれば、改めて遺産分割協議をすることも可能です。
② 相談例の場合、姉(相談者)と弟の関係性が不明ですが、お互いに遺言書を持っているような場合には、警戒あるいは忖度して処理が遅れがちになります。
そして、それが相続紛争の遠因になる可能性もありますから、早めに検認手続きを勧めます。