【相続・遺言について】相続人とならないケース

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、様々なケースにおける相続人の該当性について考えてみたいと思います。

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【Q】親に対し、長年にわたって暴力をふるってきた子でも、親の遺産を相続することができるのでしょうか?法律上相続人となる者であれば、どのようなケースでも相続することができるのでしょうか?

 

【A】◆はじめに

相続が開始した場合に相続人になるべき者(推定相続人)であれば、どのようなケースでも被相続人の遺産を相続できるわけではありません。推定相続人は、相続放棄の場合又は相続欠格・廃除の場合、相続資格を失います。以下、相続欠格・廃除について説明します。

 

◆相続欠格

(1)相続欠格とは、推定相続人が欠格事由に該当する場合に、被相続人の意思を問うことなく、法律上当然に相続資格を失う制度です。

(2)民法は以下の5つの欠格事由を定めています。

①「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」

②「被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。」

③「詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者」

④「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」

⑤「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」

(3)推定相続人が欠格事由に該当する場合、家庭裁判所の審判を要することなく、法律上当然に相続資格を失います。この場合、受遺者の資格も失います。欠格の効果は、特定の被相続人と欠格者との間で相対的に発生するにすぎないと解されます。

 

◆廃除

(1)廃除とは、遺留分を有する推定相続人が廃除事由に該当する場合に、被相続人の意思に基づいて相続資格を失う制度です。

(2)民法は以下の2つの廃除事由を定めています。

①「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき」

②「その他の著しい非行があったとき」

上記廃除事由に該当するためには、一般的に、被相続人と遺留分を有する推定相続人との関係において、人間関係や信頼関係(相続的協同関係)を破壊する程度の客観的に重大な行為であることが必要であるとされています。

(3)被相続人は、生存中に、その住所地の家庭裁判所に対し、推定相続人の廃除の審判を申し立てることができます。(生前廃除)。

また、被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思表示をしたときは、遺言執行者は遺言が効力を生じた後、遅滞なく、相続開始地の家庭裁判所に対し、推定相続人の廃除の審判を申し立てなければなりません(遺言廃除)。

(4)廃除の審判の確定によって、被廃除者は法律上当然に相続資格を失います。もっともこの場合、受遺者の資格は失いません。廃除の効果は、廃除者と被廃除者との間で相対的に発生するにすぎないと解されます。廃除の審判の確定後、原則として申立人は、被廃除者の本籍地又は届出人の所在地の市区町村に推定相続人廃除届をしなければなりません。

(5)被相続人は、いつでも、その住所地の家庭裁判所に対し、廃除取消しの審判を申し立てることができます。被相続人が遺言で廃除取消しの意思表示をしたときは、遺言執行者は遺言が効力を生じた後、遅滞なく、相続開始地の家庭裁判所に対し、廃除取消しの審判を申し立てなければなりません。

 

◆本ケースの検討

(1)まず、本ケースでは、「親に対し、長年にわたって暴力をふるってきた」という内容からすれば、親を殺害する等したために実刑に処せられたという事情まではないものと思われますので、欠格事由に該当せず、相続欠格は認められないと考えられます。

(2)次に、廃除事由に該当するかが問題となります。被相続人に対する暴力について廃除事由に該当するとした裁判例には、推定相続人が暴力を断続的に繰り返してきたこと、推定相続人が被相続人に無断でその多額の貯金の払戻しを受け、現時点で返済の意思がないこと、暴力をやめた後も被相続人の精神障害ないし人格障害をいう主張ないし行動を続けていることなどから、推定相続人は、被相続人に虐待をし、重大な侮辱を加えたほか、著しい非行に及んだものであるといえ、これにより、被相続人と推定相続人の相続的協同関係は破壊されたものと言わざるを得ないから、廃除するのが相当であるとしたもの等があります。

他方で、廃除事由に該当しないとした裁判例には、被相続人が受けた暴行・障害・苦痛は、相続人だけに非があるとは言えず、被相続人にもかなりの責任があるから、その内容・程度と前後の事情を総合すれば、いまだ相続人の相続権を奪うことを正当視する程度に重大なものと評価するに至らず、廃除事由に該当するものとは認められないとしたもの等があります。

以上によれば、長年にわたる暴力であったとしても、そのことから直ちに廃除事由に該当するものとは認められず、暴力に至った原因、暴力を加えた期間の長さ、暴力の内容・程度、暴力以外の事情等を考慮し、被相続人と推定相続人の相続的協同関係を破壊する程度の客観的に重大な行為と言えるかを検討し、廃除事由に該当するか否かを判断することになると考えます。

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