【孤独死をめぐるQ&A】Q53 保険の活用① 親族の受取人がいる場合

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【Q53】一人暮らしで子もいません。親族とは折り合いが悪く、ほぼ付き合いがないのですが、仲の良い甥が一人だけいます。私が死んだら甥が葬儀を挙げてくれると思うので、葬儀費用に充ててもらうために生命保険に加入しておこうと思います。生命保険加入にあたって気を付けることを教えてください。

【A】生命保険は受取人固有の財産になるので、遺産分割協議前でも受給することができ、葬儀費用の準備に適していると考えます。
ただ、保険の場合、支払い条件を満たさなければ受け取ることはできませんので、加入する生命保険で自身のニーズを満たすことができるかをしっかりと検討してから加入して下さい。

【解説】

1 一番親しい人に迷惑をかけるのが相続の本質
① 「一番親しい人に迷惑をかけるのが相続の本質」とい表現されることがあります。
② 葬儀費用については相続開始後に生じた費用ですので、遺産分割の対象になりません。同じく、遺品整理費用についても相続開始後に生じた費用であり遺産分割の対象になりません。
③ 遺品整理費用については、相続財産の処分のために費やしたものなので、遺産分割調停・審判とは別に訴訟提起すれば、他の相続人に求償できる可能性はありますが、遺品整理費用の精算のためだけに訴訟提起をすること自体手間がかかってしまいます。
④ また、相続の負担は出費だけではありません。例えば、預貯金の相続手続のために仕事を休んで金融機関に行ったとしても、その労力や金融機関に行くための有給休暇を取得したという事実上の負担も、裁判所が遺産分割審判の中で調整するということもありません。
⑤ もちろん相続人が全員で同意してくれれば、遺産分割の際に調整するのでしょうが、相続人が同意しない場合、裁判所の遺産分割に関する判断の中で、そのような事情は考慮されないのです。
⑥ 亡くなった後、諸々の手続きをしてくれるのは、一番関係が近かった人だと思います。一番関係が近かった人が費用と労力をかけて手続きをしてくれるにもかかわらず、遺産分割では遺産を相続分に応じて平等に分けることになるので、相対的に見て損をしてしまうことになります。

2 生命保険のメリット
生命保険には以下のようなメリットがあります。
⑴遺産分割の対象にならない
① 生命保険は、受取人固有の財産となるので、民法上の遺産分割の対象となる遺産には含まれません。
② この点、相続税を計算する際には、一定額の控除はあるものの生命保険も遺産に含めて考えます。そのため、生命保険金が、遺産分割の場合も遺産に含まれると勘違いされる方もいますが、相続税法と遺産分割を規定している民法は異なる法律であり、遺産の範囲は異なります。
③ 生命保険金は、受取人固有の財産となるため、葬儀や死後の手続きをする予定の人を受取人にしておけば、遺産分割で相続人に応じて平等に分けたとしても、生命保険金分は多く受け取っていることになるので、1人だけ損をするということがなくなります。

⑵相続放棄をしても受け取れる
① 生命保険金は、受取人固有の財産になるため、相続人が相続放棄をしたとしても受け取ることができます。
② 個人の相続財産に負債が多く、マイナスである場合はもちろんのこと、地方の誰も住まないような不動産しかなく、相続したくないという場合もあります。そのような場合、相続放棄をして負債や不要な資産は引き継がないとしつつ、生命保険金は受領して葬儀などの費用に充てるということができるようになります。

⑶他の相続人の承諾、同意なく受給できる
① 生命保険金は、受取人固有の財産ですので、他の相続人の承諾や同意がなくても受給することが可能です。
② 相続が発生すると、預貯金も遺産分割の対象となります。そのため、金融機関は相続発生を知ると預貯金を凍結し、遺産分割が終わらない限り、原則として引き出せなくなります。
③ 例外的に、各預貯金の口座残高の3分の1に権利行使者の法定相続分をかけた金額(ただし1金融機関あたり、上限額150万円)については遺産分割前でも引き出しが可能です。
④ とはいっても、権利行使者の法定相続分を明らかにするにためには、法定相続人の範囲が明らかになるよう戸籍を集めて金融機関に提出する必要があります。
⑤ 戸籍を集めるのは、時間がかかることもあります。その場合、葬儀や納骨までに預貯金を引き出すことができず、遺族がそれらの費用の立替払いを余儀なくされるということも想定できます。
⑥ これに対し、生命保険金であれば、支払事由に該当したことに疑義がなければ数営業日で受け取ることができますので、葬儀費用の支払や納骨までに資金の準備ができる可能性が高くなります。
⑦ このように生命保険は、亡くなった後のことの諸々をやってくれるであろう親族に対し、直接お金を残すことができる方法ですので、本事例のように、特定の親族だけと仲が良いという場合、遺言と併用して、生命保険の活用も検討するとよいかと思います。

3 生命保険加入の注意点
⑴特別受益に準じた持戻しの可能性
① 生命保険金が受取人固有の財産であり遺産分割の対象にならないとしても、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、民法903条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となります(最二小判平成16年10月29日)。
② 特段の事情の有無については、「保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべき」と判示されています。
③ その後名古屋高裁で、相続財産の総額と生命保険金の総額の比率が61%であった事案で特別受益に準じた持戻しを認めています。単に比率だけで決まるわけではないですが、一つの参考にはなると思います。

⑵保険金不払事由への該当
① 保険は、葬儀費用の準備等に使えます。しかし、あくまで生命保険なので、生命保険の受取要件を満たさない場合には、当然保険金は給付されません。
② よく聞くのが、始期前発病や告知義務違反が疑われるケースのトラブルです。告知義務違反は、加入者の問題もあるので致し方ないとしても始期前発病については、加入者が知らなかったとしても保険金が支払われない可能性があります。
葬儀費用に充てようと生命保険に加入しても、亡くなった原因が生命保険加入前からの持病が原因であったような場合、契約前発病不担保特約により保険金が支給されないケースがあります。
③ 保険加入時には、自身のニーズに合っているかを確認してから加入するようにしてください。

【孤独死をめぐるQ&A】Q38 遺品整理について

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【Q38】一人暮らしのおじが亡くなりました。おじは賃貸物件に住んでおり、大家さんから遺品整理をして居室を開け渡すように言われています。
おじは大した遺産を持っていないので相続放棄をする予定ですが、遺品整理をしてもよいものでしょうか。

【A】相続放棄をする予定の場合、遺品整理は断ってしまった方が無難です。もし、やむを得ず遺品整理をする場合であっても、単純承認とみなされないように注意が必要です。

【解説】

1 遺品の処理方法

① 遺品も動産、つまり財産になります。相続は被相続人のすべての財産を一括して承継する包括承継であり、動産もすべて相続の対象になります。
② そのため、本来的には遺品も遺産分割の対象になり、相続人による合意がない限りは遺品の処理はできません。
③ もっとも、実務上は遺産分割調停や審判において、遺品が遺産分割の対象になることは極めてまれです。というのも、遺産分割調停、審判の対象とするには動産を特定する必要があります。
④ 雑多な遺品については特定性を欠くので遺産分割調停、審判の対象にはできないことが多いのです。
⑤ また、家財道具や生活道具については、財産的な価値に乏しく、かえって処分費用がかかってしまうことが通常です。そのため、骨とう品や宝飾品はともかくとして、それ以外の遺品については、遺産分割の対象とはせずに、形見分けをした後、廃棄してしまうということが一般的かと思います。
⑥ 遺品整理や処分を自身で行うことが大変という場合、遺品整理業者に依頼するという方法もあります。そのことの是非はともかくとして、遺品整理業者の多くは、相続人からの依頼であれば、遺産分割終了前後を問わず、依頼を受けてくれます。

2 遺品整理と相続放棄

① 上述のとおり、遺品は相続財産となります。相続放棄を考えている場合、相続人が遺品整理によって遺品を処分したら、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」(民法921条1号)に当たり、単純承認をしたものとみなされるとも思えます。
② この点について、大判昭和3年7月3日は、被相続人の衣類ではあっても一般に経済的価値を有しているものを形見分けをした時には、それが古来の習慣に基づく近親者に対する形見分けであっても単純承認とみなすとしていました。
③ しかし、東京地方裁判所平成21年9月30日判決は、「民法921条1号の規定にいう「処分」とは、一般的経済価額のある相続財産の法律上又は事実上の現状・性質を変ずる行為のことであり、一般的経済価額のない物の廃棄はもとより、経済的に重要性を欠く形見分けのような行為は、同号の「処分」には当たらないと解するのが相当」と判示したうえで、ノートパソコン、ブラウン管テレビについて、「廃棄したり、あるいは形見分けのような趣旨で自らこれを取得したり第三者に譲渡したりしたとしても、その行為が民法921条1号の「処分」に当たるとまでは認めるに足りない」としました。
④ 他方、東地判平成12年3月21日は、単純承認とみなされる事由の一つである民法921条3号の「隠匿」について「同条3号の規定する相続財産の「隠匿」とは、相続人が被相続人の債権者等にとって相続財産の全部又は一部について、その所在を不明にする行為をいうと解されるところ、相続人間で故人を偲ぶよすがとなる遺品を分配するいわゆる形見分けは含まれないものと解すべきである」としました。
⑤ しかし、毛皮のコート3着とカシミア製のコート3着を含む遺品の全てを持ち帰ったことについて、持ち帰った遺品は「一定の財産的価値を有して」おり、「その持ち帰りの遺品の範囲と量からすると、客観的にみて、いわゆる形見分けを超えるものといわざるを得ない」と判断し、単純承認したとみなしています。
⑥ このことからすれば、一般的経済的な価値がない物を廃棄すること、経済的に重要性を欠く物について形見分けをすること程度であれば、単純承認とはみなされませんが、全ての財産的価値がある動産を持ち帰るようなものは、形見分けの範囲を超えて単純承認とみなされてしまうといえます。

3 遺品整理業者に依頼する際の注意点

① 遺品整理業者に対する支払いを遺産からしてしまうと、故人の遺産を費消したとして単純承認とみなされてしまう可能性があります。そのため、相続放棄をする予定の場合、遺品整理費用は、遺族が負担した方がよいでしょう。
② また、遺品整理業者の多くは、遺品の整理業務や室内の清掃業務とともに古物買取をサービスに組み合わせています。遺品を売却すればその分遺品整理費用が安くなるので、通常は遺族にとってメリットなのですが、相続放棄を予定している場合には注意が必要です。
③ 遺品整理業者に遺品を売却してしまうということは、故人が有していた経済的価値のある動産全てを売却してしまうことになるので、単純承認とみなされてしまう可能性があります。
④ したがって、相続放棄をするつもりなのであれば、廃棄物の処分にとどめ、経済的価値がある動産については処分をせずに保管しておいた方がよいでしょう。
⑤ それでも遺品は整理して欲しいと言われたら、遺品の整理をせざるを得ないでしょう。早期に部屋を引き渡せば、その分賃料も押さえられますので、相続財産の減少を防ぐというメリットもあります。
⑥ 単に廃棄処分するよりも売却可能な動産を適正価格で換価し、その換価金を遺産として取っておく、又は、遺品整理費用に充当し、次順位の相続人又は相続財産管理人に引き継ぐ方が相続財産が保持されます。
⑦ 遺品整理の過程で単なる家財道具や生活用品に処分価値が付いてしまったのであれば、遺品整理の際に売却し換価金を分別管理しておき、債権者からの問い合わせがあった場合には隠匿せずにその旨回答する、相続人が確定したらその相続人に引継ぎ、相続財産管理人が選任された場合には相続財産管理人に遺品の処分内容を報告して換価金を引き継ぐという対応をしている限り、単純承認に当たるとして紛争になる可能性は低いのではと考えられます。

【孤独死をめぐるQ&A】Q22 遺体引取り義務の有無

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【Q22】私が小さいときに両親は離婚しており、父親とはそれから一度も会っていませんでした。
先日、父が孤独死したらしく、警察から遺体を引き取るように連絡が来ました。
父親といっても全く会っていなかったので、遺体を引き取りたくはありません。
とはいえ、子供なことには変わりがないので遺体を引き取らないといけないのでしょうか。

【A】遺体を引き取る義務はないと考えられます。遺体を引き取りたくないのであれば、引取りは拒否できます。

【解説】

1 遺体引取りの連絡

① 自宅で孤独死をした場合、その遺体は警察の霊安室に保管されるのが通常です。
② 警察は、遺体の身元を調査します。親族の居場所、連絡先が分かると、大抵は血縁関係の近い順から遺体の引取りを要請していきます。
③ こうして、一度も会ったことがないような親族に遺体引取りの連絡がくることがあります。
④ 本事例では一度も会ったことがない子としました。子は法定相続人になりますが、この連絡は法定相続人の範囲とは無関係のようで、親族がなかなか見つからない場合、広範囲に連絡が行くようです。
⑤ 過去の事例では、五親等離れた親族に遺体引取りの連絡が来たというケースがありました。民法上、親族の範囲は⑴六親等内の血族、⑵配偶者、⑶三親等内の姻族となっています。
⑥ 五親等であれば民法上は親族の範囲ですが、五親等離れた親戚ですと、一度も会ったこともないということも多いかと思います。

2 相続と遺体引取り義務

① 相続では、相続人が、被相続人が有していた積極的財産、消極的財産を含めて、包括承継します。そして、一度も会っていなくても子である以上は相続人になります。
②そうすると、被相続人の遺体も相続人である子が相続してしまうとも考えられます。
③ しかしながら、遺体はそもそも財産ではなく、相続財産に含まれませんので、相続によって遺体引取り義務が生じるということはないと考えます。

3 扶養義務との関係

① 直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負います。また、特別の事情がある場合には、家庭裁判所の審判により、三親等内の親族間においても扶養の義務が認められることがあります。
② ただ、扶養義務により、意に反して遺体の引取りを強制させられるということはありません。また、そもそも扶養請求権は扶養権利者の一身専属権であるところ、扶養権利者となる親族は死亡していますので、権利を行使する者もいません。
③ 故人の生前、扶養義務を負っていたからといって、遺体を引き取る義務が生じるわけではありません。

4 祭祀承継者との関係

① 最高裁の判例では、遺骨の所有権が慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属するとの高裁判決を是認しています。
② 遺骨の所有権が祭祀主宰者にあるのだとすれば、遺骨になる前段階の遺体の所有権も祭祀主宰者に帰属すると考えてよいかと思います。
③ もっとも、これは遺骨を自身で引き取るべきかという積極的に遺骨を引き取りたい者同士の争いであり、これにより直ちに祭祀承継者が遺体の所有者になるという判断ではありません。
④ 民法897条は、祭祀承継者を被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の判断などにより定めるとしています。
⑤ しかしながら、慣習によれば祭祀承継者となる者であっても、祭祀を執り行うつもりがない者に祭祀を承継させても意味がないことから、祭祀を承継する義務までは発生しないと考えられます。
⑥ したがって、慣習によれば祭祀承継者になるべき者があるからといって、遺体を引き取る義務が生じるわけではないと考えます。

5 結論

① 以上のように、子であっても、遺体を引き取る義務はないと考えられます。
② 過去のケースでも、父親の遺体引取りを拒否したこともあります。
③ 肉親の遺体の引取りを拒否するという判断をするには様々な事情、心情があるかと思います。そのような事情、心情に反して、親族という理由で遺体の引取り義務を課し、そして遺体を引き取ったからには火葬をしなければならないということを強制することはあってはならないと考えます。
④ なお、遺体を引き取っても困窮しており葬儀を挙げられないからという理由で遺体引取りを拒否しようと考えている場合には、葬祭扶助という制度もありますので、利用を検討してみてください。

6 遺体引取義務と火葬、埋葬費用の負担とは別問題

① 遺体を引き取る義務がないということと火葬、埋葬費用をだれが負担するかという点については別問題となります。
② 遺体を引き取る義務がないからといって、直ちに火葬、埋葬費用を負担する義務がないということにはなりません。
③ 市区町村が立て替えた埋葬、火葬費用について、相続人に弁償請求される可能性があります。
④ また、相続人からの弁償がない場合には、死亡した人の扶養義務者が埋葬、火葬費用を負担するとされています(墓地埋葬法9条、行旅病人及行旅死亡人取扱法11条)。
⑤ 遺体の引取り拒否の理由が、心情だけではなく、単に葬儀費用の問題の場合、行政側としては遺体の引取りを拒否しても費用を負担してもらう可能性があることを説明し、引取りをお願いするということを検討しても良いでしょう。

【孤独死をめぐるQ&A】Q20 相続税等について

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【Q20】相続が発生したときは、どのような申告が必要でしょうか。また、相続人が多く、調査が難航しており、一部の相続人との連絡が取れないうちに10か月が経過してしまいそうです。相続人の一部と連絡がつかず、遺産分割協議もできていないのですが、相続税の申告はどうすればよいのでしょうか。

【A】相続が発生した場合、準確定申告、相続税申告が必要となることがあります。
税金については、準確定申告が相続開始を知った日から4か月、相続税が10か月と申立て期限があるので、心配な方はすぐに税理士に相談をした方がよいでしょう。
なお、遺産分割協議ができていなくても申告は可能ですし、他の相続人と連絡がとれていなくても単独で申告が可能です。
孤独死の場合、相続財産が分からず調査に時間を要したり、相続人が多くなりその一部と連絡がつかなかったりという事態は生じやすいといえます。申告期限が近づいてから依頼してもできることが限られてくるため、早めに税理士に相談することをお勧めします。

【解説】

1 準確定申告

① 死亡した人の所得税については、相続人が1月1日から死亡した日までの所得について申告、納付しなければなりません。これを準確定申告といいます。
・ 準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。申告と納税をしなければなりません。
② 準確定申告は、被相続人に所得があった場合のみする必要があるので、所得がない方については申告は不要です。
・準確定申告が必要な主なケースは以下のとおりです。
・会社からの給与収入が2000万円を超えていた場合
・公的年金等による収入が400万円を超えていた場合
・事業所得、不動産所得、一時所得、雑所得など給与所得、退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えていた場合
・2か所以上から給与をもらっていた場合
③ なお、相続人が2人以上いる場合、各相続人等が連署により準確定申告書を提出することになります。ただし、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に申告した内容を通知する必要があります。

2 相続税

1)①相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告、納付をする必要があります。
② 相続税には基礎控除があり、基礎控除を下回る財産しかない場合には、申告は不要です。
・相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。
・例えば、法定相続人が3人いる場合、3,000万円+(600万円×3人)で相続税の基礎控除額は4,800万円となります。
・この場合、遺産の合計額が4,800万円以下であれば相続税の申告と納税をする必要はありません。

2)遺産分割未了の場合
① 遺産分割が未了であっても、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月が経過すれば相続税の申告期限をすぎたことになり、申告をしないと延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。
② そのため、遺産分割未了であっても相続税申告を行わなくてはなりません。この場合、法定相続分で相続したと仮定して申告・納税を行うのが通常です。そして、遺産分割協議が成立したら、改めて修正申告を行い、税額を調整することになります。

3)単独申告
① 相続税の申告は、複数の相続人がいる場合、連名で申告することが多いですが、原則は単独申告です。
② 他の相続人と連絡が取れない場合、単独や連絡が取れている相続人だけで申告をすることが可能です。

4)税理士への相談
① 遺産の評価については時価とは異なりますし、生命保険など遺産分割の対象にはなりませんが相続税の計算には含むものもあります。
② また、相続税は期限に遅れた場合や過少申告となってしまった場合のペナルティも重いので、適切な申告をする必要があります。
③ 相続税がかかりそうな場合には、必ず税理士に相談した方がよいでしょう。

【孤独死をめぐるQ&A】Q19 特別縁故者に対する財産分与

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【Q19】兄弟同然の付き合いをしていたいとこが孤独死したらしく警察から連絡がありました。相続人は誰もおらず、葬儀等も私が行なったのですが、相続人が誰もいない場合、相続財産は国庫に帰属してしまうと聞きました。
いとこには結構な財産があるのに、国庫に帰属してしまうのはもったいないと思いますので、私が特別縁故者として財産分与を受けようと思います。
いとこでも特別縁故者として認められるものでしょうか。また、特別縁故者として財産分与を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか。

【A】いとこというだけで特別縁故者として認められるかは微妙ですが、兄弟同然の付き合いがあったのであれば、特別縁故者として認められる可能性はあります。
特別縁故者として財産分与を申立てたい場合、相続財産清算人が選任され、相続人捜索の公告期間満了後である必要があるので、まず家庭裁判所に対して、相続財産清算人選任申立てをし、時期が来たら特別縁故者に対する財産分与の申立てをするという流れになります。

【解説】

1 特別縁故者に対する財産分与

① 相続人の存否が不明の場合に家庭裁判所により選任された相続財産清算人が被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、家庭裁判所の相続人を捜索するための公告で定められた期間内に相続人である権利を主張する者がなかった場合、被相続人と特別の縁故の有った者は、裁判所に対して、清算後残った相続財産の全部又は一部を分与するように請求することができます。
② 特別縁故者の財産分与請求は、相続と違って当然に発生するものではありません。自身が特別縁故者に当たると考え財産分与を希望する者が、裁判所に対して特別縁故者に対する財産分与の申立てを行い、特別縁故者に当たり、財産分与をするのが相当と認めてもらう必要があります。

2 特別縁故者として認められる者

法は、特別縁故者として、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者を挙げています。
1)被相続人と生計を同じくしていた者
① 同一の家計で生活をしていた者は特別縁故者に当たります。同居をしていればもちろん、仕事や療養などの事情で別居をしていても生活費の負担などをしている場合も、生計が同一と認められる例もあります。内縁関係にある人や事実上の養子などがこれに当たります。

2)被相続人の療養看護に努めた者
① 被相続人の介護や看護をした場合がこれに当たります。ただし、親族の場合、親族として通常なすべきような相互扶助・協力を超えるような寄与、功労が必要という例もあり、単に風邪を引いた時に看病した、入院をした際にお見舞いに行った程度の関わり合いでは認められない可能性もあります。
② 療養看護は病院や老人ホームが行なっていたとしても、周辺部分を行っていれば、療養看護に尽力していたと認められた例もあります。大阪高決の例では、8年間に39回病院に面会に行き、一時外出に付き合ったりしていたという例で特別縁故者と認めています。この例では1年間当たり5回程度であり、シーズンごとに面会に行っていた程度での認定となりました。
③ また対価を得て介護や看護に当たっていた看護師や介護士、家政婦などは原則として特別縁故者には当たりませんが、対価としての報酬以上に献身的に看護に尽くしたとして、付き添い看護婦として雇用されていた者が特別縁故者に認められた例もあります。

3)その他被相続人と特別の縁故があった者
① 上記には該当しないものの、それらと同じくらい密接な関係にあったものをいいます。特別縁故者の範囲は、親族だけではなく、友人や市などの地方公共団体や勤務先などの法人も認められます。
② 関与の程度に応じて分与される財産額が調整される分、関与の程度がそこまで高くなくても特別縁故者として認められるのではと考えられます。特別縁故者に対する財産分与の申立てをして、仮に特別縁故者として認められなかったとしても、もともと分与されない財産ですので、特段損失が生じるわけではありません。一定程度の縁故があるのであれば、諦めずに特別縁故者と主張しても良いのではないかと考えます。
③ 親族関係がある事例
・五親等離れた親族が、故人の生活の援助をしており、1~2年前からは毎月一定額の生活費を仕送りしていたという経済的な援助をしていた事例。
・経済的な援助はしていないが、いとこが幼少期から身近な親族として絶えず交際をしており、死亡後の葬儀、納骨、法要も遺族同様の世話をしていた事例。
④ 親族関係がない事例
・個人の勤務していた会社の代表者が、故人に家屋を購入し、かつ10年以上にわたり故人の家計を援助していた事例。
・教師をしていた故人の元教え子が、50年以上も交流を持ち、医療費の立替えをした事例。
⑤ 地方公共団体
・個人に対し生活保護を実施し、死後に葬祭を行った市が特別縁故者として認められた事例。
・32年間にわたって市立小学校の校務員として勤務し、多くの児童に慕われ、多数の教師とも交流が深いとして市が特別縁故者として認められた事例。
⑥ その他法人
・30年間にわたって個人が勤務していた社会福祉法人が故人の死亡に当たってその葬儀を主宰していた事例。
・個人が無縁墓とならないよう永代供養料を上納した上で往生を遂げたいと希望を述べていたが、突然病に倒れて亡くなったとして菩提寺が特別縁故者として認められた事例。
・殺人未遂事件を起こした個人が出所後、死亡するまでの間、更生保護事業を目的としている公益法人の施設に居住してその援護を受けていた事案で公益法人が特別縁故者として認められた事例。
・身寄りのない故人としては機会があれば世話を受けた老人ホームに贈与遺贈をしたであろうと推認されるとして、法人格を有しない老人ホームが特別縁故者として認められた事例。
⑦ 死後の縁故
・死後の縁故(死亡後に葬儀や墓守をする)というだけでは認められないこともありますが、死後の縁故だけでも認められた事例はあります。

3 分与される金額

① 特別縁故者として認められたとしても、相続財産の全部を取得できるとは限りません。故人との縁の程度に応じて、裁判所が取得できる財産の割合を決定します。
② 高松高決では、被相続人と特別縁故者との縁故関係の厚薄、度合い、特別縁故者の年齢、職業等や、相続財産の種類、数額、状況、所在等一切の事情を考慮して、分与すべき財産の種類、数額等を決定すべきとしています。
③ 分与額を定めるには様々な事情が考慮されるので、どの程度の割合が認められるかは、率直に言って見通しを立ってるのは難しいです。
④ 過去の事例では、内縁の妻として長期間同居し、闘病生活を監護していたにもかかわらず、50%しか分与されなかった例もあります。

4 申立ての方法

① 特別縁故者として相続財産の分与を受けるためには、特別縁故者が被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して、特別縁故者に対する財産分与の申立てをする必要があります。
② 申立ての期間は、相続財産清算人選任公告の終了後3カ月以内となっております。
③ このように特別縁故者に対する財産分与請求は、相続財産清算人が選任されていることが前提の手続きとなります。相続財産清算人が選任されていない場合、特別縁故者は、相続財産清算人選任の申立てをすることができます。
④ 特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行うと、特別縁故者かどうかの調査があります。介護施設の面会簿、経済的援助が分かる領収証や振り込みの控え、手紙、日記、写真、生前の交流についてまとめた陳述書などを資料として提出します。
⑤ 家庭裁判所や相続財産清算人から事情を聴かれることもあります。特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判をする場合には、家庭裁判所は、相続財産清算人の意見を聴かなければならないとされています。
⑥ 審判が出ると審判書が送付されます。不服申立て期間が満了すると、相続財産清算人から申立人に送金先の問い合わせがあります。

5 税金

① 特別縁故者が相続財産分与を受けた場合には、遺贈により取得したとみなされ、相続税の対象となります。相続税の基礎控除額を超える場合には相続税の申告が必要となります。
② 特別縁故者は、被相続人の一親等の血族には当たらないため、相続税額に2割が加算されます。
③ 進行は被相続人の最後の住所地を所轄する税務署で行います。申告期限は、審判が確定し相続財産の分与を受けたことを知った日の翌日から10か月以内となります。

【孤独死をめぐるQ&A】Q18 相続人が不存在の場合(相続財産清算人)

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【孤独死をめぐるQ&A】Q18 相続人が不存在の場合(相続財産清算人)についての記事です。

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【Q18】遠縁の親族が自宅で孤独死をしたらしく、警察から私に連絡がありました。
相続人が誰もいないのですが、故人は賃貸アパートを所有しており、そのままにするわけにもいかずに困っています。相続人が誰もいない場合、相続財産はどうなってしまうのでしょうか。

【A】相続人が誰もいない場合、原則として遺産は国庫に帰属します。
ただ、自動的に国庫に帰属するわけではないので、裁判所に相続財産清算人を選任してもらい、相続財産清算人が国庫に帰属させるための手続きを行うことになります。
相続財産清算人が選任されず、事実上遺産が放置されているというケースもあります。

【解説】

1 相続人がいない場合

① 法定相続人には、被相続人の配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹等が該当します。
② 被相続人が独身または配偶者に先立たれ、両親は既に亡くなっており、兄弟姉妹も甥も姪もいないという場合には、相続人不存在となります。
③ 相続放棄をすると初めから相続人とならなかったとみなされますので、相続債務が明らかに多いなどの理由で相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、相続人がいないということになります。
④ 孤独死の遺族の相談を受けていますと、どちらかというと後者、すなわち相続人はいたのですが、資産が乏しかったり負債があったりと相続するメリットがないので全員が相続放棄をし、その結果相続人が誰もいなくなったというケースの方が多いと感じています。

2 相続財産の国庫帰属財産額

① 被相続人の財産は、最終的には国庫に帰属されることになります。国庫に帰属した遺産は裁判所の歳入として計上されるので、裁判所の決算から確認することが可能です。
② 婚姻件数の低下や出生率の低下により相続人がいないというケースは増えており、国庫帰属する遺産額は増加傾向にあります。
③ 最高裁判所「一般会計歳入予算概算見積書(現金収入)」によりますと、平成21年度は180億9670万円でしたが、令和3年度は647億7298万円となっており、急増しております。

3 相続財産清算人選任

1)選任申立
① 相続人の存在、不存在が明らかでないとき、相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなったとき、家庭裁判所は、申立てにより、相続財産の清算人を選任します。
② 相続財産清算人は申立てがあって初めて選任されるため、誰も申立てをしなければ相続財産清算人は選任されません。
③ 相続財産清算人の選任申立てをすることができるのは、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)又は検察官です。
④ 相続人がいない放置された不動産がある場合、市町村は固定資産税の債権者になるので、市町村も相続財産清算人の選任申立てができます。
⑤ 申立ては、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。

2)予納金
① 相続財産清算人が選任されるとき、遺産の額が少なく相続財産清算人の作業経費や報酬が出ない場合に備えて、一定額をあらかじめ納めるように要求されることが通常です。予納金の額は、事案の内容に応じて家庭裁判所が決定するとされています。
② ただ、十分な現預金があるケースでも一律100万円の予納金を求められることもあるようです。遺産から相続財産清算人の報酬や経費の支払いができる場合には予納金は戻ってきますが、あらかじめ100万円納めなければならないという手続きは、申立人にとって負担となります。

3)選任公告
① 相続財産清算人が選任されると、家庭裁判所は相続財産清算人が選任されたことを知らせるための公告をします。
② 同時に家庭裁判所は相続人を探す公告をします。この期間は6箇月を下ることはできないとされています。
③ 相続財産清算人は、相続債権者、受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨公告しなければなりません。この期間は家庭裁判所の公告期間内に終了しなければなりません。
④ この公告期間満了後3ヵ月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。
⑤ 相続財産清算人が被相続人の不動産や株式を売却し、金銭に換え、債権者や受遺者への支払、特別縁故者に対する相続財産分与の審判に従った分与をし、相続財産が残った場合は、相続財産を国庫に引き継いで手続きが終了します。

4)遺産の買取や形見分け
① 相続財産清算人が選任された場合、親族が故人の遺産を承継する機会が一切ないわけではありません。
② まず、有償物については、相続財産清算人は公正な時価で売却する必要があります。不動産などは不動産鑑定をした上で、公正な時価での売却を試みます。公正な時価であれば、遺族や近親者に売却しても支障はないので、取得を希望する場合、相続財産清算人にその旨申し出ておくとよいでしょう。
③ 次に価値のないものの形見分けですが、相続財産清算人として全ての動産を処分するのであれば、処分価値がない動産については親族や近親者に形見分けをした方が処分の手間が省けます。相続財産清算人は、形見分けの希望をすれば、物によっては家庭裁判所から無償譲渡の許可を得た上で、形見分けをしてくれることがあるでしょう。

4 事実上の放置

① 上述のとおり、相続財産清算人選任申立てには高額な予納金が必要になるケースが多いという弊害があります。全員が相続放棄をするような案件では、資産に乏しく相続財産清算人の選任申立てをするメリットがある人がいないということもままあります。
② また、被相続人の債権者側からしてみても、回収可能な財産が分かっている場合、相続財産清算人選任申立てをするよりも、特別代理人選任申立てをし訴訟や強制執行をした方が費用が抑えられ、また優先的に回収できるので、わざわざ相続財産清算人の選任申立てをしないということもあります。
③ このように相続人がいないが、誰も相続財産清算人選任申立てをせずに、事実上遺産が放置されているケースも、相当数あるのではないかと思われます。
④ なお、相続放棄をしたからと言って全ての責任を免れるわけではなく、相続放棄時に占有していた場合、自己の財産におけるのと同一の注意義務が課せられ、その財産を相続人又は相続財産清算人に引き渡すまでは保存しておく義務を負います。

【孤独死をめぐるQ&A】Q17 限定承認

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【孤独死をめぐるQ&A】Q17 限定承認についての記事です。

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【Q17】おじが亡くなり、私が相続人になります。
おじには相続財産があることは分かっているのですが、生前にあまり交流をしていなかったので、もしかしたら負債があるのではないかと思い、相続をしてしまってよいものか悩んでいます。
相続財産の限度で債務を相続する限定承認という制度があるのをインターネットで知ったのですが、限定承認をしてよいものか注意点を教えてください。

【A】限定承認は、相続放棄と同様、相続の開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。単純承認事由がある場合には限定承認は出来なくなります。
また、限定承認は、相続放棄とは異なり相続人全員で行う必要があるほか、手続きや税務面でも複雑であり、限定承認という方法を選択するかについては慎重な検討が必要です。

【解説】

1 限定承認とは

① 限定承認とは、相続人が遺産を相続するときに債務は相続財産を責任の限度として留保して相続をすることをいいます。
② 相続によって得たプラス財産の限度において、被相続人の債務などのマイナス財産を相続するので、もしマイナス財産が多くても、相続人がもともと持っていた財産で債務を弁済する必要はありません。もし、プラスの財産の方が多ければ、相続財産をもって負債を弁済した後、余りが出ればそれを相続できます。
③ このように、限定承認をすれば、負債の有無や額が分からない相続の場合、負債があっても相続財産の範囲内で弁済すればよくなります。
④ もし財産の方が多ければ財産を相続でき、一見して損がない制度なので、それであればみんな限定承認を選択するはずです。
⑤ しかしながら、令和元年度の司法統計によると、相続放棄申述受理の申立てが22万件超であったのに対し、限定承認申述受理の申立ては657件と極めて少ないというのが実情なのです。
⑥ これは、以下に述べるように、限定承認は手続きや税務処理が複雑であり、利用が敬遠されているという理由です。

2 熟慮期間、単純承認事由

① 限定承認も、相続放棄と同様、限定承認の期限は相続の開始をした日から3か月以内に被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して限定承認の申述をする必要があります。
② また、相続放棄と同様、限定承認の申述をする前に、相続人が相続財産の全部又は一部を処分してしまうと、単純承認したとみなされ、限定承認はできなくなります。
③ なお、3か月以内にどの相続方法を選べばよいか決められない場合は、熟慮期間の伸長を申立てることもできます。

3 相続人全員で行う必要がある

① 相続放棄は一人でも行えますが、限定承認は相続人全員が共同で行う必要があります。
② 相続人のうち一人でも協力してくれない人がいる場合には、限定承認を行うことができません。ただ、相続放棄をした場合には、相続放棄をした者は最初から相続人とはならなかったものとみなされるので、相続放棄をした人を除いたすべての相続人が限定承認を希望しているのであれば、限定承認の申述は可能です。
③ なお、共同相続人が生死不明で一緒に申述ができないという場合、生死不明者について不在者財産管理人を選任し、不在者財産管理人と他の相続人で限定承認の申述をすることができます。

4 限定承認の清算手続き

① 限定承認をした場合、勝手に遺産の中から債権者に弁済をしていくというわけにはいきません。法で定められた手続きに従って清算手続をしていく必要があります。

1)相続財産管理人の選任
① 複数の相続人で限定承認をする場合は、申述の受理と同時に相続財産管理人が選任され、相続財産管理人が清算手続を行うことになります。
② 限定承認をした相続人が一人の場合、その人が清算手続を行うことになります。

2)公告、催告
① 相続人が家庭裁判所に限定承認の申述を行った後は、5日以内に全ての相続債権者及び受遺者に対し、2か月以上の期間を定めて限定承認をしたこと及び債権の請求をすべき旨の公告(官報掲載)を行い、知れている債権者には個別に催告を行う必要があります。
② 官報公告は、法定の期間内(限定承認者の場合は5日以内、相続財産管理人の場合は選任後10日以内)に行う必要があります。
③ 受理の審判後すぐに官報に掲載する必要があるので、官報公告の文案や官報公告の手順については、事前に準備しておく必要があるでしょう。

3)換価
① 限定承認をした場合、換価についてもルールが決められており、限定承認者や相続財産管理人が好きに不動産を売って換価したり、不動産は居住し続けたいから売却せずに持ち続け預貯金から弁済をしたりするという自由な処分はできません。
② 債権者からすれば引当てとなるのは相続財産だけですから、自由に相続財産を処分してよいとすると適正な価格で財産が処分されずに満足な債権回収ができなくなるおそれがあります。
③ そのため、限定承認手続においては、財産の換価手続は「競売に付さなければならない」と定められております。
④ ただし、先買権といって、相続財産の全部又は一部について、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い価額を弁済することにより、競売を止めることは認められます。
⑤ 先買権を利用すれば、不動産は第三者に売却せず相続したいという要望をかなえることが可能です。
⑥ 換価の際には、限定承認手続き専用の銀行口座を作成するなど、自身の財産と相続財産とが混ざってしまわないような配慮をした方がよいでしょう。

4)弁済
① 官報公告の申出期間が過ぎたら、先取特権や抵当権などの優先権がある債権者、一般の債権者、受遺者の順番に弁済をしていきます。
② 相続財産で全債務を完済できない場合は、同一の優先順位の範囲内の債権者に対し、債権額の割合に応じて弁済することになります。

5)残余財産を相続人が受け取る
① 債権者や受遺者に弁済をしても財産が余った場合、ようやく相続人がその財産を受け取ることができます。

5 みなし譲渡課税

① 限定承認の手続きを行った場合、税法上では、被相続人が相続人に対して、財産を時価で譲渡したとみなされてしまいます。
② そのため、購入時よりも値上がりしている土地や株式、そもそも取得価格も分からないような先祖代々の土地などは、時価と取得価格の差額がみなし譲渡所得となり、所得税が課せられてしまいます。相続人は被相続人の所得税について、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をする必要があります。
③ 限定承認の場合、不動産を第三者に売却して実際に現金を得ているわけではないので、限定承認をしただけでみなし譲渡所得税が課せられてしまう点で、単純承認に比べて不利益があります。
④ 明らかに資産の方が多く、また不動産は売却せずに所有し続けるという場合には、所得税の分だけ被相続人が損をしたことになってしまいます。

6 限定承認の実例

① このように限定承認は、手続きが煩雑である、税務面でデメリットがあるという理由もあってほとんど利用されていません。
② しかし、相続債務があるかどうかわからないという場合には、有力な手段の一つであることは言うまでもありません。
③ 孤独死した方の相続の場合、縁が遠く、どのような負債があるかも全く見当もつかず、資産があるのは分かっているので相続はしたいが、後で負債が出てきたら困ると考える方はいます。
④ 遺産が現金・預貯金のみで、今のところ相続債務は見つかっていないような場合には、そこまで手続きが複雑にはなりませんので、全ての相続人で意思統一ができるのであれば、限定承認をしてみるということも検討してよいかと思います。

【法改正情報】

所有者不明土地問題解決を図る民法・不動産登記法等の改正に伴い、相続財産管理人は、相続財産清算人となります。
改正は令和5年4月1日から施行されます。

【孤独死をめぐるQ&A】Q16 相続放棄③ 3か月経過後の相続放棄

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【孤独死をめぐるQ&A】Q16 相続放棄③ 3か月経過後の相続放棄についての記事です。

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【Q16】おじが亡くなった後3ヶ月経過してから、おじに多額の借金があったことが分かりました。借金を相続したくないのですがどうしたらよいですか。

【A】借金を相続しないためには相続放棄という方法があります。相続放棄は原則として相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
亡くなった日から3か月経過しても受理してもらえることも多いので、弁護士や司法書士等の専門家に相談した上で、相続放棄の申述をしてみてください。

【解説】

1 熟慮期間の起算点

① 相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月(熟慮期間)以内に手続きをする必要があります。
② 熟慮期間を超えると相続放棄は出来なくなるので、いつから熟慮期間が進行するか、熟慮期間の起算点が極めて重要になります。

1)相続人であることを知った時
① 相続放棄をするかしないか考えるには、まず、自身が相続人であることを覚知していることが前提となります。そして、相続人であることを覚知していたといえるためには、具体的に相続人であることを覚知していることが必要とされています。
② 被相続人が亡くなったことを知っていながら、法律の不知や事実誤認により自身が相続人であることを具体的に覚知していなかったようなケースでは、具体的に覚知するまでは熟慮期間が進行しないと判断されることもあります。(大決)
③ 相続放棄をするに家庭裁判所への申述をする必要があることを知らず、自身は相続放棄により相続人でないと思い込んでいたと誤信していたというケースで、法の不知により相続人であることを知らなかった可能性があるとして相続放棄の申述が受理されたこともあります。法の不知について比較的緩やかに解釈されているようです。

2)相続財産がないと考えた場合
① 自身が相続人であることを知りながら、相続財産がないと信じており相続放棄は不要と考えていたケースもあり得ます。
② このような場合、相続人が3か月以内に限定承認、相続放棄をしなかったのが、相続財産が全くないと信じたためであり、かつこのように信じるについて相当な理由があると認められる場合には、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算するのが相当と判断されています。(最二小判)

2 死亡から3か月経過後の相続放棄の申述

1)却下すべきことが明らかな場合以外は受理するとの運用
① 相続放棄の申述の受理は、実質的には適式な申述がなされたことを公証する手続きとされています。(最二小判)
② 家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したとしても、相続放棄の実体要件を備えていたことにはならず、債権者は相続放棄の実体要件を欠くことについて、訴訟で争うことは可能です。
③ これに対して、相続放棄の申述受理の申立てが却下された場合、相続放棄が民法938条の要件を欠き、相続放棄をしたことを主張できなくなり、相続人は回復し難い損害を被ることになります。
④ このことから、家庭裁判所は却下すべきことが明らかな場合以外は相続放棄の申述を受理すべきとの考え方が主流になっています。

2)受理された例
① 下記の通り、3か月経過後であり、被相続人に財産があるということを知っていたような事例であっても、相続放棄の申述が受理されたという例は多数あります。
② 相続人が、被相続人所有の不動産があることを知っていたが、その土地に財産的価値がほとんどなかったという事例。
③ 次女が、被相続人である母所有の不動産があることを知っていたが、不動産は全て姉が相続し自らには相続する財産はないと信じていた事例。
④ 被相続人の死亡当時被相続人名義の不動産の一切を長男が取得することで合意したものの、生前から被相続人名義の不動産が相続の対象となる遺産であるとの認識はなかったとされた事例。

3)諦めずに申し立てることが重要
① 上述のとおり、3か月経過後であり、被相続人に財産があることを知っていたような事例であっても、相続放棄の申述が受理されたという例は多数あるため、もし3か月経過後に債務の存在を知り相続放棄を考えたという場合、諦めて単純承認をしてしまうのではなく、相続放棄の申述を受理してもらえる可能性があるのであれば、申立てをしてみた方がよいと考えられます。
② 相続放棄の申述が却下され、それに不服がある場合には、却下の通知が届いてから2週間以内に高等裁判所に即時抗告することで、改めて判断を求めることが可能です。

【孤独死をめぐるQ&A】Q15 相続放棄② 熟慮期間の延長と単純承認

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【Q15】相続放棄② 熟慮期間の延長と単純承認

おじが亡くなり、私が相続人になるようです。遺産や債務の有無を調査していますが、生前、ほとんど交流をしていなかったので、財産の目星がつけづらく、相続財産の調査に3か月以上かかってしまいそうです。
相続放棄の期間を延長できるようなのですが、どのようにすればよいのでしょうか。

【A】3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の熟慮期間伸長の申立てをすると熟慮期間を延長してもらえます。期間が延びますが、その間に単純承認になるようなことをしてしまうと、相続放棄が認められない可能性がありますので注意をして下さい。

【解説】

1 熟慮期間延長

① 孤独死した被相続人の場合、財産や負債がどのくらいあるか全くわからないこともあります。
② 財産や負債の調査には相当の時間を要しますので、3か月では単純承認するか相続放棄や限定承認とするかの判断がつかないということもあり得ます。
③ そのような場合、家庭裁判所に相続放棄の熟慮期間伸長の申立てをすることもできます。この相続放棄の熟慮期間伸長の申立ても、当初の熟慮期間内に申立てをする必要があります。
④ 伸長の期間については、3か月程度しか認められないことが多くなっております。伸長した熟慮期間内であれば、再度、熟慮期間伸長の申立てをすることも可能です。この場合、伸長した熟慮期間内に判断ができなかった理由の説明を求められることが多くあります。

2 単純承認事由

① 相続放棄の申述をする前に、相続人が相続財産の全部又は一部を処分してしまうと、単純承認したとみなされ、相続放棄は出来なくなります。
② 相続するかどうか考えている間は、相続財産の処分をしないように気を付ける必要があります。

1)相続人が被相続人の債務を支払った場合
① 相続人が、自分の保険解約返戻金を原資として相続債務を支払った事例では、単純承認事由には当たらないと判断されています。(福岡高決宮﨑支部)

2)葬儀費用の支払
① 相続人が、被相続人の火葬費用や治療費残額を相続財産から支払った事例では、「遺族として当然なすべき被相続人の火葬費用ならびに治療費残額の支払に充てたのは、人倫と道義上必然の行為であり、公平ないし信義則上やむを得ない事情に由来するものであって、これをもつて、相続人が相続財産の存在を知つたとか、債務承継の意思を明確に表明したものとはいえない」として、単純承認事由に当たらないとはんだんされています。(大阪高決)
② 葬儀の規模にもよりますが、家族葬などの小規模の葬儀費用であれば、遺産から葬儀費用を出しても単純承認事由とされる可能性は低いと考えられます。
③ 他方で、大規模な葬儀を行い相当多額の出費をした場合には、単純承認になる可能性もありますので、葬儀費用は単純承認にならないなどと思い込み大規模な葬儀を執り行い、相続財産から出費するということは避けた方が無難です。

3)形見分け
① 形見として背広上下、冬オーバー、スプリングコートと位牌を持ち帰り、時計・椅子2脚の送付を受けたという事例では、単純承認事由に当たらないと判断されています。(山口地判徳山支部)
② 他方で、被相続人の遺品を形見分けしただけでは民法921条3号の「隠匿」には当たりませんが、被相続人のスーツ、毛皮、コート、靴、絨毯など一定の財産的価値を有する遺品のほとんどすべてを自宅に持ち帰る行為については、法定単純承認となるという裁判例もあります。(東京地判)
③ 財産的価値が乏しい形見分けであれば単純承認事由にならないという解釈が一般的ですが、形見分けした財産の価値が高い場合には単純承認事由に当たると判断される可能性が高くなります。
④ どこまでが財産的価値に乏しい形見分けか、どこからが形見分けを超えて単純承認になるのかの基準は明確ではないので、形見分けをする際には注意が必要です。

4)被相続人の有していた債権の取り立て
① 相続人が、被相続人の有していた債権を取り立てて弁済を受領した事例では、単純承認事由に当たると判断されています。(最一小)

5)株主としての議決権の行使
① 株主として株主総会で議決権を行使した事例では、単純承認事由に当たると判断されています。(東京地判)
② 被相続人が100%株式を保有して会社を経営していた場合、後継者から遺族に対して、後任の取締役を選任する必要があるとして、株主総会議事録への署名をお願いされることがります。しかしながら、株主総会議事録への署名は、議決権行使として単純承認事由とされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
③ 被相続人が会社の経営者の場合、会社の金融機関からの借入れについて連帯保証債務を負っていることも多いのですが、単純承認となると連帯保証債務も承継してしまいます。
④ 万が一、後継者が引き継いだ会社が破綻した場合、相続人が多額の債務を負ってしまう可能性があるので、特に注意が必要です。
⑤ 会社の従業員から、株主総会議事録に署名をしてもらえないと会社の経営が続けられないと懇願されて断るのは心苦しいのですが、相続放棄をするのであれば断るほかありません。

6)保険金の受取
① 生命保険など保険金の受取人が相続人の場合、保険金請求権は相続財産ではないので、保険金を受け取っても単純承認事由には当たりません。(山口地判徳山支部)
② 他方、医療保険や入院保険など保険金の受取人が被相続人であった場合には、保険金請求権は相続財産になるので、受け取ってしまうと単純承認事由と判断されてしまいます。
③ 相続放棄を考えている場合、保険金の請求は、保険会社に保険金の受取人が誰であるか、保険金請求権が相続財産か否かを確認してから行う方が無難です。

7)遺族年金の受給
① 遺族年金の受給は、国民年金法等に基づき支払われるもので、受給者固有の権利となり、相続財産には含まれません。遺族年金を受給しても相続放棄は行えます。

8)高額医療費の還付金
① 医療費が一定額を超えた場合、超えた分の医療費が還付されるという制度があります。国民健康保険の場合、還付金は世帯主に支払われるので、還付金は世帯主であった被相続人の相続財産に含まれることになります。
② 還付金を受け取ってしまった場合、単純承認事由に該当すると判断される可能性があるので、相続放棄を検討している場合、高額医療費の還付金申請は慎重に判断する必要があります。
③ 高額医療費の還付金申請は、死亡後に病院から遺族に案内があり、病院の手続きと勘違いして行ってしまうこともあるので注意が必要です。

9)相続人が遺産分割協議をした場合
① 相続人が遺産分割協議をすれば、相続財産を処分したことになり、原則として単純承認事由に当たります。
② ただ、被相続人に多額の債務があることを知らずに遺産分割協議を行った事例では、「遺産分割協議が要素の錯誤により無効となり、ひいては法定単純承認の効果も発生しないと見る余地がある」として単純承認事由に当たらないという判断もあります。(大阪高決)
③ 相続放棄ができるかにより多額の債務を承継するかしないかが大きく異なるので、多額の債務を負ってしまうようなケースでは、諦めずに相続放棄申述をしてみるということも重要です。

3 専門家の関与
① このように単純承認に当たるか否かは微妙なものがあります。
② 債務が多いので確実に相続放棄をしたいという場合は、弁護士などの専門家に関与してもらい、自分がしようとする行為が単純承認事由に該当するか否かを相談しながら慎重にする方がよいでしょう。

【孤独死をめぐるQ&A】Q14 相続放棄① 相続放棄の概説

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【Q14】相続放棄① 相続放棄の概説

幼いときに両親は離婚し、母親が親権者になりました。母親が再婚したこともあり、実の父親とは会っておらず、一切交流がありませんでした。
この度、警察から連絡があり父親が亡くなったことを知りました。父とは生前まったく交流をしておらずどのような財産があるかもわからないですし、交流がなかった父親の遺産を相続する気もないので、相続放棄をしようと考えています。
相続放棄はどのように行えばよいのでしょうか。

【A】相続放棄は、原則として相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。
相続をしないという文書を作成したり、実際に相続手続をしなかったり、自身の相続分を0とする遺産分割協議をしたりしただけでは、相続放棄をしたことになりません。

【解説】

1 相続は負債も承継する

① 相続は、相続開始の時から、認知請求権など被相続人の一身専属権を除く、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を承継します。これを包括承継といいます。
② 相続は「一切の権利義務」を引き継ぐので、預貯金や不動産などの積極財産のみならず被相続人が負っていた借金などの債務も引継ぎます。また、契約上の賃料支払義務や賃貸借契約の原状回復義務など被相続人が締結していた契約から今後生じる義務も承継します。
③ 特定の財産のみを引き継ぐ特定承継と異なり、包括承継では、特定の財産や権利のみを引き継ぎ、特定の財産や権利・義務は引き継がないということを選べません。
④ 財産だけ承継して、負債は承継しないということはできないのです。
⑤ 相続によって承継した財産や負債は相続人の財産と混ざってしまいますので、もし承継した財産よりも負債の方が多い場合、相続人は元々有していた財産から相続した負債を返済する必要があります。
⑥ そのようなことにならないようにするためには、相続人が被相続人の権利も義務も一切受け継がないという相続放棄をするか、相続によって得たプラス財産の限度において、被相続人の債務などのマイナスの財産を相続するという限定承認をする必要があります。相続をしたくないという場合には相続放棄をすることになります。

2 孤独死の場合の相続放棄

① 孤独死した方の相続の場合、相続人はもともと生前に交流をしておらず、どのような財産があるのか、借金があるのかが分からないということも多くあります。
② そのような場合、財産の有無や負債の有無を調査することすら面倒なので、さっさと相続放棄をしてしまいたいという方もいます。
③ また、孤独死の場合、遺品整理や賃貸物件の原状回復など面倒な作業を伴うことがあり、そのような面倒な作業で精神的に辛くなるから相続放棄をしてしまいたいということもあります。

3 相続放棄の仕方

① 相続放棄をするには、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して後記の相続放棄申述書を提出する必要があります。
② 遺産分割で自身の相続分を0とする合意をしたり、相続するつもりがないから相続手続きをしなかったりしても、それでは相続放棄をしたことにはなりません。
③ 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)以内にする必要があります。3か月以内に相続放棄をするか決められない場合は、熟慮期間の伸長を申立てることもできます。
④ また、相続放棄の申述をする前に、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは法定単純承認となり、相続放棄をすることはできなくなります。

4 相続放棄手続きの効果

① 相続放棄の申立てをすると、通常、家庭裁判所から申立人に対して照会書が送られてきます。照会書は、裁判所により異なるかと思いますが、死亡日から3か月以内の相続放棄の場合の照会書、死亡日から3か月経過してから申し立てた場合の照会書など複数の種類があるようです。
② その照会書を返送し、特に申し立て内容に問題がなければ、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。
③ 家庭裁判所が相続放棄申述を受理したとしても、それにより相続放棄の効果が確定するわけではありません。相続放棄申述受理は、あくまで家庭裁判所が申立人の相続放棄の申述を受理したということを示すのみで、相続放棄の有効性には影響がありません。
④ 債権者は、法定単純承認事由があった、3か月の熟慮期間を経過してからの申立てであるなどを理由に相続放棄の効力が生じないとして争うことは可能です。

5 相続放棄をした後のこと

1) 相続放棄申述受理通知
① 相続放棄の申述をし、家庭裁判所が相続放棄申述を受理すると相続放棄申述受理通知書が送られてきます。
② 債権者がいる場合、債権者に対し相続放棄をした旨を連絡すると、相続放棄申述受理通知書の写しを送るように依頼されることが多いので、写しを送付して下さい。そうすると債権者が相続放棄を争わない限りは、催告は停止するはずです。
③ なお、債権者は、相続放棄申述が受理されていても、単純承認事由の存在や熟慮期間経過を理由に相続放棄の効力が生じないとして争うことは可能です。
④ 相続放棄申述受理通知書には申述を受理した日の記載がありますが、これは裁判所が申述をした日であり、実際に申述をした日とは異なります。3か月以内に申述をしていればよく、裁判所が申述を受理した日が死亡から3か月経過していたとしても問題はありません。
⑤ 家庭裁判所で相続放棄の申述が却下され、抗告により高等裁判所が申述を受理する決定をした場合、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が来ないようです。その場合、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の申請をすれば、相続放棄申述受理証明書を発行してもらえます。

2)管理義務
① 相続放棄をしたとしても、放棄した財産を一切関知しないでよいというわけではありません。他の相続放棄をしていない相続人が相続財産の管理を始めることができるようになるまで、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」相続財産を管理しなければなりません。

3)後順位相続人への連絡

① 子が相続放棄をしたような場合、次順位の相続人がいることがあります。そのような場合、後順位の相続人に対し、相続放棄をしたことを伝えておいた方がよいでしょう。
② 必須というわけではありませんが、先順位の相続人が相続放棄をし、自身が相続人になったことを知らずに、債権者からの連絡でその事実を知った場合、「あなたが相続放棄をしたせいで余計なトラブルに巻き込まれた」と後順位の相続人から感情的な攻撃が来ることもあります。
③ なお、第2順位の相続人である父母が双方相続放棄した場合、祖父母が存命だと第3順位の相続人に移る前に祖父母が相続人になります。
④ 子や兄弟姉妹が相続放棄をしても代襲相続人である、孫や甥・姪が相続人になることはないのですが、父母の場合は、相続放棄をすると祖父母が相続人となります。
⑤ 自殺や過労死での突然死のように比較的若年での孤独死の場合、故人の祖父母が存命ということもありますので、注意が必要です。

4)相続人の不存在

① 相続放棄をした場合、最初から相続人にならなかったとみなされます。全員が相続放棄をした場合は、相続人がいないことになります。

5)法改正・相続放棄後の管理責任

① 所有者不明土地問題解決を図る民法う・不動産登記法等の改正に伴い、相続放棄後の管理責任が減縮されます。
② 現在は、相続放棄をした者も、放棄後に事故の財産におけるのと同一の注意義務が課せられていますが、改正民法では、相続放棄時に現に占有していた場合のみ、その財産を保存しておく義務を負うのみとなります。そのため、相続放棄がしやすくなります。
③ 改正民法は令和5年4月1日から施行されます。