【孤独死をめぐるQ&A】Q53 保険の活用① 親族の受取人がいる場合

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【Q53】一人暮らしで子もいません。親族とは折り合いが悪く、ほぼ付き合いがないのですが、仲の良い甥が一人だけいます。私が死んだら甥が葬儀を挙げてくれると思うので、葬儀費用に充ててもらうために生命保険に加入しておこうと思います。生命保険加入にあたって気を付けることを教えてください。

【A】生命保険は受取人固有の財産になるので、遺産分割協議前でも受給することができ、葬儀費用の準備に適していると考えます。
ただ、保険の場合、支払い条件を満たさなければ受け取ることはできませんので、加入する生命保険で自身のニーズを満たすことができるかをしっかりと検討してから加入して下さい。

【解説】

1 一番親しい人に迷惑をかけるのが相続の本質
① 「一番親しい人に迷惑をかけるのが相続の本質」とい表現されることがあります。
② 葬儀費用については相続開始後に生じた費用ですので、遺産分割の対象になりません。同じく、遺品整理費用についても相続開始後に生じた費用であり遺産分割の対象になりません。
③ 遺品整理費用については、相続財産の処分のために費やしたものなので、遺産分割調停・審判とは別に訴訟提起すれば、他の相続人に求償できる可能性はありますが、遺品整理費用の精算のためだけに訴訟提起をすること自体手間がかかってしまいます。
④ また、相続の負担は出費だけではありません。例えば、預貯金の相続手続のために仕事を休んで金融機関に行ったとしても、その労力や金融機関に行くための有給休暇を取得したという事実上の負担も、裁判所が遺産分割審判の中で調整するということもありません。
⑤ もちろん相続人が全員で同意してくれれば、遺産分割の際に調整するのでしょうが、相続人が同意しない場合、裁判所の遺産分割に関する判断の中で、そのような事情は考慮されないのです。
⑥ 亡くなった後、諸々の手続きをしてくれるのは、一番関係が近かった人だと思います。一番関係が近かった人が費用と労力をかけて手続きをしてくれるにもかかわらず、遺産分割では遺産を相続分に応じて平等に分けることになるので、相対的に見て損をしてしまうことになります。

2 生命保険のメリット
生命保険には以下のようなメリットがあります。
⑴遺産分割の対象にならない
① 生命保険は、受取人固有の財産となるので、民法上の遺産分割の対象となる遺産には含まれません。
② この点、相続税を計算する際には、一定額の控除はあるものの生命保険も遺産に含めて考えます。そのため、生命保険金が、遺産分割の場合も遺産に含まれると勘違いされる方もいますが、相続税法と遺産分割を規定している民法は異なる法律であり、遺産の範囲は異なります。
③ 生命保険金は、受取人固有の財産となるため、葬儀や死後の手続きをする予定の人を受取人にしておけば、遺産分割で相続人に応じて平等に分けたとしても、生命保険金分は多く受け取っていることになるので、1人だけ損をするということがなくなります。

⑵相続放棄をしても受け取れる
① 生命保険金は、受取人固有の財産になるため、相続人が相続放棄をしたとしても受け取ることができます。
② 個人の相続財産に負債が多く、マイナスである場合はもちろんのこと、地方の誰も住まないような不動産しかなく、相続したくないという場合もあります。そのような場合、相続放棄をして負債や不要な資産は引き継がないとしつつ、生命保険金は受領して葬儀などの費用に充てるということができるようになります。

⑶他の相続人の承諾、同意なく受給できる
① 生命保険金は、受取人固有の財産ですので、他の相続人の承諾や同意がなくても受給することが可能です。
② 相続が発生すると、預貯金も遺産分割の対象となります。そのため、金融機関は相続発生を知ると預貯金を凍結し、遺産分割が終わらない限り、原則として引き出せなくなります。
③ 例外的に、各預貯金の口座残高の3分の1に権利行使者の法定相続分をかけた金額(ただし1金融機関あたり、上限額150万円)については遺産分割前でも引き出しが可能です。
④ とはいっても、権利行使者の法定相続分を明らかにするにためには、法定相続人の範囲が明らかになるよう戸籍を集めて金融機関に提出する必要があります。
⑤ 戸籍を集めるのは、時間がかかることもあります。その場合、葬儀や納骨までに預貯金を引き出すことができず、遺族がそれらの費用の立替払いを余儀なくされるということも想定できます。
⑥ これに対し、生命保険金であれば、支払事由に該当したことに疑義がなければ数営業日で受け取ることができますので、葬儀費用の支払や納骨までに資金の準備ができる可能性が高くなります。
⑦ このように生命保険は、亡くなった後のことの諸々をやってくれるであろう親族に対し、直接お金を残すことができる方法ですので、本事例のように、特定の親族だけと仲が良いという場合、遺言と併用して、生命保険の活用も検討するとよいかと思います。

3 生命保険加入の注意点
⑴特別受益に準じた持戻しの可能性
① 生命保険金が受取人固有の財産であり遺産分割の対象にならないとしても、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、民法903条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となります(最二小判平成16年10月29日)。
② 特段の事情の有無については、「保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべき」と判示されています。
③ その後名古屋高裁で、相続財産の総額と生命保険金の総額の比率が61%であった事案で特別受益に準じた持戻しを認めています。単に比率だけで決まるわけではないですが、一つの参考にはなると思います。

⑵保険金不払事由への該当
① 保険は、葬儀費用の準備等に使えます。しかし、あくまで生命保険なので、生命保険の受取要件を満たさない場合には、当然保険金は給付されません。
② よく聞くのが、始期前発病や告知義務違反が疑われるケースのトラブルです。告知義務違反は、加入者の問題もあるので致し方ないとしても始期前発病については、加入者が知らなかったとしても保険金が支払われない可能性があります。
葬儀費用に充てようと生命保険に加入しても、亡くなった原因が生命保険加入前からの持病が原因であったような場合、契約前発病不担保特約により保険金が支給されないケースがあります。
③ 保険加入時には、自身のニーズに合っているかを確認してから加入するようにしてください。