【孤独死をめぐるQ&A】Q18 相続人が不存在の場合(相続財産清算人)

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【Q18】遠縁の親族が自宅で孤独死をしたらしく、警察から私に連絡がありました。
相続人が誰もいないのですが、故人は賃貸アパートを所有しており、そのままにするわけにもいかずに困っています。相続人が誰もいない場合、相続財産はどうなってしまうのでしょうか。

【A】相続人が誰もいない場合、原則として遺産は国庫に帰属します。
ただ、自動的に国庫に帰属するわけではないので、裁判所に相続財産清算人を選任してもらい、相続財産清算人が国庫に帰属させるための手続きを行うことになります。
相続財産清算人が選任されず、事実上遺産が放置されているというケースもあります。

【解説】

1 相続人がいない場合

① 法定相続人には、被相続人の配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹等が該当します。
② 被相続人が独身または配偶者に先立たれ、両親は既に亡くなっており、兄弟姉妹も甥も姪もいないという場合には、相続人不存在となります。
③ 相続放棄をすると初めから相続人とならなかったとみなされますので、相続債務が明らかに多いなどの理由で相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、相続人がいないということになります。
④ 孤独死の遺族の相談を受けていますと、どちらかというと後者、すなわち相続人はいたのですが、資産が乏しかったり負債があったりと相続するメリットがないので全員が相続放棄をし、その結果相続人が誰もいなくなったというケースの方が多いと感じています。

2 相続財産の国庫帰属財産額

① 被相続人の財産は、最終的には国庫に帰属されることになります。国庫に帰属した遺産は裁判所の歳入として計上されるので、裁判所の決算から確認することが可能です。
② 婚姻件数の低下や出生率の低下により相続人がいないというケースは増えており、国庫帰属する遺産額は増加傾向にあります。
③ 最高裁判所「一般会計歳入予算概算見積書(現金収入)」によりますと、平成21年度は180億9670万円でしたが、令和3年度は647億7298万円となっており、急増しております。

3 相続財産清算人選任

1)選任申立
① 相続人の存在、不存在が明らかでないとき、相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなったとき、家庭裁判所は、申立てにより、相続財産の清算人を選任します。
② 相続財産清算人は申立てがあって初めて選任されるため、誰も申立てをしなければ相続財産清算人は選任されません。
③ 相続財産清算人の選任申立てをすることができるのは、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)又は検察官です。
④ 相続人がいない放置された不動産がある場合、市町村は固定資産税の債権者になるので、市町村も相続財産清算人の選任申立てができます。
⑤ 申立ては、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。

2)予納金
① 相続財産清算人が選任されるとき、遺産の額が少なく相続財産清算人の作業経費や報酬が出ない場合に備えて、一定額をあらかじめ納めるように要求されることが通常です。予納金の額は、事案の内容に応じて家庭裁判所が決定するとされています。
② ただ、十分な現預金があるケースでも一律100万円の予納金を求められることもあるようです。遺産から相続財産清算人の報酬や経費の支払いができる場合には予納金は戻ってきますが、あらかじめ100万円納めなければならないという手続きは、申立人にとって負担となります。

3)選任公告
① 相続財産清算人が選任されると、家庭裁判所は相続財産清算人が選任されたことを知らせるための公告をします。
② 同時に家庭裁判所は相続人を探す公告をします。この期間は6箇月を下ることはできないとされています。
③ 相続財産清算人は、相続債権者、受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨公告しなければなりません。この期間は家庭裁判所の公告期間内に終了しなければなりません。
④ この公告期間満了後3ヵ月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。
⑤ 相続財産清算人が被相続人の不動産や株式を売却し、金銭に換え、債権者や受遺者への支払、特別縁故者に対する相続財産分与の審判に従った分与をし、相続財産が残った場合は、相続財産を国庫に引き継いで手続きが終了します。

4)遺産の買取や形見分け
① 相続財産清算人が選任された場合、親族が故人の遺産を承継する機会が一切ないわけではありません。
② まず、有償物については、相続財産清算人は公正な時価で売却する必要があります。不動産などは不動産鑑定をした上で、公正な時価での売却を試みます。公正な時価であれば、遺族や近親者に売却しても支障はないので、取得を希望する場合、相続財産清算人にその旨申し出ておくとよいでしょう。
③ 次に価値のないものの形見分けですが、相続財産清算人として全ての動産を処分するのであれば、処分価値がない動産については親族や近親者に形見分けをした方が処分の手間が省けます。相続財産清算人は、形見分けの希望をすれば、物によっては家庭裁判所から無償譲渡の許可を得た上で、形見分けをしてくれることがあるでしょう。

4 事実上の放置

① 上述のとおり、相続財産清算人選任申立てには高額な予納金が必要になるケースが多いという弊害があります。全員が相続放棄をするような案件では、資産に乏しく相続財産清算人の選任申立てをするメリットがある人がいないということもままあります。
② また、被相続人の債権者側からしてみても、回収可能な財産が分かっている場合、相続財産清算人選任申立てをするよりも、特別代理人選任申立てをし訴訟や強制執行をした方が費用が抑えられ、また優先的に回収できるので、わざわざ相続財産清算人の選任申立てをしないということもあります。
③ このように相続人がいないが、誰も相続財産清算人選任申立てをせずに、事実上遺産が放置されているケースも、相当数あるのではないかと思われます。
④ なお、相続放棄をしたからと言って全ての責任を免れるわけではなく、相続放棄時に占有していた場合、自己の財産におけるのと同一の注意義務が課せられ、その財産を相続人又は相続財産清算人に引き渡すまでは保存しておく義務を負います。