【孤独死をめぐるQ&A】Q22 遺体引取り義務の有無

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【孤独死をめぐるQ&A】Q22 遺体引取り義務の有無についての記事です。

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【Q22】私が小さいときに両親は離婚しており、父親とはそれから一度も会っていませんでした。
先日、父が孤独死したらしく、警察から遺体を引き取るように連絡が来ました。
父親といっても全く会っていなかったので、遺体を引き取りたくはありません。
とはいえ、子供なことには変わりがないので遺体を引き取らないといけないのでしょうか。

【A】遺体を引き取る義務はないと考えられます。遺体を引き取りたくないのであれば、引取りは拒否できます。

【解説】

1 遺体引取りの連絡

① 自宅で孤独死をした場合、その遺体は警察の霊安室に保管されるのが通常です。
② 警察は、遺体の身元を調査します。親族の居場所、連絡先が分かると、大抵は血縁関係の近い順から遺体の引取りを要請していきます。
③ こうして、一度も会ったことがないような親族に遺体引取りの連絡がくることがあります。
④ 本事例では一度も会ったことがない子としました。子は法定相続人になりますが、この連絡は法定相続人の範囲とは無関係のようで、親族がなかなか見つからない場合、広範囲に連絡が行くようです。
⑤ 過去の事例では、五親等離れた親族に遺体引取りの連絡が来たというケースがありました。民法上、親族の範囲は⑴六親等内の血族、⑵配偶者、⑶三親等内の姻族となっています。
⑥ 五親等であれば民法上は親族の範囲ですが、五親等離れた親戚ですと、一度も会ったこともないということも多いかと思います。

2 相続と遺体引取り義務

① 相続では、相続人が、被相続人が有していた積極的財産、消極的財産を含めて、包括承継します。そして、一度も会っていなくても子である以上は相続人になります。
②そうすると、被相続人の遺体も相続人である子が相続してしまうとも考えられます。
③ しかしながら、遺体はそもそも財産ではなく、相続財産に含まれませんので、相続によって遺体引取り義務が生じるということはないと考えます。

3 扶養義務との関係

① 直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負います。また、特別の事情がある場合には、家庭裁判所の審判により、三親等内の親族間においても扶養の義務が認められることがあります。
② ただ、扶養義務により、意に反して遺体の引取りを強制させられるということはありません。また、そもそも扶養請求権は扶養権利者の一身専属権であるところ、扶養権利者となる親族は死亡していますので、権利を行使する者もいません。
③ 故人の生前、扶養義務を負っていたからといって、遺体を引き取る義務が生じるわけではありません。

4 祭祀承継者との関係

① 最高裁の判例では、遺骨の所有権が慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属するとの高裁判決を是認しています。
② 遺骨の所有権が祭祀主宰者にあるのだとすれば、遺骨になる前段階の遺体の所有権も祭祀主宰者に帰属すると考えてよいかと思います。
③ もっとも、これは遺骨を自身で引き取るべきかという積極的に遺骨を引き取りたい者同士の争いであり、これにより直ちに祭祀承継者が遺体の所有者になるという判断ではありません。
④ 民法897条は、祭祀承継者を被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の判断などにより定めるとしています。
⑤ しかしながら、慣習によれば祭祀承継者となる者であっても、祭祀を執り行うつもりがない者に祭祀を承継させても意味がないことから、祭祀を承継する義務までは発生しないと考えられます。
⑥ したがって、慣習によれば祭祀承継者になるべき者があるからといって、遺体を引き取る義務が生じるわけではないと考えます。

5 結論

① 以上のように、子であっても、遺体を引き取る義務はないと考えられます。
② 過去のケースでも、父親の遺体引取りを拒否したこともあります。
③ 肉親の遺体の引取りを拒否するという判断をするには様々な事情、心情があるかと思います。そのような事情、心情に反して、親族という理由で遺体の引取り義務を課し、そして遺体を引き取ったからには火葬をしなければならないということを強制することはあってはならないと考えます。
④ なお、遺体を引き取っても困窮しており葬儀を挙げられないからという理由で遺体引取りを拒否しようと考えている場合には、葬祭扶助という制度もありますので、利用を検討してみてください。

6 遺体引取義務と火葬、埋葬費用の負担とは別問題

① 遺体を引き取る義務がないということと火葬、埋葬費用をだれが負担するかという点については別問題となります。
② 遺体を引き取る義務がないからといって、直ちに火葬、埋葬費用を負担する義務がないということにはなりません。
③ 市区町村が立て替えた埋葬、火葬費用について、相続人に弁償請求される可能性があります。
④ また、相続人からの弁償がない場合には、死亡した人の扶養義務者が埋葬、火葬費用を負担するとされています(墓地埋葬法9条、行旅病人及行旅死亡人取扱法11条)。
⑤ 遺体の引取り拒否の理由が、心情だけではなく、単に葬儀費用の問題の場合、行政側としては遺体の引取りを拒否しても費用を負担してもらう可能性があることを説明し、引取りをお願いするということを検討しても良いでしょう。