【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q69 寺院境内墓地における異教徒の埋蔵依頼

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【葬儀・墓地のトラブルQ&A】Q69 寺院境内墓地における異教徒の埋蔵依頼についての記事です。

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【Q69】郷里の墓地に、父の遺骨を納めに行ったところ、宗教の違う者は埋蔵させないと住職から言われました。本当でしょうか。

【POINT】
① 埋蔵拒否の正当理由
② 寺院側の自派典礼施行権

1⃣ 寺院境内墓地の性格
① 寺院境内墓地は、霊園墓地等と区別され、その寺院に所属する檀徒(家)の墳墓であって、宗教法人法上境内地として取り扱われます(宗教法人法3条1項)。
② 檀徒(家)とは、その寺院の仏教教義を信仰し、自己の主宰する葬儀、法要を長期にわたり、当該寺院に依頼し、布施等により寺院の経費を分担する者をいいます。
③ 檀徒(家)の多くはその寺院の境内墓地の使用者となり、先祖代々その墓地に埋葬、埋蔵します。

2⃣ 墓地埋葬法13条による埋蔵等拒否の行政解釈
① 墓地埋葬法13条は、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当な理由がなくこれを拒んではならない」と規定しています。
② この埋葬等を拒否してよい正当な理由とはどのような場合をいうのでしょうか。ご質問の「埋蔵依頼者の宗教が違う」ことが正当な理由となりうるのでしょうか。
③ これは昭和30年ごろ某新興宗教団体への加入者が激増したころに問題となったものです。従来寺院の檀徒であった者たちが、新興宗教団体に入会すると同時に離檀し、その寺院の所属する宗派とは異なる宗派の信仰をするようになりました。
④ 離檀した檀徒は、改宗したにもかかわらず、旧所属の寺院の境内墓地に埋蔵を要求し、寺院側は、埋蔵を拒否したため、この寺院と改宗離壇者の墓地使用をめぐる紛争が全国的に発生し、大きな社会問題になりました。
⑤ そこで昭和34年12月24日付で厚生省(当時)公衆衛生局長から内閣法制局第一部長宛てに、墓地埋葬法13条の「正当な理由」の解釈について照会がなされ、これに対し翌年2月15日内閣法制局は、「宗教団体がその墓地経営者である場合に、その経営する墓地に、他の宗教団体の信者が、埋葬又は埋蔵を求めたときに、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの求めを拒むことは、「正当な理由」によるものとは到底認められないであろう」と述べた。
⑥ そのうえで、「ただここで注意しなければならないのは、…埋葬又は埋蔵の施行に際し行われることの多い宗教的典礼をも、ここにいう埋葬又は埋蔵の観念に含まれるものと解すべきではない。すなわち、法第13条はあくまでも、埋葬又は埋蔵行為自体について依頼者の求めを一般に拒んではならない旨を規定したにとどまり、埋蔵又は埋蔵の施行に関する典礼の方式についてまでも、依頼者の一方的な要求に応ずべき旨を定めたものと解すべきではない」。
⑦ 「墓地の管理者は、典礼方式に関する限り、依頼者の要求に応ずる義務はないといわなければならない。そして、両者が典礼方式に関する自己の主張を譲らない場合には、結局依頼者としては、いつたん行った埋葬又は埋蔵の求めを撤回することを余儀なくされよう」と回答し、行政解釈を示しました。
⑧ この行政解釈によれば、寺院側は、埋葬等依頼者の宗教の違うことのみをもって拒否することはできないが、寺院側の宗派典礼によることを要求することができ、依頼者側はそれに従わない限り埋葬等することはできない結果となるということでした。

3⃣ 津地方裁判所の裁判例
① 前記内閣委法制局の行政解釈がなされた3年後に津地方裁判所の裁判例が出されました。
② 津地裁昭和38年6月21日判決は、その要旨「寺院墓地の管理者は、(埋葬等依頼者)が改宗離壇したことを理由としては原則埋葬を拒否できない。ただし、自派の典礼を施行する権利を有し、その権利を差し止める権限を依頼者は有しない。
③ したがって、異教の典礼の施行を条件とする依頼、無典礼で埋蔵を行うことを条件とする依頼に対しては、寺院墓地管理者は自派の典礼施行の権利が害されることを理由にこれを拒むことができる。この理由による拒絶は墓地埋葬法第13条にいう拒絶できる正当な理由にあたる」と判示しました。
④ この判例は、前記行政解釈から一歩進んで、「無典礼で埋葬等を行う依頼も拒むことができる」として、寺院側の自派典礼施行権を認めたものです。

4⃣ 東京高等裁判所のその後の裁判例
① 上記津地裁判決が出された後、某新興宗教団体はこの種の訴訟をあまり起こさなくなりましたが、この教団と伝統教団(日蓮正宗)が敵対関係となるに及んで、この伝統教団所属の寺院に対して墓地の使用に関して訴訟が提起されるようになりました。
② そのような中、東京高裁平成8年10月30日判決は、寺院の墓地であっても古くからの墓地でなく、寺院自体も新興宗教団体によって寄進され、墓地も「無量寺霊園」と称して新たに造成開発した、日蓮正宗の信徒用の墓地で、墓地使用規則に、葬儀は寺の典礼で行う旨の条件が定められていない事案について、埋蔵依頼者が信徒である限りにおいては、寺院は無典礼で行う遺骨の埋蔵を拒否することはできない旨の判決をしました。
③ この裁判例は、新興宗教団体と日蓮正宗の軋轢から発生した紛争であり、埋蔵依頼者が改宗離壇したものではないこと、墓地使用規則には「当宗信徒に限り冥加料にて貸与し、霊園として使用する場合に限り使用を許可する」となっていて、寺の典礼を受けることが条件とはなっていないことなどから前記津地裁判決とは事案を異にします。

5⃣ 宇都宮地裁平成22年2月15日判決
① その後、無典礼の方式による遺骨の埋蔵を妨害してはならない、とする判決がでました。やはり、前述の某新興宗教団体の会員が、浄土真宗本願寺派の寺を訴えた事案です。まさに改宗離壇の事例でした。
② 宇都宮地裁平成24年2月15日判決。「原告Xの先代Aと墓地管理寺院Yとの間で、大正14年ごろ締結された境内墓地内の墓地区画の墓地使用権設定契約において、Yの定める典礼の方式に従い、墓地を使用するとの黙示の合意が成立したものと認められるが、その合意が本件墓地使用権を承継した者まで及ぶと解することはできず、その者がYの宗派と異なる宗派の典礼の方式を行うことをYが拒絶できるにすぎない」。

6⃣ 結論
① 上記各判例からすると、ご質問の場合は昔からの寺院内墓地の用ですから、寺の住職の行う儀式典礼に従って納骨を行えばよいことになります。
② その場合にはそれ相応のお布施を差し上げる必要があるでしょう。寺側の施行する典礼を拒否する場合は、結局納骨してもらえないことになるでしょう。
③ 寺院経営の墓地でも、前記東京高裁判決の事案のような形態(新たに造成した信徒用の新規墓地)の墓地である場合は、当該寺院の典礼によらなくても自由に納骨することができることになるでしょう。