【相続・遺言について】財産の信託

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、財産の信託について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】①遺言によって財産を信託することができると聞きましたが、「遺言信託」とはどのようなものですか?
②財産の信託によって、生前に受託者と信託契約を結んでおくこともできると聞きましたが、「遺言代用信託」とはどのようなものですか?

【A】◆1.信託とは
質問の回答をする前にまず「信託」という制度の説明をします。
「信託」とは、特定の者が一定の目的に従い、財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう、とされています。具体的な例を示すと、Aさん(委託者)が自分の財産を信頼できるBさん(受託者)に譲渡するとともに、その財産を運用・管理することで得られる利益をCさん(受益者)に与える旨をAさんとBさんの間で合意をするような場合をいいます。そして、この合意により、Bさんは財産を運用・管理・処分する権利を取得しますが、その管理・処分はCさんの利益のために行われなければならない義務を負うことになります。

以上のように「信託」は委託者と受託者との間の契約により設定されるのが通例ですが、そのような「信託」を「遺言」によって設定することもでき、これを「遺言信託」といいます(信託法第3条第2号)。なお、信託銀行で同名のサービスを販売しておりますが、信託銀行などで言う「遺言信託」は遺言書の作成補助及び作成した遺言書の保管・遺言執行者就任を行う全く別のサービスです。
信託法でいう「遺言信託」は、遺言の効力発生、すなわち、委託者である遺言者の死亡によって信託が成立し、効力が発生します。もっとも、いざ、委託者が死亡し、受託者が何もしないということも想定されます。これでは、受益者に不利益が生じる可能性があります。そこで、このような状態を回避するために、法は、遺言に受託者となるべき者として指定をされた者に対して、相当の期間を定めて、その期間内に信託の引受けをするかどうかを確答すべき旨を催告することができるよう定めており(同法第5条1項)、その期間内に委託者の相続人(相続人が存在しない場合は受益者又は信託管理人)に対し確答をしない場合は、信託の引受けをしなかったものとみなされる(同法5条2項)、という定めになってます。

◆2.遺言代用信託とは
ご質問の「遺言代用信託」とは、信託法に定義はありませんが、委託者が生前に遺言の代わりに設定する信託のことを指します。具体的な例として言いますと、高齢者のAさん(委託者)が生前に、Bさん(受託者)に財産を信託して、Aさんが生きている間は、Aさん本人が受益者となり、Aさん死亡時に委託者の妻であるCさんを受益者とする、といったものです。

◆1.で述べた「遺言信託」では、信託財産がAさん(委託者)の死亡後にBさん(受託者)に移転するので、遺言執行手続きに絡んで利害関係人による紛争が起こりやすいというリスクがあります。このようなリスクを回避すべく「遺言代用信託」はAさん(委託者)自らが生前にBさん(受託者)に財産を譲渡し、Aさん(委託者)死亡後におけるCさんへの財産承継を図ることが可能になります。
なお、この「遺言代用信託」も遺留分侵害額請求の対象になることにご注意ください。

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