世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例31 相続させたくない相談についての記事です。
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【相談内容】
妻を早くに亡くしたという相談者(75歳男性)から、「私には近くに住む長女(52歳)と居所不明の長男(50歳)がいる。長男にはギャンブル癖があり、たびたび尻拭いをした末に縁を切り、15年以上会っていない。そういう次第で長男には相続で財産を与えたくないが、どうすればいいだろう」と相談された。
【検討すべき点】
このような相談を時々受けます。相談者が心から長男を憎んでいる場合と、むしろ長男が心配でたまらないが、自分が面倒をみてもらっている長女の手前、けじめをつけておかねばならないと考えている場合があります。結論としては、長男の借金の返済等生前贈与の事実を確認した上、遺言書を残すことになると思われますが、相談者の気持ちに配慮した対応が望ましいです。
【1】勘当
① いきなり「長男と正式に縁を切りたい」、「戸籍から外したい」と切り出される相談者もおられますので、勘当から説明します。
② 江戸時代から明治憲法下にかけては相続権を奪う勘当の制度が存在しました。しかし今の日本国憲法下では認められておりません。
③ 類似のものとして、普通養子縁組の離縁、嫡出否認の訴、親子関係不存在の訴、認知無効の訴、特別養子縁組などがありますが、長男が実子であれば該当しません。
【2】相続人の欠格事由
① 民法891条1号から5号は相続人の欠格事由を定めていますが、相談例の長男はこれに該当しません。
1号:故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
2号:被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3号:詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4号:詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5号:相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
【3】廃除
① 遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、重大な侮辱を加え、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます。
② しかし、廃除は要件が大変厳しく、誰が見ても「これはひどい」と言う虐待又はそれと同等の事実があることが必要で、子が親の言うことをきかないとか、怒鳴り合いをしたという程度ではまったく要件を満たしません(司法統計によると廃除容認の審判は年間30件程度)。
③ 相談例の長男には、ギャンブル依存、借入金の肩代わり(生前贈与)、音信不通といった事情はあるものの、それだけでは排除の要件は満たさないでしょう。
④ なお、遺言書でも排除の意思表示をすることができますが、もっともよく事情を知っている者が他界した後に、遺言執行者が虐待や非行の事実を立証することはきわめて難しいので、お勧めできません。
⑤ なお、推定相続人を廃除しても、長男の子は代襲相続することも注意が必要です。
【4】遺留分の放棄など
① 長男と連絡が取れ、長男も相続を望まないとのことでしたら、裁判所の許可を得て遺留分を放棄してもらう方法があります。もっとも遺留分を放棄しても相続権を失うわけではありません。
② 別途、遺言で全遺産の処分を決める必要がありますし、遺留分の放棄は事情によって撤回が可能なので、法律関係が不安定になります。なお、遺留分の放棄の効果は、廃除と異なり、代襲者にも及びます。
③ 相続分の譲渡(民法905条1項)や相続分の放棄は、相続開始後に相続分が生じてはじめて認められるので、相続開始前にこれらの合意を取り付けても無効です。
【5】遺言と遺留分侵害額請求権
① 相談者には、遺言で全財産を長女に相続させ、長男には何も与えないとしていただく他ないと思われます。そうすると、長男から長女に対して遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。
② たとえば、相談者の推定相続人が2人だと仮定して、長男に対して15年前に3,000万円の援助をし、現時点での遺言者の遺産は4,000万円だとします。
③ この場合、遺留分算定の基礎財産に算入される相続人に対する贈与は相続開始前10年間に限られるので(民法1044条1項、3項)、長男が援助してもらった3,000万円は基礎財産に算入されず、長男の遺留分は4,000万円✖1/2✖1/2=1,000万円となります。
④ しかし、遺留分侵害額請求権の算定においては、遺留分権利者がすでに受けた特別受益たる生前贈与(3,000万円)は、それがいつ行われたかにかかわらず、請求額から控除されます(民法1046条2項1号)。そうすると、長男はすでに3,000万円をもらっているために、1,000万円の遺留分について侵害額請求権を行使できません。
⑤したがって、相談者としては、長男から「15年前に借金の返済のために少なくとも、1,000万円以上の生前贈与を受けました」という確認書を差し入れさせ、このことを理由として、遺産の全てを長女に相続させる遺言を作成しておけば、長男から長女に対する遺留分侵害額請求権の行使を防ぐことができます。
⑥ また、長男からそのような確認書を受け取ることができない場合、長男に金を渡した日付や金額などを特定し、その繰越済み通帳、振込伝票、領収証、借用書等を残しておくように勧めます。
⑦ そして公正証書遺言の付言事項で、長男に対する生前贈与を具体的に記載し、遺言執行者を指定すれば、長男も遺留分侵害額請求権の行使を思いとどまざるを得ないと思われます。それでも、長男が遺留分侵害額請求権を行使してきた場合、家庭裁判所での調停を経て成立しなければ、地方裁判所での訴訟となります。