【成年後見制度について】日常生活に不安を感じている場合は?「補助制度の利用」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「日常生活に不安を感じている場合は?補助制度の利用」について考えてみましょう。

【Q】私は、今年90歳になります。軽度の認知症があるとの診断を受けていましたが、自分ではまだ大丈夫だと思っていました。ところが、先日、家で転倒し、2ヶ月間の入院を余儀なくされました。入院してみてはじめて、夫に先立たれ、子どものいない一人暮らしの私には、こんなとき、私に代わって、入院費や治療費の支払いや福祉サービスの利用契約をしてくれる人が身近にいないことに気がつきました。しかたなく、普段はあまりつきあいのない他県で暮らす姪に無理を言って、私の自宅から銀行の通帳やキャッシュカードを持ってきてもらい、ATMでの現金の払戻しや病院への支払い等を頼みました。ようやく退院し、自宅での生活に戻ることになりましたが、自分の年齢を考えると、これからの生活が心配でなりません。一人暮らしが困難となった場合には、夫が残してくれた預貯金で有料老人ホームに入りたいと考えていますが、認知症の進行を考えると、一人で適切に決められるか不安です。かといって、何かと口うるさい姪には、私の多額の財産の管理や日常生活に干渉されたくありません。何かいい方法はないでしょうか?

【A】認知症であっても軽度であり、日常生活を送るうえで、特に支障がないほどの判断能力があれば、後見や保佐を利用する必要はありません。というより、このような判断能力のある人が、家庭裁判所に申立てをしても、後見や保佐の利用は認められません。

しかし、今はまだ、あなたには、財産の管理や福祉サービスの利用契約等を行うことができるだけの能力があるとしても、これから先、認知症がすすみ、自分で情報を収集、分析したうえで、適切な判断を下すことが、いつできなくなるか心配でならないというのであれは、補助という制度を利用することをお勧めします。これは、精神上の障害(認知症・知的障がい・精神障がい等)により、物事を判断する能力が不十分であるとして、自分の能力に不安を感じている人たちが、家庭裁判所に、財産管理などを行う援助者である補助人の選任を求めるという制度です。

後見や保佐とは異なり、判断能力が欠けているわけでも、著しく劣っているわけでもない人たちが利用する制度であるため、この手続きの開始には、本人の同意が必ず必要とされています。そして、申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為について、本人が同意した場合には、補助人に、同意権や代理権を与えることができます。しかも、補助人の同意が必要とされた行為について、本人が補助人の同意を得ないでした行為は、取り消すこともできます。このように、補助では、本人が必要と考える行為に限定して、補助人に、同意権や代理権を付与することになります。

そのため、あなたのように、日常生活においては支障がないとはいえ、多額の財産の管理や有料老人ホームへの入所といった判断を適切に行うには、自分の能力に不安があるといった場合に、必要以上に、本人の権限(能力)を制約することなく、例えば預貯金の管理(口座の開設・変更・解約・振込依頼・払戻し)とか、福祉関係施設への入所に関する契約といった特定の法律行為に限り、補助人に同意権や代理権を与えて本人を保護し、援助することを可能にするという点で補助人は、有効な制度と言えます。

したがって、あなた自ら、補助開始の申立てを行い、補助人の選任を求め、多額の預貯金の管理や有料老人ホームへの入所契約について、補助人に、同意権または代理権を与えることにするとよいでしょう。ただし、どのような行為について、同意権と代理権のどちらを与えることが適切かに関しては、あなたの能力や財産の種類、額、生活態様等を踏まえ、慎重に検討したうえで、申立てを行う必要があります。法律行為の特定の仕方が悪いと、いざというときになって、補助人の同意権や代理権を否定される恐れもあるので、注意が必要です。

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