【相続・遺言について】遺言書の書き方

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺言書の書き方について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】私は3代続いた和菓子店を営んでおり、その店舗兼自宅に妻と2人で住んでおりました。妻に先立たれた後、息子3人の内、次男が自宅に戻ってきて、私の和菓子店を継ごうと手伝ってくれています。
ちなみに、長男と三男は私と別居しており、それぞれサラリーマンをしています。
私が死亡した場合の相続人はこの息子3人になります。
①私の死後は、すべての財産を次男に渡したいと考えています。この場合どのような遺言書を書けばよいのでしょうか。また、注意すべき点はありますか?
②長男の元妻が、長男と別れた後も本当によく店を手伝ってくれており、なにかしら恩返しをしたいと考えています。どのような遺言書を作成すればよいのでしょうか?
③少なくとも三男にだけは一切の財産を譲りたくありません。何か対処法はありますか?

 

【A】◆1.法定相続人に対する遺言
相談者(遺言者)の死後、次男にすべての財産を渡すためには、「遺言者は、遺言者が有するすべての財産を、遺言者の次男〇〇(✖年✖月✖日生)に相続させる。」という遺言書を作ります。ご質問のように、法定相続人に財産を渡す遺言を作成する場合、「相続させる」という表現を使うことが一般的です。(こうすることで、店舗兼自宅について、次男が他者の意向に影響されることなく、単独で相続の登記手続をすることができるなどといったメリットがあります。)

ただ、このような相続人の一人にすべての財産を相続させる内容の遺言書を作る場合、注意すべき点があります。

①他の相続人が遺留分を有しているため、相談者(遺言者)の死後に兄弟間でトラブルが生じやすいことです。
遺留分を簡単に説明すると、被相続人(本件では相談者兼遺言者)の意思に関係なく、被相続人の財産価値の一定割合を、一定の範囲の相続人が受け継ぐことを認める制度です。
相談者が、次男に全財産を相続させる内容の遺言書を作成して、死亡した場合、長男や三男の遺留分が侵害されていることになります。そのため長男や三男は、次男に対して、遺留分侵害額請求というものをすることができます。
この請求がされた場合、次男は、長男や三男に対して相続した財産価値の一定割合を支払わざるを得ません。(仮に本件の次男が相続した財産が6,000万円として、法定相続人が兄弟3人の場合、次男は、長男や三男に、それぞれ1,000万円を支払わなければなりません。)
もし、相談者の財産に、和菓子店の店舗兼自宅以外の財産(現金や預貯金)などがある場合、長男や三男に対し、現金や預貯金を相続させる内容の遺言にして遺留分の侵害がないようにすれば、相談者の死後、兄弟間でトラブルになることは回避できるでしょう。
ただ、和菓子店の経営には運転資金なども必要でしょうから、現金や預貯金が遺留分に達しない場合などは、遺言書に付言事項として、3代続いた和菓子店を次男に継がせる必要性や理由などを書いて、長男や三男に遺留分侵害額請求をしないように頼んでおくべきでしょう。相談者が生きている間に遺留分を放棄してもらえればより確実ですが、これには家庭裁判所の許可が必要となります。

②すべての財産を相続させる、とだけの遺言をする場合、遺言書だけでは、相談者(遺言者)がどこにどのような財産をもっているのか、相続人が分からないという問題が生じることになります。
そのため相談者の生前に、相続人に対して相談者の財産内容を教えておくとか、遺言書に主な財産の内容を具体的に記載しておくといった対応をしておくのが望ましいでしょう。
遺言書に財産の内容を記載する場合、「特定」できるようにしておくべきです。ここでの「特定」は、他の財産と間違えることなく識別できるという意味です。
例えば、預金の場合、金融機関名、支店名、預金の種類(普通か定期か)、口座番号、名義人といった内容を記載して「特定」することになります。ポイントは、事情を全く知らない人(例えば金融機関の職員など、将来相続手続きに関わる人)が遺言の記載から、どの財産を指すのか明確に判断できるようにする、という観点を持つことが必要です。

◆2.法定相続人以外の者に対する遺言
長男の元妻のように、法定相続人ではない、生前良くしてくれた人に何らかの恩返しをしたい場合は、相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。遺留分を無視された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使する可能性がありますから、トラブルを招く事態となり、恩返しにはなりません。
質問の内容を実現するには、遺言書に「遺言者は長男の元妻△△(✖年✖月✖日生)に対し、下記の財産を遺贈(いぞう)する。」などとして、長男の元妻に渡したい財産を記載します。(遺贈とは遺言によって財産を渡すことを意味します。)
その上で、他の相続人の遺留分を侵害しないように、相続人には財産の一部を「相続させる。」とします。
遺贈や相続させる財産については、必ず、具体的に「特定」できるようにしてください。
それから長男の元妻への遺贈事項に続いて相続人の理解を得るために、元妻に遺贈をする理由を簡潔に説明しておくことがよいと思います。

◆3.法定相続人に相続させたくない場合
遺言書には「三男に遺産を一切相続させない。」と記載します。そして、三男に財産を残さない理由を簡潔に説明しておくとよいでしょう。
もっとも三男は遺留分侵害額請求権を行使する可能性があります。これを防止するには、先程説明した遺留分放棄による対策が考えられます。しかし、本件のような場合、相談者と三男の親子関係が悪化しているでしょうから、家庭裁判所の許可を必要とする遺留分放棄の手続きに三男の協力を得ることは難しいと思います。
ほかに、遺留分を有する三男を遺言で廃除するという方法もあります。この「廃除」には要件が必要となります。「廃除」は相続人が「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えた」場合、又は相続人に「その他の著しい非行」があった場合のみ、認められるとされています。
遺言による排除の場合、遺言者の三男◇◇(✖年✖月✖日生)は平成〇年頃から令和〇年頃まで、遺言者に対し繰り返し暴行を加え、暴言を浴びせ、遺言者の多額の金銭を無償で消費する等の虐待をしたことから、遺言者は三男を相続人から排除する。」というように、廃除事由を具体的に記載します。
このような遺言は、遺言者の死亡によって効力を生じることになります。その場合遺言執行者が、家庭裁判所に廃除の審判を請求しなければならないとされています。そのため、遺言書に遺言執行者を指定する必要があります。(指定されていない場合、利害関係人(相続人等)が家庭裁判所に遺言執行者の選任を求めることになります。)
なお、裁判所は廃除を認めることに慎重であると言われております。

◆4.まとめ
遺言を作るにも考えなければならない問題がありますし、作ったとしても、自分の思い通りに実現されるとは限らない場合があります。遺言について分からないことが生じましたら、当事務所までご相談下さい。

コメントを残す