【相続・遺言について】問題のある遺言

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、問題のある遺言について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】①先日、父が亡くなったのですが、自筆で書かれた遺言書が2通見つかりました。1つは平成22年4月1日付の遺言で、自宅土地建物を母に相続させ、預貯金を弟と私に半分ずつ相続させるという内容なのですが、もう一つは平成24年8月1日付の遺言で、自宅土地建物を私に相続させ、預貯金を母と弟に半分ずつ相続させるという内容です。両方とも父の筆跡であることは間違いないのですが、この場合、相続はどのようになるのでしょうか?

②先日、5年間病院で寝たきりだった母が亡くなったのですが、遺言書が見つかりました。その内容は、妹に全財産を相続させるというものですが、私の知っている母の筆跡とはだいぶ異なる気がします。また、仮に母の筆跡だったとしても、作成日となっているのは、母が亡くなる直前であり、母の意識はもうろうとしていました。このような遺言書でも従わなければならないのでしょうか?

③先日亡くなりました父の遺した遺言書(作成日はなくなる3年前)には、法定相続人である母と私と弟にそれぞれどの遺産を相続させるか、財産ごとに指定して記載されています。その中で、田舎の土地については私に相続させると書かれているのですが、田舎の土地は父が亡くなる1年前に自ら売却しており、すでに他人名義となっています。田舎の土地を私が相続することはできますか?

【A】◆1.複数の遺言
遺言は、遺言の方式に従えば、いつでも全部又は一部を撤回できます。
また、前後の遺言の内容が抵触する場合、抵触する部分は、後の遺言で、前の遺言を撤回したものとみなされますので、後の遺言が効力を有することになります。
本件では、自宅土地建物と預貯金の分け方が変わっておりますので、後になされた平成24年8月1日付の遺言が有効となり、それに従って相続されることになります。

◆2.筆跡や遺言意思の疑わしい遺言
遺言は、厳格な要式行為すなわち法律で定めた要件に従ってなされる必要があります。
自筆証書遺言の場合、遺言の全文、日付、及び名前を自書して、押印することが要件となります(遺言と一体の財産目録は、記載のある頁毎に署名押印されれば、自書でなくとも可能です。)。
被相続人の意思のとおりの内容の遺言であっても、他人が代わりに書いた遺言は、無効です。
本件では、被相続人であるお母さまの筆跡と異なっているように見えるわけですから、遺言書をだれが書いたのか、被相続人の生前の筆跡と比べるなどして確認します。
他人が書いた遺言であれば無効ですが、死の直前であれば、字が乱れるなど筆跡が変わることもありますので、慎重な検討が必要でしょう。

次に意識がもうろうとしていた時点で作成された遺言について回答します。
遺言をするには、遺言者に、遺言能力があることが必要です。
遺言能力とは、遺言の意味、内容を理解して、遺言の効果を判断するに足りる能力のことを言います。
また、法律行為ですので、当然意思能力すなわち事理を弁識する能力(自分が何をしているのかがわかる能力)も必要です。
意識がもうろうとしていて、遺言能力や意思能力がない状況であったのであれば、遺言は無効であり、従う必要はありません。

◆3.遺言作成後に生前処分された財産についての相続
遺言内容はいつでも撤回でき、後の遺言が前の遺言と抵触する場合、前の遺言を撤回したことになりますが、それと同様、遺言と抵触する生前の処分も、その部分について撤回したものとみなされます。
相続させると書かれていた土地が、遺言者である父の生前に売却され、遺言の内容と抵触しておりますから、その部分は撤回されたものとみなされ、相続できません。

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