【相続・遺言について】遺留分侵害額請求の相手方

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、遺留分侵害額請求の相手方について考えてみたいと思います。

世田谷の相続・遺言・成年後見は090-2793-1947までご連絡を

 

【Q】父が半年前に亡くなりました。法定相続人は母、兄、自分の3人です。
①父の死後、兄が公正証書遺言というものを持ち出してきたのですが、その内容は父名義の預貯金2,000万円のうち、500万円を叔母に贈与する、その他の財産はすべて兄に相続させるという内容になっていました。父名義の資産としては、預貯金のほかに不動産や株式などがあり兄が相続した分の合計額は5,000万円ほど、遺産総額で5,500万円になります。なお、預貯金を払い出してもらう手続きも、不動産の名義を変更する手続きもすべて終わってしまっています。このような場合、遺留分侵害額請求というものができると聞いたのですが、誰に対して行使することができるのでしょうか?
②遺留分侵害額請求を行使する前に、叔母が亡くなってしまいました。相続人は子供1人です。この場合はどうしたらよいでしょうか?
③兄が相続した不動産の一部が売却されてしまっていることが分かりました。この場合はどうしたらよいでしょうか?

 

【A】◆1.誰に遺留分侵害額請求をするべきか
遺留分を侵害された者(遺留分権利者及びその承継人)は、受遺者・受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
遺言において特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、本来、遺贈とは法的性質は異なりますが、何らの行為を要しないで当該遺産が被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されるものと考えられていることから、遺贈と同順位で負担します。そして、複数の遺贈がある場合には、遺贈目的物の価額の割合に応じて負担します。
本件では、あなたのお兄さんと叔母さんが、遺留分を侵害する行為によって直接利益を得た受遺者として、遺留分侵害額請求の相手方となります。あなたは、お兄さんと叔母さんに対して、遺留分侵害額請求権を行使することができます。

あなたの遺留分は、被相続人の財産の8分の1になります(財産の2分の1に法定相続分である4分の1を乗じて算出)。
遺留分の基礎となる財産額5,500万円に対し、あなたの遺留分額は687万5000円です。そして遺留分侵害額請求に際しては、遺贈の目的の価額の割合に応じて負担することとされています。この点、お兄さんは遺留分侵害額請求の相手方であると同時に、相続人でもあります。このような場合には、目的物の価額は遺贈された目的物の価額から遺留分として当該相続人(受遺者)が受けるべき額を控除した額が限度となります。
したがって、お兄さんについてはお兄さんの遺留分を超える部分のみとして、
5000万円-687万5000円=4312万5000円。叔母さんは遺留分がないので500万円となります。
お兄さんへの請求額は 687万5000円÷(4312万5000円+500万円)×4312万5000円≒616万714円
叔母さんへの請求額は 687万5000円÷(4312万5000円+500万円)×500万円≒71万4286円

◆2.直接利益を得た受遺者・受贈者が亡くなっていた場合
遺留分侵害額請求の対象となる行為によって直接利益を得た受遺者・受贈者の包括承継人は、遺留分侵害額請求の相手方になります。
本件において、叔母さんの子は受遺者の包括承継人にあたりますので、あなたは、叔母さんの子に対し、遺留分侵害額請求権を行使することができます。

◆3.直接利益を得た受遺者・受贈者がその目的物を他人に譲り渡していた場合
今回の改正により遺留分侵害額請求は金銭債権とされたため、減殺を受けるべき受遺者・受贈者が贈与・遺贈の目的物を他人に譲り渡したときであっても、遺留分権利者は受遺者・受贈者に対して金銭賠償を求めることができます。

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