【改正民法債権編】時効の完成猶予と更新

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、時効の完成猶予と更新について考えてみたいと思います。

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時効の完成猶予と更新

制度名称の変更と時効の完成を防ぐ事由の詳細化

 

◆時効の完成猶予と更新
(1)旧法における考え方
時効は一定期間の経過により完成しますが、常に一定期間の経過により時効が完成するわけではなく、時効の完成を防ぐ制度もあります。
旧法ではそれら制度を「時効の中断」(旧法147条~157条)と「時効の停止」(旧法158条~161条)と呼んでいました。

①時効の中断
時効の中断とは、中断事由として規定されている事由が発生した場合に、それまで経過した時効期間の効力が失われ、時効期間がゼロに戻る制度です。中断事由が終了すると、再度時効期間が進行し始めますが、中断前の時効期間を通算することはできず、また新たに時効期間が進行します。

②時効の停止
時効の停止とは、停止事由として規定されている事由が発生した場合に、時効の完成を一定期間猶予する制度です。猶予期間中、何もしなければ、猶予期間経過後、時効が完成します。

(2)新法における規定
このような時効の中断と停止ですが、新法ではそれぞれ、時効の「更新」と時効の「完成猶予」という言葉に改正されました。

これは時効の「中断」と「停止」という言葉の一般的な意味と、その法的効果とが合致していなくてわかりにくいことから、直接的に法的効果を表現する言葉を使用し、わかりやすくすることを目的にしています。そのため、言葉は変わりましたが、その法的な意味は基本的には変わらないと理解されています。

「時効の更新」は、それまでの時効期間の効力が失われ、新たに時効期間が進行することを意味していますし、「時効の完成猶予」は、時効の完成が一定期間猶予されることを意味しています。

 

◆時効の完成猶予と更新事由
時効の完成猶予と更新事由について改正点をまとめると次のようになります。

 

◎新法147条
・時効障害事由
①裁判上の請求
②支払督促
③訴え提起前の和解または民事調停法もしくは家事事件手続法による調停
④破産手続参加、再生手続参加または更生手続参加
・完成猶予としての効力
これら事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。
また、訴えの取下げのように、確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。以下同じ)以外でその事由が終了した場合には、その終了時点から6か月経過時まで、時効は完成しない。
・更新の効力
これら手続の結果、確定判決によって権利が確定したときは、これら事由が終了した時から新たにその進行を始める。

 

◎新法148条
・時効障害事由
①強制執行
②担保権の実行
③担保権の実行としての競売の例による競売
④財産開示手続
・完成猶予としての効力
これら事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。また申立ての取下げや不適法取消しによって終了した場合には、6か月経過まで、時効は完成しない。
・更新の効力
これら事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げまたは不適法取消しによってその事由が終了した場合は更新しない。

 

◎新法149条
・時効障害事由
①仮差押え
②仮処分
・完成猶予としての効力
これら事由が終了した時から6か月経過時まで、時効は完成しない。
・更新の効力
なし

 

◎新法150条
・時効障害事由
催告
・完成猶予としての効力
催告から6か月経過時まで、時効は完成しない。また、完成猶予期間中になされた再度の催告は、完成猶予の効力を有しない。
・更新の効力
なし

 

◎新法151条
・時効障害事由
権利について協議を行なう旨の合意
・完成猶予としての効力
以下のいずれか早い時期までの間は、時効は完成しない。
①合意から1年
②当事者の定めた協議機関(1年未満)
③協議続行拒絶を一方当事者が行なったときは、その通知から6か月
ただし、本来の時効期限から5年以内であれば、合意を繰り返すことが可能。
・更新の効力
なし

 

◎新法152条
・時効障害事由
承認
・完成猶予としての効力
なし
・更新の効力
承認があった時から新たに進行を始める。

 

◎新法161条
・時効障害事由
天災
・完成猶予としての効力
天災により新法147条や新法148条の手続ができないときには、その障害が消滅してから3か月経過時まで、時効は完成しない。
・更新の効力
なし

 

新法151条では、当事者間の合意により、時効の完成猶予を認める制度を導入しました。これは、当事者間で交渉が継続しており、債務承認はできないが、時効完成間近のときに使用されます。ただし、明確性確保のために書面または電子メール等による合意を求め、要式行為としています。

新法148条や新法149条に列挙された事由は、連帯保証人や物上保証人など債務者以外に対して行なうこともあります。そのような場合には、債務者など時効の利益を受ける者に対して通知をした後でなければ、時効の完成猶予または更新の効力は生じません(新法154条)。

また、未成年者または成年被後見人の権利、夫婦間の権利、相続財産に関する権利の時効の完成猶予については改正はなく、旧法のままとなっています。

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