【改正民法債権編】弁済受領権限と事実上の優先弁済

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、弁済受領権限と事実上の優先弁済について考えてみたいと思います。

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弁済受領権限と事実上の優先弁済

債権者代位権を行使した債権者に弁済受領権限があることを明文化

 

◆債権者の弁済受領権限
債権者代位権を行使した債権者は、第三債務者から債務者に対してなされる弁済を、債務者に代わって受領する権限があるでしょうか。
それとも、第三債務者に対して、「債務者に対して弁済・交付せよ」と言えるに留まるのでしょうか。

仮に、第三債務者に対して、「債務者に対して弁済・交付せよ」としか言えないとすると、債務者がその受領を拒絶した場合、債権者代位権を行使した目的を達することができません。債権者代位権は、債務者自身が権利行使しない場面で用いられるものであり、債務者が債権者を困らせるために弁済の受領を拒絶する可能性は否定できません。

そこで、、旧法下で判例は、債権者は、債務者に代わって第三債務者から弁済を受領する権限があることを認めています。
これにより、債権者は、債務者の受領拒絶を心配することなく債権者代位権を行使することができるのです。

 

◆債務者の代わりに受領した金銭の取扱い
債権者代位権が行使される典型的な例は、債権者の被保全債権が金銭債権で、代位行使される債務者の債権も金銭債権である場合です。
前述のとおり、債権者は弁済受領権限を有するため、第三債務者から直接債務の弁済を受けることができます。
債権者が第三債務者から受領した金銭は本来債務者のものであって、債権者がこれを保持する権利を有するわけではありません。債権者が有するのは、あくまで債務者の代わりに弁済を受領する権限であって、債務者の所有物を自分のものにする権限はないのです。
そのため、債権者は、受領(回収)した金銭を債務者に返還する義務があります。

 

◆事実上の優先弁済権
前述のとおり、債権者は第三債務者から受領した金銭を債務者に返還しなくてはなりません。
では、債務者が債権者に対して、その受領した金銭の返還を求めた場合に(不当利得に基づく返還請求)、債権者は、その金銭の返還債務と、被保全債権たる債務者に対する債権を相殺することはできるでしょうか。

債権者代位権は、特定の債権者により行使されるものの、そこで維持された債務者の財産は、全債権者の債権の引当てとなります。そのため、債権者代位権の効果は、全債権者に帰属することになります。

債権者代位権が全債権者の利益を図るための制度であることからすれば、代位権を行使した債権者だけが優先弁済を受けることになる相殺は許されないことになります。しかし一方で、率先して火中の栗を拾って第三債務者から回収した債権者に優先弁済を受けさせることは、むしろ公平にかなうという考え方もあります。

旧法下で判例は、債権者に、債務者に対する返還債務と被保全債権を相殺することを認めています。これにより、債権者代位権は、(金銭債権の場合に)債務者の財産を維持して全債権の利益を図る制度というよりも、代位権を行使した債権者が被保全債権について優先的に弁済を受けるための制度という側面(事実上の優先弁済)が生じています。

 

◆新法での取り扱い
旧法における解釈を受けて、新法は、債権者に弁済受領権限があることを明文で認めました(新法423条の3)。また、第三債務者が債権者に弁済したときは、第三債務者の債務者に対する債務が消滅することも規定されました。

新法制定の過程では、相殺による事実上の優先弁済につき、全債権者の利益を図るべきという債権者代位権の趣旨に反するとして、明文で禁止すべきことも議論されました。しかしながら、債権者代位権が実務上果たしている簡便な債権回収手段としての役割は積極的に評価する余地があること等を踏まえ、相殺を禁止する条項は見送られました。

そのため、相殺を認めている現在の判例の運用が継続し、結果として相殺による事実上の優先弁済が今後も許容されることになります。

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