【終活・遺言・相続相談】相談例27 土地活用

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例27 土地活用についての記事です。

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【相談内容】
相談者(74歳男性)から、「8年前に亡き父から相続した郊外の土地について、馴染みの税理士から、近くに大学もあることだし、相続税対策として学生向けマンションを建てて有効活用してはどうか。必要なら信用金庫を紹介すると勧められた。土地を遊ばしていても固定資産税がかかるだけなので、気持ちが動いているのだが、どうだろうか。」と相談された。

【検討すべき点】
遊休土地を持つ高齢者に対し、相続税対策として、土地活用がよく勧められています。勧誘する側は、メリットを強調する説明に終始することが多いようですが、どのような相続税対策にもメリットと、デメリットが必ずあります。考えられるリスクを指摘することになります。

【1】土地活用の提案

① 主として金融機関、不動産開発・管理業者(サブリース業者)、建設業者、税理士などは、いわゆる土地持ちの富裕層の高齢者に対して土地活用を勧めます。金融機関には融資実績が、不動産開発業者にはマンション販売や賃貸管理業務が、建設業者には工事請負契約獲得、税理士には相続対策コンサルタント料の獲得といった思惑があることは言うまでもありません。
② こうした勧誘者は、遺産のうち土地の占める価格割合が大きいことを指摘し、土地の課税価格を下げることがもっとも効果的な相続税対策であると説明し、利用されていない更地に賃貸用マンションやアパートを建てることなどを提案します。

【2】節税効果の検証

① どの程度の節税になるのか、簡略化した例で確認してみます。
相談者が所有する郊外の土地は、固定資産税評価額2億円、路線価2億4千万円、実勢価格3億円の更地だったとします。このまま相談者の相続が開始すれば、この土地は、相続税の課税では路線価に従って2億4千万円と評価されます。
② つぎに、相談者が信用金庫から建築資金3億円を借入れ、同土地上に同額で賃貸マンションを建築して入居者を募り、その5年後に死亡したとします(土地の評価は変わらないものとして考えます)。
③ その場合の相続税の計算では、1)土地は更地での評価額2億4千万円から貸家入居者の借地権割合2割を控除して1億9,200万円になり、2)建築した建物の評価額は3億円から年々評価が逓減して、5年後には2億4千万円に下がったとすると、さらに借家権割合5割を控除できるので、1億2千万円となります。
④ そうすると、課税される資産としては土地1億9,200万円と建物1億2千万円の合計3億1,200万円になりますが、他方で信用金庫からの借入債務が2億6千万円残っていれば、課税相続財産を5,200万円に圧縮できるという計算です。
⑤ その他、賃料は現金収入なので(固定資産税などの負担を差し引いても)相続税の原資を貯めておくことができるとか、その管理もサブリースで引き受けるから安心であるとか、敷金返還債務も債務計上できるなどと説明されます。

【3】問題点

【3ー1】空き室リスク
① 土地活用の前提は、賃借人によって貸室が満たされていることです。しかし、街中かつ駅近の立地ならともかく、そうでないなら、計画通りに学生マンションが満室になるかどうか、それがいつまで続くかは問題です。学生マンションの需要があるなら、やがて周辺にも学生マンションが林立し、古いマンションの賃料は値下げをせざるを得なくなります。
② また、昨今の少子化により大学は都心のサテライトキャンパスへの移転やダウンサイジングを進めていますので、学生需要がいつまで続くかもわかりません。したがって、状況の変化に耐え得る代替的需要があるかどうかも検討しておかなくてはなりません。

【3-2】サブリース

① 大手の不動産管理業者(サブリース業者)との間で建物全体の賃貸借契約(マスターリース契約。通常は管理業務委託契約も併せて締結します)を締結し、サブリース業者が個々の賃借人に転貸(サブリース契約)する方法をとれば、当面、空き室率は考える必要がなく、維持管理の煩わしい作業も不要です。
② しかし、サブリースの手数料で利益率は下がりますし、サブリース業者から一方的に賃料を減額されたり解除されたりするリスクがある一方で、賃貸人からはマスターリース契約を容易に解除することができないと指摘されてきました。
③ さらに、建物を売却処分する際に賃借人に退去を求めることはできず、売買価格が低くなる傾向もあるようです。
④ このようにサブリース業者とオーナーの間で問題が生じることが多いため、令和2年12月15日、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)の一部が施行されました。同法3章はサブリースに関するもので、誇大広告等の禁止(同法28条)や不当な勧誘等の禁止(同法29条)を定め、国土交通省により、具体的な指針を示す「サブリース事業に係る適正な業務ためのガイドライン」も策定しました。
⑤ したがって、マスターリース(サブリース)契約締結時には、これらの契約条項をチェックする必要があります。

【3ー3】管理費用の負担

① サブリース契約に問題があるため、最近、ちいさな物件では不動産仲介業者だけ利用し、管理は自分でするという賃貸人もおられます(不動産管理会社を作ることもあります)。
② しかし、管理人を置けば人件費がかかりますし、管理人を置かなければ借家人の細かい苦情にも対応しなければなりません。建物劣化に伴う修繕費の負担やリフォームにも頭を悩ませることになります。
③ なお、サブリース業者は提携している下請け業者を安く使って賃貸物件の管理で利益を出しますが、個人の賃貸人が同じ手法をとることはできず、かえって管理費用が高くつくようです。

【3ー4】相続対策

① 土地活用のいちばんの問題は相続開始後の処理です。たとえば、相談者に3人の子がいて、賃貸マンションが遺産のかなりの部分を占めているとしましょう。
② 公平さを求めるなら、マンションを売却して代金を3等分すればいいのでしょうが(換価分割)、マンションの収益に依存していた相続人がいれば反対しそうです。3人の共有にしても(共有分割)、権利関係が錯綜します。
③ 区分所有権に分けて分配しても(現物分割)、共用部分やエレベータの保守点検、修繕、清掃やゴミ出しなど建物1棟全体の管理の問題で日常的にもめることになりかねません。
④ そうすると、このマンションは借入金債務とともに相続人の1人に相続させ、残りの相続人には代償金を与える方法(代償分割)がベストのように思えますが、代償金の金額やその履行、借入金債務の承継に関する処理(免責的債務引受に関する債権者の同意)などでもめます。
⑤ 遺言で、債務とともに誰か1人に相続させることも考えられますが、遺留分を侵害していれば遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。
⑥ なお、マンションの収益が悪化していた場合には債務承継を嫌がってマンションの押し付け合いになるかもしれません。さらに、相談者が不動産管理会社を設立していれば、その株式の評価、相続開始後の賃料、維持管理費や固定資産税等の清算など多くの問題が予想されます。
⑦ したがって、土地活用(賃貸物件の建築)は、相続開始後に生じる問題に対して、どのように対応するかを事前に検討しておかなければなりません。

【4】相談者に対するアドバイス

相談者に対しては、土地活用による相続税対策も不動産投資である以上、相続開始前にもリスクがあり、相続開始後にもその処理をめぐって遺産分割が紛糾するリスクがあることを説明します。そして、相談者に不安があるなら、士業に依頼して、スポットでのアドバイス契約や顧問契約を締結して、サポートしてもらうことをお勧めします。なお、代理交渉も依頼したい場合には、法律の定めに従い、弁護士に依頼することが必要になってきます。