【終活・遺言・相続相談】相談例28 事業承継

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例28 事業承継についての記事です。

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【相談内容】
中小企業を経営する相談者(76歳男性)から、「同業他社にいる長男(37歳)に会社を継がせたいが、良い返事が返ってこない。どうすればうまくいくだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
同業他社で就業しているのなら、長男も相談者の会社を継ぐ気がないわけではなさそうです。事業承継を円滑に実現したいなら、相談者が長男と腹を割って話し合い、会社の財務内容を開示し、長男に株式と権限を委譲し、連帯保証を引き継がせない方法を検討すべきでしょう。

【1】親族内承継

① 今後数年のうちに中小企業経営者の半分以上が70歳を超え、そのうち半数は後継者が決まらず、利益が出ていても廃業する意向だと言われています。事業承継のためには、親族か従業員から後継者を見つけるか、M&Aによるしかありませんが、中小企業では我が子に事業承継させる親族内承継が一般的です。
② 親族内承継のメリットは、後継者が経営内容を熟知していること、子が家業を継ぐことについて周囲の理解を得やすいこと、代表者の資産を相続によって承継できることであり、デメリットとしては、子に事業経営の能力や熱意が足りないこと、代表者の相続紛争のリスクがあること、後継者が個人保証を求められることなどが挙げられます。

【2】代表者と後継者との関係

① 長男が同業他社に就業しているにもかかわらず、実家の事業承継を逡巡する理由を考えてみるべきでしょう。
② 相談者としては、長男を同業他社に武者修行に出したのでしょうが、実際に長男が外から自社を眺めてみると、旧態依然とした経営体制やよくない評判が目についたのかもしれません。そして、現在の会社の仕事にやりがいを見出し、まだ親の跡目を継ぐ気にはなれない可能性があります。
③ 長男は自社の業績や将来性に疑問を持っている可能性があります。自社の問題点が明確であれば、盛り返そうという気持ちにもなれますが、現代表者である相談者が長男に対して情報を開示していなければ、その判断もできません。
④ 個人保証が必要ならばなおさらです。したがって、相談者が長男に財務諸表を渡し、自社の業績を包み隠さず説明しているのかが気になるところです。
⑤ 相談者と長男との親子関係が長男に事業承継を逡巡させる原因になっていることも多いでしょう。つまり、自社に戻っても父親が権勢をふるい、権限移譲も進まず、古参の社員たちも父の言いなりで、しかも経営の先行きも不安だといった事情があるなら、今の生活や立場を捨ててまで事業承継をしようとは思いません。
⑥ 実際、社員たちの面前で、創業者の社長が「おまえは使い物にならん。社長には早すぎる」と後継者の息子を痛罵したケースもあります(それ以外に、長男が社内に在籍している親族や配偶者に遠慮している可能性もあります)。
⑦ したがって、相談者としては、先ず長男の言い分に耳を傾け行く末を確認できたら潔く身を引くこととし、その方針を内外に宣言することが必要と思われます。また、相談者が長男に対して老化による体の不調を訴え、「社員を守るためにおまえが必要だ」という態度を示せば、長男の態度が変わるかもしれません。

【3】自社株譲渡の方法

① 創業者社長は、後継者に対しても、なかなか自社株を譲渡しない傾向があります(死ぬまで自分の会社です。)。しかし、いずれは自社株の譲渡(又は生前贈与)が必要ですし、後継者の長男にしても自社株を持ってはじめて自覚が芽生えます。
② 自社株譲渡の方法としては、売買、贈与、相続の3種類がありますので、それらを比較検討することになります。
③ 売買では代金原資が必要ですから、長男に役員報酬を与えて自社株の代金を支払わせることを検討します。次に、贈与は贈与税が課税されますので、自社株の評価が下がるときを狙って贈与し、相続時精算課税制度の適用を受けておきます。また、相続(遺言)によって自社株を取得させる場合は、相続開始時の自社株の評価額が不明であること、相続人間の紛争を招きかねないことに注意が必要です。
④ 自社株の信託を利用した事業承継も研究されていますが、内容が複雑になるため、まだ一般的ではありません。

【4】遺留分侵害

① 後継者への自社株の贈与は、ほかに十分な財産がないと遺留分侵害の問題を生じることがあります。特に、平成30年改正前の旧民法下で、遺留分減殺請求権が行使された場合には、自社株は後継者と遺留分権利者の準共有となり、事業承継の障害になるケースがありました。
② そこで、平成20年に施行された中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、経営承継円滑化法という)では、推定相続人ら全員の合意により、株式の価格を遺留分の基礎財産から除外し、又は固定できるとされました。もっとも、その要件は厳しく、同年の統計でも、除外合意や固定合意のために必要とされる家庭裁判所の許可は年間18件しかありませんでした。
③ しかし、平成30年の相続法改正により、遺留分権利者の権利は遺留分侵害額請求という名の金銭債権に変わりましたので、遺言や生前贈与によって自社株を処分している場合には、準共有の問題はなくなりました。

【5】個人保証の承継問題

① 親族内承継が進まない理由の一つは保証債務の承継だといわれており、経済産業省や中小企業庁もその対策に腐心してきました。
② まず、中小企業信用保険法の運用として、令和2年4月1日から事業承継特別保証制度が開始されました。これは、例えば、所定の条件を満たせば、3年以内に事業承継を予定する法人に対して、事業承継までに必要な事業資金や借換資金を後継者の個人保証なしで実行する(信用保証協会が信用保証する)というものです。
③ 前述の経営承継円滑化法の改正として、令和2年10月1日から経営承継借換関連保証制度が利用できることになりました。これも、事業承継特別保証制度とほぼ同様の条件を満たせば、3年以内に事業承継を予定する法人に対して、借換資金の融資を後継者の個人保証なしで実行するというものです。
④ これらの制度により、物的担保があればそれぞれ2億8,000万円まで、担保がなければそれぞれ8,000万円まで保証人なしの借換を受けられる可能性がありますが、いずれにせよ、相当程度に健全な経営状態でなければ適用されないでしょう。また、両制度は少しずつ適用の要件が異なりますので、まずは、商工会議所の事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談することを勧めます。