【終活・遺言・相続相談】相談例53 不動産の相続

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(60歳男性)から、「半年前に母(85歳)が亡くなり、長男の私と次男(56歳)、三男(53歳)の3人が相続人となった。遺産としては、母が住んでいた自宅くらいしかない。ずっと独身の三男は、1年前から自宅に居候していて、「母から頼まれたから、自宅は俺が相続する」と言って言うことを聞かない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
不動産が遺産に占める割合は4割を超えるといわれ、遺産分割でもかなりの割合で不動産の評価と分割方法が問題になります。特に、被相続人の自宅が遺産のほとんどを占め、しかも相続人が居住している場合には、自宅を誰が相続するかで意見対立が生じやすくなります。

【1】不動産の遺産分割の方法

一般に、不動産の分割方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割があります。

【1-1】現物分割

① 現物分割は、遺産中に複数の不動産がある場合に複数の相続人が別々の不動産を取得する分割方法です。兄が3000万円のA不動産を取得し、弟が6000万円のB不動産を取得し、その差額を調整するため、弟が兄に代償金1500万円を支払うというように、代償分割と組み合わせて行なわれることが多いです。
② なお、相続不動産が自宅兼テナントビルの1棟だけという場合、兄が1階から3階部分の区分所有権を取得し、弟が4、5階の区分所有権を取得するといった現物分割の方法もありますが、後々、その建物の権利でもめます(たとえば、雨漏りの修繕やエレベータの保守点検など共有部の管理費で対立します)。
③ したがって、現物分割でうまくいくのは、相続人の数に応じた独立の不動産がある場合になります。

【1-2】代償分割

① 代償分割は、相続人の一人が遺産である不動産を相続し、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。相続不動産は取得者の単独所有となるので後顧の憂いはありませんが、代償金の金額(不動産の評価)をめぐって対立しやすく、また、取得者に代償金を支払うだけの資力や信用がなければ成立しません。
② なお、相続不動産を取得する相続人が、代償金の支払に代えて自己所有不動産や持分を他の相続人に譲渡する場合には譲渡所得税を課税されることがあるので、等価交換の特例を検討します(税理士への相談は不可欠です)。

【1-3】換価分割

① 換価分割は、相続不動産を売却して、その代金を相続人間で分配する方法です。市場で売却するため代償分割と比べて不動産の評価については問題が起こりにくく、相続人間の関係を公平に清算できる点で理想的です。
② ただし、当該不動産の承継に固執する(売却に反対する)相続人がいれば、この方法では解決できません。
③ また、換価分割では不動産を処分するため、相続税の他に譲渡所得税が課税されます。したがって、換価分割による代金を得る場合は、代償分割で代償金を得る場合と比べると、譲渡所得税が課税される分だけ手取り額が下がるという短所があります。
④ 換価分割の具体的方法についても注意が必要です。たとえば、3人の子が換価分割する場合、持分3分の1ずつの所有権移転登記を経由し、3人が売主となって不動産を売却することになるのが原則です。
⑤ しかし、遠方居住の子がいる等の事情により、手続を簡略化するために、一人の子の単独名義で登記した上で、その名義人が不動産を売却して、他の相続人に分配金を支払うという方法が採られることが少なくありません。
⑥ しかし、思ったような金額で売れず、もう少し、もう少しと躊躇しているうちに長期間が経過することがあります。ところが、ようやく不動産を売却した後、名義人(売主)の子にだけ譲渡所得税が課税され、分配金の支払いを受けた他の子には贈与税が課税される可能性があります。
⑦ これを避けるためには、遺産分割協議書の中で、名義人の子はあくまで換価分割のために不動産を単独取得し、その後売却して代金を分配することが明らかになるように記載する必要があります。また、相続人間では、売却の時期や値段もはっきりと決めておくべきでしょう。

【1-4】共有分割

① 共有分割では、遺産分割協議の結果、各相続人が不動産の共有持分を取得する分割方法です(各相続人の持分が法定相続分通りとか限りません)。
② 遺産分割が成立しなくても、相続不動産は各相続人の共有に属しますから、遺産分割での不動産の共有分割は問題の先送りに過ぎないと思えます。
③ しかし、遺産に関しては分割の方法や分割の禁止が定められていますので、相続人が遺産の分割を求めるためにはまず遺産分割によるべきであり、いきなり共有物の分割請求(民法256条、258条)を求めることはできないと解され、令和3年民法改正でも、相続財産に属する共有物の分割は遺産分割によるのが原則で、民法258条による分割請求ができないことが確認されました(改正民法258条の2第1項)。したがって、共有分割の遺産分割は、共有物の分割請求の条件を整える必要があります。
④ したがって、延々と時間をかけて遺産分割協議や遺産分割調停を続けるよりは、法定相続分通りで相続不動産を共有分割してしまい、その後の共有物分割請求訴訟で分割を求める方が早道になる可能性があります。
⑤ 共有物分割請求訴訟においては、競売や任意売却による処分も考えられますし、全面的価格賠償の判決を得て、適切な相続人が相続不動産の所有権を手に入れることができるかもしれません。

【2】自宅の処分

① 相談例の場合、複数の不動産はないので、現物分割は不適です。三男が自宅の承継に固執するなら、相談者と次男は、三男に対して代償金を支払うよう求めることになりますが(代償分割)、三男の資力が乏しければそれも期待できません。三男が「自宅を退去しない」「絶対に売らない」と主張する以上、換価分割もできません。
② このような場合、相談者としては、遺産分割調停を申立て、調停委員会による三男の説得を期待しますが、三男が(共有分割も含めて)自宅の処分に同意しなければ、調停の成立は期待できません。
③ したがって、調停は不成立として遺産分割審判に移行してもらい、遺産の競売や任意売却による換価(家事事件手続法194条)又は代償分割(同法195条)の審判を期待することになります。なお、換価分割ですら相当でない場合は共有分割の審判が下されることもあるようです。

【3】譲渡所得税

① 遺産を処分する場合(換価分割や清算型遺言など)には、譲渡所得税が問題になります。譲渡所得税とは不動産などの資産を売ったときの譲渡所得(譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除)に対して、事業所得や給与所得とは分離して課税される(分離課税)所得税の一種です。
② その税額に関しては、譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として所得税15%、住民税5%及び復興特別所得税2.1%(計22.1%)が課せられ、所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得として、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税2.1%(計41.1%)が課税されます。
③ 例えば、亡母が昭和62年に6500万円で買った不動産を相続し、令和3年に5000万円で売却した場合には、譲渡価格<取得費ですから、課税すべき譲渡所得がなく、譲渡所得税はかからないはずです。ところが、取得費の金額を証明するためには昭和62年当時の売買契約書等が必要で、契約書等によって取得費を証明できないときは、取得費は譲渡価格の5%(250万円)しか認められません。そうすると(5000万円-250万円)×0.221(長期譲渡)=10,497,500円の譲渡所得税が課税されます。
④ 便宜上、ここでは復興特別消費税や特別控除、減価償却を無視していますが、いずれにしろ、30年前の売買契約書などがあるかないかによって、換価による手取り額にはかなりの差が出るのです。
⑤ ちなみに、譲渡所得税の申告期間は譲渡日の翌年の2/16から3/15ですから、令和4年2月に相続不動産を売却したら、申告期限を過ぎた場合、令和5年の初夏に税務署から「譲渡所得」に関する問い合わせのお手紙が来ます。
⑥ なお、税務面としては、そのほかにも、居住用財産の特例など各種特例の適用の可否、遺産分割に関する士業報酬を譲渡費用として控除できるかなどの問題もあります。最初から税理士の相談することが大切で、いつでも相談できる税理士を探しておくことが大事になってきます。