【孤独死をめぐるQ&A】Q6 相続人が生死不明の場合(失踪宣告)

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【Q6】相続人が生死不明の場合(失踪宣告)

おじXが亡くなり、甥であるYが相続人調査をしました。戸籍調査によるとおじには兄Aがいることになっているのですが、Aの存在など聞いたことがなく、Aの戸籍上の年齢は122歳なので、おそらくすでに亡くなっているのに死亡届が出ていないのだと思います。
Xには他に相続人はなく、Aにも相続人になるような親族はY以外にいません。
このように相続人の一部がすでに亡くなっているはずなのに戸籍上は亡くなったことになっていない場合、どのような手続きをすればよいでしょうか。

【A】生死不明から7年以上経過していれば失踪宣告を申立てることになります。

【解説】

1 失踪宣告とは

① 失踪宣告とは、一定期間以上行方不明になっており、生きているのか死んでいるのか分からない状況の人に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度のことです。
② 生死が7年間以上明らかでない場合(普通失踪)、戦争、船舶の沈没、震災等の死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、生死が1年間以上明らかでない場合(危難失踪)に申し立てることができます。

2 失踪宣告の手続

(1)管轄

① 失踪宣告の申立ては不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所に対して行います。
② 従来の住所地も居所地も分からない場合は、東京家庭裁判所に申し立てを行うことになります。

(2)申立権者

① 失踪宣告を申立てることができるのは利害関係人に限られます。
② ここでいう利害関係人は、事実上の利害関係では足りず、配偶者、父母、相続人などの法律上の利害関係があることが必要です。

(3)失踪宣告手続

① 失踪宣告の申立てがされると、多くの場合、家庭裁判所調査官による調査が行われます。
② その後、裁判所が定める期間(普通失踪の場合は3カ月以上)に、不在者の生存を知っている人はその届出をするように官報や裁判所の掲示板で催告します。
③ その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がされます。

3 失踪宣告の効果

① 普通失踪の場合、失踪期間7年間が満了した時に死亡したものとみなされます。
② 失踪宣告の審判が出て確定した場合、申立人は、10日以内に失踪宣告審判書謄本、確定証明書を添付して不在者の本籍地又は申立人の住所地の役場に対して失踪届を出さなければなりません。
③ 失踪届が出されると戸籍に失踪宣告が反映されますので、それを取得して相続手続きをすることになります。

4 失踪宣告の申立例

(1)失踪日の重要性

① 普通失踪の場合、失踪した日から失踪期間である7年間が満了した時に死亡したとみなされます。
② そのため、失踪した日を特定する必要があります。失踪者が死亡したとみなされる日によっては失踪者の相続関係が変動する可能性もあり、失踪者がいつ失踪したかは重要な問題になります。

(2)一切の交流がなく失踪した日が分からない場合

① 孤独死の場合、故人との交流が一切なく、失踪した他の相続人についても一切の事情が分からないということもあります。
② 存在そのものを知らず、戸籍上のみ存命していることになっているというケースの失踪宣告もあります。
③ 失踪者について一切の事情が分からないので、形式的なものに依拠するほかなく、戸籍上の身分事項の最後の記載がある日や戸籍の附票上の住所が職権で消除された日を失踪日と申立てその旨で審判が出されたケースもあります。

(3)失踪していることの説明

① 失踪していることの説明として、失踪者と連絡が取れず、失踪者の行方を知っている親族がいないことの他、失踪者が平均寿命を超える年齢であること、高齢であれば介護保険や健康保険を利用するはずですが住民登録がされていないので介護保険や健康保険が使えないことを補充的に説明しています。

5 高齢者消除との関係

① 100歳を超えて所在不明の方について、市町村長が法務局長の許可を得て、戸籍を消除することが認められています。これを高齢者消除といいます。
② この高齢者消除は戸籍の整理にすぎないので、その人が死亡したことにはなりません。家庭裁判所の審判で、「単に戸籍行政上の便宜にもとづくものであつて、失踪宣告の如き法的効果を生ずるものでない」としています。相続手続からその人を除くには、やはり失踪宣告を申立てる必要があります。
③ 戸籍の高齢者消除がされている場合、失踪届を出した後、消除の取消しをした後で戸籍に反映されるため、通常より戸籍取得に時間がかかる点に注意が必要です。

5 失踪宣告と不在者財産管理人の選択

① 行方不明者が7年間生死不明であっても、失踪宣告を申立てず、行方が分からないという理由で不在者財産管理人を選任し、遺産分割協議をすることは可能です。
② では、7年間生死不明の行方不明者がいるばあい、失踪宣告と不在者財産管理人選任申立てとどちらを選べばよいのでしょうか。
③ 考えるポイントはスピードと相続分です。
④ 不在者財産管理人選任申立てと失踪宣告では、不在者財産管理人選任申立ての方が解決のスピードが速いと思われます。失踪宣告は、家庭裁判所調査官による調査、3か月以上の催告期間が必要ですが、不在者財産管理人選任の場合、催告期間は必要ありません。
⑤ 次に相続分です。不在者財産管理人が選任された場合、不在者の不利になるような遺産分割は許可されません。そのため、不在者の法定相続分は確保されることになります。
⑥ 他方で、失踪宣告の場合、失踪者は法律上死亡したものとみなされます。失踪者に相続人がいれば、その相続人がXの遺産分割協議に参加することになるので、失踪者の相続分は、失踪者の相続人が相続することになります。
⑦ しかし本事例のように失踪者にY以外の相続人がいないのであれば、遺産分割協議に参加する人数が減る結果、その分Yの相続分が増えることになります。そうなると自身の相続分が増えるので、時間がかかっても失踪宣告を利用する方が経済的メリットがあるということになります。