【成年後見制度について】事務管理とは何ですか?応急処分義務(善処義務)とは何ですか?

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「事務管理とは何ですか?応急処分義務(善処義務)とは何ですか?」について考えてみましょう。

◆事務管理とは何ですか?

事務管理(民法697条)というのは、例えば隣家のひとり暮らしの高齢者が、倒れているのを発見した隣人が、高齢者を病院に運んで、高齢者の名前で入院・治療契約をしてあげるように、他人に対して義務や権限がないのに、他人の利益のために他人の生活に必要な仕事を処理する行為のことです。高齢者と隣人が親子であれば、親族間の扶養義務に基づくものですから、事務管理になりませんし、隣人が高齢者の後見人の場合も、身上監護義務がありますから、事務管理ではありません。

事務管理を始めた者は、自分で始めた以上、本人やその相続人または法定代理人が管理できるようになるまで、管理を継続しなければなりませんし、本人の意思や利益に反することが明らかな場合は、管理を中止しなければなりません。

事務管理者は、その事務に従い、最も本人の利益に適する方法で管理すべき義務があるのです。そのほか管理者には、本人への通知義務(民法699条)や事務管理状況・顛末の報告義務(民法701条・645条)、受取物引渡・取得権利移転義務(民法701条・646条)、金銭消費の場合の利息支払等の義務(民法701条・647条)が発生します。

事務管理者は、「本人の身体・名誉または財産に対する急迫の危害を免れさせるために」事務管理を行った緊急事務管理の場合は、悪意又は重過失がない限り、本人に発生した損害の賠償義務は負いませんが、急迫の危害がなければ、受任者と同様、善管注意義務を負うと考えられます。

しかし、事務管理は親切行為となる反面、いらぬお節介となる場合もある上、損害賠償責任まで負わなければならなくなる可能性もあるので注意が必要です。その一方で、事務管理者は本人に対して、事務管理に要した費用の償還請求ができます。

 

◆応急処分義務(善処義務)とは何ですか?

委任関係は、契約が終了しても、委任者と受任者の権利義務が当然に終了するものではありません。委任契約が何らかの事情で終了した場合でも、委任者側に引き継ぎをすることなく受任者が突然仕事をやめてしまっては、困ることがあるからです。そこで、委任者側で事務を処理することができるまでの間に、委任者が測り知れない損害を受けるおそれがある「急迫の事情」があるときは、受任者やその相続人または法定代理人は、必要な処分をしなければならない(民法654条)とされています。これを応急処分義務(または善処義務)といいます。

この応急処分義務は、法律関係が委任関係と似ている被後見人と後見人との間にもあります。(民法874条、876条の5、876条の10、任意後見契約法7条、民法654条。委任契約の一種である任意後見契約に基づく任意後見人には民法654条が直接適用)ので、後見が終了した場合、被後見人側で事務を処理することができるまでの間に、例えば、被後見人の権利が時効で消滅しそうなときなど「急迫の事情」がある場合は、後見人であった者やその相続人・法定代理人・後見監督人は、時効中断の手続きをとるなど、必要な処分をする義務があるのです。

葬儀費用や病院の入院治療費の支払いが、応急処分義務に当たるかどうか検討すると、具体的な事情にもよりますが、これらは通常、本人の相続人が対応すべきで、「急迫の事情」があるとまではいえないのではないかと思います。

応急処分を行った場合、委任が有償だった場合は、受任者は費用の償還請求や報酬請求ができると考えられます。後見の場合も、費用の償還請求や家庭裁判所に報酬付与審判の申立てができると考えられます。

応急処分をすべき期間は、委任者やその相続人・法定代理人が委任事務を処理するまで、後見人などの場合は、被後見人などが能力を回復して自分で財産管理ができるときまで、被後見人などが死亡したときは、その相続人が財産管理ができるときまでです。

後見人等であったものが、善管注意義務に反して応急処分をせず、被後見人等に測り知れない損害を発生させたときは、損害賠償責任を負うことになるので、注意が必要です。

【成年後見制度について】成年後見人は葬儀もしてくれるの?「後見人ができる死後の事務の範囲」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「成年後見人は葬儀もしてくれるの?後見人ができる死後の事務の範囲」について考えてみましょう。

【Q】はなこさんは85歳です。はなこさんには、遠方に住んでいる妹はおりますが、ずっと疎遠のままです。はなこさんは、夫と一人息子を早くに亡くして以来、一人暮らしをしてきましたが、最近認知症がかなり進んで日常生活も困難になってきましたので、成年後見人を付けてもらうことになりました。成年後見人ははなこさんが死んだ後葬儀等の事務についても対処してくれるのでしょうか?

【A】◆原則は相続人

成年被後見人になったはなこさんが亡くなると、同時に成年後見は当然に終了して、成年後見人の権限もなくなるのが原則です。それは、成年後見制度が、支援を必要とする認知症や精神障害・知的障害のある被後見人の生存中、身上監護や財産管理をして支援していく制度だからです。はなこさんが亡くなると、はなこさんの権利義務は全て相続人である妹さんが受け継ぎます。お尋ねの葬儀などを含めて、はなこさんの死後事務は、通常すべて相続人の妹さんが行うことになります。

◆成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律

しかし、実務上は、遠方に住んでいて、ずっと疎遠だった妹さんが、はなこさんの事後事務を行えない場合等には、成年後見人が、成年被後見人が死亡した後も、一定の死後事務を行う必要が出てきます。はなこさんが亡くなった場合の死後事務として、概ね次の事柄が考えられます。

①はなこさんの死亡診断書(事故死や死因不明の場合には、死体検案書)を入手して死亡届を役所にだすこと、②病院の診療費・入院費の支払いと入院預託金の清算など、③病院から遺体を引き取って、埋葬までの遺体の安置・保存と埋葬を葬儀社に依頼すること、④火葬・埋葬の許可申請と発行される許可証を受け取ること、⑤葬儀社へ火葬・埋葬を依頼すること、⑥病院に残置された私物の引き取りと不用品の廃棄処分の依頼などです。

このように、成年後見人には成年被後見人の死亡後も一定の死後事務をすることが期待されます。このうち死亡届については、後見人(保佐人。補助人。任意後見人)も独自の権限で届出ができます。

では、その他の死後事務についてはどうでしょうか。成年後見人の死後事務については、「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」は平成28年10月13日に施行されて、成年後見人は、成年被後見人の死後も、一定の範囲の事務を行うことができることとされました。ただし、この死後事務を行うことができるのは成年後見人だけであり、保佐人や補助人・任意後見人は含まれません。

改正法(民法873条の2)により、一定の要件のもとに成年後見人がその職務として行うことができるとされた死後事務は次のとおりです。

①個々の相続財産の保存に必要な行為

例えば、相続財産に属する債権について、時効が間近に迫っている場合に、時効の中断を行うことや、相続財産に属する建物の壁が剥がれているのを修繕する等の行為

②弁済期が到来した債務の弁済

例えば、成年被後見人の(生前にかかった)医療費・入院費や公共料金の支払い

③成年被後見人の遺体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為

例:遺体の引き取りや火葬・埋葬に関する契約の締結。成年後見人が管理していた成年被後見人所有の動産について、トランクルームに預ける契約の締結。成年被後見人の居宅の電気・ガス・水道等の供給契約を解約すること。債務弁済のために、成年後見人名義の預貯金口座を払い戻すこと。

◆死後事務の要件

成年後見人が死後事務を行うためには次の要件が必要となっています。これは、本来成年被後見人の死後は、その権利義務は全て相続人に引き継がれて、成年後見人の権限は失われるのが原則だからです。

①成年後見人がその死後事務を行う必要があること

②成年被後見人の相続人が、相続財産を管理することができる状態に至っていないとき

③成年後見人が当該死後事務を行うことについて、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかな場合でないこと

④民法873条の2第3号の死後事務(前記遺体の火葬・埋葬の契約など)を行う場合は、さらに家庭裁判所の許可が必要

◆成年被後見人の葬儀

では、改正法(民法873条の2第3号)によって、成年後見人は成年被後見人の葬儀を執り行うことはできるでしょうか。

葬儀社との間で、遺体の火葬・埋葬の契約をすることは、家庭裁判所の許可を得れば行えますが、改正法でも成年後見人に葬儀を執り行う権限までは与えていません。葬儀には、宗派や規模等によって様々な形態があり、その施行方法や費用の負担などを巡って成年後見人と相続人の間にトラブルが発生するおそれがあるためです。

このように、成年後見人が事後事務の一環として成年被後見人の葬儀を執り行うことはできませんが、後見事務とは別に、個人として参加した人が出した会費により無宗教でお別れ会や偲ぶ会を催すことは制限されないと考えられます。

◆保佐人、補助人、任意後見人の死後事務

では、改正法で死後事務を行うことができる者に含まれていない保佐人や補助人・任意後見人は、被保佐人や被補助人・任意被後見人等の死後事務の必要性が出てきた場合、どうすればいいのでしょうか。

被保佐人や被補助人・任意被後見人本人が亡くなった場合は、成年後見と同じように保佐・補助・任意後見は当然終了して、保佐人や補助人・任意後見人の権限が亡くなるのが原則です。被保佐人や被補助人・任意被後見人本人が死亡した後に、相続人と連絡がとれなかったりしたときなど、一定の死後事務を行う必要が出てくる場合がありますが、死後事務が一切認められないとすると、困ってしまいます。

成年後見人(保佐人・補助人・任意後見人・任意後見監督人)には、「急迫な事情のあるとき」には、例外的に、被後見人等の死後も必要な処分をする応急処分義務(善処義務)の規定(民法874条・876条の5・876条の10・任意後見契約法7条・民法654条)がありますので、急迫な事情のある場合、例えば、被保佐人・被補助人の権利が時効で消滅しそうなとき等、相続人が対応できないときには、死後事務として必要な処分をする義務で対応することが考えられます。

しかし、応急処分義務で成年後見人等(保佐・補助を含む)が行うことができる事務の範囲は必ずしも明確ではありません。葬儀については、成年後見人などの応急処分義務には含まれませんので、この規定を使って成年後見人などが葬儀をすることは勿論できません。

なお、相続人が死後事務を行えない場合は、事務管理(民法697条)として、死後事務を行うことも考えられます。

【成年後見制度について】身内でも罪に問われる⁈「成年後見人の横領行為に対して懲役2年の実刑判決がくだされた裁判例

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「身内でも罪に問われる⁈成年後見人の横領行為に対して懲役2年の実刑判決が下された裁判例」について考えてみましょう。

【Q】高齢の親戚の成年後見人になった人が、財産を使い込んで横領罪に問われたケースがあると聞きましたが、身内でも、刑法上の罪に問われてしまうのですか?

【A】身内であっても、家庭裁判所によって成年後見人に選ばれた以上、財産を使い込んでしまった場合には、業務上横領罪に問われます。実際に業務上横領罪として懲役2年の実刑判決が下された事件がありますので、ご紹介します。

この事件の登場人物は、叔母さんと甥です。叔母さんが倒れたため、甥が成年後見開始の申立てを行い、叔母さんの成年後見人となり、叔母さんの預金通帳を管理するようになったのですが、その甥は、生業にしていた焼きそば店の経営が振るわず、多額の借金をしていました。そこで、成年後見人として叔母さんの預金通帳を預かっているのをよいことに、1年8ヶ月余りの間に、合計26回にわたり通帳から現金を引き出して、自分の借金の返済に回していたのです。

このようにして預金から引き出したり、預金を解約して借金の返済に回したお金は、合わせて1800万円にもなりました。このような甥の横領行為が発覚したのは、家庭裁判所が甥に、財産の目録を提出するよう求めたのが、きっかけでした。

つまり家庭裁判所は、成年後見人が財産の管理を適切に行っているかをチェックするために、いつでも、管理している財産の状況に関する目録を提出するよう求めることができます。そこで、このときも、成年後見人である甥に対して、叔母さんの財産の目録を提出するよう求め、その結果、横領行為が判明したというわけです。

その後の経過も申しますと、家庭裁判所は、甥に、成年後見人としての不正行為があったとして、直ちに甥を解任して、新しい成年後見人を付けました。こうして新しく選ばれた成年後見人によって甥が刑事告訴され、その結果、裁判で、懲役2年という実刑判決が下されたというわけです。(秋田地裁H18.10.25判決・仙台高裁秋田支部H19.2.8判決確定)

元々、親族の間で、横領行為などの一定の犯罪が行われた場合は、刑法では、刑罰が免除されたり、告訴がなければ裁判にかけられないと定められています。それに比べると、この事件で懲役2年という実刑判決が下されたことは、厳しいと言えるかもしれません。ただ、成年後見制度は、判断能力が低下した方の権利を擁護するという、いわば公益的な制度なので、成年後見人が、その地位を悪用した場合には、その分、厳しい処分を受けることになるのは、やむを得ないと言えます。

成年後見人として選ばれた以上、不正・不適切な財産管理をした場合には、成年後見人を解任されるだけではなく、刑事上も厳しい刑が下されることもあるのです。もちろん、横領行為に対しては、民事上の損害賠償請求も可能ですので、民事上も訴えられる可能性があります。

【成年後見制度について】持ち家を担保にお金を借りて生活できないか「リバースモーゲージって何」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「持ち家を担保にお金を借りて生活できないか。リバースモーゲージって何」について考えてみましょう。

【Q】持ち家を担保に老後の生活資金を借り入れ、亡くなるまで返済をしなくてよいという制度があると聞きました。そんな都合のいい話があるのでしょうか?

【A】公的年金の支給開始年齢の引き上げや支給額の引き下げの一方で、高齢者の医療や介護費用の負担はますます増大しています。そのため、高齢者にとって、老後の生活資金をどうやって工面するかは、大変切実な問題です。

このような状況下において、高齢者に対し、土地や建物等の不動産を担保に、生活費に充てるお金を次々と貸し付けていくという「リバースモーゲージ(逆抵当融資)」と呼ばれるシステムが生まれました。

持ち家を売却すれば、お金を作ることはできますが、もはやそこで暮らすことはできなくなってしまいます。しかし、この制度を利用すれば、家は担保に入れるだけですから、お金を借り入れた後も、所有者は、そこに住み続けることができます。そして、原則として、亡くなるまで借り入れたお金を返済する必要もないため、負債は増えていく一方ですが、利用者の死亡時に、担保とされた不動産を処分することにより、借り入れた金員全額(元金及び利息)を一括返済することが予定されています。借入金を返済してもなお売却代金が残った場合には、その残代金は相続人に交付されます。また、利用者の相続人は、利用者の借入金全額を一括返済すれば、その不動産を処分せずに相続することも可能です。

このように、これは、預貯金や年金などの収入がない高齢者であっても、持ち家を担保としてお金を借入ることにより生活資金を工面しつつ、持ち家をそのまま自宅として使用し続けることも可能にした便利な制度ということができます。

地方自治体やその外郭団体(福祉公社等)の他、信託銀行等の民間金融機関でも実施していますが、期間の経過に伴い、貸付金額(負債)は増えていく一方であるため、お金を貸す側は、不動産価格の下落や金利の上昇、利用者本人の長寿等により、貸付金の総額が、担保不動産の評価額を超えてしまうといった担保割れの危険を負担しなければなりません。それゆえ、広く普及するまでには至っていません。

その中で注目すべきは、厚生労働省が創設し、都道府県の補助を受けながら、都道府県の社会福祉協議会が実施している「不動産担保型生活資金(長期生活支援資金)」貸付制度です。これは、老後も、住み慣れた我が家に住み続けることができるよう、高齢者が所有している自宅土地建物(現に居住している家とその敷地)を担保として、都道府県の社会福祉協議会が、高齢者に生活費を貸し付けるというものです。ただし、所得の多い世帯の高齢者や、子どもと同居している高齢者等は、利用することができません。また、賃借権などの利用権や抵当権などの担保権がすでに設定されている不動産及びマンションのような区分所有建物については、担保の目的とすることが認められていません。

大切な不動産を担保に長期にわたり金員を借り入れるという制度ですから、貸付限度額、貸付金額、利率、返済期限、返済方法の他、これを利用する場合の注意点についても、十分理解した上で、利用の可否を決断するようにしていただきたいものです。

ご利用に際しては、この制度を実施している社会福祉協議会とよく相談ください。

【成年後見制度について】認知症と診断されたが、裁判所を利用しないで援助してもらう方法は?「社会福祉協議会の日常生活自立支援事業」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「認知症と診断されたが、裁判所を利用しないで援助してもらう方法は?社会福祉協議会の日常生活自立支援事業」について考えてみましょう。

【Q】軽度の認知症と診断されました。今はまだ成年後見制度を利用するまでのことはないと言われましたが、いつ悪化するかわからず不安です。現時点で、そんな私を見守り、援助してもらえる制度として裁判所に申立てをして利用する補助という制度があると聞いたのですが、裁判所を使わないですむ方法はないのでしょうか?

【A】判断能力の不十分な人が、地域において自立した生活が送れるよう、都道府県の社会福祉協議会では、契約に基づき福祉サービス等の利用援助を行う日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)を実施しています。

主な援助内容は、介護保険制度等、福祉サービスの利用援助を柱とし、居住家屋の改修や賃貸借、住民票の届出等、行政手続の利用援助の他、預金の払戻し・解約・預入等、利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)や各種証書類等、重要な書類の預かり及び定期的訪問による見守り等です。具体的内容は、契約で定められます。

利用者が負担すべき利用料は、訪問1回あたり平均1200円程度(社会福祉協議会によって異なります)ですが、契約締結前の相談に係る費用や生活保護受給世帯の利用料は無料とされています。

対象となるのは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手・理解・判断・意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方々です。もっとも、本事業は、契約に基づき実施されるため、契約の当事者には、少なくとも本事業の契約内容を理解し、判断し得るだけの能力が必要とされます。

したがって、成年後見制度を利用している成年被後見人、被保佐人、被補助人であっても、本事業の契約締結能力が認められる限り、本人自ら契約を締結し、本事業を利用することができるはずです。ところが、後見制度との併用は、本事業と後見人等との役割分担が不明確になる恐れがあること等から、これまで、原則として認められてきませんでした。また同じ理由から、成年後見人、保佐人、補助人が、本人のために、契約を締結し、本事業を利用することもできないでいました。しかし、現場では、成年後見制度との併用を求める声が強いこともあり、最近では、被保佐人や被補助人であっても、契約締結能力が認められれば、成年後見制度と併用して本事業を利用することが必要とされる場合(権利侵害や虐待等を受ける恐れがあり、日常的な見守り体制が必要な場合や精神的な問題等により、本人からの頻繁な訴えに対してきめ細かな対応や、複数の機関での関わりが必要な場合等)には、被保佐人または被補助人本人自らが契約を締結し、本事業を利用することが徐々に認められるようになってきました。また、成年後見人や保佐人や補助人も、成年後見制度の利用前から、本人が本事業を既に利用していた場合には、成年後見制度と併用して本事業を利用する必要性が認められれば、被後見人や被保佐人、被補助人のために本事業利用のための契約を締結することを認めようという運用が広まりつつあります。

本事業の概要は以上のとおりですが、詳細は実施主体である社会福祉協議会によって異なりますので、ご利用の際は、必ずお住いの市区町村等の社会福祉協議会にてご確認下さい。

成年後見無料相談会

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は無料相談会のお知らせをします。

成年後見に関する無料相談会を、東京都行政書士会の行政書士で構成される、公益社団法人成年後見支援センターヒルフェの世田谷地区主催で、開催いたします。私もメンバーとなっております。

会場は世田谷区民会館別館【三茶しゃれなーどホール】5階集会室スワン。三軒茶屋駅徒歩3分(世田谷区太子堂2-16-7)

日時は令和元年9月5日 13:00~16:30

予約電話番号03-3426-1519(受付:東村)

予約なしでも相談できます。

皆様のお越しをお待ち申し上げております。

【成年後見制度について】知的障がいのある子供の将来の生活が心配な場合には「親なき後の財産管理」2

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「知的障害のある子供の将来の生活が心配な場合は。親なき後の財産管理」の続きを考えてみましょう。

【Q】私には子供が2人います。45歳になる長男には知的障がいがあります。自宅に夫と3人暮らしで、夫婦で長男の面倒を見てきましたが、昨年夫が亡くなり、私も今年70歳になりました。今後いつまで長男の面倒をみることができるのか、日々不安に感じています。長女は結婚しており、長男のことも気にかけてくれてはいますが、生活に余裕があるわけではなく、私の様に自宅で長男の面倒をみるというのは不可能です。そう思って、夫婦でつましい生活を送り、預貯金は4000万円ほどあり、賃料収入のあるアパートを一軒持っています。私が死んだあと、なんとか長男が暮らしていけるようにしたいと思いますが、どのようにすればよいでしょうか。

【A-3】日常生活自立支援事業を活用する

お子さんが、一人暮らしはできるけれども重要な契約ができないとか、お金の管理ができないというようなタイプの場合は、どうでしょうか。このような場合には、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の援助を利用する方法をおすすめします。

日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助を柱とし、年金や福祉手当がきちんと振り込まれているかどうかの確認、預金からの生活費の引き出し、医療費、社会保険料、電気・ガス・水道料金などの公共料金、日用品の購入代金の支払いなど日常的な金銭管理を手伝ってもらえます。また、預貯金の通帳や年金証書、保険証書、不動産の権利証、契約証、実印、銀行印、カードなどの重要な書類等を社会福祉協議会に預かってもらうこともできます。

あなたのお子さんに、ある程度の生活費があり、きちんと生活していける状態であれば、こうした援助を利用しながらある程度の年齢になるまで一人暮らしが可能だと思います。

日常生活支援事業を利用するには、まず市区町村の社会福祉協議会に相談し、まず、あなたとお子さんの状況を理解してもらいます。お子さんがお金の管理ができないというようなこともきちんと話し、子どもと日常的な金銭管理、書類の預かり等、必要な援助を内容とする契約を結んでもらい、日々の生活を見守ってもらいます。

例えば、病気が進んで一人暮らしが難しくなってくれば、そのときには、日常生活支援事業の福祉サービスの利用援助を利用して、施設に入ることなども可能でしょう。もちろん、すべて社会福祉協議会や行政まかせというわけにはいきません。成年後見人の選任が必要になったりする場合には、後見人ではないにしても、兄弟姉妹の助けを借りることなどが不可欠になります。兄弟姉妹とはよく話をして、そのような協力については了解を得ることが望ましいと言えましょう。

【A-4】ある程度の判断能力がある場合には

お金だけをきちんと渡せば生活できるが、きわめて体が弱いというようなことも考えられるかもしれません。そのような場合には、信託を利用する方法もあります。生前に親が信託契約を締結し、一定の財産を信託財産として受託者に委託し、親の死後一定額を受託者から子どもに支払わせるという方法です。信託を利用するのは、海外では多くみられるようですが、日本ではまだ歴史も浅く、財産の名義が受託者に移ることもあって、事例は多くはないようです。

【A-5】親自身が能力の低下に不安を感じたときは

死ぬまで子どもの面倒を見るつもりでも、病気などでそれが難しくなることもあると思います。親自身の判断能力の低下に備えておくことも考えておいた方がいいかもしれません。そのときには、親が誰か信頼のおける人と財産管理契約や任意後見契約を締結しておくことが考えられます。これらの財産管理人として弁護士や司法書士、行政書士などを選び、自分が亡くなった後には兄弟姉妹と連絡を取ってもらい、子どもの後見開始申立ての力になってもらうことなども考えられるでしょう。

親なき後の財産管理には、お子さんの状態をみながら、いくつかの方法を組み合わせ、成年後見や、遺言、任意後見契約などの制度を使い、社会福祉協議会や行政の手も借りて、親がある程度安心できるような準備をすることになります。その時には弁護士や司法書士、行政書士等の法律家の知恵も利用してもらいたいと思います。

【成年後見制度について】知的障がいのある子供の将来の生活が心配な場合は「親なき後の財産管理」1

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「知的障害のある子供の将来の生活が心配な場合は。親なき後の財産管理」について考えてみましょう。

【Q】私には子供が2人います。45歳になる長男には知的障がいがあります。自宅に夫と3人暮らしで、夫婦で長男の面倒を見てきましたが、昨年夫が亡くなり、私も今年70歳になりました。今後いつまで長男の面倒をみることができるのか、日々不安に感じています。長女は結婚しており、長男のことも気にかけてくれてはいますが、生活に余裕があるわけではなく、私の様に自宅で長男の面倒をみるというのは不可能です。そう思って、夫婦でつましい生活を送り、預貯金は4000万円ほどあり、賃料収入のあるアパートを一軒持っています。私が死んだあと、なんとか長男が暮らしていけるようにしたいと思いますが、どのようにすればよいでしょうか。

【A】障害のあるお子さんを持つ親が一番気にしているのは、自分がいなくなったあとの子供の行く末でしょう。誰が世話をしてくれるのか。お金はどうするのか。福祉は頼りになるのか。考えると眠れないという気持ちになる話はよく伺います。このようなケースでは障害の程度も、親の財産の程度も様々です。いくつかの方法が考えられますので、ご紹介します。

【A-1】自分が死んだ後、財産を障害のある子供に多く残しておきたい

そのためには遺言をすることが必要です。遺産は、子どもたちには平等に分けられるのが原則です。このときにもらえる遺産を法定相続分といいます。しかし法定相続分とは異なる形で、誰かに多くあげることもできます。遺言書を作成することでそれが可能になります。例えば、長男に不動産と現金3000万円を相続させるなどの遺言をするのです。

遺言の方法としては、自分で書く自筆証書遺言や、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」があります。公正証書遺言であれば、遺言書によって不動産の登記名義の変更や、預貯金の解約、名義書換などがスムーズにできます。また遺言執行者を指定しておくことで、障害のある子の手を煩わせずに遺言の内容を実現させることができます。

ただ、全部をその子に残したい場合でも、他の子どもには遺留分がありますので、他の子も遺産を譲り受けたいと思う場合には、遺留分相当額の財産の分配を求められる可能性があります。遺留分とは、法定相続人が必ずもらうことのできる財産で、子どもたちだけが相続人の場合は全部で法定相続分の2分の1となります。

本件の場合ですと、長女は相続財産の4分の1の遺留分を取得する権利があります。したがってトラブルを避けるためには、遺留分を持つ子たちには遺留分相当額を残すことにした方が賢明です。

【A-2】日常生活をどうするか

遺言によって、財産を残すことができたとしても、親としては子供が日常生活をどうするかということの方が気になるものです。また、ご自身も、病気をしたり弱ったりして、いつまでも二人で自宅で生活することは難しいこともあるかもしれません。

一つの方法として、ご自身とお子さんと一緒に介護付のホームに入所することが考えられます。最近は、40代~50代の独身者が親の介護をしている場合などを想定した介護付の親子同居型賃貸住宅なども出てきていますので、そのようなタイプの施設利用を考えることも可能だと思われます。

お子さんが、介護がなければ生活できないというような場合には、介護施設への入所前に、お子さんについて成年後見の申立てをし、あなたが後見人となって施設に入所することができるでしょう。

またお子さんが、一人暮らしができないわけではないけれども、財産管理がきちんとできないとか、財産的な被害にあう可能性があるというタイプの障害であれば、お子さんはあなたが亡くなった後に自宅に住むことを選んでも、食事がきちんとできないとか家の清潔が保てない等の問題や、詐欺被害にあうといった事態になることも考えられます。それでも、そのお子さんが自宅に愛着を持ち、介護施設に入所することには応じないこともあるでしょう。ですが、今、あなたと一緒であれば引越しに応じることは考えられます。したがって、どこかの時点で自宅で二人で暮らすことに見切りをつけ、一緒に介護付のホームに入るというのはひとつの選択となります。この場合でも、介護施設への入所前に、お子さんについてあなたが成年後見人となることも考えられます。

いずれの場合も、入所後は、施設の方たちと連携をとりながら、あなたが後見人となっていない場合には、後見開始の申立権限のある人に、あなたが亡くなった後に後見開始の申立てをしてもらうことや、後見人候補者となることなどを頼んでおくとよいでしょう。また、あなたが亡くなったときに備えて、あなたの他にも成年後見人を選任してもらっておくということも有効でしょう。

相続・遺言・成年後見無料相談会のお知らせ

世田谷区砧の車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

本日は無料相談会のお知らせをいたします。

相続、遺言、成年後見について、世田谷区の行政書士5名が無料相談会を開催いたします。私もメンバーの一人になっております。

会場は世田谷区【烏山区民会館 集会室】京王線千歳烏山駅徒歩1分

日時は令和1年8月4日(日)13:00~16:30

予約番号 080-7025-8357(中村由美子)

【成年後見について】判断能力の低下に備えて何かできることはないか「任意後見制度の活用」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「判断能力の低下に備えて何かできることはないか?任意後見制度の活用」について考えてみましょう。

【Q】先日、何十年ぶりかの同窓会に出かけたところ、将来への不安という話から、認知症等を患ったときの財産管理の話が出ました。友人たちのうち何名かは実際に悩んでおり、Aさんは「配偶者に先立たれて、子どももおらず、親族も死亡した。」、Bさんは「子どもはいるが、外国で暮らしており、面倒を見てもらうことができない。」、Cさんは「子どもはいるが、サラ金からの借金を繰り返しており、とても財産管理を任せられる状態にはない。」というのです。このような悩みを抱えている友人たちが、認知症等を患う前に、将来の財産管理の方法を、今から決めておくことができますか。

【A】任意後見制度の利用をお薦めします。この制度は、判断能力に問題がない段階での自らの意思を、将来、判断能力が不十分となった際の財産管理等に反映させたいと考えている人によって利用されることを予定していますので、質問にあるような悩みを持つ方の場合でも利用できます。

それは、任意後見制度では、財産管理を任せる相手を限定しておらず、成人であれば、誰でも財産を管理する人=任意後見人になることができるからです。つまり、親族に頼らなくても、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士に、任意後見人への就任を依頼できるということです。もちろん、友人でも可能です。また、社会福祉協議会等の社会福祉法人も任意後見人に就任できることになっています。

あなたの友人たちは、このような第三者の中から、信頼できる人を選んで、判断能力が不十分になったときに備えて、任意後見契約を結んでおくのがよいでしょう。

また、あなたの友人たちのなかには、判断能力が不十分になる前から第三者に財産管理を任せたいと考える人もいるかもしれません。そのような場合には、任意後見人に就任する予定の人と通常の委任契約も同時に結んでおくと便利です。そのため任意後見契約だけではなく、委任契約を付け加えた任意後見契約を結ぶ例が多いようです。

この委任契約及び任意後見契約を結ぶと、本人の判断能力の衰えに関わらず、同一人物が財産管理を継続しますので、日常の契約や支払いなどが円滑に処理できるというメリットがあります。