[終活・遺言・相続相談]相談例51 非同居の子からの遺産分割協議の相談

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例51 非同居の子からの遺産分割協議の相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(64歳女性)から、「郷里の父(91歳)と母(90歳)は2年前に別々の施設に入ったが、8か月前に父が肺炎で亡くなった。ずっと両親と同居していた兄(66歳)が「後のことは俺がする」というので任せていたが、最近、兄から「母も同意している。すぐに遺産分割協議書に署名捺印して印鑑証明書と一緒に送り返してくれ」という手紙が届いた。どうすればいいか」と相談された。

【検討すべき点】
非同居の子からの相談です。(遺言書ははなかったものとします。)兄が求めている遺産分割協議書の案が納得できるなら兄の言うとおりにすればいいでしょうが、遺産の内容がはっきりしていなかったり、内容が不合理なら遺産分割を急ぐ必要はありません。

【1】非同居の子の立場

① このブログでは、親と同居している子は、非同居の子から「親に寄生している」と疑われがちだと説明してきました。しかし、非同居の子が常にそう考えるわけではありません。
② たとえば、この相談例で、相談者が進学を機に18歳で郷里を出たのに対して、兄は地元で就職して両親と同居し、その妻とともに、20年近く両親の世話をしてきたといった事情があるとしたら、相談者は「親の面倒を見てもらって申し訳ない」という気持ちかもしれません。
③ また、相談者も義理の両親の介護をしていれば、兄夫婦のたいへんさはよく理解できるでしょう。そうすると母に余計な心配を掛けさせたくないし、兄が全部やってくれているのなら、兄に従おうという気持ちになっていたとしても不思議ではありません。
④ つまり、遺産分割協議書とはどういうものなのか分からないので、質問しに来ただけという可能性もあります。したがって弁護士は、相談者の率直な気持ちを伺うべきですし、相談者が気乗りしないようなら、遺産分割協事件として依頼を勧めるのは不適切です。

【2】提案内容の検討

① 相談者が兄が作成した遺産分割協議書等を持参していれば、その内容を拝見します。父の遺産は全て母が取得するとか、自宅不動産は兄が相続し、預貯金は母と兄と相談者が法定相続分どおりに分けるといった内容であれば、それなりに合理的です。
② 逆に、兄が父の遺産のほぼすべてを相続するという内容で、預貯金額なども含めて遺産の評価が一切わからないという場合は問題です。仮に、相談者は自分は相続しなくても良いと考えていたとしても、「どのくらい譲ったかは知っておきたい」というのが人情でしょう。
③ もちろん、相談者が兄による財産の費消を疑っている場合なら、積極的に遺産の内容や評価について説明を求めるべきです。

【3】署名押印を急がされる場合

① 相談例のように、相続開始10ヶ月の相続税申告・納付の期限が迫ってから、いきなり、遺産分割協議書への署名捺印と印鑑証明書の交付を求められ、「すぐに遺産分割しなければ(配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用を受けられず)、莫大な相続税がかかることになる」と迫られることがあります。
② しかし、相続税の申告納付期限までに遺産分割が成立しなければ、未分割の申告をすれば足ります。
③ たしかに、未分割の申告では、相続人は、配偶者税額軽減や小規模宅地の特例の適用がないことを前提に計算された、相続税をいったんの納税しなければなりませんが、本来の申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立すれば、更正の請求をして、それらの特例の適用を受けることができます。
④ ですから、当面の納税資金を用意出来る限り、慌てる必要はありません。
⑤ また、同居の子から「節税のため、とりあえず遺産分割協議書に署名捺印してくれ。後で遺産分割協議をやり直せばいいから」と頼まれることもあります。しかし、遺産分割協議のやり直しができる保証はありませんので、このような申出には従うべきではありません。
⑥ 時折、節税目的と称して強要された遺産分割協議は無効だという訴訟を目にしますが、印鑑証明書をつけて遺産分割協議書に自署している限り、その効果を覆すのは極めて困難です。
⑦ なお、遺産分割協議をやり直した場合には、税務署から2回目の遺産分割協議による財産取得を贈与と認定され、贈与税が課税される可能性が非常に高くなります。
⑧ さらに、同居の子から、「母の相続ではお前の言い分を聞くから、父の相続は俺に任せてくれ」と言われることもありますが、父の相続(一次相続)で譲った分を母の相続(二次相続)で取り返せるわけだはありません。

【4】弁護士への委任

① 相談者が兄の要請に納得がいかないなら、遺産を調査して兄と交渉すべきです。遺産の調査は行政書士がお手伝いすることは可能ですが、代理人としての交渉は弁護士の独占業務になります。
② ただし、施設入所の90歳の母の意思能力が十分ではない場合には、問題が複雑になります。
③ 相談者と兄が同意し、母も積極的に反対の意思表示をしないなら、亡父の相続人3人による遺産分割が成立するでしょう。母の推定相続人である兄も相談者も母の意思能力の欠缺を争わないため、結果的にそれが問題にならないからです。
④ しかし、弁護士が代理人として関与し、意思能力がない当事者がいることを知りながら遺産分割を成立させることは勧められませんので、原則として、母の後見開始の申立てをさせることになると思います。
⑤ 後見開始の審判が出ると後見人が母に代わり、遺産分割協議に参加します。その場合、家庭裁判所は母の相続分については、常に法定相続分の確保を求めてきます。結果、兄や相談者の思い描くような遺産分割ができなくなる可能性が高くなります。