世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
今回は、【相続・遺言】に関して、相続時精算課税制度について考えてみたいと思います。
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【Q】相続時精算課税制度の利用を考えていますが、具体的にはどのようなメリット、デメリットがありますか?
【A】◆1.相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度は平成15年度より設けられました。
この制度は、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度で、その名のとおり、相続時に税額を精算する制度です。
具体的には、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納付し、その贈与者が亡くなったときに、すべての贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合計した金額を基に計算した相続税額から、すでに納付した贈与税額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。
この制度を利用した場合、贈与財産が2500万円を限度として贈与税が非課税となり、非課税枠を超える部分について一律20%の課税となります。
◆2.メリット
①必要な時期に財産移転ができる。
相続はいつ発生するかわかりませんが、相続時精算課税制度を利用すると、子がお金を必要とする時期に贈与することができます。贈与する財産の評価が変わらなければ、相続時精算課税による贈与をしても、相続時まで贈与をしなくても、結果的に税額は変わりません。相続時に相続税がかからないと想定される場合には、相続を待たずに早めに財産を移転できます。
②一度にまとまった金額を贈与できる。
相続時精算課税制度では、2500万円まで贈与税がかかりません。また、2500万円を超えた金額に対しても、一律20%の課税となります。例えば、父から20歳以上の子が一度に2500万円の贈与を受けた場合、暦年課税制度では、贈与税が810万5000円「計算式:(2500万-110万)×45%-265万」となりますが、相続時精算課税制度では、贈与税がかかりません。
③アパートなどの収益物件や、将来値上がりしそうな財産を贈与すれば相続税対策になる。
アパートなどの収益物件は、賃料が入ってくるため、その分相続財産が蓄積されていきます。早期にアパートを子に贈与すれば、その後の賃料は子の収入となりますので、相続財産の増加を防ぐことが出来ますし、子にも収益を帰属させることが出来ます。
また相続時精算課税制度において、相続時に相続財産と合計される贈与財産の価額は、贈与時の価額ですので、株式や土地といった将来値上がりしそうな財産を、価格の低い時期を選んで生前贈与すれば、相続財産の評価額を低く抑えることができ、相続税対策になります。
④生前に財産の分割が出来る
いままでは、遺言をすること以外に、親が相続に関して意思を表示することができませんでした。相続時精算課税制度を利用すれば、遺言によらず、生前に親の意思に即した財産の分配を行うことができ、相続時のトラブルを回避することができます。ただし、遺留分の考慮をする必要があります。
◆3.デメリット
①いったん相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税制度には戻れない
相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者については従来からある暦年課税制度に戻ることはできず、年間110万円の基礎控除が使えなくなります。
従って、少額の贈与でも、必ず贈与税の申告が必要になります。また、2500万円の非課税枠を使い切っていれば、20%の贈与税を納めなければなりません。
②相続財産を減らせるわけではない
相続時精算課税制度での贈与財産は、相続時に相続財産に加算されますので、生前贈与をしても直接的な相続財産の減少にはなりません。これに対して、暦年課税の贈与税には、受贈者1人につき1年間に110万円の基礎控除があるため、少ない税負担で確実に財産を減らすことができ、しかも相続財産には加算されません。
③生前贈与した財産が値下がりしたときは不利になる
相続時精算課税制度において、相続時に加算される金額は、贈与時の評価額ですから、財産の価値が相続時に値下がりしていても贈与時の高い評価額で相続税が計算されますので不利になります。
④小規模宅地等の特例の適用を受けることができない
小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのは、相続や遺贈により居住用住宅地等や事業用宅地等を取得した場合です。相続時精算課税制度により生前贈与した財産が居住用住宅地等や事業用宅地の場合には、その取得原因が贈与ですから、相続時において小規模宅地等課税価格の特例は適用されません。
⑤生前贈与で取得した財産は物納できない
暦年課税制度では、相続開始3年以内の贈与財産は相続財産に加算されますが、物納の申請は可能です。これに対し、相続時精算課税制度で生前贈与した財産については、贈与時の時価で相続財産に合算されますが、物納対象とはなりません。
⑥将来、相続税の税制改正があり、相続税が課税される可能性がある
現行法のもとで相続税がかからないと見込んで相続時精算課税制度を利用したとしても、将来、相続税法が改正され、相続税が課税される可能性があります。
⑦生前贈与された現金等を消費して相続税が払えない可能性がある
生前贈与された現金等の財産を消費して無くなっていたとしても、相続時精算課税制度を選択して贈与した財産には将来相続税が課税されますので、注意が必要です。