【相続・遺言について】相続財産⑤債務の場合

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【相続・遺言】に関して、相続財産⑤債務の場合について考えてみたいと思います。

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【Q】◆父が亡くなり、相続人は兄と私の兄弟2人だけです。

①父は、友人Aさんと共同して事業を営んでおり、営業資金のため、銀行からAさんと連帯して1000万円のお金を借りていました。今後は、兄が父の跡を継ぎ、兄とAさんの二人で事業を営んでいくことになったので、兄とAさんは二人で借入金の責任を持つと言ってます。私は銀行から借入金の請求をされることはないのでしょうか?また、仮に父が兄に全財産を相続させるとの遺言を作っていた場合にはどうなるのでしょうか?

②父は、父の弟が会社に就職する際、頼まれて身元保証人になっていました。この身元保証債務についても兄と私が相続するのでしょうか?

 

【A】◆何が相続の対象になるかについて、民法が定める原則は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」というものです。したがって、所有権をはじめとする物権のほか、債権、債務、無体財産権、その他明確な権利義務といえないものでも、財産法上の法的地位といえるものであれば、全て包括的に相続の対象になります。これを包括承継といいます。ここで問題とされているものは、債務がどのように相続されるかという点にありますので、ご質問の連帯債務と保証債務に分けてご説明します。

 

1.連帯債務

まず、連帯債務とは、数人の債務者が同一の給付について、各自が独立して全部の給付をなすべき債務を負担し、そのうちの一人がこれを履行すれば、他のすべての債務者の債務も消滅するというものです。

連帯債務では、このように各債務者が全部の給付義務を負いますが、債務者相互間では負担部分が定まっており、債務者の一人が自己の財産をもって共同の免責を得たときは、他の債務者に対して、その負担部分に応じて求償できます。

連帯債務の相続について、判例は、共同相続人が法定相続分によって被相続人の債務を分割承継し、各自がその承継した範囲内において、本来の債務者とともに連帯債務者になるとしています。これによれば、共同相続人は、各自の法定相続分の割合でしか債務を負担せず、かつ、各自その範囲内で本来の債務者と連帯関係を生じることになります。

次に、遺言で相続分の指定がある場合について、民法第902条の2は「被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。」と規定しています。債権者が知らない間に、債務者である被相続人が、勝手に債務のあり方を左右するのは妥当ではないというのが法の趣旨です。ですので、債権者は、遺言で指定された相続分を無視して、法定相続分に応じて、各相続人に対し、お金を支払えという主張をすることが可能となります。

ご質問のケースに即してご説明しますと、あなたとお兄様は、各500万円ずつお父さまの債務を承継し、各自その範囲内で本来の債務者であるAさんとともに連帯債務を負うことになります。

ですので、お兄様とAさんが、お二人で借入金の責任を持つと言われていても、また、遺言で相続分の指定があり、債権者がその内容を承認しない限り、法的には、あなたも500万円の範囲内で連帯債務を負うことになります。銀行から借入金の請求をされることはあり得ますので、銀行ともよく話し合っておくことが必要です。

 

2.身元保証債務

次に、保証債務の相続についてご説明します。保証債務も、原則として相続人が承継することになるのは金銭債務や連帯債務と同様です。しかしながら、身元保証といった継続的保証債務については、個人的信頼関係が基礎となっているため、保証人が死亡した以後の債務について相続性があるかどうか問題となります。

身元保証契約とは、身元保証人が、被用者の行為により使用者が受けた損害を賠償することを約する契約を言います。身元保証に関する法律は、①保証契約の存続期間を5年に制限し、②身元保証人に広範な契約解除権を認め、③裁判所の裁量により身元保証人の責任の範囲を定めることができるとしています。

身元保証の相続性については、身元保証契約は、これによって生じる債務が相続人にとって予測のできない責任を生じる可能性があることから、相続性がないとするのが判例です。

ですので、ご質問のケースに即してご説明しますと、お父様の身元保証債務について、あなたやお兄様が相続することはありません。相続が始まった後に、お父様の弟様が不祥事を起こして勤務先に損害を与えても、あなたやお兄様は責任を負うことはありません。

もっとも、身元保証人の生前(相続時)にその保証債務が既に具体的に発生している場合には、通常の損害賠償債務と同様に、相続人に承継されることになります。

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