【改正民法債権編】多数当事者の債権債務

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、多数当事者の債権債務について考えてみたいと思います。

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多数当事者の債権債務

連帯債務における債権者の地位を強化、連帯債権を新設

 

◆多数当事者の債権債務とは
同一債権について、債権者または債務者が複数いる場合を、多数当事者の債権債務といいます。
新法では、多数当事者の債権債務について、新たな種類が設けられ分類が整理されたほか、当事者の一部に生じた事由の他の当事者への効力について改正されました。また、一部の債務者が弁済を行なった場合の当事者間での求償関係についても改正がなされました。

 

◆多数当事者の債権債務の種類
(1)多数当事者の債権関係
同一の債権について複数の債権者がいる場合として、次の3つが考えられます。

①債権の内容が可分である場合
たとえば、2人が共同で100万円を貸した場合、債権の内容である100万円の返還請求権は可分なので、特段の合意がなければ、2人は50万円ずつの返還請求権を有することになります。

②債権の内容が性質上不可分である場合
たとえば、1つの建物を2人で共同で購入した場合、債権の内容の1つである建物の引渡請求権は、性質上不可分です。

③債権の内容が性質上可分であるが、法令の規定ないし当事者の合意によって不可分である場合
たとえば、上記①の事例で、合意により不可分債権と定めた場合です。

旧法では、このうち①を可分債権、②と③を不可分債権としていました。
新法では、③について、連帯債権という新たなカテゴリーを設け、各債権者は、すべての債権者のために全部または一部の履行を請求できると規定しました(新法432条)。

(2)多数当事者の債務関係
同一債務について複数の債務者がある場合も、(1)と同じように、①性質上可分な場合、②性質上不可分な場合、③性質上可分だが法令の規定ないし当事者の合意により不可分である場合、の3つが考えられます。

①は可分債務、②は不可分債務とされるほか、新法では、③について、新たに連帯債務に分類することとし、債権者は、連帯債務者の1人に対し、あるいは同時もしくは順次すべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求できると規定しました(新法436条)。

 

◆一部に生じた事由の他の当事者への効力
債権債務に当事者が複数いる場合、一部の当事者間で生じた事由がどのように他の当事者に影響するかが問題となります。

たとえば、債務者AとBが、債権者に対して100万円の連帯債務を負っているとしましょう。債権者がAだけに対して、「もう返さなくていい」と債務を免除した場合、Bはまだ100万円を返さなくてはならないでしょうか。
Aに生じた事由がBにも効力を有する(Bは100万円を返す必要はなくなる)場合を「絶対的効力」、Bには効力を有さない(Bは100万円を返さなければならない)場合を「相対的効力」といいます。

債権債務ごとの絶対的効力を有する事由

・多数当事者の債権で不可分債権→弁済・履行の請求・相殺

・多数当事者の債権で連帯債権→弁済・履行の請求・更改・免除・相殺・混同

・多数当事者の債務で不可分債務→弁済・更改・相殺

・多数当事者間の債務で連帯債務→弁済・更改・相殺・混同

前述の例からわかるとおり、絶対的効力とされる事由が少ないほうが、債権者の地位は強くなります。

新法では、新設された連帯債権における対外的効力の規定を設けたほか(新法432条から435条の2)、複数当事者の債権関係、債務関係のそれぞれについて、対外的効力の規定が一部改正されました。
特に、連帯債務については、絶対的効力を有するとされていた事由のうち、履行の請求(旧法434条)、免除(旧法437条)、時効の完成(旧法439条)について、相対的効力とされ、概ね債権者の立場が強化されています。

なお、今回の改正で、連帯債務について、絶対的効力事由が減少し債権者の地位が強化された結果、共同不法行為における賠償義務も、明文上の連帯債務の規定が適用されることになると考えられています。

 

◆連帯債務者間の求償
AとBが100万円の連帯債務を負っている場合、AとBの内部では、特段の合意がなければ50万円ずつが自己負担分となります。
それでは、Aが40万円を弁済した場合、AはBに対して、負担率である2分の1の20万円の求償を求めることができるのでしょうか。それとも、自分の負担分である50万円を超えないと、Bに求償できないのでしょうか。

旧法では、この点が明確ではなく、また判例上、共同不法行為における不法行為者の賠償義務(不真正連帯債務)の場合には、事故の負担分を超えた場合に初めて求償できるとされていました。
新法442条1項は、この判例を変更し、連帯債務者の1人が弁済等で共同の免責を得た場合には、免責額が自己の負担部分を超えない場合でも、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた求償権が発生することを規定しました。

 

【改正民法債権編】詐害行為取消権の効果

【改正民法債権編】詐害行為取消権の行使方法

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今回は、【改正民法債権編】に関して、詐害行為取消権の行使方法について考えてみたいと思います。

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詐害行為取消権の行使方法

裁判において被告になる者、具体的な行使方法等を規定

 

◆裁判における相手方
(1)「被告」になる者
裁判において訴える者を「原告」、訴えられた者を「被告」といいます。詐害行為取消権は、裁判所において行使する必要があるため、債権者は「原告」となって訴訟提起します。

このとき訴えられる者、つまり「被告」になるのは、受益者に対して詐害行為取消権を行使する場合は「受益者」、転得者に対して詐害行為取消権を行使する場合は「転得者」です(新法424条の7第1項)。
債権者は、受益者または転得者を被告として訴えるのであって、債務者は被告になりません。

(2)債務者に対する訴訟告知
詐害行為取消権を行使する裁判において、債務者は「被告」にはなりませんが、債権者は、債務者に対して「訴訟告知」をしなくてはなりません(新法424条の7第2項)。
訴訟告知を受けた債務者は、「原告」である債権者と、「被告」である受益者または転得者との裁判に参加することができ、債務者自身の主張等を行なうことができます。

 

◆詐害行為取消権の行使方法
(1)受益者に対する詐害行為取消権の行使
受益者に対して詐害行為取消権を行使する場合、債権者は、債権者が「原告」となり、受益者を「被告」として、裁判所に対し、次のことを求めることができます(新法424条の6第1項)。
①債務者が行なった詐害行為の取消し
②詐害行為によって受益者に移転した財産の返還

②の財産の返還は、実際に受益者に移転した財産そのものの返還(現物返還といいます)が原則です。
しかし、現物返還が困難な場合には、移転した財産の価額の償還(価額償還といいます)を求めることができます。

(2)転得者に対して詐害行為取消権を行使する場合、債権者は、債権者が「原告」となり、転得者を「被告」として、裁判所に対し、次のことを求めることができます(新法424条の6第2項)。
①債務者が行なった詐害行為の取消し
②転得者が転得した財産の返還
②の財産の返還は、受益者に対する詐害行為取消権の行使の場合と同様、現物返還が原則ですが、現物返還が困難な場合には、価額償還を求めることができます。

 

◆債権者への支払いまたは引渡し
債権者は、受益者または転得者に対して求める現物返還の内容が、金銭の支払いまたは動産の引渡しであるときは、自己(債権者)に対して直接、支払いまたは引渡しを求めることができます。受益者または転得者は、債権者に対して支払うか、または引渡した場合には、債務者への返還義務を免れます(新法424条の9)。
また、債権者が、受益者または転得者に対して現物返還ではなく、価額償還を求める場合でも、自己(債権者)への直接の支払を請求することができます。

 

◆取消しを請求できる範囲
詐害行為の内容が可分(たとえば、金銭の支払い)である場合には、債権者は、被保全債権の債権額の限度においてのみ、詐害行為の取消しを請求することができます(新法424条の8)。

また、債権者が、現物返還ではなく、価額償還を求める場合も、債権者は、被保全債権の債権額の限度においてのみ、詐害行為の取消しを請求することができます。
他方、詐害行為の内容が、不可分である場合には、債権者は、被保全債権の債権額にかかわらず、詐害行為全部の取消しを求めることができます。

【改正民法債権編】詐害行為の類型による要件の特則

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今回は、【改正民法債権編】に関して、詐害行為の類型による要件の特則について考えてみたいと思います。

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詐害行為の類型による要件の特則

問題となる行為を類型化し、類型ごとに特則を整備

 

◆詐害行為の類型化による要件の明確化
新法424条は、詐害行為取消権を行使できる要件を規定していますが、概括的・抽象的に規定されているため、債務者が行なった行為について、新法424条の要件に該当するのか判断が難しい事例が多数あります。

そこで、新法では、詐害行為取消権と同様の効果を有する他の権利(破産法上の否認権)や、詐害行為取消権に関する旧法下での判例等を参考にして、問題になる行為を類型化し、各類型に応じて詐害行為取消権を行使するための要件を明確化し、特則を定めました。

 

◆相当の対価を得て行なった財産処分行為
債務者が一方的に財産を失う行為(たとえば、贈与)の場合は、詐害行為と判断しやすいといえます。しかし、債務者が土地を売って相当の代金を得るような場合、その売買行為が詐害行為なのかどうかが判然としません。
そこで新法は、債務者が受益者から相当の対価を得る財産処分行為を行なった場合、以下の要件をすべて満たすと詐害行為取消権を行使できることを規定しました(新法424条の2)。ただし、この要件をすべて満たすことは実際には困難であり、行使できるケースは限られると思われます。

【相当の対価を得る財産処分行為の詐害行為取消権の要件】
①その行為(債務者の財産処分行為)が、財産の種類を変更することにより、債務者において隠匿、無償の供与等の債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせるものであること。
②債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
③受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

 

◆特定の債権者に対する担保の供与等
(1)偏頗行為の場合
偏頗行為とは、支払い不能時に債務者が行なう、特定の債権者だけを利するような行為をいいます。

債務者が特定の債務について担保供与(たとえば、抵当権の設定)または債務消滅に関する行為(たとえば、弁済)を行なった場合、以下の要件をすべて満たすと詐害行為取消権を行使できます(新法424条の3第1項)。
①債務者の支払不能時にその行為が行われたものであること。
②債務者と受益者とが通謀して、他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
支払不能時に偏頗行為を行なうことは債権者間の公平を欠くため、特則を定めたものです。

(2)非義務的行為の場合
債務者の担保供与や債務消滅に関する行為が、債務者の義務に属せず、または、その時期が債務者の義務に属しない場合、以下の要件をすべて満たすと詐害行為取消権を行使できます(新法424条の3第2項)。
①支払不能になる前30日以内にその行為が行われたものであること。
②債務者と受益者とが通謀して、他の債権者を害する意図をもって行なわれたものであること。

「債務者の義務に属せず」とは、たとえば、担保権(抵当権など)を設定することをあらかじめ合意していないにもかかわらず、債務者が債権者に対して自己の財産に担保権を設定する場合です。「その時期が債務者の義務に属しない」とは、たとえば、支払期限前の弁済です。
債務者が特定の債権者に対して義務ではない行為を行なって、その債権者だけを利することは債権者間の公平を欠くため、特則を定めたものです。

 

◆過大な代物弁済等の特則
債務者が債務の消滅に関する行為を行ない、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務額よりも過大である場合、その過大な部分について、詐害行為取消権を行使できます(新法424条の4)。
たとえば、100万円の債務を負っている債務者が、500万円の財産的価値がある動産で代物弁済する場合がこれに当たります。

【改正民法債権編】詐害行為取消権

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今回は、【改正民法債権編】に関して、詐害行為取消権について考えてみたいと思います。

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詐害行為取消権

要件、効果、適用範囲等をより詳細に規定

 

◆債権者代位権との共通点・相違点
詐害行為取消権は、債権者代位権と同じく、強制執行の引当てとなる債務者の財産を確保するための制度です。
債権者代位権は債務者が財産の減少を放置する場合に、債権者が債務者に代わって財産の減少を防止するものですが、詐害行為取消権は、債務者が財産を積極的に減少する行為をした場合に、債権者が債務者の財産減少行為を取り消して、財産の減少を回復させるものです。

 

◆詐害行為取消権の内容
債権者Aが、債務者Bに対して債権(被保全債権)を有している状態で、次のような行為が行われたとします。
・BがC(Cを受益者と言います)に対してBの財産を逸出させて、Aを害する(Aが満足な弁済を受けられなくなる)行為を行なった場合
・さらに、CがBから得た財産をD(Dを転得者といいます)に移転させた場合

詐害行為取消権は、このような行為が行われた場合に、AがB・C間の行為を取消して、その逸出した財産を受益者Cまたは転得者Dから取り戻す制度です。

●詐害行為の具体例
債権者Aは、債務者Bに1000万円を貸し付けている。500万円の土地がBの唯一の財産である状態において、BはBの経済状態をよく知る友人C及びDと相談し、B・C間で贈与契約を締結して土地を贈与し、さらにC・D間で贈与契約を締結して土地を贈与した。
この場合に、AはB・C間で行われた贈与契約を取消し、CまたはDに対して、土地または土地の価値である500万円の返還を求めることができる。

 

◆新法での改正点
詐害行為取消権は、受益者や転得者を巻き込んで行使され、さらに、その効果も債務者が行なった行為を取り消して、財産状態を元に戻すものなので、権利行使が与える影響は債権者代位権に比べて大きいと言えます。
しかし、旧法では、詐害行為取消権について、わずか3か条だけしか規定を置いていなかったため、詐害行為取消権の要件や効果が不明確であり、多数の判例や解釈によって補充されて運用されてきました。

新法では、旧法下での判例や解釈の蓄積を踏まえて、詐害行為取消権の要件、効果、適用範囲等について、15か条の規定を置いて、より詳細に規定しています。
なお、詐害行為取消権と似た制度として、破産法上の否認権という制度があります。新法では、否認権に関する条文を参考にして、詐害行為取消権の条文が規定されているところもあります。

 

◆詐害行為取消権の要件
(1)受益者に対する詐害行為取消権の要件
詐害行為取消権は、債務者が受益者との間で行った行為を取り消し、受益者から財産の返還を求めるという大きな効果を生じさせるものです。

そのため、債務者や受益者との利益調整の観点から、新法424条において厳格な要件が規定されています。
詐害行為取消権は、強制執行のための財産を回復させるための制度であることから、詐害行為は、財産権を目的とした行為(たとえば、贈与契約、弁済)に限られ、被保全債権は強制執行により実現できる権利(たとえば、金銭債権)であることが必要となります。

また、債務者の財産管理の自由と債権者保護の調整の観点から、被保全債権は、詐害行為の前に存在した原因から生じた債権であることが必要です。なお、被保全債権自体が詐害行為の前に生じている必要はなく、被保全債権を発生させる「原因」が詐害行為の前に生じていればよいとされています。

そして、詐害行為によって利益を得た受益者の利益と債権者保護の調整の観点から、債務者は自己の行為が債権者を害することを知っている必要があり(詐害意思)、受益者も詐害行為によって債権者が害されることを知っていることが必要となります。この知っていることを「悪意」といいます。他方、知らないことを「善意」といいます。
詐害行為取消権を受益者に対して行使する場合、以下の要件をすべて満たす必要があります。

【受益者に対する詐害行為取消権の要件】
①債務者が債権者を害することを知って行為を行なうこと(詐害行為)
②受益者が債権者を害することを知っていたこと
③詐害行為が財産権を目的とする行為であること
④債権者の債権(被保全債権)が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものであること
⑤被保全債権が強制執行により実現できる権利であること

(2)転得者に対する詐害行為取消権の要件
詐害行為取消権を転得者に対して行使する場合、受益者に対する詐害行為取消権の要件をすべて満たしたうえで、さらに、下記の要件を満たす必要があります(新法424条の5)。
なお、詐害行為取消権の対象となる転得者が、受益者から財産を転得した者である場合か、受益者から財産を転得した者からさらに財産を転得した者である場合かによって、要件が異なります。

【転得者に対する詐害行為取消権の要件】
①転得者が受益者から財産を転得した者である場合
転得者が、転得の当時、債務者が行なった行為が債権者を害することを知っていたこと。
②転得者が他の転得者から財産を転得した者である場合
当該転得者とその前に転得したすべての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者が行なった行為が債権者を害することを知っていたこと。

(3)裁判所に対する訴えによること
詐害行為取消権は、受益者に対して行使する場合であっても、転得者に対して行使する場合であっても、裁判所に訴訟を提起する方法でしか行使できません。
債権者代位権は裁判外で行使することができますが、詐害行為取消権は関係者に与える影響が大きいため、裁判上でしか行使できないよう規定されています。

 

◆詐害行為取消権の出訴機関の制限
詐害行為取消権は次のいずれかに該当すると、訴訟提起することができなくなります(新法426条)。
①債務者が債権者を害することを知って詐害行為を行なった事実を債権者が知った時から2年が経過した場合
②詐害行為の時から10年経過した場合
このような出訴期間の制限が設けられているのは、長期間にわたって債務者の行為や財産が逸出した状態を放置した債権者に詐害行為取消権を行使させて、現状の法律状態を変動させる必要性は乏しいという理由によります。

【改正民法債権編】債務者の処分権限

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債務者の処分権限

従来の判例のルールとは異なる定めを規定

 

◆債務者の処分権限
債権者が債権者代位権を行使した場合、債務者は自己の権利を行使することはできるのでしょうか。

旧法では、このような債務者の処分権限についての明文の定めがなく、解釈に委ねられていました。
債務者の財産管理の自由と、債務者の財産維持に利害関係を有する債権者の利益調整という見地から、債務者の処分権限をどのように考えるべきかが議論されていました。
債務者の自由を重視すれば、代位権行使とはまったく別に債務者が第三債務者に対して弁済を求める等の権利行使を認めるべきということになります。

一方で、債権者の利益という点を重視すれば、代位権行使後に債務者による権利行使を無制限に認めた場合、債権者による代位権行使が無駄になってしまうため、債務者の権利行使には一定の制限を設けるべきということになります。

 

◆旧法における判例の考え方
代位権行使後の債務者による債権処分についての判例は、債権者が債務者に代位の通知をするか、または債務者が債権者の代位を知ったときは、債務者は権利行使をすることができないとしています。

 

◆新法による判例ルールの変更
新法は、債権者が債権者代位訴訟をを提起したときは、債権者は遅滞なく、債務者に訴訟告知をしなければならないものと定めました(新法423条の6)。
この訴訟告知と旧法の判例の考え方からすると、新法の下では、債務者に対して訴訟告知がなされる結果として、少なくとも債権者代位訴訟が提起された場合には、債務者は代位の対象となる債権について処分権限を失うと考えることになりそうです。

しかしながら、新法は、債権者代位権の行使後も債務者は代位の対象となる債権について処分権限を失わず、債権者による代位権行使とは別に取立て等をすることができる旨を明文で定めました(新法423条の5)。
これは、債務者に代位が通知されたか、債務者が代位権行使を知った後は、債権の処分ができないとする従来の判例の扱いとは異なる定めということになります。

債権者代位権は、債務者が自ら権利行使しない場合に限って債務者の財産への干渉が認められる制度であり、本来債務者は自由に自己の財産を管理できるはずです。また、債権者により債権者代位権が行使されたことを契機として、債務者が権利行使するということは、債権者代位権制度の目的が達せられたともいうことができます。このような考え方の下、新法は従来の判例の解釈と異なる定めを規定しました。
さらに、同じ条文において、第三債務者も、債権者代位権が行使されている中で、債務者に対して債務を弁済できることも明記されました。

 

◆これまでと異なる対応の必要性
旧法の判例の下では、債権者代位権を行使した債権者は、債務者に対して行使の事実を通知すれば、債務者による権利行使を制限でき、債権者を差し置いて債務者が第三債務者から債権を取立てるような事態を防ぐことができました。
しかしながら、新法の下では、たとえ債権者が債務者に通知したとしても、債務者が第三債務者から取立てることや第三債務者が債務者に対して弁済することを防げません。

そのため、債権者代位権を行使した債権者としては、このような債務者による取立てや第三債務者による債務者への弁済を防ぐために、債権者代位権の行使と併せて、債務者の第三債務者に対する債権の仮差押えも考える必要が生じます。
これまでになかった対応であるため、実際に債権者代位権の行使を考える際には注意が必要です。

【改正民法債権編】債務者への訴訟告知

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債務者への訴訟告知

訴訟提起を債務者に告知する債権者の義務を追加

 

◆債権者代位訴訟の効果
債権者が、第三債務者に債務者の権利を代位行使して弁済を求めたにもかかわらず、第三債務者が弁済をしないような場合、債権者は第三債務者を被告として訴訟提起することになります。
このような訴訟を「債権者代位訴訟」と言います。

債権者代位訴訟において、債務者の第三債務者に対する債権が存在しないと判断されて債権者が敗訴した場合、この敗訴の効力が債務者に及ぶのかについて、旧法下で議論されました。

判例は、債権者代位訴訟の結果が勝訴であっても敗訴であっても、その判決の効力は債務者に及ぶとしています。
仮に、債務者に判決の効力が及ばないとすると、第三債務者は債権者代位訴訟において債権者に勝訴しても、その後、債務者に訴訟提起されれば改めて応訴しなければならず、第三債務者にとって酷な結論になってしまうためです。また、債務者が自ら権利行使しなかったために、債権者によって債権者代位訴訟が提起されるに至ったのであり、債務者は債権者による訴訟の結果を甘受すべきともいえます。

 

◆判例に対する批判
債権者代位訴訟の効果が債務者にも及ぶとする判例の見解には、従来から多くの批判がありました。
債権者代位訴訟は債権者と第三債務者の間で行われるため、債務者は債権者代位訴訟が係属していることを知る機会がありません。
旧法では、債権者または第三債務者に対して、債権者代位訴訟提起の事実を債務者に通知する義務がかされておらず、債務者の知らないところで債権者代位訴訟において債権者が敗訴するおそれがありました。

この場合にも債務者に判決の効果が及ぶとすれば、債務者の手続保障が不十分と言わざるを得ません。
判例の結論を批判する立場から、債務者が債権者代位訴訟に参加する機会が与えられていた場合に限って、訴訟の効力(債務者に不利な結果であっても)を債務者に及ぼすべきであるという見解もありました。

 

◆債務者への訴訟告知
新法は、債権者代位訴訟の結果が債務者に及ぶかという上記の議論に関連して、債権者が債権者代位訴訟を提起したときは、債権者は遅滞なく、債務者に訴訟告知をしなければならないと定めました(新法423条の6)。

これにより、債務者は、債権者からの訴訟告知により債権者代位訴訟が提起されたことを知ることができ、訴訟に参加する機会が与えられることになります。
訴訟告知とは、訴訟の当事者から、訴訟に参加することができる第三者にたいして訴訟が係属していることを通知する民事訴訟法上の制度です。

前記のとおり、旧法下における判例は、債務者に債権者代位訴訟の提起を知る機会が与えられていたか否かにかかわらず、訴訟の効力が及ぶという見解です。債権者による訴訟告知が義務付けられたことで、債務者に訴訟に関与する機会が与えられていたか否かを問わず債務者に判決の効力が及ぶのは不当であるという批判は、立法的に解決されました。
これにより、債務者には手続保障が与えられることになり、従来の判例の取扱いが係継続することが予想されます。

【改正民法債権編】弁済受領権限と事実上の優先弁済

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今回は、【改正民法債権編】に関して、弁済受領権限と事実上の優先弁済について考えてみたいと思います。

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弁済受領権限と事実上の優先弁済

債権者代位権を行使した債権者に弁済受領権限があることを明文化

 

◆債権者の弁済受領権限
債権者代位権を行使した債権者は、第三債務者から債務者に対してなされる弁済を、債務者に代わって受領する権限があるでしょうか。
それとも、第三債務者に対して、「債務者に対して弁済・交付せよ」と言えるに留まるのでしょうか。

仮に、第三債務者に対して、「債務者に対して弁済・交付せよ」としか言えないとすると、債務者がその受領を拒絶した場合、債権者代位権を行使した目的を達することができません。債権者代位権は、債務者自身が権利行使しない場面で用いられるものであり、債務者が債権者を困らせるために弁済の受領を拒絶する可能性は否定できません。

そこで、、旧法下で判例は、債権者は、債務者に代わって第三債務者から弁済を受領する権限があることを認めています。
これにより、債権者は、債務者の受領拒絶を心配することなく債権者代位権を行使することができるのです。

 

◆債務者の代わりに受領した金銭の取扱い
債権者代位権が行使される典型的な例は、債権者の被保全債権が金銭債権で、代位行使される債務者の債権も金銭債権である場合です。
前述のとおり、債権者は弁済受領権限を有するため、第三債務者から直接債務の弁済を受けることができます。
債権者が第三債務者から受領した金銭は本来債務者のものであって、債権者がこれを保持する権利を有するわけではありません。債権者が有するのは、あくまで債務者の代わりに弁済を受領する権限であって、債務者の所有物を自分のものにする権限はないのです。
そのため、債権者は、受領(回収)した金銭を債務者に返還する義務があります。

 

◆事実上の優先弁済権
前述のとおり、債権者は第三債務者から受領した金銭を債務者に返還しなくてはなりません。
では、債務者が債権者に対して、その受領した金銭の返還を求めた場合に(不当利得に基づく返還請求)、債権者は、その金銭の返還債務と、被保全債権たる債務者に対する債権を相殺することはできるでしょうか。

債権者代位権は、特定の債権者により行使されるものの、そこで維持された債務者の財産は、全債権者の債権の引当てとなります。そのため、債権者代位権の効果は、全債権者に帰属することになります。

債権者代位権が全債権者の利益を図るための制度であることからすれば、代位権を行使した債権者だけが優先弁済を受けることになる相殺は許されないことになります。しかし一方で、率先して火中の栗を拾って第三債務者から回収した債権者に優先弁済を受けさせることは、むしろ公平にかなうという考え方もあります。

旧法下で判例は、債権者に、債務者に対する返還債務と被保全債権を相殺することを認めています。これにより、債権者代位権は、(金銭債権の場合に)債務者の財産を維持して全債権の利益を図る制度というよりも、代位権を行使した債権者が被保全債権について優先的に弁済を受けるための制度という側面(事実上の優先弁済)が生じています。

 

◆新法での取り扱い
旧法における解釈を受けて、新法は、債権者に弁済受領権限があることを明文で認めました(新法423条の3)。また、第三債務者が債権者に弁済したときは、第三債務者の債務者に対する債務が消滅することも規定されました。

新法制定の過程では、相殺による事実上の優先弁済につき、全債権者の利益を図るべきという債権者代位権の趣旨に反するとして、明文で禁止すべきことも議論されました。しかしながら、債権者代位権が実務上果たしている簡便な債権回収手段としての役割は積極的に評価する余地があること等を踏まえ、相殺を禁止する条項は見送られました。

そのため、相殺を認めている現在の判例の運用が継続し、結果として相殺による事実上の優先弁済が今後も許容されることになります。

【改正民法債権編】債権者代位ができる権利の範囲

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、債権者が代位できる権利の範囲について考えてみたいと思います。

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債権者が代位できる権利の範囲

代位できる範囲に関する従来の判例ルールを明文化

 

◆債権者代位権の行使により利益を享受する債権者
債権者代位権は、強制執行の引当てとなる債務者の財産を維持することにより、債権者の債権の保全を図る制度です。維持される債務者の財産は、債権者代位権を行使した特定の債権者の債権のみならず、その債務者に債権を有する他の債権者の引当てにもなります。

そのため、複数いる債権者の1人が債権者代位権を行使して債務者の財産が維持されると、債権者代位権を行使した債権者のみならず、他の債権者も利益を享受することになるのが原則です。

 

◆債権者が代位行使できる債務者の権利の範囲
債権者代位権が、それを行使した特定の債権者のみならず、同一の債務者に債権を有する他の債権者を含めた全債権者の債権を保全するための制度であることからすると、債権者代位権を行使する債権者は、全債権者の利益のため、自分の債権(被保全債権)の額を超えて債務者の権利を行使することもできるように思われます。

たとえば、債権者Aは債務者Bに1000万円を貸し付けており、債務者Bは第三債務者Cに1500万円の債権があるとします。Bには、Aのほかに債権者Dがいて、DはBに500万円の債権があります。

BのCに対する1500万円の債権につきBが時効の完成猶予をしない場合、AはDを含めた全債権者の利益のため、自分の被保全債権1000万円を超える1500万円全額について、Bを代位して時効の完成猶予ができそうです。しかしながら、旧法下で判例は、債権者代位権を行使する債権者の被保全債権の額を代位できる金額を上限としています。
上記の例でいえば、Aは、BのCに対する1500万円の債権のうち、自己の被保全債権である1000万円を上限としてしか完成猶予の請求をすることができません。

債権者代位権を行使して第三債務者から弁済を受領した債権者は、それを自己の債務者に対する被保全債権の弁済に充当することができます(事実上の優先弁済)。このような事実上の優先弁済を認める以上、債権者代位権を行使できるのは自己の被保全債権の範囲を限度とするという判断です。

 

◆新法での明文化
被保全債権の範囲でしか代位できないことは、旧法に明文で規定されているものではなく解釈により認められていた制限です。
新法では、この判例による制限を明文化しました。これにより債権者代位権を行使する債権者は、自己の債権額の限度においてのみ債務者の権利を代位行使できることが明文で確認されました(新法423条の2)。

なお、新法では、「被代位権利の目的が可分であるときは」と留保を付しています。債権者代位権により代位行使される債務者の権利は、金銭債権が多いのが実態です。金銭債権は可分債権であり、その一部のみ代位行使を認めるという取扱いも可能です。

一方で、債権者代位権の適用範囲は実務において拡張されており、債務者の移転登記請求権を代位行使する場合のように、代位行使される債務者の権利が不可分な債権である場合もあります(転用事例、新法423条の7)。
新法は、このような債権者代位権の転用事例も踏まえつつ、被保全債権額を代位の上限とすることにつき、代位される権利が(金銭債権のように)可分である場合という留保をしたのです。

【改正民法債権編】債権者代位権

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は、【改正民法債権編】に関して、債権者代位権について考えてみたいと思います。

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債権者代位権

債権者代位権の要件、効果、適用範囲を明文化

 

◆債権者代位権とは
債権者は、強制執行により債務者の財産から強制的に弁済等の債権の満足を得ることができます。強制執行により弁済を受けるためには、債務者が強制執行の引当てとなる財産を保持していることが必要です。債務者が、強制執行の引当てとなる財産を適切に管理しなければ、債権者は自己の債権を回収することができなくなってしまいます。

このように、強制執行の引当てとなる財産は、債務者のみならず債権者にとっても重要な意味があるのです。

債権者代位権は、一定の要件の下、債権者が、債務者に代わって債務者に帰属する権利を行使し、強制執行の引当てとなる債務者の財産を維持することにより、債権者自身の債権の保全を図る制度です。

たとえば、債権者Aは債務者Bに1000万円を貸し付けており、債務者Bは第三債務者Cに500万円の債権があるとします。BのCに対する500万円の債権が時効にかかりそうになっているのに、Bが自ら時効の完成猶予(旧法の中断)をしない場合、Aは債権者代位権を行使して、Bの権利を代わりに行使し、その500万円の時効を完成猶予させることができます。

 

◆新法での改正点
債務者の財産は、債務者が自由に管理処分できるのが原則です。債権者代位権は、この債務者の財産管理の自由の例外として位置づけられます。

債権者代位権は、原則である債務者の財産管理の自由と、債務者の財産維持に利害関係を有する債権者の利益の調整という見地から、その要件と効果が解釈されています。

旧法では、債権者代位権について、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。」(旧法423条1項)、「債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。」(同2項)とのみ定められていました。

具体的な要件や効果が詳細に定められていないため、上記の債務者と債権者の利益調整の見地から、判例を通じて、解釈により行使の効果や具体的な適用範囲が補充されていたのです。
新法では、これら旧法下の解釈により補充されていた債権者代位権の要件、効果、適用範囲が明文化されるとともに、議論されていた一部の論点を明文化することによって立法的な解決がなされました。

 

◆債権者代位権の要件
旧法では、債権者代位権を行使するためには、条文上、以下の3点が要件とされていました。
①債権者の債権を保全するために代位行使の必要があること
②債務者が自ら権利行使しないこと
③原則として債権者の有する債権が権利行使できる状態であること(弁済期が到来していること)
そして解釈によって、次の点も要件に加えられていました。
④代位する債務者の権利が、差押禁止債権や強制執行により実現できない権利ではないこと

新法においても、これら基本的な要件は変わっていません。解釈により要件とされていた上記④を明文化し、債務者の権利が差押禁止債権や強制執行により実現できない権利であるときは、これを代位行使できないことが規定されました(新法423条1項ただし書、同3項)。