【後見制度について】一人暮らしの認知症高齢者を施設に入所させるには「成年後見人が施設と入所契約」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「一人暮らしの認知症高齢者を施設に入所させるには」を考えてみましょう。

【Q】賃貸マンションで一人暮らしをしてるおば(78歳)が最近、肺炎を起こして入院しました。しかし、認知症がすすんでおり、家に帰って一人暮らしをするのは無理だと言われています。施設に入れたいと思いますが、今後どのようにすればいいのでしょうか。財産は預貯金が1500万円くらいと、収入は年金だけです。

【A】

・最初にすることは

おばさまは今後、一人暮らしは無理ということですが、ある程度財産も有りますから、地方公共団体や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームや介護付きの有料老人ホーム等に入所するということになると思います。特別養護老人ホームは何年も入所待ちをしているのが現状であることを考えますと、有料老人ホームへの入所が現実的です。

ただ、おばさまは認知症のために、ご自身で財産を管理したり、施設に入所したりということはできない状態でしょう。このような場合、おばさまのために、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらい、施設の入所契約をしたり、財産管理をしてもらうことになります。

したがって、おばさまに関して、まず家庭裁判所に成年後見開始の申立てをし、成年後見人を選んでもらうことになります。この場合、後見開始の申立権者は、4親等内の親族(配偶者、4親等内の血族、3親等内の姻族)らとなります。もしあなたがずっとおばさまの面倒をみてあげようと思われるのであれば、あなたが成年後見の申立てをし、ご自身が成年後見人の候補者となればよいでしょう。

申立て後、家庭裁判所で審理をして、後見開始の決定が出れば、成年後見人が選任されます。親族が成年後見人になることが多いですが、親族に成年後見人になれる人がいない場合や親族で誰が後見人になるかに争いがある場合などには、裁判所で専門職などの第三者が選ばれます。その場合、成年後見人には、弁護士や司法書士、社会福祉士などが選ばれることになります。

・施設の入所契約

現在、おばさまは肺炎で入院中ですが、退院が決まれば、施設に入所するのがよいと思われます。その場合、施設に入所するのには、施設入所契約が必要となります。また、有料施設の場合には、ある程度のまとまった費用も必要です。

施設は、親戚の方が面倒を見やすい場所で選び、入所が決まれば、成年後見人が、ご本人の後見人として後見人名義で施設勇所契約を締結します。その際に必要な費用は、この場合であれば、おばさまがお持ちの預貯金から引き出して支払うということになります。銀行は、預貯金名義人が認知症と分かった場合、預貯金の引出に応じることはありませんが、後見人からの払出請求にはもちろん応じます。その後の、入所費用等は、年金や預貯金の残金から支出することになります。その入出金の管理は後見人が行います。預貯金の管理や施設入所のための入出金管理は後見人の重要な仕事になります。

・居住用不動産の処分

おばさまは賃貸マンションにお住まいということでしたが、通常施設に移ると、今後、賃貸マンションに戻ることは考えられません。それにもかかわらず、マンションを借りっぱなしにすると月々の賃料が発生しますから、財産的には大きなマイナスとなります。そこで、後見人は、マンションの賃貸借契約を解約する必要があります。

おばさまの場合は認知症がすすみ回復の見込みが少ないですが、回復の可能性があったり、統合失調症などで長年自宅に居住し続けたけれども一人暮らしが難しくなったというような人では、自宅に強い愛着を持っているケースなどもあります。その場合に、その居住用の不動産を手放してしまうと、ご本人の今後の住まいや精神的な安定に大きな影響をもたらすことがあります。そこで、居住用不動産の扱いには特に慎重な対応が求められます。

そのため、成年後見人が居住用不動産の売却や賃貸借契約の解除など、居住用不動産の処分をする場合には、事前に家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申立てをし、許可を得る必要があります。したがって、賃貸マンションについては、後見人が裁判所の許可を得て、賃貸借契約を解除することになります。

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