【後見制度について】認知症の高齢者が遺産相続をするには「遺産分割のために成年後見人を選任」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「認知症の高齢者が遺産相続をするには」を考えてみましょう。

【Q】最近父が亡くなりました。86歳の母は認知症のために、父が亡くなったことさえ理解できていないようです。子である私と弟が父の相続手続きをするには、どのようにすればよいでしょうか。

【A】相続の手続きを進めるには、まずお父様が生まれてから亡くなったときまでの戸籍謄本等を取って、相続人が、妻であるお母様、子であるあなたと弟さんの3人であることを確定する必要があります。また、遺産として何があるのかも調査しなければなりません。銀行などでお父様の遺産を調査する場合にも、あなたが相続人であることを証明する資料として、これらの戸籍謄本等は必要になります。

このようにして、誰が相続人であるか(相続人の範囲)と、遺産としては何があるか(遺産の範囲)を確定させたうえで、相続人全員で遺産をどのように分けるのかの話し合い(遺産分割の協議)をすることになります。この遺産分割協議をするには、判断能力を備えていることが必要ですが、お母様にはこの判断能力が欠けているとみられますので、遺産分割の協議をする能力がありません。そこで、お母様が遺産分割で不利益を受けないように、お母様に代わってあなたたちと遺産分割の協議をする、お母様の代理人が必要になります。判断能力がない人の代理をするために法律が定めているのが成年後見人です。成年後見人を付けるには、あなたがお母様の住む家庭裁判所に、お母様について成年後見開始の申し立てを行うとよいでしょう。その場合に、何のために成年後見の申立てを行うのか、成年後見申立ての目的も記載します。

お母様の成年後見人を選任する家庭裁判所の審判が出て確定したら、あなたと弟さんとお母様の後見人とで遺産分割の協議をし、協議が整えば遺産分割協議書を作成します。この遺産分割の内容ですが、判断能力の欠けるお母様の利益保護のため、原則としてお母様の法定相続分(全体の遺産の2分の1)は確保させる必要があります。

遺産分割のために選任された成年後見人も、お母様の財産管理や身上監護の任にあたります。そのため、遺産分割協議にあたって紛争などの問題が生じるおそれがない場合には、親族であるあなたや弟さんが成年後見人に選任されることもあり得ます。ただし、相続人であるあなたが成年後見人に選任された場合には、遺産分割協議にあたってあなたがお母様の後見人としてお母様を代理することはできません。なぜなら遺産分割については、あなたもお母様も同じ相続人としてお父様の財産を分けることになるため、二人の利益が相反するからです。その場合には、公正を期してお母様の利益を守るために、家庭裁判所に特別代理人選任の申立てを行い、遺産分割に関しては、相続人とえらばれた特別代理人との間で、遺産分割協議を行うことが必要です。

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