【成年後見制度について】詐欺的商法から高齢の親を守るために「高齢者を見守る方法」

世田谷区砧で車庫証明、相続、遺言が得意な行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。

今回は後見制度に関して、「詐欺的商法から高齢の親を守るために・高齢者を見守る方法」を考えてみましょう。

【Q】80歳の母は、父が亡くなってからも、気楽な生活がしたいからと、地方のマンションで一人暮らしを続けています。買い物や食事など、全て一人でこなし、これまで困ったことはありませんでした。ところが孫たちが夏休みに母のところを訪ねて行って、大変な事態になっていることに気付きました。

普段、客間として使っている和室に、一度も開封していない箱が山と積まれていて、その箱の大きさや印刷された文字から推測すると、着物が入っているのではないかというのです。その話を聞いてすぐに、私たち夫婦が母のもとを訪ね、和室を確認すると、孫たちの言う通り、足の踏み場もないほど沢山の箱が積んでありました。

そこで、母に箱のことを尋ねたのですが、母は「買ったのよ。」と答えるだけで、詳しい話をしません。中身や購入先を尋ねても、なかなか答えず、しばらくしてから、重い口を開き、マンションを訪ねてくる親切な若い男女がおり、その男女の勧めで、着物や宝石を購入したとのことでした。

それを聞いた私たち夫婦は、預金のことが心配になったので、押し問答の末に母の預金通帳を見せてもらったところ、父の遺産として母が受け取った数千万円の預金の大半が、50万円・100万円という単位で引き出されていました。母は一人暮らしをしているものの、足腰が弱く。何度も銀行に出かけるのは面倒だったはずですが、その若い男女が、母を連れ出してタクシーで銀行まで出かけ、母自身に預金を引き出させていたようです。

母は、その若い男女をとても信頼している様子で、このままでは、一度も袖を通すことのない着物や身につけることのない宝石に、残りの遺産や年金までも、つぎ込む可能性があります。これでは、母が病気を患った時などに、治療費の支払いにも事欠くのではないかと案じられます。

母が、大量の高価品を購入することを止めさせるには、どうすればよいでしょうか。

【A】その男女は、訪問販売業者の従業員と思われます。まず、あなたのお母さまが受け取った書類の中から領収書等を探し、業者の名称や住所を確認してください。質問からは、その男女がどのような売り方をしたのか、明らかではありませんが、高価品を買ってすぐであれば(法定の要件をみたした売買契約書等の書面を受領した日から8日以内)クーリングオフ制度により、理由を問わず無条件かつ一方的に契約を解除することができます。

クーリングオフ出来ない場合であっても、その男女が事実と異なる説明をして必要以上の着物や宝石をあなたのお母さまに売りつけていたのであれば、消費者契約法第4条に基づく契約の取消や特定商取引法第9条の2に基づく契約の解除ができますので、取消又は解除の意思表示と共に代金の返還を求める通知を、その業者に宛てて発送してください。この通知は、以降の訪問販売を中止させることも目的としていますので、後日の紛争防止のため普通郵便ではなく、内容証明郵便にした方がよいでしょう。

次に、お母様が、あなたの家族と同居することが考えられます。質問にある男女も、お母さまが一人暮らしをしていなければ、短期間に何十枚もの着物や大量の宝石を売りつけることは困難だからです。ただ、お母様の事情(転居により主治医を変えたくない。)や子ども側の事情(家がそれほど広くない。)など、同居が難しい場合があります。あなたの家族にそのような事情がある場合には、お母さまの判断能力の程度に応じて、次の制度の利用が考えられます。

①各都道府県の社会福祉協議会が行っている福祉サービス事業の一つである「定期的訪問による見守り」(見守りサービス)の利用です。このサービスを受けるためには、あなたのお母さまが、社会福祉協議会と契約を結ぶ必要があります。このサービスでは、契約の際に訪問の回数を決めることができますので、できれば1週間に1回以上の訪問を選択してください。これは前述した訪問販売における契約の解除等(いわゆるクーリングオフ)の期間が法定の要件をみたした売買契約書面等の受領日から8日と定められているからです。(特定商取引法第9条)

②あなたのお母さまが、信頼できる人との間で、委任契約及び任意後見契約を結ぶことも考えられます。そしてあなたのお母さまの判断能力に問題があって、内容を理解した上で契約を結ぶのが難しいと思われる場合には、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、任意後見を発効させます。

③任意後見人がいない場合や任意後見契約を結んでいない場合、成年後見制度を利用します。この制度では、家庭裁判所が、後見人等を選任しますが、その後見人等には、親族だけではなく、弁護士や司法書士、社会福祉士や行政書士といった第三者が就任することも認められていますので、質問の場合の様に、親族が離れて暮らしている本人のために後見等を開始することも、十分可能です。

成年後見制度は、保護されるべき人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の三段階に分かれます。後見は、物事を判断する能力が欠けている場合に開始されますが、保佐は物事を判断する能力が著しく不十分な場合に、補助は、物事を判断する能力が不十分な場合に、開始されます。

質問によれば、あなたのお母さまは、支障なく日常生活を過ごしているようですので、成年後見制度のうちの保佐・補助を利用できる可能性がありそうです。あなたのお母さまが保佐相当であれば、保佐人の同意を得ないで高価品の購入やそのための預金取引という民法13条で定める重要な財産行為をしたことになります。あなたのお母さまが補助相当であれば、補助の場合は、補助人の同意が必要な行為を選択し特定する必要がありますので、「高価品の購入」や「そのための預金取引」を補助人の同意を要する行為として定めておくとよいでしょう。

保佐開始・補助開始の審判が出ますと、保佐人・補助人の同意なくして行われた行為は、保佐人・補助人が取り消すことができるようになります。つまり、あなたのお母さまが高価な着物や宝石を購入しても、保佐の場合には重要な財産行為に該当するとして、補助の場合は上記のように定めておくことにより、保佐人または補助人が、購入契約を取り消すことが可能となるのです。

また、保佐人・補助人が、あなたのお母さまが口座を持っている金融機関に、保佐・補助の届出を済ませれば、あなたのお母さまが金融機関に出向いたとしても、預金の払い出しを受けることもできません。さらに、問題の業者に対しては、保佐人・補助人から、あなたのお母さまだけでは預金の引き出しや高価品の購入ができないことや、契約を結んでも取消の可能性があることを、内容証明郵便で通知してもらうことも重要です。

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