【終活・遺言・相続相談】相談例43 遺贈に関する相談

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【相談内容】
相談者(85歳女性)から「私には一人息子(56歳)がいるが、嫁の言いなりで私の言うことを聞かない。私が亡くなったときには自宅だけは息子に継がせるとしても、それ以外の財産は、世話になった姪(62歳)に残したい。どのような遺言書を作ればいいだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
息子は相談者の相続人ですが、姪は相続人ではありません。したがって、姪に対する遺産の承継は遺贈になりますが、遺贈の方法については多くの問題があります。遺贈に関する知識を整理しながら、相談者の意向に適う遺言案を考えることになります。

【1】包括遺贈と特定遺贈の効果の違い

① 遺贈とは、遺言で相続人又は第三者に遺産の全部又は一部を処分することで、遺産全体の全部(全部包括遺贈)又は一部(割合的包括遺贈)を遺贈する包括遺贈と、特定の財産を遺贈する特定遺贈があります。
② 包括遺贈の受遺者(包括受遺者)は相続人と同一の権利義務を有しますが、特定遺贈の受遺者(特定受遺者)はそうではありません。そこで、包括遺贈か特定遺贈かにより、大きな違いが生じます。
③ 第一に、特定遺贈では受遺者は特定の遺産を取得するだけで原則として相続債務を承継しませんが、包括遺贈では受遺者は相続人と同じ立場に立つので、相続債務を承継します。
④ したがって、包括受遺者は、遺贈を受ける財産と承継する債務を比較したうえで、遺贈を受けるのか否かを判断しなければなりません。
⑤ 第二に、特定遺贈と包括遺贈では、放棄の方法が異なります。民法986条1項は「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる」としていますので、特定受遺者の遺贈の放棄はこの規定によりますが、包括受遺者は相続人と同視されるため、通常の相続放棄と同じく(包括遺贈があったことを知った日から)3か月の期間内に家庭裁判所に放棄の申述をしなければならず、民法986条1項の規定は適用されません。さらに、包括受遺者が相続人でもある場合には、遺贈の放棄と相続の放棄の両方を行わなければ、相続債務から完全に逃れることができません。
⑥ 第三に、特定遺贈では、相続開始と同時に、その遺産が受遺者に帰属することになりますが、割合的包括遺贈では、相続分の指定を受けた場合と同じく、どの遺産を取得するかは決まっていませんので、他の共同相続人との間で遺産分割協議をすることになります。

【2】遺言の工夫

① こうしてみると、遺贈を受ける側(受遺者)の立場としては、包括遺贈より特定遺贈してもらった方が面倒は少なく、ありがたいことになります。したがって、遺言を考えるについても、できるだけ、特定遺贈の方法を選択するべきでしょう。
② ところが遺言の書き方によっては、それが割合的包括遺贈なのか特定遺贈なのか明らかでない場合があります。
③ 例えば相談例で「自宅は息子に相続させ、その余の財産すべてを姪に遺贈する」との遺言を作成すれば、具体的事情によりますが、特定財産を除いた財産の全部または一部を遺贈する包括遺贈になる可能性があります。
④ また、「自宅は息子に相続させ、その余の財産は全て換価のうえ債務と必要経費を控除した残額を姪に遺贈する」(清算型遺贈)と言った遺言も同様です。
⑤ したがって、相談者が包括遺贈の効果を望まず、特定遺贈の意向なのであれば、大雑把な条項を避け、遺贈する財産(不動産・預貯金等)をひとつひとつ特定して列挙するべきです。

【3】その他の注意

【3-1】遺言執行者の指定

① 遺贈では、相続人たる遺贈義務者から受遺者に対する権利移転行為が必要になりますが、相続人の協力を得られない可能性があるため、遺言執行者を指定するべきだとされます。
② 特定遺贈の場合はその通りですし、全部包括遺贈の場合も遺言執行者の指定は有益ですが、割合的包括遺贈では遺産分割を経ないと具体的な遺贈の内容が定まらないので、遺言執行者を指定しても、直ちに問題が解決できるわけではありません。
③ その意味でも、遺言書作成においては、遺言執行者指定を併用した特定遺贈が合理的だと思います。

【3-2】予備的遺言

① 受遺者が遺言者の相続開始前に先死亡した場合には、遺贈の効力はなくなります。したがって、相談者が、その場合には姪の相続人や別の受遺者に遺贈したいというのであれば、その旨、予備的遺言として残す必要があります。
② なお、受遺者が遺贈を放棄した場合、受遺者が受けるべきであったものは相続人に帰属しますので、これに備えて別段の意思表示(予備的遺言)をしておくべきかもしれません。

【3-3】遺留分の侵害

① 遺贈が遺留分を侵害していれば、包括受遺者・特定受遺者ともに遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
② したがって、受遺者に遺留分侵害額請求される面倒を掛けたくないなら、遺言は、遺留分権利者の遺留分を侵害しない内容にとどめるべきですし、もしもの場合の遺留分侵害額請求にすみやかに対応できるよう、遺産を処分して金銭で遺贈する内容の清算型遺贈にしておくことが望ましいでしょう。

【3-4】士業の関与

① 相談例のように、たとえ遺言者の意思が明らかでも、遺言の書き方次第で包括遺贈になったり、特定遺贈になったりして、受遺者に思いがけない迷惑をかけることがあります。
② 自筆証書遺言には警戒が必要な理由の一つがここにも表れております。したがって、相談者が遺贈を希望される場合には、行政書士や弁護士に遺言書案の作成を任せていただくことをお勧めします。