【終活・遺言・相続相談】相談例58 相続放棄と限定承認

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例58 相続放棄と限定承認についての記事です。

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【相談内容】
相談者(55歳女性)から、「音信不通だった父(77歳)が半年前に亡くなったらしいと、伯母(80歳)から聞いた。父は事業に失敗し、貸金業者に多額の債務がある可能性がある。私は相続放棄できるのだろうか。相続放棄できても、自分の息子(23歳)や伯母に借金を継がせることにならないだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があるので、いつ、父の死亡を知ったのかを確認します。また、相続放棄した場合は初めから相続人でなかったことになるので、相談者の子に債務は引き継がれませんが、次順位の相続人として伯母が繰り上がる可能性があります。

【1】相続放棄の手続

① 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続開始地の家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出して申し立てします。なお、相続放棄の年間件数は約20万件です。
② 相談例では、伯母から父が死んだらしいと聞いただけですので、相談者としては、除籍謄本を入手して父の死亡を確認すべきですし、その確認をした時から3か月間は相続放棄できます。
③ なお、家庭裁判所は、熟慮期間(3か月)経過後の申述も受理します。相続債権者が熟慮期間経過後の相続放棄の効果を争う可能性がありますが、通例、相続債権者は相続放棄受理証明書を確認すれば法人内で損金処理できますので、その可能性は低いでしょう。

【2】相続債務の確認

① 相続債務の内容が不明のままでは相続放棄を決断できません。したがって、亡父の債務を調査することを勧めます。
② なお、相続債務の確認に時間がかかるなら、相続放棄期間伸長の申立てを勧めます。伸長期間は3か月が原則ですが、音信不通だった等の事情により、再度の伸長が認められることもあります。

【3】相続放棄の効果

① 相続放棄をすれば、初めから相続人にならないので、相談者の息子も債務を承継しません。ただし、同順位の相続人(子)全員が相続放棄すれば次順位の者(この場合は伯母)が繰り上がります。
② そこで、相談者が相続放棄した後、繰り上がる相続人(伯母)にもその旨を連絡し、相続放棄をしてもらうべきかという問題が生じます。
③ 相続放棄は債権者から催告が来てからでも遅くないので、伯母には相談者が相続放棄した事実を連絡しなくても良いとも言えます。
④ しかし、相談者が心配されるならば、繰り上がり相続人(伯母)に連絡して、相続放棄を勧めることが望ましいと思われます。
⑤ なお、相談例とは異なりますが、両親の片方が亡くなった場合に、子が相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹が相続人に繰り上がるので、注意が必要です(「相続分の譲渡・放棄」と「相続放棄」はまったくの別物です)。

【4】相続放棄と遺贈

① 被相続人に相続債務がある場合、遺産の一部を死因贈与契約や特定遺贈で相続人や孫に贈与・遺贈しておき、その相続人が相続放棄するという方法もあります。
② この方法によれば、相続債務を承継することなく特定の財産を手元に残すことができそうですが、不動産の死因贈与の受贈者である相続人が限定承認した場合において、信義則上、不動産所有権を相続債権者に対抗できないとして最高裁判例もあり、安心はできません。

【5】限定承認

① 限定承認とは、相続人が、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認をすることです。
② たしかに、遺産の範囲でのみ債務を負担すればよいというのは合理的に思えますので、遺産や相続債務の内容が判然としない場合に、限定承認を希望される相談者も少なくありません。
③ しかし、第一に、限定承認は、1.共同相続人全員が共同して行い、2.相続債権者らに対する公告が必要で、弁済のための相続財産の換価は競売によることとされ、3.相続人が複数の場合は、相続人の中から相続財産管理人の選任を要するとされるなど、厳格な手続きが予定されています。
④ 第二に、限定承認では相続不動産の値上がり益が確定したものとして、自動的に被相続人に対してみなし譲渡所得の課税が行なわれ、相続開始後4か月以内に準確定申告しなければなりません。したがって、相続不動産の相続時評価額が取得額等を上回る場合や、取得額が売買契約書等によって明らかにならない場合には課税リスクがあります。
⑤ 第三に、限定承認の中に、相続財産の債務超過が明らかになった場合、限定承認者や相続財産管理人は相続財産の破産を申し立てることができますが、これは義務ではありません。したがって、破産を申立てないなら、債権者を説得して按分弁済による任意整理を行うことになりますが、債権者はこれに同意する義務はありませんので、暗礁に乗り上げるリスクがあります。
⑥ 第四に、限定承認者や相続財産管理人の責任は重いにもかかわらず、相続財産の中から当然には報酬を得られません。
⑦ 以上から、相談者に限定承認を勧めると思惑違いになりかねませんので、事前に、問題点を説明しておく必要があります。