【終活・遺言・相続相談】相談例62 相続財産管理人

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
パスポート申請、車庫証明申請も多く手掛けております。

【終活・遺言・相続相談】相談例62 相続財産管理人についての記事です。

東京都世田谷区の車庫証明は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の遺言書は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・戸籍収集支援・銀行手続は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の成年後見制度・任意後見契約・死後事務委任契約は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区のパスポート申請は【090-2793-1947】までご連絡を

東京都世田谷区の相続・遺言のご相談は【090-2793-1947】までご連絡を

【相談内容】
相談者(72歳女性)から、「これまで世話をしてきた従姉(78歳)が孤独死した。従姉には私以外に係累がいない。だから、葬儀を出して伯父夫妻の墓に埋葬したが、家主から家賃6か月分(60万円)と特殊清掃の費用200万円の支払いを求められた。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相談者が従姉の連帯保証人でなければ、家主の求めに応じる必要はありません。むしろ、従姉に相続人がいないなら、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立て、相続財産法人の権利義務を清算してもらい、残余財産があれば特別縁故者としての財産分与を申立てるべきでしょう。なお、令和3年民法改正の施行後、相続財産管理人は「相続財産清算人」に変わりますが、ここでは、現行規定のままとして説明します。

【1】孤独死

① 高齢者の単独世帯は683万世帯であり、高齢者の人口約3,588万人の5人に1人が独居です。
② 「孤独死」の定義は明らかではありませんが、独居の高齢者が、病院ではなく自宅で心筋梗塞や脳出血などにより誰にも知られないまま亡くなり、死後2日以上を経過して発見された場合を指すとすれば、少なくとも年間約3万人が孤独死しているものと思われます。
③ 孤独死は来訪した親族や知人などによって発見されることが大半ですが、異臭に気づいた近隣住民の通報などによることもあり、死後相当期間が経過していることが少なくありません。
④ その場合は、まずは警察官が臨場して事件性の有無を調べ、遺体は司法解剖又は行政解剖します。
⑤ また、相続人がいなければ、死亡者の財産のうち預金通帳や現金などは警察が持ち帰り、その後は市役所などで保管します。したがって、相談者には、遺品の管理状態を確認します。
⑥ ちなみに、孤独死された方の自宅には飲みかけのお茶や洗濯物がそのままで、布団の上に人型の跡が残り、死臭が立ち込めているなど凄惨な状況があります。ゴミだらけの室内を復旧するために、200万円から300万円の特殊清掃費が必要となることもあります。

【2】相続財産管理人選任の申立て

① 被相続人に相続人があることが明らかでないとき、相続財産は法人とされ、家庭裁判所が、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任します(民法952条)。
② 相談例の場合には、従姉には法定相続人がいない様子なので、戸籍謄本でそれを確認し、相続財産管理人の選任を求めることになりますが、そうした手続きは弁護士が受任することができます。
③ なお、申立のためには50万円から100万円の予納金を求められますが、被相続人にそれ以上の預貯金があることが明らかであれば予納金は不要となることもありますし、手続きの途中で十分な相続財産があることが判明すれば、予納金は優先して返還されます。

【3】相続財産管理の手続

① 現行の手続では、まず、家庭裁判所が相続財産管理人を選任して、それを公告します。次にこの公告から2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産管理人は相続債権者・受遺者に対して2か月以上の期間を定めて請求申出の公告を行います。
② さらに、この公告期間が満了してなお相続人のあることが明らかでないとき、家庭裁判所は6か月以上の期間を定めて相続人捜索の公告(3回目の公告)を行い、この期間を過ぎると、相続人や相続財産管理人に知れなかった相続債権者らが権利を行使できなくなります。つまり、相続財産管理人の手続きには合計3回の公告、合計10か月の公告期間が必要となるのです。
③ この一連の手続きの中で、相続財産管理人は、遺産の内容を調査して債務があれば弁済します。相談例で家主から求められている賃料や特殊清掃費についても、相続財産管理人が相続財産の中から家主に支払いますので、その旨を連絡しておけば、家主も安心されるでしょう(家主も利害関係人として、相続財産管理人の選任を請求できます)。

【4】特別縁故者に対する財産分与の請求

① 現行法では、上述3回目の公告に当たる相続人捜索の公告期間が終われば、ほかに権利行使できる者がいないことが確定するので、特別縁故者の要件を満たす者は、家庭裁判所に対して清算後残存すべき相続財産の全部又は一部の分与を請求することができます。
② ただし、この財産分与請求ができるのは、相続人捜索の公告(3回目の公告)の期間満了後3か月以内に限られ、それは相続財産管理人の選任を申立てたときから1年以上先になりますから、失念して期間を徒過しないよう注意しなければなりません。

【5】特別縁故者に対する財産分与事件の手続き

① 上記の請求期間内に特別縁故者に対する財産分与の申立てについての審判があると、家庭裁判所は、その旨を遅滞なく相続財産管理人に通知してこの請求に関する意見を求め、相続財産管理人は、特別縁故者としての要件を満たすか、満たすとしたらどの程度の縁故があったと認められるかなどについて調査し、その結果を意見書にまとめて裁判所に報告します。
② なお、相続財産管理人は、それまでに相続財産の換価等の処分を行い、相続財産管理人の報酬付与を求め、清算後残存すべき相続財産を確定させておきます。
③ その後、家庭裁判所は、相続財産管理人の意見を参考にして、特別縁故者に対する財産分与の請求に対する審判を下し、請求が認容された場合は、相続財産管理人が審判確定後に財産分与を実行します。
④ また、請求が却下された場合は、請求者から不服申立て(即時抗告)できます。なお、特別縁故者に分与されなかった相続財産は単独所有の場合は国庫に帰属し、共有の場合は他の共有者に帰属します。こうして、これらの手続きを終えると相続財産管理人選任の決定が取り消され、事件が終了します。

【6】特別縁故者の該当性

① 相談者が特別縁故者に該当するかどうかの問題です。特別縁故者に当たるのは「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めていた者その他被相続人と特別の縁故があった者」とされています。
② 相談者と従姉が生計を共にしていなければ「被相続人と生計を同じくしていた者」には当たりません。次に「被相続人の療養看護に努めた者」に当たるかについては、通常期待されるような関係を超えて被相続人の面倒をみていた場合に限られます。したがって、たまに通院に付き添ったとか、入院時にお見舞いに行ったというだけでは、この要件を満たさないでしょう。
③ しかし、その他の事情から「その他被相続人と特別の縁故があった者」と認められる可能性もあります。そこで、相談者から、従姉との関係(面談、訪問、電話、相談など交流の有無と頻度、金銭的な関係、身元保証、冠婚葬祭の付き合いなど)を子細に聞き取って特別縁故者の該当性を検討します。

【7】その他の問題

① いったん相続放棄した相続人が、相続人捜索の公告期間満了後に特別縁故者として財産分与を求めることがあります。
② 自ら相続人の地位を放棄したのに権利主張するのは矛盾するように見えますが、債務超過と思い込んで相続放棄してしまったというケースがあるようです。
③ 相続放棄に至った事情は特別縁故者の該当性等の判断で考慮されることもありますので、諦める必要はないように思います。