【終活・遺言・相続相談】相談例44 特定財産承継遺言と配偶者の居住権

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例44 特定財産承継遺言と配偶者居住権についての記事です。

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【相談内容】
相談者(82歳男性)から、「10年前に再婚した妻(74歳)と自宅で暮らしている。自宅は先祖代々受け継いできたので、やがては前妻との間にできた長男(50歳)に受け継がせたい。ただ、妻もほかに行く当てがない。どうすればいいだろうか」と相談を受けた。

【検討すべき点】
相続人が後妻と前妻の子というのは、相続紛争のリスクの高い組み合わせです。この例では、先祖代々の自宅をどちらに承継させるのかの問題です。板挟みになっていますので、選択肢を提供して判断を促すことになります。

【1】特定財産承継遺言

① 自宅の所有権を長男に相続させると決断しているのなら、相続開始時にもめないよう「長男に自宅を相続させる」という内容の遺言書を作成するよう勧めます(特定財産承継遺言)。
② 「特定財産承継遺言」とは、遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言のことで、これまでの「相続させる遺言」に相当するものです。
③平成30年改正前は、相続させる遺言の効果として相続開始時にその財産の所有権が移転するとされていましたが、改正後の特定財産承継遺言では、法定相続分を超える部分については対抗問題となり、登記が必要です。
④ したがって、所有権移転登記を確実に行うために遺言執行者を指定するよう勧めます。
⑤ しかし、長男に自宅を相続させると、妻は自宅に住み続けることができなくなるかもしれません。そこで次のような方法を検討します。

【2】配偶者居住権

① 平成30年の相続法改正により、相続開始時に配偶者が被相続人の所有建物に居住していた場合、遺産分割・遺贈・審判によって終身又は一定期間、配偶者にその建物の無償での使用収益権を認めることができることになりました(配偶者居住権)。
② 相談者の死後も妻を自宅に住まわせる場合には、「長男に自宅を相続させる」という特定財産承継遺言とともに、遺言に「妻に対し、その終身の間、自宅の居住権を遺贈する」という条項を設け、配偶者居住権を設定するように勧めます。
③ なお、注意点は次の通りです。まず、配偶者居住権は「遺贈」による必要があり、「配偶者居住権を相続させる」と記載すると無効になる危険性があります。遺贈に限られたのは、配偶者が望まない場合があると考えられたからです。また、配偶者居住権の終期についても記載する必要があります。
④ 配偶者居住権が遺贈されると、自宅の所有権は長男に帰属するので長男が固定資産税等を負担しますが、配偶者居住権は無償で行使できます。ただし、配偶者居住権が設定された「土地・建物」の相続税は、配偶者居住権の存続期間などを勘案して長男と妻が分担することになります。
⑤ 以上と同じことは負担付遺贈でも可能ですが、負担付遺贈では受遺者の義務であるのに対して、配偶者居住権は配偶者の権利として構成される点に違いがあります。

【3】配偶者短期居住権

① 平成30年の相続法改正により、相続開始時に被相続人所有建物に無償で居住していた配偶者は、遺産分割により建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始時から6月の遅いほうまで無償で建物を使用できることになりました(配偶者短期居住権)。
② 遺言がない等の事情で遺産分割が必要になっても、妻は、相続開始から6月又は遺産分割成立までの長いほうの期間は無償で居住できることになり、前述のように、遺産分割や審判で配偶者居住権を設定できる可能性もあります。

【4】後継ぎ遺贈型受益者連続信託

① 一方、自宅を妻に相続させて妻が死亡すると、長男は(縁組をしていなければ)妻の相続人になりませんから、自宅は妻の相続人の手に渡ります。そこで、妻が死亡した場合に自動的に長男が自宅を取得する方法として、後継ぎ遺贈型受益者連続信託の利用が考えられます。
② その場合には、たとえば、相談者を委託者兼受益者、長男を受託者として信託契約を行い、相談者が死亡した場合には受益者を妻に変更し、次いで妻が亡くなった場合は、信託を終了させ、帰属権利者としての長男に自宅が渡るように設定します。
③ 配偶者居住権は相続開始時に配偶者が被相続人の所有建物に居住していた場合に限られます。そうすると、相談者が、自分の死後は遺産となる賃貸アパートの収益を配偶者に与えたいが、配偶者の死亡後はそれを長男に取得させたいと考えた場合には使えません。したがって、後継ぎ遺贈型受益者連続信託はこのような場合にも利用される可能性があります。