【終活・遺言・相続相談】相談例17 財産管理契約・見守り契約

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例17 財産管理契約・見守り契約についての記事です。

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【相談内容】
相談者(80歳女性)から、「終活セミナーの講師から、任意後見契約をするなら、財産管理契約や見守り契約を公正証書で作っておけば安心ですよと勧められた。財産管理契約とか見守り契約も、結んでおいた方がよいのでしょうか」と相談された。

【検討すべき点】
任意後見契約と財産管理契約、見守り契約はよくセットでの利用が推奨されています。任意後見契約については前回述べましたので、今回は、財産管理契約と見守り契約について説明します。
財産管理契約にも任意後見契約と同じいくつかの問題点があります。事案に応じてカスタマイズする必要があり、場合によっては見守り契約やホームロイヤーの利用をお勧めします。

【1】財産管理契約

① 財産管理契約(財産管理等委任契約とか任意代理契約ともいわれます)は、文字通り、委任者が受任者に対して委任者の財産の管理を委託する契約です。しかし、自分で財産管理できるなら、それを人に任せる必要はありません。
② したがって、委任者は、現に財産管理できない状態にあるか、その状態が予想される状態にある方で、通常は初期の認知症だったり、介護を必要とする高齢者です。
③ これに対して、受任者は、財産管理を業務として扱う専門職やコンサルタントとなることが多いはずです(親族が受任者となる場合でも、専門職がサポートすることが多くなるでしょう)。
④ そうすると、契約内容に関する委任者の理解が十分でないまま、受任者側が主導して財産管理契約を締結させる可能性がありますから、受任者側による不当な勧誘がないかには注意が必要です。

【2】財産管理契約の問題点
財産管理契約に関する問題点は以下のとおりです。

【2-1】授権の範囲

① 財産管理契約における授権の範囲は広く設定されがちです。たとえば、財産管理契約の公正証書に添付される「代理権目録」のひな型には、「不動産、預貯金、動産等すべての財産の管理、保存、処分」など一切の行為を含む代理権が挙げられていますが、本当にそれが必要なのか疑問です。
② 移行型の財産管理契約締結の際には、「認知症等によって任意後見契約が必要になる前でも、身体が不自由になって動けなくなった場合に備えて、財産管理の事務について代理権を与える契約が必要だ」と説明されるようです。
③ その目的は入通院、介護サービス等を含む日常生活に必要な事項(いわば保存行為)に限られ、全ての財産の処分に関する代理権までは不要ではないでしょうか。

【2-2】財産管理の始期

① そもそも自立している高齢者が誰かに財産管理を任せる必要はありません。であれば、高齢者本人が財産管理できなくなった時点からの財産管理契約が望まれるはずですから、即効型でない限り、どのような状態になったら財産管理契約を発効させるのか始期を明らかにすべきです(将来型)。
② たとえば、委任者が同契約の発効を希望し、かつ、委任者が要介護1又は2の要介護認定を受け、親族の指定者や担当する介護関係者が同意した場合といった具体的な条件を設定するべきでしょう。

【2-3】財産管理契約の終期

① 財産管理契約と任意後見契約を併用する場合(移行型)、多くの財産管理契約では、「任意後見監督人選任の審判が確定したとき」(任意後見契約の発効時)を財産管理契約の終期としてあげます。連続性を確保するために、この規定は合理的です。
② しかし、任意後見契約では、任意後見受任者(財産管理受任者兼任)の任意後見監督人選任の請求については、「判断能力が不十分な状況になったときは、すみやかに任意後見監督人選任の申立てを行うものとします」といった緩やかな規定しか置かれず、適時における任意後見監督人選任の請求が確実に行なわれるとまでは期待できません。また、財産管理の始期のおいて明晰であった委任者も、その終期においては判断能力が低下しているはずですが、これを数値化することはできません。
③ そこで、任意後見契約や財産管理契約の中で、たとえば、3ヶ月に1度はかかりつけ医を受診して長谷川式簡易知能評価スケールを行ってもらい、「同検査の結果が2回連続で20点を下回った場合、又は医師が重要財産の処分に関する意思決定ができないと判断した場合は、1ヶ月以内に家庭裁判所に対して任意後見監督人選任を求める」といった具体的基準を取り入れることが必要ではないかと考えます。
④ もちろん、そうして行なわれた任意後見監督人選任請求が要件を満たさないとして、あるいは、本人の同意を得られない(任意後見契約に関する法律4条3項)として却下される可能性はありますが、それはそれで正常な過程だと思います。

【2-4】財産管理者の義務

① 一般に、財産管理契約のひな型では、財産管理受任者は、定期的に財産目録、会計帳簿、預貯金目録等を作成し、委任者に報告するといった規定が置かれています。しかし、委任者が完全な事理弁識能力を保持しているなら問題はありませんが、そうでなければ委任者は報告を受けても内容が理解できませんし、監督者も不在ですから、この義務が確実に履行されるかは甚だ疑問です。
② せめて代理出金機能付信託のように、委任者以外の第三者(子や親族)への報告義務を課すべきでしょうし、専門家が財産管理の監督者になることも推奨されるべきでしょう。

【3】見守り契約

①「見守り契約」とは、高齢の委任者が、受任者に対して、面会等の適宜の方法による定期的な様子伺いを依頼し、それによって委任者の健康状態(事理弁識能力を含む)や生活ぶりを確認し、必要に応じて委任者の生活に関する相談にのる契約のことです。そして、財産管理契約でカバーしきれない病院、施設、介護事業者との契約の事務処理や保証人への就任などについても対応できるとして、任意後見契約や財産管理契約とセットで推奨されます。
② 見守り契約は高齢者のサポートのために有益だと思いますし、費用面でのハードルはありますが、高齢者も歓迎してくれるはずです。財産管理受任者や任意後見受任者が、同時に見守り契約の受任者を兼ねることが通常です。見守り契約の受任者を別の専門家(弁護士)などにすることも可能です。その場合、先程の財産管理受任者が義務を果たすように、監督機能を持たせる契約にすることができると思います。

【4】相談者へのアドバイス

① 相談者に対しては、財産管理契約、任意後見契約、見守り契約、死後事務委任契約などのセット活用が推奨され、入院・入所時の保証人サービスから、葬儀・埋葬までワンストップで引き受けると謳われるケースがあるけれども、全てを同一人物に頼るワンストップ・サービスでは監督者がいないので、不祥事を防止するには十分ではないことも説明します。
② 相談者から「全部やって欲しい」と頼まれた場合、財産管理契約と任意後見契約、見守り契約と遺言書作成や死後事務委任契約等を複数の専門職が受任する等して、不祥事防止の体制を構築することが大切でしょう。

【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例9 親との同居についての記事です。

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【相談内容】
相談者(62歳男性)から、「田舎で一人暮らしをしている母(86歳)が認知症のようなので、心配している。弟(次男59歳)もいるが、私は長男だし、私の2人の子も就職して家を出たので、母を引き取って、妻(60歳)と3人で暮らそうと思うが、どうだろう」と相談された。

【検討すべき点】
子が認知症の親を引き取って面倒を見るというのは美談とも言えるいい話です。しかし、実際の世話をするのが息子ではなくその配偶者であれば、その配偶者の理解は不可欠ですし、先々のことも考えておかなければなりません。また、兄弟姉妹への配慮や田舎の実家の処分も検討材料です。善意だったとしても、それが仇にならないように、将来を予測したアドバイスが必要になります。

【1】親と同居のパターン

① 別々に暮らしていた子が高齢の親と同居して面倒を見るパターンとしては、概ね以下の4つに分類されます。
(1)子が親を田舎から呼び寄せる「引取り」
(2)子が実家に戻って親と同居する「実家での親との同居」
(3)複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション」
(4)子が自宅と実家を行き来する「半同居」
相談例はこのうちの(1)のパターンです。

【2】当事者の心理

① 一般的に高齢の親は住み慣れた自宅から離れたいとは思わないので、母の気持ちを考える必要があります。それでも、母が長男の申出に応じたのなら、自宅で自立して暮らす自信がなくなり、地元の施設にも入りたくない(大勢の前で恥をかくのが怖い)といった気持があるからかもしれません。
② 長男としては、長男の責任を果たしたい(在宅介護してあげたい)という気持ちが強いのだろうと思います。男性で単身の子が親を引き取るというパターンはあまり見られないので、配偶者(妻)が母の面倒を見てくれるだろうという、甘い考えがありそうです。
③ しかし、相談者の妻としては、義母との同居は歓迎できることではないケースが圧倒的です。そうであれば、同居すれば義母の資産を流用させてもらえるとの期待を抱くことは当然あり得ますし、いざとなれば施設に入居してもらうという考えもあり得ます。
④ 一方、次男は母の介護問題から逃げられるので、あまり文句を言わないでしょう。長男一家が母の財産を多少流用することも想定範囲かもしれません。しかし、母の財産が一気に減少したり、母から長男一家への恨みつらみを聞かされたり、長男が母を引き取って間もなく施設に入所させたりといった事情が生じれば、「親孝行は口先だけ」と長男夫婦を非難し始めるでしょう。

【3】同居と介護

① 親との同居は、もちろん在宅介護を意味しますが、在宅介護のたいへんさは経験してみないとわかりません。介護サービスを利用するとしても、徘徊、癇癪、愚痴、下の世話などを経験し、それまでの生活が制約され、認知症が進んだ親から感謝されなくなれば、やがて我慢の限界を迎えます(認知症の見当識障害から、排泄物を弄んだり壁に塗りたくる等の症状も見られますので、そうなると一層我慢することが辛くなります)。そうなると施設への入所を選択せざるを得なくなります。
② 母の他界後、遺産分割の段階になれば、長男夫婦には「介護の苦労はどう評価してくれるのか」という気持ちが生じます。
③ 寄与分(民法904条の2)には、「特別の寄与」との厳しい要件があり、よほどのことがなければ認められません(上記のような症状の親の面倒を見る程度では、認められません)。
④ 平成30年民法改正では、配偶者の苦労に配慮して、相続人ではない親族(相続人の妻など)が被相続人に対して無償で療養看護などの労務を提供した場合には、特別寄与料が認められることになりました(民法1050条)が、寄与分と比べて要件が大幅に緩和されたわけではありません。実際どのような場合に請求が認められるかも、まだ判例がなく不透明です。
⑤ したがって、相談者は、同居後に在宅介護が不可能な状態になったらどうするのか、また、在宅介護は特別の寄与に認められにくいということを考えなければなりません。

【4】親の財産管理

① 親と同居するには、他の兄弟姉妹から親の資産の流用を疑われないように、親の財布と子の財布を完全に分ける必要があります。具体的には、親子双方が別の家計簿をつけ、親の出費は出来る限り口座引き落としや振り込みを利用し、ATMからの現金出金を避け、1年に1度は他の兄弟姉妹に預金通帳の写しや収支の明細を送ることを勧めます。日常生活を写真や動画に写しそれを送るなどの工夫が大切です。
② このことは、長男が母の成年後見人になったとした場合に必要となる行為でもあり、成年後見を申し立てない場合でも、任意財産管理契約を締結したのと同じ運用と報告をすべきだということです。
③ よく問題となるのは、孫の入学や卒業の祝い金、結婚祝、出産祝、新築祝等の現金出金ですが、兄弟姉妹の各ケースを同額としておくなど、事前に話し合いで決めておけば、紛争を回避できます。
④ また、母を迎え入れるのに、バリアフリーなどのリホームや階段風呂場トイレなどに手すりを設置する等の工事を行う場合も、事前に兄弟姉妹の同意を得て、領収書を保存することが大切です。
⑤ 母の住んでいた田舎の実家は、帰る予定がないならば、空家問題を避けるためにも早めに処分すべきです。これは相談例では弟がいますので、よく話し合って決める必要があります。
⑥ 相談例でいう弟の立場の人から相談を受けた場合のアドバイスとしては、長男に母の生活費を教えてもらい、その一部でも分担して母名義の口座に仕送りすることをお勧めします。これは長男の浪費の抑止にもつながります。

【5】他の同居のパターン

① 相談例とは違うケースですが、【1】同居のパターンの(2)「実家に子が同居」のケースについて、子が身軽な単身者である場合が多いようです。この場合、非同居の兄弟姉妹からは、同居の子が自分の都合で親に寄生しているとみられるリスクが高くなります。このケースは親の預金の流用や自宅相続などの問題でもめやすいため、親の財産管理は【1】(1)の「呼び寄せて同居」パターンより気を使い厳格にすべきでしょう。
② これに対して【1】(3)の複数の子が持ち回りで親を預かる「ローテーション型」のパターンは、たとえば2か月ごとに、長男や次男・長女や次女の家を行ったり来たりするもので、あまり多くは見られませんが、高齢の親にとっては移動が負担になり、頻繁な環境の変化は認知症の進行にも悪影響を与えるので、あまりお勧めはできません。
③ また、【1】(4)の「子が実家と自宅を行き来する半同居」は、子が金曜の夜から日曜日まで実家に戻り親の介護をするといった方法です。その子にとっても大きな負担になることは自明なので、兄弟姉妹の仲がこじれることは少ないのですが、二重生活の為、費用面でも、体力面でもこの負担が重くなり、長続きしないケースが多くなります。

【6】親の言動についての注意

① 同居の場合に限定されませんが、認知症が進んだ高齢の親は、子どもの気を引きたいがゆえに、目の前の子に迎合する言動が多くみられ、目の前にいない子の悪口を言う傾向があります。
② 例えば、次男に「長男夫婦にご飯を食べさせてもらえない」「長男に預金通帳を取り上げられた」といい、長男には「頼りになるのはおまえだけだ」「次男は私の財産を狙っている」などと媚びるのです。高齢者として自然ともいえる行動ですが、子どもらがその言動を真に受けると、確実に争族の種になります。これを避けるためには親に「子供の悪口は言わない」ことを約束してもらうことと、兄弟姉妹間で話合い、親の言動を真に受けないとしておくことですが、実際は難しいところです。

【7】相続開始前の紛争(前哨戦)

① 親と同居していること非同居の子の対立が深まれば、相続開始前でもトラブルが生じます。
② 長男が親が「次男の顔も見たくない」と言っているとして、次男との面会を遮断することがあります。実際、親が同居の子の顔色をうかがってそのような発言をすることもありますが、非同居の子からすれば、それは許せるものではありません。そこで、自宅に押し掛け、警察を呼ばれ、弁護士に依頼して面会交流を求める親子関係調整調停事件に発展することもあります。
③ しかし、子に「親との面会を求める権利」はありません。「親が会いたくないといっている」として調停期日の出頭を拒否されると打つ手がありませんし、人身保護法2条の申立ても要件が厳しく、うまくいく見込みはあまりありません。
④ そこで、腹に据えかねた非同居の子が、ディサービスの帰りに親を連れ去るといった自力救済も起こり得ます。これに対して、同居の子が親の取返しを図ろうとすると、今度は非同居の子が「親は家に帰りたくないといっている」と主張します。
⑤ さらに、親を確保した子が、遺言書を書かせ合うといったこともあります。離婚事件の子供の取り合いに似ていますが、こうなると手の施しようが有りません。
⑥ その他、非同居の子が、同居の子が親の財産を費消することを予防するために後見開始を申し立てることも頻繁に見受けられます。そして、同居の子は家庭裁判所からの意見照会で後見開始の申し立てを知ることになりますが、例外なく激怒し紛糾します。
⑦ 相続前でもこれだけもめていれば、相続発生後に紛争になるのは必至です。親との同居はその遠因となるかもしれませんので、相談者には以上のリスクをお伝えし、十分に検討していただくようお勧めします。

なるほど納得!遺言書のあれこれ

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今回は、【遺言制度】に関して、「なるほど納得!遺言書のあれこれ」と題した説明資料のご提供です。

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今、終活という言葉が広く世間に知れ渡るようになり、併せて法的効果のある「遺言制度」に関するお問い合わせが非常に増えております。

弊所では初回相談を1時間無料で対応しておりますが、遺言制度に関するご相談をいただく場合、遺言制度の説明に時間を要してしまうのが実状です。

そこで、「なるほど納得!遺言書のあれこれ」と題して説明資料を作成いたしました。下記のリンクからPDFの資料を読むことができます。

相談の予約をする前に、一読すると遺言制度の全体像がご理解いただけるものと思いますので、お時間あるときにお試しください。

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【終活・遺言・相続相談】相談例5 狭義のおひとりさまからの相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例5 狭義のおひとりさまからの相談についての記事です。

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【相談内容】
女性相談者(78歳)から「20年前に父を、10年前に同居していた母を看取り、天涯孤独になった(生涯独身で子供もなく、兄弟姉妹もいない)。あとは自分が死ぬだけだが、週刊誌などを見ると終活など色々と書いてあり、よくわからなくなった。今のうちにしておくことはあるだろうか」と相談された。

【検討すべき点】
おひとりさまの中には推定相続人がいない方(以下、狭義のおひとりさまとします)もおられます。相談に来られる狭義のおひとりさまの傾向として、一人暮らしには慣れているものの、自分が亡くなった後のことを心配されているという真面目な方が多いようです。そういった場合には、早目の遺言と生前整理をお勧めします。

【1】狭義のおひとりさま

① 一人暮らしの高齢者(おひとりさま)の中には、配偶者がおらず、その他の推定相続人(直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹及びその代襲者)もいないという方(狭義のおひとりさま)がおられます。
② 狭義のおひとりさまが亡くなられて、親類・縁者もいなければ、葬儀・埋葬の手続きが採れず、被相続人自身は無縁仏として葬られることになります。(墓地、埋葬等に関する法律9条又は生活保護法18条)
③ また、狭義のおひとりさまの遺産は宙に浮きますが、他方で、被相続人に債権を持つ病院や施設、被相続人に部屋を貸していた賃貸人らは、相続人から弁済を受けることができず、途方にくれます。
④ この場合の解決策としては、相続財産管理人制度(民法951条、952条)が用意されています。しかし、賃貸人などの利害関係者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てるのには50万円から100万円の予納金納付を求められますし、相続財産管理の手続きに1年以上かかるため、債権者や利害関係人の立場からすれば、甚だ迷惑です。
⑤ もちろん、被相続人に十分な遺産があって予納金が不要となったり、申立ての数か月後には予納金の返還を受けられることもありますが、相続債権者が迷惑をこうむることに変わりはありません。

【2】遺言の必要性

① 狭義のおひとりさまが遺言書で遺産の処分を定め、遺言執行者を指定しておけば、相続財産の調査や債権者に対する弁済を遺言執行者に任せることができます(遺産の処分は遺贈によるため、遺贈義務者である遺言執行者は不可欠です)。
② もっとも相続債権者やほかの利害関係人がその遺言の存在を確知できない場合もありますので、行政書士や弁護士など士業が預かるとともに、継続的な相談相手となり、かつ、介護施設やケアマネジャーに緊急連絡先として知らせておくなどして、遺言者の死亡をすぐに知ることができるよう工夫する必要があります。

【3】死後事務

① 葬儀や埋葬など死亡直後に必要となる手続きは、遺言事項ではありません。
② そこで、遺言書作成とは別に、身近にいる親しい人や行政書士や弁護士など士業との間で死後事務委任契約を締結しておくのが理想です。
③ または、遺言の中にそれらを書き記し、遺言執行者に葬儀や埋葬の権限を与えることで、遺言執行者がそれらを執り行うこともできます。
したがって、相談者には、相続開始後に周囲に迷惑をかけないように、遺言執行者の指定を含む遺言書の作成を勧めます。

【4】生前整理の必要性

① 相談者は亡父と亡母の相続を経験していますが、このような場合、亡父・亡母名義の不動産や預貯金の相続手続き(名義変更)を放置している可能性があります。
② 一人っ子ですので名義変更しなくても、さしたる支障もなかったかもしれませんし、「両親名義の財産をそのままにしておきたい」という気持ちも考えられます。両親の骨壺と一緒に暮らしているケースもあります。しかし、いずれは名義変更の手続きが必要になりますので、気持ちにけじめをつけて、名義変更等の手続きを勧めます。
③ また、遺言で「全ての財産を○○に遺贈する」としても、受贈者がこれらを放棄すれば(民法986条1項)、処理に困ります。例えば、亡父名義の田舎の田畑・山林などは引き受け手がいないこともありますから、あらかじめ、これらの不動産を処分しておくことが望ましいです。
④ なお、相談者もやがて両親と同じ墓に入りたいのなら、死後事務委任契約や遺言書でその意思表示をしておく必要があります。この場合もその墓を管理している者に事前に相談する必要が出てきます。

【5】少子化傾向

① 日本の合計特殊出生率(一人の女性が15歳から49歳までに産む子供の数)は昭和22年は4.54人でしたが、昭和36年には2.0人を割り込み、令和元年では1.36人まで下がってきています。
② 生涯未婚率(50歳時点での未婚率)は令和2年の国勢調査では、男性で26%、女性で17%でした。
③ 厚生労働省による人口動態統計では、令和元年の婚姻数は約59万組で離婚数は約21万組です。
④ こうした合計特殊出生率の低下や、生涯未婚率・離婚率の上昇により、少子化傾向は顕著になっており、今後狭義のおひとりさまが増える一方でしょう。
⑤ 狭義のおひとりさまは概ね気丈に振舞われますが、それなりの寂しさも抱えておられると推察します。相談相手になって心を開いていただき、その上で見守り契約やホームロイヤー契約を勧めるべきでしょう。

【終活・遺言・相続相談】相談例4 一人暮らしの高齢者の相談

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【終活・遺言・相続相談】相談例4 一人暮らしの高齢者の相談についての記事です。

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【相談内容】
相談者(77歳女性)から、「2人の子供は独立し、4か月前には夫が他界して、私もおひとりさまになってしまった。これからどうやって生きていけばいいのか途方に暮れている」と相談を受けた。

【検討すべき点】
一人暮らしの高齢者世帯数は約683万世帯(男性約222万世帯、女性約460万世帯)です。近くに相談できる身内や知人がいないため、孤立している方も少なくありません。こうした方は、やがて病気になったり、生活できなくなればどうすればいいか、認知症になったら誰が面倒を見てくれるのかといった、不安を常に感じています。特に配偶者を亡くした直後は、精神的に落ち込みがちなので、注意が必要です。

【回答・解説】

【1】おひとりさま

① 一人暮らしの高齢者を「おひとりさま」と呼ぶことがあります。「おひとりさま」という言葉はテレビドラマの題名に使われ有名になりましたが、このドラマの主人公は30代の女性であり、まだ、高齢者を対象とした言葉ではなかったようです。
② その後NHKの番組で、地域社会と隔絶し、孤独な生活を送る高齢者の増加現象を「無縁社会」として取り上げ、人間関係の希薄化や生き甲斐などの問題により、消費者被害や孤立死などのリスクが高まることに警鐘を鳴らしました。こうして高齢者のおひとりさまがクローズアップされたようです。
③ しかし、高齢者の一人暮らしを「おひとりさま」と呼んだとしても、その中には子や兄弟姉妹などの推定相続人がいる場合と、推定相続人がいない場合、独居であっても、完全な一人暮らしか施設入所されているかなどで事情は異なります。

【2】配偶者を失った場合の心情に対する理解

① 相談者には2人の子供がいるので、本来、相談相手に困らないはずです。また、相談者はまだ若いので、まだ認知症のリスクも現実化しないと思われます。したがって健康に関する不安が顕在化していないのなら、年金支給に合わせて今後の生活設計を見直すとか、生前整理や断捨離を始めるとか、あるいは遺言をお勧めする、子供が将来自分の面倒を見てくれるか心配であるならば、委任財産管理契約や任意後見契約を検討するなどという回答になることが考えられます。
② 心配なのは相談者の心身の状態です。というのも、配偶者が亡くなると(子供の有無にかかわらず)残された配偶者は生活のリズムが狂い、喪失感から気力を失いがちで、一気に老けると言われています。この傾向は妻に先立たれた男性に顕著ですが、夫に先立たれた女性も落ち込んでしまい、生活のリズムが乱れ、不安が高じることが見受けられます。
③ したがって、このような兆候が見られる場合には、相談者の気持ちに寄り添い、亡くなった配偶者の菩提を弔い、故人を偲んで昔話を聞くとともに、新たに何かするべきことを見つけて、相談者を元気づけることが大切です。

【3】相談者へのアドバイス

① まじめな方ほど、「自分がしなければならないこと」を探そうとされます。そして、気持ちが弱っているときには、高齢者は、終活ビジネスの宣伝文句に乗せられて、不要なことに手を出してしまいがちです。
② 例えば、終活や遺言のセミナーに参加すれば、任意後見、財産管理、家族信託、遺言信託を勧められるでしょう。終活フェアでは、葬儀の予約や墓地の購入を勧められることが多くみられます。
③ しかし、それは相談者に本当に必要なことでしょうか。2人の子供が気にかけてくれているならば、相談者にとって、それらは喫緊の課題ではありません。そうであれば、相談者には配偶者のいない新しいライフスタイルを模索するようにアドバイスした方がよいと思われます。
④ 例えば、高齢者のサークル活動は、今、活況のようです。中には商売目的のものも見られますが、山歩きや寺社巡りなど、多額の費用がかからないものはたくさんあります。そのメンバーも同じような経験をされた方が多く所属されていますので、その方々と語らうことが、気持ちを落ち着ける効果を生み出すと思われます。

【4】保証人問題

① 一般的にはおひとりさまが不安に感じておられるのは、施設入所、入院の際の身元保証人が見つからず、入所や入院を断られるのではないかという問題です。介護施設や病院は、ケアプランへの同意、手術や延命など治療方針への同意、死亡した際の遺体の引取り、利用代金の支払などのために身元保証人を求めます。
② 厚生労働省は通達を出しており、施設や病院は身元保証なしに入所や、入院できるようにするべきであるとしていますが、その後も身元保証人を求める施設病院が大半ですので、この心配は尽きません。
③ そこでNPO法人などの各種法人による見守り、財産管理、福祉サービス支援、身元保証サービスに葬祭支援までまとめたサービスが注目を浴びています。
④ しかし、これらのサービスを提供する業者が将来も健全な運営をしており、いざというときに頼れるという保証はありません。葬儀や埋葬、墓石の売買なども同じことが言えます。つまり、葬祭業者や霊園業者は、「いざというときに子供たちに迷惑をかけないよう今から準備しておきましょう」と言って、墓地の永代使用権や墓石を売り込み、高齢者を囲い込みがちです。
⑤ しかし、最初に多額のお金を支払わせて長期にわたりサービスを提供するという類型の終活ビジネスでは、常に、事業者が集めた金を流用して別の事業に投資し、失敗して破綻するというリスクがあります。そのようなリスクを避けるための冷静な判断には孤立しないことがもっとも重要です。

【5】士業の関与

① 配偶者を亡くしたばかりの相談者の動揺や不安が大きく、このまま放置することが見過ごせないのであれば、見守り契約をお勧めするべきでしょう。定期的に訪問をしたり、事務所にお越しいただき、相談事を伺いながら話し相手を務め、生活上のアドバイスや行政手続きのサポートをして差し上げる。これは高齢者医療で行われていることと何ら変わりません。法的な問題解決ばかりに固執することはありません。

【終活・遺言・相続相談】相談例3 高齢の夫婦二人暮らしの方々の相談

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援、任意後見、死後事務委任に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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【終活・遺言・相続相談】相談例3 高齢の夫婦二人暮らしの方々の相談ついての記事です。

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【相談内容】
相談者夫婦(夫85歳、妻80歳)から、「今のところ自宅で二人暮らしをしているが、週刊誌やTVを見ると終活などが必要と言われて、今後のことが気になったきた。何から準備すればよいのか」との相談。

【検討すべき点】
高齢者世帯のうち、夫婦二人暮らしの世帯数は800万を超え、その人数は1600万人おられる計算になります。高齢の夫婦そろっての相談というのはあまり多くはないのですが、このことはご夫婦がお互いを気遣いサポートし、生活も安定していると考えても良いのではないでしょうか。しかし、そのようなご夫婦が相談に来られたということは、何らかの動機があり、必要に迫られていると考えた方がよいでしょう。

【回答・解説】

【1】生活・健康に関するお悩み

① 多く見られるのは、夫婦どちらか一人の健康が損なわれ、二人で暮らすことが困難になり、どうすればよいかと心配する生活自立のお悩みです。高齢の夫婦がお互いを支え合い何とか生活しているところ、片方が健康を害すると、途端にその生活が成り立たなくなることがあります。

② そのようなお悩みに関する相談であれば、地域包括支援センターの存在を紹介し、そちらへの相談や支援の要請をお勧めすることが大切になります。ちなみに地域包括支援センターは各自治体で別の呼称の場合もあり、世田谷区では「あんしんすこやかセンター」と呼称されます。

③ また、介護保険サービスの概要、施設入所、任意財産管理契約、成年後見制度などの説明も必要になろうかと思います。また、配偶者名義の家に配偶者死亡後にも住めるのかという相談も良くみられますが、条件はありますが、民法改正により創設された、「配偶者居住権」の説明も必要になります。

【2】子供のいない夫婦の相続に関するお悩み

① 高齢の夫婦が揃っての相談でよく聞かれることの一つに、「自分が先に亡くなった場合、配偶者はどうなるのか」というものがあります。特に子供がいない夫婦の場合にはこのお悩みは多く聞かれます。

② また、この相談をされる方の多くの方に、「自分が亡くなった後の遺産は全て配偶者が相続するから、お金の心配はない」という危険な思い違いをされている方が見受けられますので、注意が必要です。

③ 子供のいない夫婦のどちらかが亡くなられれば、先に死亡した配偶者の兄弟姉妹(又は甥・姪の場合もある)が相続人として登場することになります。仮に亡くなった配偶者の直系尊属(親・祖父母)が存命であれば、その直系尊属が相続人になります。

④ 夫婦二人暮らしの方々が、それぞれの兄弟姉妹や甥姪と親戚付き合いをしていればまだしも、疎遠であることが多く見受けられるので、残された配偶者は遺産分割協議で苦労することになります。したがって、残される配偶者に遺産の全てを相続させ、疎遠な親戚との遺産分割協議を回避するには、遺言を残すべきです。

【3】子供がいる夫婦に関するお悩み

① 子供がいる夫婦の場合、子供への相続に関するお悩みが多くなります。子供と遺産の扱いに関して意見に隔たりがある(老親は自宅に住み続けたいが、子供は売却して現金で相続したいなど)場合や、そもそも残された配偶者と子供に血縁関係がない(前妻・前夫の子や養子縁組した子)場合などです。

② 相続人である配偶者に認知症がみられる場合や、子供が複数いる場合で子供の間で遺産を巡る意見の相違がみられる場合なども、相続が争族(争いのある相続)状態になる可能性があります。

③ このような事情の有無をよく聞き取り、まずは、被相続人となる先に亡くなるであろう方の意向を確認して、それに沿った形で推定相続人間での話し合いや、遺言書の作成を勧めることになります。また、認知症や怪我や病気で判断能力が欠ける状態への備えとして、任意後見契約や家族信託の検討も必要になるかもしれません。

【4】夫婦そろっての遺言

① 夫婦間に年齢差がある場合は特にそうですが、統計的に男性の寿命の方が短いので、夫が亡くなった場合についてのみを検討され、夫のみ遺言を作成されるケースが多く見受けられます。しかし、どちらが先に亡くなるかは分かりませんので、夫婦そろっての遺言書作成をお勧めします。

② ただし、夫婦そろっての遺言と言っても、「共同遺言」(同じ遺言書に夫婦連名で作成した遺言)は無効とされているので、注意が必要です。

③ 遺言で配偶者にすべての財産を相続させるとしても、その配偶者が先に死亡してしまっているケースも考えねばなりません。この場合亡くなった配偶者に相続させるとした遺産は宙に浮く形となり、相続人間で遺産分割協議が必要になってきます。

④ 配偶者が死亡した時点で、遺言を書き換えることも考えられますが、その時点で遺言能力を喪失している危険性を考えると、遺言作成時に、相続させるとした配偶者が死亡した場合を想定した、予備的遺言にしておくことをお勧めします。
具体的には、宙に浮くことになる遺産の行先を考えておくということです。兄弟姉妹などの他の相続人でも、どこかの団体への遺贈(寄付)も考えられます。その場合、遺言執行者を定めることや、遺贈先の了解を取り付けることが必要となってきます。

【終活・遺言・相続相談】相談例2 独身の子と2人で暮らす高齢者の相談

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【相談内容】
80代女性の相談者から、「15年前に夫が他界した後、ずっと独身で無職の長男(50代)と2人で暮らしている。今はなんとかやっていけているが、この先の備えを考えると不安で、どうすればいいのか」と相談された。

【検討すべき点】
50年も一緒に暮らしているのであれば、普通の場合、相談者と長男はお互い気心も知れて、毎日の生活は安定していると思われます。しかし、時間の経過とともに加齢により現在の関係は壊れていきます。相談者の死後一人で暮らすことになる長男のことを考えれば、問題の先送りはもうできず、何らかの対策を行う必要があります。

【回答・解説】

【1】8050問題

① 親一人子一人と聞けば、親と幼い子が肩を寄せ合って生活しているのをイメージされる方が多いと思います。しかし、子が中高年と聞けば、なぜ自立しないのかと批判的に受け止める方が多いでしょう。

② 「8050問題」とは、若いころからの子のひきこもりが常態化し、50代の子と80代の親が同居しているケースのことで、最近では、孤立死、無理心中、親の死体遺棄、親の年金・生活保護費の不正受給などの原因としてとらえられることが多くなっています。

③ ちなみに、平成30年の内閣府の調査によれば、中高年(40歳~64歳)の引きこもりは約60万人で、そのほとんどが、高齢の親との同居と考えられています。そうすると高齢者とこの同居世帯(約1000万世帯)のうち6%程度(60万世帯)がこの問題を抱えているのです。また「8050問題」は時間の経過とともに、「9060問題」へと移行していくと危惧されます。

④ 多くの場合、8050問題やひきこもりの背景には、精神疾患や事故の後遺症など、そうならざるを得ない深刻な事情が存在することが多くみられます。しかし、根本的な解決方法は、子の就労による自立(またはそれに代わる社会参加)しかありません。相談者の死後に長男が生活していけるかを危惧しているのであれば、なおさらです。

⑤ このような問題があると思われるケースは、都道府県や市区町村のひきこもり地域支援センターや自立相談支援機関窓口への相談を勧めます。
東京都のひきこもり地域支援センターは「東京都ひきこもりサポートネット」になります。

【2】共依存の問題

① 一つ注意したいのは共依存の問題です。「共依存」とは自分と特定の相手の関係性に過剰に依存し、その人間関係に囚われている関係への嗜癖を意味します。

② たとえば、親が子の世話をすることによって、子から依存されることに自己の存在価値を見出し、子をコントロールして自分の望む行動をとらせて親自身の心の平穏を保とうとすることを言います(親子が逆の場合や夫婦間でも起こり得ます。)。

③ 相談例でも、相談者が長男と共依存の関係なら、相談者は長男の自立を願っていると言いながら、それを阻害する裏腹な行動をとっているかもしれません。特に「息子は私がいないとだめなんです」「私がいないと何もできない子なんです」といった発言が頻繁に出るようであれば要注意です。窓口を紹介しても、「外に出たがらないんです」など様々な口実を設けて、アドバイスを拒絶してきます。したがって相談者の気持ちに配慮しながらも、ひきこもり地域支援センター等への相談を促すなど、うまく誘導する必要が出てきます。

【3】相続開始後に想定される事態

① 相談者が他界すれば、長男は一人取り残されます。相談者と長男の関係があまりに歪であると、他に相続人がいたとしても、関わり合いをおそれて実家に近づかないかもしれません。しかしそれは争族(相続争い)が起きないことを意味するものではありません。したがって長男以外に子がいる場合は相談者に遺言書を作成するように勧めます。なお、相談者の相続人が長男だけでしたら、「おひとり様の問題」が生じることになります。

② 「今はなんとかやっていけている」とのことですので、収入源は相談者の年金だと考えられます。そうだとすると、相談者の死亡によって年金はなくなりますので、長男は相談者の遺産を取り崩して生活するか、それが底をつけば、生活保護を受給することになる可能性があります。また、長男に障害がある場合は親なき後問題が生じます。


【終活・遺言・相続相談】相談例1 終活等の漠然とした不安に関する質問

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【終活・遺言・相続相談】相談例1 終活等の漠然とした不安に関する質問についての記事です。

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【相談内容】
夫が他界してから、長男一家と同居している。今のところ生活に支障はないが、終活や相続について雑誌やテレビを見ると、先のことが心配になる。

【検討すべき点】
相談内容が具体的ではないことは、ままあるケースです。法的な問題ではないことも多くみられます。しかし、相談されるということは、何か問題や悩み事を抱えておられるかもしれませんので、事情を伺っていくことになります。

【回答・解説】

【1】追加で伺うべき点

① まずは相談者本人の氏名、年齢、性別、家族関係を今少し伺うことが必要になります。同居されているのが長男一家ということですから、他にもお子様がいることが考えられます。

② 生活の状況もお聞きする必要があります。二世帯住宅で、生活は別になっているのか、完全な同居生活か、生活費の収支、貯えの額、預貯金の管理者(本人か家族か)など。

③ 相談者の健康状態も、伺うべき点です。年齢、持病、入院歴、介護認定など。健康に関する話題は特に高齢者との会話の接点となることが多く、介護認定や財産管理の状況は、任意財産管理、任意後見や家族信託の検討の有無にかかわってきます。

④ 日常生活のスケジュールも伺います。これにより生活ぶりが想像でき、問題点やお悩み事を把握しやすくなります。

⑤ 相談に来られたきっかけを伺います。告知の媒体もそうですが、何に興味を感じてこられたかがわかることで、問題点やお悩み事を把握しやすくなります。

【2】同居家族との関係

① お話を伺い、把握できた相談者の抱える問題やお悩み事や又はその可能性を考えます。長男一家と同居しているとのことでしたが、なぜ一人で相談に来られたのか、生活に支障がないとお話しされていますが、同居している長男家族に言えない悩みがあるのではと考えられます。

② 長男一家との関係がうまくいっているのであれば、迷惑をかけないため、又はお世話になっているお礼をしたいと終活のご相談に来られるケースがあります。相談者自身に介護が必要になった場合や、将来に備えて遺言を用意する必要があるのではと、考えられることが多く見受けられます。

③ 長男一家との関係がうまくいっていないので、そっと一人で相談に来られたのかもしれません。長男一家が冷たい、恩着せがましい、嫁には財産を渡したくない、孫の教育について不満がある等。これらの場合、愚痴を聞いてほしいだけのケースも多々見受けられます。

【3】遺言・相続

① 長男以外の子供など、推定相続人がいる場合、長男と他の子供との関係が悪いとか、同居していない子供にも財産を遺したいとか、遺言・相続の問題を抱えているケースも見られます。

② 一般的に同居の子供と、非同居の子供の間で争族状態になるケースは多くみられます。同居の子供は親の面倒を見ているという意識が働き、非同居の子供は同居の子供が居住費を浮かせている等、同居により得をしていると考えやすいものです。同居者と非同居者がだんだんと疎遠となると、相談者の死後その配偶者を巻き込んでの遺産の争いとなることが考えられます。

③ そのような心配があるので、一人で相談に来られるケースも多くみられます。子供達のいさかいを何とか取り持つ方法を知りたい場合、法律的な相談ではなく、他の方法を考えるしかないのですが、相談者の死後の争族を防止するために遺言を用意する等の相談となっていきます。

④ 一方で、同居している不動産の名義が相談者の場合、同居している子どもに生前贈与や遺言で相続させたいという希望をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、このようなケースで多いのは、遺言を書けば問題が起こらないと遺言の効力を過信している方です。

⑤ すべての財産を、すべての推定相続人に分配する内容であればまだしも、同居している子どものみに対して、同居している不動産のみを相続させるという内容で、他の財産や他の推定相続人に全く触れていない遺言でも、遺言書を書けば問題がなくなると、思い違いをされている方がまま見受けられます。非常に危険な遺言内容となることが想像できます。

【4】親(相談者)自身の言動

① 加齢に伴い心細くなった高齢の親は、多かれ少なかれ、子に対して愚痴をこぼすことがあります。他の子に対する愚痴をこぼし、自分の寂しさを理解してもらいたいという心情からですが、子供達が皆別居しているなど、一定の距離にあればいいのですが、同居の子供と非同居の子供がいる場合、この言動が大きな問題を引き起こすことになります。

② 認知症等の影響や寂しさから、自分に関心を持ってもらいたいと、同居の子供に対する不満や、食事をさせてもらっていない、預貯金を取り上げられた、財産を狙われている等の事実ではないことを、非同居の子供に対して言う場合があります。これは自分を大事にして欲しいという気持ちからの、他愛もない話という意識かもしれませんが、非同居の子供にしてみれば、看過できない重大な事案です。

③ 一方同居の子供に対しては、非同居の子供が頼りにならない、顔も見せず情けが薄い等の不満を漏らし、自分の面倒を見てくれるお前に、すべての財産を譲りたいなどと話すケースが多くみられます。このような言動は罪の意識はないのでしょうが、兄弟姉妹で争え、憎しみあえと言っているようなものです。
このような事例をお話しして、相談者には自重していただくように諭すことも大事な点になります。

④ 仮に相談者が自分の財産の管理を巡って、同居の子供と非同居の子供に争いが起きるのを防止したいという意向があるのであれば、同居の子供と、任意財産管理契約と任意後見契約を締結し、相談者名義の預貯金の異動等財産の状況を明らかにしておき、非同居の子供に開示することで相互の不信感を解消するという方法もあります。

【任意後見制度】高齢社会を取り巻く制度 任意後見制度と併用する法的な仕組み3

世田谷区砧で子供のいないご夫婦、おひとり様の遺言書作成、相続手続き、戸籍収集支援に詳しい行政書士セキュリティコンサルタントの長谷川憲司です。
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今回は、【任意後見制度】に関して、高齢社会を取り巻く制度 任意後見制度と併用する法的な仕組み3について考えてみたいと思います。

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【3】遺言の併用

(1)遺言とは

遺言とは、自分の死後の法律関係を定める最終の意思表示です。民法の定める法定相続とは別に、自分が生涯かけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、最も有効かつ有意義に活用してもらうために行なう意思表示であり、人生の集大成ともいうべきものです。

遺言をするのは、自分の家族に争いや不満を遺さないようにするということが考えられます。遺言がないために、相続をめぐり親族間で争いの起こることが少なくありません。今まで仲の良かった人たちが、相続財産を巡って骨肉の争いを起こすことほど悲しいことはありません。

遺言はこのような悲劇を防止するため、遺言者自らが、自分の残した財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止しようとすることに主たる目的があります。
その他にも、個々の相続人にそれぞれ必要な財産を相続させたい、特定の子に事業を承継させたい、介護の必要な子のために財産を遺したい、同居している子に建物を遺したい、老後の世話をしてくれた人に報いたい、相続人以外の人に財産を分けたい、慈善団体に財産を遺し社会に役立てて欲しい、葬儀や埋葬方法等を定めておきたい等々が考えられます。このような様々な願いや想いを形にするのが遺言です。

(2)遺言と同時に任意後見契約を結ぶ

遺言によって、死後の財産管理・財産処分等を行うとして、生前中の財産管理等は自分で行うにしても、認知症等の精神上の障害によって判断能力が欠けた場合には、自己の財産管理等ができないこととなります。そのような場合に備え、自分の最も信頼できる人に対して財産管理や身上監護等を委ねる契約をするのが任意後見制度です。

遺言と任意後見制度とは、まったく異なる制度ですが、ともに自己決定権を最大限に尊重したものであり、民法の私的自治の原則に適う制度ということができます。自分の死後における財産の管理、処分、承継については遺言によって決定することができますが、自分の認知症等により判断能力を失ってしまった場合の財産の管理、処分をどうするのか、という点に関心を払うことは当然に必要なことです。

(3)典型例

任意後見人は、任意後見契約において定められた事務を処理する義務があり、任意後見契約の契約条項に定めがなくとも、善管注意義務(任意後見契約法7条4項、民法644条)や任意後見契約法6条に規定する配慮義務があります。

移行型任意後見契約の場合、本人の世話をする任意後見人(受任者)になる人は、親族がもっとも多く、しかもかなりの人たちが無償で引き受けているのが現状です。
親族が任意後見人(受任者)を引き受けている場合は、本人の財産管理、身辺配慮、さらには任意後見監督人への報告などの法律や契約で定められた事務のほか、現実には、身の回りの世話など、親子や親族の情に基づいて無償の奉仕をすることが多いわけですから、世話をしてもらう立場の本人が、自分の老後の世話をしてくれたその親族(任意後見人・受任者)に対し、自分の遺産のすべて又は一部を遺したいという気持ちは、自然の情愛といえます。そのためか、移行型任意後見契約の締結と遺言書の作成を公証役場で同一の機会に行なうという例が多いといえます。

さらに親しい友人や近隣住人に任意後見人(受任者)になってもらい、そのお礼に財産の一部又は全部を遺すという遺言も少なくありません。
そのような場合であっても、遺言内容は、通常の遺言と変わらないのが普通です。
遺言それ自体は、正確性・明確性を期するために、味気ない文言になってしまいます。そこで、任意後見人(受任者)になってもらった親族(相続人・受遺者)に感謝の意を表するために、遺言には、それぞれの生の言葉で、「お礼の言葉」を付言事項として付け加えるのがよいかと思います。

任意後見受任者は、重要書類の一つとして本人の遺言書も管理することも多いと思われます。ところが、遺言内容を受任者に知られると受任事務のやる気を低下させるおそれがあり、あるいは、世話をしてもらう本人との間が気まずくなる可能性がある場合もあるかと思われます。

その場合は、遺言の内容を知られないよう、秘密証書遺言(民法970条)によることもできます。
秘密証書遺言は、自筆でなくともよいので、司法書士や行政書士が代筆する例も少なくありません。

遺言書作成を考える

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今回は、【遺言制度】に関して、「遺言書作成を考える」と題した説明資料のご提供です。

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今、終活という言葉が広く世間に知れ渡るようになり、併せて法的効果のある「遺言制度」に関するお問い合わせが非常に増えております。

弊所では初回相談を1時間無料で対応しておりますが、遺言制度に関するご相談をいただく場合、遺言制度の説明に時間を要してしまうのが実状です。

そこで、「遺言書作成を考える」と題して説明資料を作成いたしました。下記のリンクからPDFの資料を読むことができます。

相談の予約をする前に、一読すると遺言制度の全体像がご理解いただけるものと思いますので、お時間あるときにお試しください。

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